アプリ開発企業のM&Aを徹底解説!業界動向や事例・取引相場・メリットは?
アプリ開発企業のM&Aについて、業界の最新動向、取引相場、実際の成功事例からM&Aの多大なメリットまで、幅広く解説します。アプリ業界の変遷とともに、戦略的M&Aがどのようにビジネス環境に影響を与えているのかを明らかにします。
目次
アプリの業界動向
現代社会において、アプリは私たちの生活に深く組み込まれ、多岐にわたる目的で使用されています。ショッピングからゲーム、ビジネスツールまで、アプリの幅広い用途はその成長の背景にある業界の動向と密接に関連しているのです。
ここでは、アプリ市場の最新のトレンドやデータをもとに、その現状や動向、事例や将来の展望を詳しく解説します。
アプリとは?
アプリは「アプリケーションソフトウェア」の略称で、特定の目的を持って開発されたソフトウェアです。アプリは大きく分けて、Webアプリとネイティブアプリの2種類に分けられます。
- Webアプリ
Webアプリは、その名の通りWebで提供されるアプリケーションのこと。オンラインバンキングやオークションサイトなど、Webブラウザ上で動作するシステムが該当します。インストール不要で、ブラウザを介してアクセスするだけで利用できるのが特徴です。
- ネイティブアプリ
ネイティブアプリは、スマートフォンやパソコンの端末が持つOSの機能を活用して動作するアプリケーションのことです。AndroidやiPhoneなどの端末にダウンロードして使用するアプリケーションが該当します。
近年、ネイティブアプリを指して「アプリ」と呼ぶことが一般的となっていますが、本記事では、Webアプリとネイティブアプリの両方を含めて「アプリ」という言葉を使用します。
アプリ市場の動向
テクノロジーが急速に進化する中、アプリ業界もその波に乗って大きな変化を遂げてきました。では、具体的にアプリ市場はどのような動向を示しているのでしょうか。
2017年から2021年の間に、全世界のモバイルアプリ売上高は1,207億ドルから2,978億ドルまでという驚異的な伸びを見せています。
日本も例外ではなく、同期間の売上高は162億ドルから306億ドルへと増加し、国内・海外を問わず、アプリ市場の拡大している動向が続いています。
特に注目すべきは、「消費者向けゲーム」が売上の大部分を占めている点です。2021年度の日本国内のモバイルゲーム売上高は216億ドルにも達しており、アプリ市場全体の売上の大部分をゲームが占めています。
また、ゲームだけでなく、地図・ナビゲーション、ビジネス関連、ヘルスケアといったアプリも増加している傾向にあるのです。
アプリ開発企業のM&Aの動向
近年、アプリ市場における激しい競争は、アプリ開発会社の戦略を大きく変える原動力となっています。ここでは、アプリ業界におけるM&Aの最新の動向やその背景を解説し、どのような影響が現れているのかを解説します。
アプリ業界での競争が激化
スマートフォンやタブレットの普及が進む中、新たな動向として新しいアプリ開発会社の台頭とアプリの多様化が進行しています。特にSNS、ゲーム、生活支援サービスなど、多岐にわたるジャンルでの競争が続いている現状です。
AIやIoTの導入が進めば、市場の構造やニーズはさらに変化することが予想される中、厳しい市場環境下で、多くの企業がM&Aを活用し、新しい経営戦略を模索しています。
スタートアップやベンチャーなどの中小企業のM&Aが活発
アプリ開発業界は中小規模の企業が主役の舞台ともいえる場所で、大企業による寡占状態にはなっていません。
そのため、M&Aが非常に活発です。特に革新的な技術や独自のアイディアを持つ中小規模の開発会社は、大企業からのM&Aのターゲットとなる可能性が高い傾向にあります。
そして、多くのスタートアップが、M&Aを前提とした経営戦略を持っており、大企業にとっても魅力的な買収対象となっています。
内製化を目的とした下請け企業へのM&A
アプリ開発を行う企業にとって、外部の下請け企業との連携は欠かせません。しかし、発注先とのコミュニケーションの問題や、発注に伴うコストが増加することから、M&Aを通じて下請け企業を内製化する動向が増えています。
これにより、開発プロセスの効率化やコスト削減が期待されるだけでなく、経営リソースの統一や意思決定の迅速化など、様々なメリットがあると考えられます。
アプリ開発企業のM&Aのパターン
アプリ産業が急成長している今、M&Aの動向も注目されています。アプリ関連のM&Aにはさまざまなパターンが存在し、それぞれの背景や目的、メリット・デメリットも様々です。
ここでは、アプリM&Aの主なパターンを3つに絞り、それぞれの特徴や狙いを詳しく解説します。
アプリのみのM&A
アプリ産業において、特定のアプリの技術やユーザーベースを目当てに行われるM&Aがあります。これが「アプリのみのM&A」という形態です。この形態のM&Aでは、企業の他の資産や従業員を取得するのではなく、アプリだけを取得します。
しかし、この方法は現状ではまだ活発ではありません。その最大の理由は、アプリの保守や運営に関する知見が必要なければ失敗につながりやすいといったデメリットがあるためです。
プラットフォームの更新や、ユーザーのニーズの変化に柔軟に対応するためには、アプリを運営してきた背景知識やノウハウが欠かせません。
アプリ開発企業のM&A
一方で、アプリを開発するスキルや知見を持つ企業を直接買収するケースも増えています。こうした形態のM&Aは、新たなアプリをリリースしたいが、開発のノウハウや経験が不足している企業にとって、素早く市場に参入する手段として効果的です。
外部の専門家や企業に頼らず、内部でのアプリ開発を加速できるメリットがあるため、多くの企業がこの方法を選択しています。
アプリ開発・運営企業のM&A
最後に、アプリの開発だけでなく、運営に関するノウハウも持っている企業を対象としたM&Aも存在します。特に、初めてのアプリのリリースを目指す企業や、スピーディにマーケットに参入したい企業にとっては、この形態のM&Aは大きなメリットです。
時間とコストをかけて従業員を育成するよりも、既に開発と運営のノウハウを持つ企業を買収することで、迅速に市場に参入し、収益を上げることが期待できます。
アプリ開発企業のM&Aを実施するメリット・デメリット
アプリ開発企業がM&Aを行う際の具体的な手法としては、主に事業譲渡と株主譲渡が挙げられます。それぞれの方法には独自のメリットとデメリットがあり、企業の状況や目的に応じて適切な手法を選択しなければなりません。
以下、それぞれのメリット・デメリットについて詳しく解説します。
事業譲渡を行った場合
事業譲渡は、特定の事業や資産を中心に、売買を進めるM&Aスキームです。特に個人事業主の場合、この手法が選択されるケースが多くあります。
メリット
事業譲渡のメリットとして、買収側は取引内容を選別でき、その結果、不要な債務などのリスクを回避できます。さらに、個人事業主や小規模企業が持つアプリ開発の資産やノウハウを特定して取得することが可能です。
デメリット
事業譲渡のデメリットとしては、取引の進行が煩雑になることがある上、売却側は競業避止義務が発生し、一定の地域での事業再開が制限されることが挙げられます。
株主譲渡を行った場合
株主譲渡は、特定企業の経営権を取得することを目的としたM&Aスキームです。中小企業、特にオーナー経営者が中心となっている企業の場合、この手法が主に選ばれます。
メリット
株主譲渡のメリットには、経営権を取得することにより企業方針や経営戦略の大きな転換が可能となる点があります。特に中小企業では、交渉や手続きがスムーズに進行するケースが多く、包括的に業績や資産を承継する手続きも簡潔です。
デメリット
株主譲渡のデメリットとして、簿外債務や訴訟リスクなどの企業固有のリスクを全て引き継ぐ必要があり、また、50%以上の株式を取得する際の初期投資が増大する可能性も考慮する必要があります。
アプリ開発企業の取引相場
アプリ開発企業の売却やM&Aの際、取引相場はどのように決まるのでしょうか。取引相場の知識は、アプリ開発業界でのビジネスの展開やM&A戦略を検討する上で非常に重要です。ここでは、アプリの取引相場に関する情報を詳しく解説します。
価格相場
アプリのM&Aにおける価格は、何を基準にして決められるのでしょうか。一般的に、アプリ単体の売却と、事業や会社全体の売却では相場が異なります。
- アプリ単体の売却
こちらのケースでは、同じジャンルや利用ユーザー数を持つアプリの過去の売却価格が相場です。参考事例として、あるゲームアプリが1,000万円での売却実績があれば、同様のゲームアプリの相場もおおよそ1,000万円と見られます。
- アプリ事業や運営会社の売却
事業や運営会社の売却の際、M&Aの方法が株式譲渡か事業譲渡かで相場は異なる点に注意が必要です。
具体的には、株式譲渡による場合、時価純資産に「営業利益+役員報酬」の2〜5年分を上乗せした金額が、事業譲渡の場合は譲渡する資産に2〜5年分の事業利益を上乗せした金額がそれぞれ相場とされます。
しかしながら、最終的な売買価格は売り手と買い手の交渉次第です。ニーズの大小や譲渡する資産の希少性等により、算出された相場と大きく異なる価格でM&Aが行われることも珍しくありません。
相場に近づけようと無理な交渉を行うこと自体がデメリットになる可能性があるため、相場はあくまで参考の1つとして捉えることが肝心です。
価格相場の算出方法
アプリのM&Aにおける価格を具体的にどのように算出するのでしょうか。M&Aの取引価格を決定するための企業価値評価は、専門的な方法が用いられます。
大きく分けて、コストアプローチ、インカムアプローチ、マーケットアプローチの3つの方法がありますが、アプリM&Aにおいては特にインカムアプローチの1つであるDFC法がよく用いられます。
DFC法(Discounted Cash Flow法)は、将来的に生み出される収益やキャッシュフローを現在価値に割り引いて評価する手法です。これにより、M&Aによる経営統合の影響を加味した上で、適切な企業価値を算出することが可能です。
DFC法は、非常に高い精度で企業価値を算定できますが、将来の収益やキャッシュフローはあくまで予測です。
そのため、恣意的な数値を設定してしまう可能性がある点が、デメリットになり得ます。この点に注意しつつ、複数の方法を組み合わせることで、より正確な価値評価を目指しましょう。
アプリ開発企業のM&A事例
アプリ業界におけるM&Aは、事業の成長や拡大を目指す手段として注目されています。異なる企業が組み合わせることで、新たな価値を創出するケースが増えており、その背景や効果を、実際の事例をもとに詳しく紹介します。
メルペイによるOrigamiのM&A
1つ目の事例として、2020年2月、メルカリの子会社であるメルペイはOrigamiの全株式を取得し、子会社化を果たしました。Origamiは2016年からスマホ決済サービス「Origami Pay」の運営をしており、メルペイは2019年よりスマホ決済サービスを提供しています。
このM&Aにより、Origamiがメルカリグループに加わることで、スマホ決済市場での競争力を強化し、両社の強みを活かして新たな価値を提供することを目指しています。
楽天によるFablicのM&A
2つ目の事例として、楽天がFablicの買収を決定した背景には、EコマースにおけるC2C事業のさらなる拡大がありました。
このM&Aを通じて、楽天のマーケティングの知見や膨大な顧客基盤と、Fablicのフリマアプリ市場における高い企画・開発力を組み合わせ、利便性の高いサービスを提供することに成功しています。
GunosyによるゲームエイトのM&A
3つ目の事例として、GunosyはゲームエイトとのM&Aを、自社アプリへのユーザー流入の拡大、ゲーム関連の広告クライアント増加、両社の強みを活かした新商品開発を目的として行いました。
一方、ゲームエイトはさらなる事業拡大とユーザー体験向上を求めてGunosyに売却を決意しました。
毎日新聞による俳句てふてふのM&A
4つ目の事例として、毎日新聞は、大学生起業家が運営するSNSアプリ「俳句てふてふ」の事業をPoliPoliから買収しました。
このアプリは、俳句の投稿や検索が可能で、非常に人気があります。今回のM&Aを通じて、毎日新聞は、既存の俳句事業と連携してさらなる成長を目指しています。
TIME MACHINEによる電源カフェのM&A
5つ目の事例として、TIME MACHINEは電源カフェの全株式を取得し、完全子会社化しました。
主力事業である「Schecon」と「DENGEN CAFE」の連携を強化するため、2022年夏には「Schecon」の技術を使って「DENGEN CAFE」掲載店舗の予約ができる機能を実装する予定です。
ゼネテックによるバートのM&A
6つ目の事例として、ゼネテックは、SAP導入コンサルティング事業の拡大とソリューション開発を目的に、システム事業を展開するバートの全株式を取得しました。このM&Aにより、ゼネテックはさらなる企業価値の向上を目指しています。
アプリ開発企業のM&Aを成功させるには専門家に相談がおすすめ
本記事では、アプリ開発企業のM&Aにおける業界動向や事例、相場やメリット・デメリットについて詳しく解説しました。アプリ開発企業のM&Aは、業界の動向や取引相場、さまざまな事例を基に戦略を練る必要があります。
取引の成功には、正確な企業価値評価や適切な交渉が不可欠で、これらの複雑な過程を専門家とともに進めることで、より確実かつスムーズなM&Aの実現につながるでしょう。
アプリ業界におけるM&Aの成功は、豊富な経験と市場や事例の知識を持った専門家に相談し、最適な方向性を見極めることにあります。アプリ開発企業としてのさらなる成長を目指すなら、M&Aの専門家のアドバイスやサポートを活用しましょう。
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