ゴルフ場のM&Aの業界動向や事例を徹底解説!メリットとデメリットは?

ゴルフ場はM&Aが盛んに行われている業界の一つです。この記事では実際に行われたM&Aの事例もご紹介しつつ、ゴルフ場業界におけるM&Aのポイントを解説します。

目次

  1. ゴルフ場業界とは
  2. ゴルフ場業界のM&Aの目的
  3. ゴルフ場のM&Aの動向
  4. ゴルフ場のM&Aのスキーム
  5. ゴルフ場のM&Aの流れ
  6. ゴルフ場をM&Aするメリット・デメリット
  7. ゴルフ場のM&Aの事例
  8. ゴルフ場のM&Aは専門家に相談しよう

ゴルフ場業界とは

ゴルフ場業界とは、ゴルフ施設の経営・管理を行う事業を行っている業界を指します。

ゴルフ場の定義として、以下の条件のいずれかに該当する必要があります。

  1. 18以上のホールが存在し、コースの総延長÷ホール数が100m以上であること
  2. ホールが9ホール以上18ホール未満でホール平均距離が150mであること

また、ゴルフ場には海岸近くのシーサイドコース、内陸部のインランドコースの2種類が存在します。

ゴルフ場業界の特徴

ゴルフ場の経営目線での特徴は、以下の二つが存在します。

  • 顧客ターゲットに応じたコース設計
  • 会員制の有無

顧客を初心者や愛好家に設定した場合、ゴルフ場は難易度が低いゴルフ場設定となります。一方で、顧客をプロや上級者に設定した場合、難易度が高いゴルフ場設定となります。

ゴルフ場には、会員制(メンバーシップコース)と会員制ではない(パブリックコース)の2種類が存在することも特徴です。

ゴルフ場業界の市場規模

  • 近年のゴルフ業界全体の市場規模は横ばい状態
  • ゴルフ場の市場規模は20年前と比較して半減

経済産業省が発表したデータでは、2018年のゴルフ場の市場規模は8540億円となっており、20年前の1兆6840億円と比較しておおよそ減となっています。一方で、ゴルフ用品・ゴルフ練習場業界は20年前から緩やかに減少し、ほぼ横ばいの状態となっています。

減少傾向の原因としては、プレー人口の減少・プレー単価の減少にあります。特にプレー単価についてはバブル崩壊以降、急激な下落を見せています。

ゴルフ場業界の課題

ゴルフ場業界の大きな課題は、プレー人口獲得と若者のゴルフ離れへの対策です。

近年、車を持たない若年層の数が増加していることから、若者が都心から遠方にあるゴルフ場に行く機会がないという問題を抱えています。また、若者にとってプレー単価やゴルフ用品単価が高く、敷居が高い面も大きな課題といえます。

ゴルフ場業界のM&Aの目的

ゴルフ場業界のM&Aの目的について解説します。周囲のゴルフ場のM&A動向を照らし合わせながら確認しましょう。

後継者の不在

M&Aの大きな目的の一つに、後継者不在問題の解決があります。

M&Aでは、ゴルフ場を新たに経営してくれる後継者を見つけることができます。

ゴルフ場の傾向者は団塊世代が多いため、2020年代以降、ゴルフ場の経営者は高齢者ばかりだといえるでしょう。また、ゴルフ場は莫大な土地の広さであるため、管理・経営以外にも相続・税金といった面で苦労することがわかります。そのため、経営者の子供や親せきが後を継ごうとしないことも、ゴルフ場業界の特徴です。

以上のことから、後継者問題を解決する目的でM&Aを活用する経営者が増えています。

事業エリアの拡大

事業エリア拡大の目的で、ゴルフ場買収をする企業も増えています。

ゴルフ場業界の大手は、さまざまな県・土地のゴルフ場を所有・買収し、経営しています。そのため、現状としてさらに事業エリアを増やし、新規顧客を獲得することで売上を上げるようとする目的でM&Aを実施する企業が多いです。

廃業寸前のゴルフ場はそのような企業に売却することで、廃業を免れ、売却益を獲得できるといった目的があります。

ゴルフ場のM&Aの動向

ゴルフ場のM&A動向について解説します。

近年のゴルフ場業界のM&A動向は、非常に活発な傾向にあります。ゴルフ場を買収したい企業が増えているため、ゴルフ場業界のM&A動向は売り手市場だといえます。

大手の寡占化

  • アコーディア
  • PGMホールディングス

上記の企業は、ゴルフ場業界のトップ企業です。現状、両社はゴルフ場の保有・運営数の観点で、ゴルフ場業界を独占している状態です。

両社とも、当初は外資系ファンドの傘下企業でしたが、外資系ファンドの資金を活かし、ゴルフ人口減少・プレー単価の下落で経営難となったゴルフ場を買収しました。その結果、多くのゴルフ場の経営難を回復させることで、ゴルフ場業界を支えてきました。

外国系企業による買収

ゴルフ場業界を独占しているアコーディア・PGMホールディングスをはじめとした、外資系企業によるゴルフ場買収の動向が目立っています。

現状、グループ傘下に入らず個人で経営しているゴルフ場は、上記企業をはじめとした傘下に入る動向が加速状態にあります。そしてゴルフ場の廃業解消を目的とする売り手とマッチングします。

売却価格の上昇

ゴルフ場業界の発展・ゴルフ場のM&A関係者増加に伴い、ゴルフ場の売却価格は急上昇している傾向にあります。

中でも、売却価格以上の相場で買収しようとする企業が増えているため、売却側が予想している以上の売却価格で取引できる可能性があります。

ゴルフ場の売却やM&Aを検討しているのであれば、一度M&A専門家に売却価格の相場算出をしてもらうとよいでしょう。想像以上の価格で売却できることがわかると、M&Aの動向や目的を検討したり、実施に踏み出しやすくなったります。

ゴルフ場のM&Aのスキーム

ゴルフ場のM&Aスキームを解説します。

スキームとは、ゴルフ場の買収・売却をする手法をいいます。ゴルフ場のM&Aにおける主なスキームは、以下の4つです。

  • 株式譲渡
  • 事業譲渡
  • 合併
  • 分割

スキームごとの特徴について解説するため、M&Aの動向やスキームを検討する際の参考にしましょう。

株式譲渡

株式譲渡は、その名の通り売却企業が保有する株式を買収企業に譲渡するスキームで、ゴルフ場M&Aで最も使用されています。

買収側としては株式を取得することで、売却側の経営権を獲得する目的があります。

注意点は、株式譲渡は株主全員の同意を得ないと株主譲渡によるM&Aが実施できない点です。そのため、株式譲渡に反対する株主がいるとM&Aができないおそれがあります。

株式譲渡の売却側・買収側それぞれのメリットを、以下の表にまとめています。

売却側

買収側

・手続きが簡便

・譲渡益が獲得できる

・税負担が20%と少ない

(個人株主が譲渡した場合)

・自社事業に影響を与えない

・売却側の経営権を獲得できる

事業譲渡

事業譲渡とは、売却側の事業のすべてもしくは一部を買収側に譲渡するM&Aスキームです。

事業譲渡に似た言葉で「事業承継」がありますが、事業承継は経営を後継者に継がせることを目的に実施されるため、事業を売却する事業譲渡とは完全に別物です。

株式譲渡は株主全員の同意が必要ですが、事業譲渡は株主総会にて2/3以上の賛同があれば実施できるため、株式譲渡よりハードルが低い特徴があります。

事業譲渡の売却側・買収側それぞれのメリットを、以下の表にまとめています。

売却側

買収側

・事業譲渡をしても会社として存続できる

・株式総会において2/3以上の賛同で実施できる

・営業権が計上できる場合に損益参入できる

・必要な資産のみを買収できる

・株式譲渡よりも買収のリスクが低い

合併

合併とは、2社以上の企業を1つに統合するM&Aスキームで、既存の1社にすべて吸収される「吸収合併」と、既存の企業をすべて消滅させて新たに1つの会社を設立する「新設合併」の2種類が存在します。

合併の大きなメリット・目的は、複数社の経営資源が一体化することにより、早期の事業規模拡大がはかれることです。

以下の表では、2種類の合併のメリットを記載しています。

吸収合併 

新設合併

・複数社の経営資源が一体化する

・シナジー効果の早期実現の期待

・株式を対価にすれば資金の用意が不要

・消滅会社の権利義務をすべて承継

・株価を対価として利用可能

・市場拡大・コスト削減が図れる

・全企業が平等になる

分割

分割とは、会社の事業を切り分けるM&Aスキームで、新会社を設立してそこに事業を承継させる「新設分割」と、既存の会社に事業を承継させる「吸収分割」の2種類があります。

ここでは先述のM&Aスキームとは違い、事業を切り離す会社を「分割会社」、事業を承継する会社を「承継会社」と呼びます。

実情として、新設会社に事業を承継させてから、その事業を譲渡する手法がよく使用されています。

分割会社

承継会社

・会社を存続させて引き続き経営ができる

・株式譲渡よりも実施のハードルが低い

・節税になる場合がある

・リスクを抑えた買収が可能

・営業権を計上可能で償却費を損金算入できる

・承継事業の従業員の待遇を考えなくてもよい

ゴルフ場のM&Aの流れ

ゴルフ場M&Aの流れについて解説します。

M&Aを実施する前に、まずはM&Aを行う目的を明確化させましょう。M&Aの目的を決めないと、何を期待して実施したM&Aかわからなくなって失敗に終わることが想定されます。M&A専門家に相談しながら、M&Aの目的を明確化させましょう。

また、M&A専門家のサポートを受けながらM&Aを進めていきいますが、事前に流れを理解してくことで、よりスムーズにM&Aを実施できます。M&A動向の確立の参考にもなるため、ぜひ理解しましょう。

①ゴルフ場の物件調査

ゴルフ場を売却することを決めたら、まずはゴルフ場の物件実査が実施されます。

ゴルフ場物件実査は、売却するゴルフ場がどれくらいの価格となるかを見定めるフローになります。

②価格査定と売却目標額の設定

ゴルフ場の物件実査が終わると、その調査結果をもとに価格査定と売却目標額の設定が実施されます。売却目標額が決まったら、M&A専門家とともに売却金額と売却相場の比較を行います。

ここで重要となるのが、ゴルフ場の売却相場を理解しておくことです。売却相場を知らないと、ゴルフ場本来の価格以下で取引される場合があります。

M&Aにおける相場を知ることは容易ではありませんが、M&A専門家にアドバイスを求めたり、過去のゴルフ場M&A事例を確認したりすると、ある程度の相場価格が見えてきます。

注意点は、保有するゴルフ場と規模が近いゴルフ場の事例を参考にすることです。

③買収者募集方式とスケジュールの決定

売却目標額が決まったら、買収者募集方式とスケジュールの作成を確定させます。M&A専門家とともに売却の方式・スケジュールを調整しましょう。

④資料を作成・募集開始

スケジュールや売却の方式が決まったら、M&Aの参考資料を作成します。資料内容を充実させ、買収者が買いたいと思えるようにしましょう。

資料作成が完了すると、購入者の募集が始まります。

⑤買収候補者の決定

売却価格や双方の目的達成に納得がいく企業が現れれば、売却先が決定します。

買収者が複数現れる場合があるため、M&A専門家と相談しながら、しっかりと売却先を選択しましょう。場合によっては、希望よりも高い価格で買収してくれる企業が現れます。

⑥譲渡条件の確定・契約

取引相手が確定したら、双方で条件の調整を行います。

条件の調整が完了すると、売却・譲渡契約書を作成し、締結します。

ゴルフ場が売却先に譲渡されたら、本M&Aのフローは終了となります。

ゴルフ場をM&Aするメリット・デメリット

ゴルフ場M&Aのメリット・デメリットについて解説します。

M&Aはメリットばかりに目が行きがちですが、その分デメリットも存在します。デメリットを理解していないと、売却・買収をした後に想定していないトラブルが発生する場合があります。

売却後、買収後の動向を確立させる意味でも、M&Aスキームのメリット・デメリットについて理解しておきましょう。

メリット

売り手側

  • 後継者問題の解決
  • ゴルフ場・会員の維持が可能
  • 個人保証の解消

上記の3点は、売り手側のM&Aのメリットです。

メリット1つ目として、後継者問題を解決できるメリットが存在します。先述のとおり、ゴルフ場の経営者は団塊世代が多く、団塊世代の経営者は現在高齢となっています。そして、ゴルフ場特有の経営・維持・税金といった面から、後継者が見つからない問題も生じています。それらの解決策として、M&Aは多くの経営者に活用されています。

ゴルフ場が廃業すると、ゴルフ場と会員権による利益が無くなってしまいます。しかし、ゴルフ場を売却・譲渡することで、それらの維持が可能という2つ目のメリットがあります。特に、会員権で獲得できる利益は非常に大きいため、これが無くなるとゴルフ場の維持ができなくなります。ゴルフ場の維持ができないと、会員からサービスの質の低下を指摘され、会員が減ったり経営そのものに影響を及ぼします。

M&Aをすると、個人保証が承継されるメリットもあります。個人保証とは、自社で抱えている負債のことで、M&Aでは資産だけでなく負債も承継できるスキームもあります。また、売却利益でその債務を完済することもできるため、経営が厳しいゴルフ場は、売却するメリットが大きいといえます。

買い手側

  • 事業拠点の拡大
  • 会員を増やせる
  • 事業規模の拡大が図れる

上記の3つは、M&Aによる買い手のメリットです。

メリット1つ目は、事業拠点を拡大できることです。経営するゴルフ場が増えるため、未開拓地域の顧客獲得ができることで新たな利益に繋がります。

事業拠点の拡大にあわせ、会員が増えるメリットがあります。ゴルフ人口が減少傾向にある中で、買収したゴルフ場の会員権を承継できればそれがそのまま利益に繋がります。また、自社のブランド力による会員増も見込めます。

事業規模の拡大が図れることも大きなメリットです。先述した、事業拠点の拡大・会員数の増加により自社に大きな利益をもたらしたり、共通する備品や設備をまとめて購入することでコスト削減を図れたりと、さまざまな観点で事業拠点の拡大や効率化が図れます。

デメリット

売り手側

  • 必ず売却できるわけではない
  • 売却しても手元に利益が残らない可能性がある

上記2点は、M&Aにおける売り手のデメリットです。

ゴルフ業界は売り手市場ではありますが、ゴルフ場の価値が低かったり、欲しいと思う購入者がいなかったりすれば売却は叶いません。仮に安価で売却できたとしても、自身が抱えつ債務を解消や税金の支払いにより、手元にお金が残らないケースも想定できます。

買い手側

  • 必ず利益拡大が図れるわけではない
  • コスト・維持費が負担になる場合がある

上記の2つは、M&Aによる貝絵のデメリットです。

M&Aは自社にさまざまなメリットをもたらしますが、それが必ずしも望めるわけではありません。買収したゴルフ場の経営を回復させられなかったり、会員や顧客が増えなかったりすれば、買収コストの回収すらままならなりません。ゴルフ場は数億単位で取引されるため、M&Aが失敗したときのリスクは非常に大きいものなります。

ゴルフ場のM&Aの事例

ゴルフ場のM&A事例について解説します。

M&A事例を知ることは、自社と規模感が近いゴルフ場のM&Aの実情を理解することに繋がります。M&A事例を参考に、自社のM&A動向を確立させる参考にしましょう。

アコーディアによる小田急西富士ゴルフ倶楽部のM&A

最初に紹介する事例は、アコーディアと小田急西富士ゴルフ俱楽部のM&A事例です。

小田急西富士ゴルフ俱楽部は、株式会社小田急スポーツサービスが運営する事業の一つです。

ゴルフ場業界トップ企業のアコーディアは、事業規模拡大のため、小田急西富士ゴルフクラブを買収することとなりました。スキームは事業譲渡を採用し、取引価格は非公開となっています。

ゴルフ場の業界動向、M&A・売却・買収事例20選!

パシフィックゴルフマネージメントによる東茨城ゴルフのM&A

続いて紹介する事例は、パシフィックゴルフマネージメント(PGMホールディングス)と東茨城ゴルフのM&A事例です。

東茨城ゴルフは、茨城県でゴルフ場の経営を営む企業です。

先述したアコーディアと同様、ゴルフ場業界トップ企業であるPGMホールディングスは、事業拡大を図りM&Aで東茨城ゴルフを買収しました。本事例のM&Aは、株式譲渡のスキームで実施されました。

当社子会社による東茨城ゴルフ株式会社の株式取得に関するお知らせ

リソルによるTLCゴルフリゾート・三木よかわカントリー・関西カントリー3社のM&A

3件目に紹介する事例は、リソルによるTLCゴルフリゾート・三木よかわカントリー・関西カントリーの3社のM&A事例です。

TLCゴルフリゾート・三木よかわカントリー・関西カントリーの3社は、それぞれゴルフ場の経営を行っています。

リソルは、上記3社を買収することで、安定した収益基盤の確立を図りました。M&Aスキームは株式譲渡で実施されました。

ゴルフ場の業界動向、M&A・売却・買収事例20選!

小田急スポーツサービスによる富士小山ゴルフクラブのM&A

最後に紹介する事例は、小田急スポーツサービスと富士小山ゴルフクラブのM&A事例です。

買い手の小田急スポーツサービスは、ゴルフ場に加え、テニスコートの運営もしています。

小田急スポーツサービスと富士小山ゴルフクラブを吸収合併することで、双方のゴルフ場サービスや連携面を強化するために行われました。本事例のM&Aは、先述のとおり吸収合併で実施され、取引価格は未公開となっています。

ゴルフ場の業界動向、M&A・売却・買収事例20選!

ゴルフ場のM&Aは専門家に相談しよう

ゴルフ場のM&Aは専門家に相談しましょう。

M&Aでゴルフ場を売却するにあたり、税務・法務・会計といった面の知識が必要だったり、正しい相場を把握し売却価格やその後の動向を確立させたりします。個人でM&Aを行うには、あまりにも負担が大きく、現実的ではありません。

M&A専門家に相談することで、より今後の動向を明確化したり、メリットが得られるM&Aが実施できたります。

M&A・事業承継のご相談ならM&Aエグゼクティブパートナーズ

M&A・事業承継については専門性の高いM&AアドバイザーがいるM&Aエグゼクティブパートナーズにご相談ください。

M&Aエグゼクティブパートナーズが選ばれる4つの理由

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