デューデリジェンスの意味や種類は?M&Aにおける目的や注意点まで徹底解説!
M&Aにおいてデューデリジェンスは欠かせない行為の1つと言えます。
しかし、デューデリジェンスは知識がない状態で進めるのは難しいです。
今回はM&Aを検討している企業に向けて、デューデリジェンスの意味や種類などについて解説します。
目次
デューデリジェンスとは
デューデリジェンスは取引相手の企業の情報を入念に調べることです。
M&Aの際に相手の情報を調べず、目的がないままM&Aを進め、後で後悔してしまうことがあります。
しかし、相手企業のことを十分に調べることで、M&Aによる失敗のリスクを減らすことが可能です。
デューデリジェンスの意味
デューデリジェンスは「Due」と「Diligence」の英語が組み合わせた単語となっており、Dueは注意、Diligenceは努力という意味が込められています。
そこから派生して買収側企業が売却側企業の実態を調査し、企業価値の参考材料に使う意味で使われています。
基本的にM&Aには料金相場というものがありません。
状況によって金額が大きく異なるため、相場を調べるのではなく、正しい企業価値を自身で計算することが重要になってきます。
そこで企業価値の計算時に損することがないように、デューデリジェンスを実施することが大事です。
デューデリジェンスの費用相場
企業の内部情報を調べる際には費用がかかります。
M&Aそのものの合計の費用相場はわかりませんが、デューデリジェンスの費用については相場を調べることが可能です。
主な調査の費用相場は以下の通りです。
- 事業調査の相場:30~300万円(2~10万円/時間)
- 財務調査の相場:100~500万円(2~5万円/時間)
- 法務調査の相場:70~200万円(2~5万円/時間)
- 税務調査の相場:35~200万円(2~5万円/時間)
この費用相場を目安に必要な費用が相場と比べてどのくらいの金額なのか比較してみてください。
デューデリジェンスの種類
企業の内部情報を調べると言っても、いくつかの種類があります。
内容や目的に合わせて、自社にはどういった形の企業情報の調査が必要なのか知ることが大事です。
デューデリジェンスの種類として以下のものがあげられます。
- セルサイドデューデリジェンス
- 人事デューデリジェンス
- 不動産デューデリジェンス
- ビジネスデューデリジェンス
- 財務デューデリジェンス
- ITデューデリジェンス
- 法務デューデリジェンス
- 環境デューデリジェンス
- 税務デューデリジェンス
- 人権デューデリジェンス
以下で詳細を解説します。
①セルサイドデューデリジェンス
セルサイドデューデリジェンスは売却側企業が調査費用を肩代わりし、必要書類の準備などを行って売却価値を最大化させる方法です。
相手企業のことを十分に調べるのは買収側企業だけではないことを押さえておきましょう。
② 人事デューデリジェンス
人事デューデリジェンスはM&Aの人事制度の仕組みを整えるために行う調査のことです。
特に人材ベースでのM&Aの件数が増えているため、人材面においても念入りに調査を行うことが大切です。
③不動産デューデリジェンス
不動産デューデリジェンスは取引する企業が所有している不動産の有無を確認する調査のことです。
不動産にまつわる内部情報の調査は専門の鑑定士が行ってくれるため、適切な価格を提示してもらえます。
④ビジネスデューデリジェンス
ビジネスデューデリジェンスはビジネスモデルや取引状況などのさまざまな調査情報を基に、現状の安定性や今後の成長性を予測する方法です。
M&Aのシナジーの有無などを考える場合に有効な調査方法として知られています。
⑤財務デューデリジェンス
財務デューデリジェンスは主に財務情報を確認し、そこから現在抱えているリスクや将来性を分析する方法です。
損益状況やキャッシュフローから将来性を分析することは企業価値に直結すると考えておいてください。
⑥ITデューデリジェンス
ITデューデリジェンスはITやシステム面全般を調べ、事業計画に役立たせるための方法です。
IT技術・システムはどの企業でも欠かせないものとなってきており、その状況を調べて業務の効率化について考える必要があります。
⑦法務デューデリジェンス
法務デューデリジェンスはM&A後に法律面で問題が出ないように、事前に取引相手の法律の問題を調べる方法です。
思わぬ法律トラブルが起こらないために、よく分析しておいてください。
⑧環境デューデリジェンス
環境デューデリジェンスはその土地での大気汚染のリスクや法律で禁止されている資材などが使われていないかなどを調べる方法です。
特に海外の企業とM&Aを行う場合は環境にまつわる内部情報の調査を徹底するべきです。
⑨税務デューデリジェンス
税務デューデリジェンスは相手企業の過去の税務申告のデータを調査し、税金に関するリスクがないか調べる方法です。
税務リスクが高い場合は取引に対して慎重に対応する必要があります。
あまりに悪質なデータが目立つ企業なら、そこでのM&Aは控え、他の候補を探す動きを取ることも大切になってきます。
⑩人権デューデリジェンス
人権デューデリジェンスは労働者に対して無理のある労働を強いていないかなどの人権リスクがないか調べる方法です。
特に売却側企業にとっては自社の社員が強制労働に巻き込まれる可能性があるため、M&A
後に労働者についてのトラブルが起こらないか調査すべきです。
デューデリジェンスのM&Aにおける目的
企業の内部情報の調査を実施する前に、M&Aの目的をはっきりとさせる必要があります。
M&Aの目的がはっきりしていると、迷いなくスピーディにM&Aを進めることが可能です。
デューデリジェンスのM&Aの主な目的として以下のものがあげられます。
- リスク特定
- 企業の財務状況や現状把握
- 経営改革
- ビジネスチャンスを掴む
- 費用対効果の把握
以下で詳細を解説します。
リスク特定
デューデリジェンスのM&Aの主な目的として、リスク特定があげられます。
M&Aで成長することも大切ですが、M&Aには会計や法律などにまつわるリスクがあり、それらのリスクを抑えることも大切です。
潜在的なリスクも潜んでいることもあるため、リスク特定のために企業の内部情報の調査を行う気持ちも忘れないでください。
企業の財務状況や現状把握
デューデリジェンスのM&Aの主な目的として、企業の財務状況や現状把握があげられます。
企業の内部情報の調査によってキャッシュの状況などを把握しておくと、将来の企業の成長が見込めるかわかるようになります。
将来の成長を重視するためにも、内部状況をよく調べておくべきです。
経営改革
デューデリジェンスのM&Aの主な目的として、経営改革があげられます。
デューデリジェンスで企業の内部状況を調べることで、新たな発見もあります。
そこで経営改革の道筋を立てられると、一気に企業の成長を実現することが可能です。
ビジネスチャンスを掴む
デューデリジェンスのM&Aの主な目的として、ビジネスチャンスを掴む点があげられます。
経営改革と近いですが、企業の内部情報を調べて分かったことから、新しい領域のビジネスに挑戦することも可能です。
シナジー効果を狙う以外の選択肢もあることを知っておきましょう。
費用対効果の把握
デューデリジェンスのM&Aの主な目的として、費用対効果の把握があげられます。
取引予定の企業の内部情報がわかると、M&Aを行うことでどれだけの効果が得られるか分析できるようになります。
もちろん分析するための知識や経験が求められますが、相場はわからなくても費用対効果がわかるとM&Aの良し悪しが判断しやすいです。
デューデリジェンスの流れ
デューデリジェンスを実施することを決めたら、デューデリジェンスの流れに沿って丁寧に進める必要があります。
デューデリジェンスの一般的な流れは以下の通りです。
- 調査チームを組成する
- 調査方針を決定する
- 対象企業の情報共有
- 必要書類のリスト化
- 資料請求
- 資料確認
- 資料分析
- 現地調査
- M&Aについて議論
以下で詳細を解説します。
①調査チームを組成する
まずは調査チームを組成しましょう。
どの種類のデューデリジェンスを行うか決めたら、それに合わせた専門家を中心にチームを組みます。
また、調査を実行する前に相手企業と秘密保持契約を組むことを忘れないでください。
②調査方針を決定する
調査チームを組んだら、調査方針を決めます。
具体的にどこを重点的に調査するか、調査するのにどれだけの予算が出せるか、いつまでに調査を完了させるかなどを決めてください。
③対象企業の情報共有
調査方針が決まったら、デューデリジェンスやM&A相手の企業の情報をチーム内で共有します。
チーム内で方針のズレがないように、全員が正しく理解しているかよく確認した上でM&Aを進めてください。
④必要書類のリスト化
M&Aの調査ごとに必要な書類をリストにまとめておくことも大事です。
調査にどんな書類が欲しいのかを取引相手の企業に分かりやすく伝える必要があります。
そのためにも、必要書類をリスト化してスピーディに相手企業の担当者の方が書類をまとめられるようにしておきましょう。
⑤資料請求
リストにまとめたら、そのリストを渡して資料を請求してください。
早ければ数日、遅くても2週間程度で書類が渡されます。
そのスピード間はどのくらいの量のデューデリジェンスの調査が行われるかで変わってくる点を押さえておきましょう。
⑥資料確認
資料が手元に届いたら、資料の確認を行います。
届いた資料に不足がないか確認し、分析するのに必要な書類がすべて届いたことが確認できたら分析を始めてください。
⑦資料分析
書類が揃い次第、資料分析を始めましょう。
資料分析は一般的に1、2週間ほどかけて行われます。
あくまでも目安であるため、資料の多さによって変動することは忘れないでください。
⑧現地調査
資料分析の際に必要があれば、現地調査を行ってください。
書類だけでは得られない情報もあるため、より情報の正確性を上げるためにも現地調査の選択肢を入れておきましょう。
ただ、M&Aを社員に先に悟られてしまうことがあるため、社員がいないタイミングで現地調査を実施すべきです。
⑨M&Aについて議論
調査内容を踏まえ、M&Aについて議論しましょう。
M&Aで抱えるリスクが大きいことが後で判明することもあります。
必要があればリスクを減らすために直接交渉を行ったり、解決策の提案を行ったりしてM&Aの実行前に微調整を行います。
デューデリジェンスのメリット・デメリット
デューデリジェンスを行う前に、そのメリット・デメリットを把握しておくことが大事です。
メリット・デメリットを知っておくと、それを踏まえた上でM&Aの目的に沿って、慎重な調査が行えるようになります。
この章ではデューデリジェンスのメリット・デメリットについて解説します。
メリット
デューデリジェンスのメリットとして以下のものがあげられます。
- 企業の情報収集ができる
- 問題点と課題を把握できる
- 売却価額が把握できる
以下で詳細を解説します。
企業の情報収集ができる
デューデリジェンスのメリットとして、企業の情報収集ができる点があげられます。
デューデリジェンスを正式に行わないと、手に入れられる相手企業の情報が制限されます。
M&Aでの失敗の不確定要素を少しでも減らすためにも、デューデリジェンスを実施することが大事です。
問題点と課題を把握できる
デューデリジェンスのメリットとして、問題点と課題を把握できる点があげられます。
デューデリジェンスでより企業内部の情報を知ることができれば、表面上の情報だけでは見つけられなかった問題点と課題が見えてきます。
より安全にM&Aを実施するためにも、相手企業の分析を徹底して行うのがおすすめです。
売却価額が把握できる
デューデリジェンスのメリットとして、売却価額が把握できる点があげられます。
専門家にM&Aを任せてしまうことも大事ですが、より具体的に企業価値を算定するならデューデリジェンスを実施するのが理想的です。
相場料金と比べてどの程度の金額になっているか比較してみてください。
デメリット
一方で、デューデリジェンスのデメリットとして以下のものがあげられます。
- 情報漏洩のリスクが生じる
- 問題が発生した場合はM&Aが不成立
以下で詳細を解説します。
情報漏洩のリスクが生じる
デューデリジェンスのデメリットとして、情報漏洩のリスクが生じる点があげられます。
デューデリジェンスの過程でどこかで情報が漏れてしまうことがあります。
そうなると大きなトラブルになってしまうため、取り扱う情報は慎重に扱ってください。
問題が発生した場合はM&Aが不成立
デューデリジェンスのデメリットとして、問題が発生した場合はM&Aが不成立が起きる可能性がある点があげられます。
先ほど触れた情報漏洩などの問題が買収側企業の過失で発生した場合、M&A自体が不成立になってしまうケースもあります。
そのことを踏まえ、丁寧にM&Aを進めてください。
デューデリジェンス実施のタイミングと期間
デューデリジェンスをいつ始めるか悩んでいる企業も少なくありません。
そういった企業に向けて、デューデリジェンス実施のタイミングと期間について解説します。
実施タイミング
デューデリジェンスを実施するタイミングは、M&Aの基本合意の締結とM&Aの最終契約の締結の間に行われます。
基本合意でお互いがM&Aにおおまかに合意した状態で、デューデリジェンスを行いたいと売却側企業に持ちかけます。
売却側企業にとってはリスクもありますが、より良好なM&Aを行う目的であることをわかった上で応じてくれることが多いです。
そのため、ある程度お互いがM&Aに前向きになったところでM&Aを持ちかけてください。
期間
デューデリジェンスの実施期間は、概ね1カ月から2カ月と言われています。
M&Aの規模の大きさや相手企業の業界・業種、事業規模などによって、調査に必要な期間は変わってきます。
しかし、デューデリジェンスを焦って進めてもどこかでミスが生じる可能性が高いです。
そのため、ある程度の期間がかかることを前提に調査を行ってください。
余裕を持った日程でM&Aを進めるためにも、準備は早めに取り掛かるのが理想的です。
デューデリジェンスを行う際の注意点
M&Aで失敗しないためにも、デューデリジェンスを行う際の注意点についても解説します。
デューデリジェンスを行う際の注意点として以下のものがあげられます。
- 費用や期間を事前に把握する
- タイミングをしっかりと見極める
- 適正範囲で実施する
- M&A仲介会社の専門家に相談する
以下で詳細を解説します。
費用や期間を事前に把握する
デューデリジェンスを行う際の注意点として、費用や期間を事前に把握する点があげられます。
費用や期間が不明確なまま」M&Aを進めると、思わぬコストや時間がかかってしまいます。
そうならないためにも、費用や期間を事前に把握しておいてください。
タイミングをしっかりと見極める
デューデリジェンスを行う際の注意点として、タイミングをしっかりと見極める点があげられます。
先ほど触れたように、M&Aを行う意思が双方である程度固まってからデューデリジェンスを進めてください。
一方的な意思で内部情報の調査をしようと思っても、内部情報は重要な機密情報に値するため、調査の許可は下りないと考えておきましょう。
適正範囲で実施する
デューデリジェンスを行う際の注意点として、適正範囲で実施する点があげられます。
企業情報の調査は無料でできるわけではありません。
一定以上のコストがかかるため、不必要な情報までかき集めようとするとM&Aの費用が高くなってしまいます。
そのため、必要な情報に絞って開示してもらってください。
M&A仲介会社の専門家に相談する
デューデリジェンスを行う際の注意点として、M&A仲介会社の専門家に相談する点があげられます。
M&A仲介会社などの専門家であれば、より目的に沿ったデューデリジェンスを行う必要がある情報を調べてくれます。
効果的に企業の情報を集められるため、基本的にM&A仲介会社などの専門家に相談してください。
デューデリジェンスは専門家に依頼しよう!
デューデリジェンスは、M&Aの際に表面上ではわからない企業の情報を調べることです。
企業価値には料金相場というものがありません。
しかし、企業情報を調べてM&Aを行うと、より適正な価格で目的に合ったM&Aが実現しやすくなります。
とはいえ、知識がないまま進めるとデューデリジェンスの効果を十分に発揮できません。
そのため、デューデリジェンスを行う際にはM&A仲介会社などの専門家に依頼してください。
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