人材紹介会社のM&Aの動向は?事例や相場・活用のメリットまで徹底解説!
人材確保する上で欠かせない人材紹介会社ですが、M&Aが活発な業界でもあります。この記事では「人材紹介業界」のM&Aの現状と動向を、過去の事例も紹介しながら解説します。人材紹介業界においてのM&Aにかかる費用や成功させるポイントも併せて確認しましょう。
目次
人材紹介会社とは?
人材紹介会社の市場規模とM&Aの動向を確認しましょう。
人材紹介業界は大企業のM&Aが積極的に行われ、業界再編が進んでいます。
求職者の就職相談だけでなく、企業側にとっても労働力確保のために重要な業界です。
人材派遣・人材紹介会社の定義
人材紹介会社および人材派遣会社はどちらも企業に労働力を斡旋する人材業界に属します。
雇用形態と労働力を提供するまでのプロセスに違いがあるため、解説します。
人材派遣会社
人材派遣では雇用元が人材派遣会社となり、クライアント企業から依頼を受けた人材派遣会社が、自社の雇用下にある労働者を派遣するサービスです。
実際の労働環境では派遣された人材はクライアント企業の指揮命令下に置かれます。
「労働者派遣事業」に分類され、事業を行うためには厚生労働大臣の許可が必要です。
人材紹介会社
人材紹介会社はクライアント企業と求職者の間に入り、雇用契約を結ぶサポートをし、クライアント企業と求職者の直接雇用契約を図ります。
雇用契約へ至った場合、成功報酬としてクライアント企業から人材紹介会社に成功報酬金などが支払われるシステムです。
正式名称は「有料職業紹介事業」といい、同じく厚生労働大臣の許可が必要です。
近年の人材紹介では、自社のデータベースに登録している求職者をクライアント企業に紹介する方法や、SNS形式で求職者がプロフィールを登録し、クライアント企業とマッチングしていく方法などシステムの多様化が進んでいます。
人材紹介と求人メディアとの違い
人材紹介会社と類似するサービスに求人メディアがありますが、最大の違いは雇用契約に至るまでの仲介サポートの有無です。
求人メディアは「募集情報等提供事業」に分類され、契約に至るまでの細かなサポートはできません。
以下のいずれかに該当する場合、有料職業紹介事業にあたるため、職業紹介事業となり、厚生労働大臣の許可が必要です。
- 提供する情報の選別・加工を提供先によって変更する
- 双方と積極的に連絡をとり、応募、採用を推し進め、面談日程の調整などを行う
- 募集者・求職者の連絡を仲介し、その内容に加工や補足を行う
市場規模
人材事業の全体の市場規模は拡大傾向にあります。
グローバル人材の需要が減少しましたが、現在は回復し、今後も人材事業の市場規模は拡大するでしょう。
人材紹介事業に限ってみれば、厚生労働省「令和2年度 職業紹介事業報告書の集計結果」にて年間売上高(手数料収入)は約5,240億円(前年度比10.8%減)で前年を下回る結果となりました。
感染症の影響によるものとされていますが、フリーランス、副業による人材事業の需要は高まることから、成長余地はまだまだ大きな業界とされています。
人材紹介会社の今後の動向
近年ではSNSの普及により、有料職業紹介事業(人材紹介)と募集情報等提供事業(求人メディア)の垣根が低くなり、企業・求職者がお互いの情報を直接把握しやすくなってきています。
今後は求人メディアが担っている役割も包括することが求められるでしょう。
フリーランスや副業の流れも大きくなっていることから、企業・求職者の双方が雇用に対するスタンスが変化しています。
激しいニーズの変化に対応した、多様なサービスの展開が求められています。
人材紹介会社のM&Aの動向
ニーズの変化に伴い、人材紹介会社のM&Aは加速する動きを見せています。
人材紹介会社を取り巻く環境の変化や、直面している問題点などに目を向けながら、M&Aの動向を解説します。
業界の再編が加速している
人材紹介会社ではニーズの多様化に対応するために以下のような課題が求められはじめています。
- 労働市場において価値の高い専門性を有した人材の集客力、紹介力の向上
- AIによる代替が難しい、キャリア形成支援などの対人支援型サービスの強化
- ITやAIを利用しての先進的サービスの提供やバックオフィス事業の向上
このようなニーズを、単独企業で対応するには膨大な時間がかかってしまいます。
M&Aのメリットをいかし、他社の経営資源を活用することで、目下の経営課題を解決するために大手企業が中小企業を積極的に買収するという、業界再編の動きが加速しています。
後継者不在の企業が多い
取り分け、中小企業では後継者問題が常態化しています。
事業からの撤退は望んでいないが、後継者がおらず、廃業に追い込まれる中小企業も少なくありません。
この問題を解決するために、M&Aによる事業承継が行われる場合もあります。
従業員の雇用を担保しながら、事業継続や事業成長にも期待できることからも、M&Aは積極的に行われる経営戦略の1つとなっています。
専門分野に強みを持つ人材紹介会社が人気
近年では、専門性の高い人材紹介会社が重宝される傾向にあります。
激化する生存競争を生き残るためにIT分野、医療分野、エンジニアなど専門分野を有している人材の価値が上昇中です。
しかし、専門分野をもった人材を大量に確保することは容易ではありません。M&Aは人材確保問題を短期間で解決するための戦略として行われる場合もあります。
人材紹介会社のM&Aの事例
ここでは過去に行われた人材紹介会社のM&A事例を紹介します。
需要が高まっている専門性の高い人材の確保や、後継者問題の解決などM&Aするに至った目的にも注目してみてください。
クラウドワークスがコデアルを子会社化
クラウドワークスは2019年9月にコデアルの全株式を取得し完全子会社化しました。
コデアルはエンジニアを中心とした人材基盤を持つダイレクトマッチングサービスを提供している企業です。
クラウドワークスはエンジニア人材と顧客基盤を獲得し、月額課金型サービスモデルを拡大することで、マッチング事業の中長期的な収益性確保・成長力強化を図りました。
日総工産がベクトル伸和を完全子会社化
2021年8月に日総工産がベクトル伸和の全株式を取得し完全子会社化した事例です。
製造業、事務系向け人材サービスの大手である日総工産が、自社工場および海外人材の紹介・派遣の基盤をもつベクトル伸和を子会社化することで事業基盤強化と事業拡大を図りました。
プログレスグループがUTグループに株式を譲渡
2021年5月、製造業向けの人材派遣事業を手掛けるプログレスグループが、製造や建設分野などの人材派遣や製造業の業務請負などを行うUTグループに、全株式を譲渡しました。
UTグループは、感染症や人口減少などの影響により、雇用ニーズの大きな変化が予想される製造業の人材派遣事業市場でシェアの拡大を図りました。
More-Selectionsがパソナグループへ株式を譲渡
2021年4月、人材派遣事業、BPOを手掛けるパソナグループに、法務分野を基盤とした人材派遣、就職支援などの運営・研修などを行うMore-Selectionsが株式を譲渡しました。
パソナグループは、グローバル化に伴い、多様化する法務ニーズに対応するために専門性の高い法務部門への人材派遣需要が高まると判断し、M&Aを行いました。
グロップがアミーゴへ事業を譲渡
2020年11月、人材派遣やラインソーシング事業を手掛けるグロップが、アレンザホールディングスの連結子会社でペット事業を行うアミーゴへ、ペットショップを譲渡しました。
アミーゴは犬猫愛護の取り組み行っており、グロップが持つ里親探しに対してストロングポイント獲得のためのM&Aです。
グロップはペットショップ事業に向けていた経営資源を、本業の人材派遣事業や他の事業に再投資する計画を立てています。
ライフ・コーポレーションが日輪に株式を譲渡
2019年7月、施設常駐警備事業を手掛けるライフ・コーポレーションが、人材派遣、紹介などの事業を行う日輪に株式譲渡を行った事例です。
ライフ・コーポレーションは経営者の高齢化により、後継者問題を抱えていましたが、この事業承継により問題解決へと至りました。日輪としては、比較的年配の求職者に対して、新たな働き先として警備事業を獲得した形です。
JapanWorkがエンジャパンに株式を譲渡
2019年7月、エンジャパンは、JapanWorkの発行済株式51%を取得し子会社化しました。
外国人向け求人一括サイトの「JapanWork」を運営するJapanWorkは、外国人向けにAIを通じての職業情報の提供や、チャット相談ツール「チャットコンシェルジュサービス」を提供しています。
エンジャパンはこのM&Aで外国人労働者事業での事業拡大、企業ブランド力の向上を図ったものとされます。
ブレイブがマイナビに株式を譲渡
2019年2月、ブレイブがマイナビに株式を譲渡しました。
ブレイブは、介護士や看護師、保育士の人材派遣業を全国に展開している企業です。医療、介護、保育業界の人材問題の解決に取り組んできました。
マイナビとしては、ブレイブをグループに加えることで、今後需要が高まる医療、介護分野においての採用力の強化および専門性の提供による拠点拡大を図ったものとされます。
人材紹介会社のM&Aを活用するメリット・デメリット
売却側企業のメリット
M&Aで売却するメリットは以下の通りになります。
売却メリット | 解説 |
---|---|
企業の存続を狙える | M&Aにより、業界内で生き残りが可能 大手グループ傘下で安定した経営 親会社の経営資本を活用し、事業成長が見込める 経営基盤を新たに得ることでの新規事業の展開 シェアの拡大が期待できる |
後継者問題の解決 | 買収側が後継者となり事業の存続 事業継承なら廃業コストが不要 |
従業員の雇用維持 | 買収側の経営により雇用維持、労働者保護につながる |
売却利益を得られる | 売却利益で新規事業や生活資金に充てられる |
個人補償から解放される | 債務も買い手に引き継がれる 個人保証や担保差し入れが解消される |
買収側企業のメリット
次にM&Aにおける買収側企業のメリットです。
メリット | 解説 |
---|---|
人材確保 | M&Aによりまとめて優秀な人材の確保が可能 専門性の高い人材を一気に確保可能 |
関連事業へのシェア拡大 | 異業種を取り込むことでの業容拡大 市場シェアの拡大 売上の拡大 |
売却側企業のデメリット
つづいて、M&Aを行うことでの売却側のデメリットをお伝えします。
- 競業防止義務を負うことになる(事業譲渡)
会社法の規定により、M&A後、売却側は競業防止義務が課せられます。
競業防止義務とは、買収側の同一区市町村および隣接区市町村で、事業譲渡した日から20年間、譲渡した事業と同一の事業を行えない義務のことを指します。
買収側との交渉で競業避止義務期間を短くしたり、エリアを狭めたりすることは可能なため、将来的に人材紹介事業を手掛ける可能性があるのならば、買収側と交渉しましょう。
買収側企業のデメリット
買収側のデメリットとしては以下のものが挙げられます。
- 事業に必要な許可の引継ぎはできない
人材紹介業をM&Aで引き継ぐ場合、事業者は有料職業紹介事業の許可が必要になります。
買収側が許可を持っていなければ、新たに許可を得る必要があります。
許可を取得している企業と事業譲渡を実施する方が、売却は比較的スムーズに進むでしょう。
買収側が許可を持っていれば新しく許可を申請する必要はないのですが、法人名称変更の届出は必要です。
人材紹介会社のM&Aの相場
人材紹介のM&Aについて紹介してきましたが、最も気になるのは費用の問題でしょう。
大まかな費用とその算出方法についてまとめたので、参考にしてください。
大まかな相場
人材紹介会社のM&Aにかかる大まかな費用を把握しておくことで、必要以上に安く買いたたかれることを防止できます。
人材紹介会社で一般的に行われるM&Aは、株式譲渡と事業譲渡です。
大まかな相場は以下のように計算されます。
- 株式譲渡の相場=時価純資産額+営業利益×2年~5年分
- 事業譲渡の相場=時価事業純資産額+事業利益×2年~5年分
業種特性や企業価値などで掛け合わせる年数は違ってきますが、一般的には、2~3年で算出されるケースが多いようです。
企業価値の算出方法
M&Aを行う上で、企業価値は資産や、将来の収益性、負債の状況を含めた企業価値評価をベースに算出されることが多くあります。企業価値評価こそが売却側と買収側の直接的な交渉材料になります。
企業価値評価の求め方には大きく以下の3種類があります。
アプローチ方法 | メリット | デメリット |
---|---|---|
インカムアプローチ
具体的な算出方法 ・DCF法 ・配当還元法 ・残余利益法 | 事業計画から将来のキャッシュフローを推定 =将来の収益力を割り出し企業価値を評価 | 事業計画作成者の主観や、 思惑が入る可能性がある |
コストアプローチ | 貸借対照表の純資産から企業価値を算出 客観性があり、計算方法も簡易 | 将来性は加味されない |
マーケットアプローチ
具体的な算定法 ・市場株価法 ・類似会社比較法 ・類似取引比較法など | 類似する上場会社の株価 M&A事例を参照して、 企業価値を評価 高い客観性と動向に基づいた 企業価値を算出 | 類似する上場企業や M&A事例がなければ使用不可
|
人材紹介会社のM&Aを成功させるポイント
人材派遣企業のM&Aを成功させるには、3つのポイントが存在します。
- 企業価値を高めておく
- 優秀な社員や派遣人員の離脱を防ぐ
- 良好な人間関係
理想のM&Aを成功させるためのポイントを押さえておきましょう。
企業価値を高めておく
M&Aを成功させるには企業価値を高めておくことが重要です。
自社の財務状況、会社の現状を細かく分析し、自社の強みとなる要素も整理しておくとよいでしょう。
売却会社の基盤価値をはじめ、専門性や知名度、事業の将来性などを考慮して買収側は評価をしています。
買収側のニーズにマッチしていれば、他社よりも高額の取引がなされることもあります。
買収側が何を求めていて、自社はマッチするだけの客観的評価指標やブランド力、事業基盤を持ち合わせているのかを分析し、企業としての独自性や価値を高めておくことがM&Aを成功させるポイントです、
優秀な社員や派遣人員の離脱を防ぐ
M&Aにより優秀な社員や派遣人員が離職しない様にするのも重要なポイントです。
人材紹介会社に求めれる紹介人員の専門性の高さや、ニーズの多様化に対応するためにもM&A後、優秀な社員や派遣人員に契約を継続をしてもらうことが必要になってきます。
買収側は人的要素も含めて、M&Aの評価対象としているケースが多くあります。M&Aを交渉することが決まった途端に人員流出が始まれば、それだけでマイナス評価です。
M&Aによる事業承継で人的資源が失われこともあり、事業計画や雇用条件を交渉し、M&A後も継続的に人的資源として活躍してもらえるような配慮が必要となるでしょう。
良好な人間関係
買収側と売却側の経営者としての企業理念などが近い場合、M&Aおよび事業統合のプロセスがうまくいく可能性が高くなっています。企業価値だけでなく、企業理念などで相互に理解を深めることが理想のM&Aを達成するポイントでもあります。
M&Aは複数の候補企業と交渉することが多くあります。企業として魅力的であることは前提ですが、迷った際には企業理念や企業文化、マインドが近しい企業の方が相性が良いと判断されることもあります。
そのため、後継者問題解消などの救済的なM&Aであっても、良好な人間関係を構築していくことが重要です。
人材紹介会社のM&Aを成功させよう
本記事で紹介したように、人材紹介会社がM&Aを行うメリットはたくさんあります。
しかし、人材紹介業界の動向をしっかりと見極め、専門的な知識やM&Aを成功させるポイントを知らなければ理想的なM&Aを行うことは難しくなっています。
M&Aでは事業拡大や売却益の獲得など買収側、売却側双方にとって大きなメリットをもたらすものです。
後継者問題の解決など、業界全体の抱える問題の解決策にもなり得ます。
近年、人材紹介会社のM&A特に活発に行われているため、企業戦略の一部として検討してみてはいかがでしょうか。
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