保険代理店におけるM&Aを徹底解説!動向や事例・メリット・留意点は?
近年、保険代理店は減少傾向にあるため、業界内でM&Aを検討している企業が増加傾向にあります。
M&Aを行うことで事業拡大や後継者確保など、さまざまなメリットが期待できます。
今回は、保険代理店のM&Aの動向や事例、メリットについて解説します。
目次
保険代理店のM&A動向と課題
最初に保険代理店のM&A動向と課題について解説します。
保険代理店の業界の特徴やM&Aの目的・動向を知ることで、自社がM&Aを行う際の参考にもなります。
M&Aを検討している場合は把握しておきましょう。
保険代理店の業界の特色とは?
保険代理店は、保険会社の保険商品を販売する代理店です。
主に、保険会社と顧客の間を仲介・代理し、サポートすることや手続きや契約のアドバイスを行ないます。
保険代理店は保険会社の保険商品のみを代理販売するという特徴があります。
そのため、保険代理店の業界は保険会社業界の動向に大きく左右されやすいです。
保険代理店のM&Aの現状と動向
保険代理店は、業界全体で人口減少に伴う顧客の減少に加えて、保険商品のネット販売・来店型保険ショップの増加によって減少傾向にあります。
そのため、保険代理店は大手保険会社への売却や中小企業・個人代理店同士のM&Aが盛んになっています。
今後の動向としても、競争力・経営基盤の強化を目的にM&Aを行う保険代理店が増加することでしょう。
保険代理店の今後の課題
保険代理店の今後の課題として、市場縮小や店舗数減少の波に抗う必要があります。
市場の動向として事業撤退を目的に大手保険会社とM&Aを行い売却するケースも増加しているため、現状のままでは競争力を高めることは厳しいでしょう。
そのため、保険代理店はM&Aによって競争力や販売力を高めていく必要があります。
保険代理店のM&Aの価格相場
保険代理店のM&Aの価格相場は、M&A案件の規模やその企業の収益性やノウハウ・販売力によって大きく異なります。
ただ、これまでの数多くのM&A事例からおおよその相場は算出させることは可能です。
ここでは、保険代理店のM&Aの価格相場について解説します。
買収相場
保険代理店のM&Aの買収相場は、中小企業の場合約4,000万円前後です。
中には、1,000万円以下や7,000万円以上の買収価格になるケースもありますが、基本的に4,000万円前後が相場になります。
大手企業の場合、約10億円前後が買収相場であり、数十億円以上の買収価格になるケースも少なくありません。
売却相場
売却相場も基本的に買収相場とほとんど変わりません。
買収相場・売却相場は、基本的にその保険代理店の純資産と2〜5年分の利益を営業利益から算出されるためです。
例えば、純資産500万円・営業利益1,000万円の会社の2年分で価格を算出すると「500万円+1,000万円×2年=2,500万円」で、売却価格は2,500万円になります。
保険代理店のM&Aのメリット・デメリット
M&Aのメリット・デメリットを理解しておくことで、これからM&Aを考えている場合は検討の際に役立てることができます。
ここでは、保険代理店のM&Aのメリット・デメリットについて解説します。
メリット
保険代理店のM&Aのメリットは、売り手側・買い手側それぞれで以下のようなものが挙げられます。
売り手側
- 売却益を獲得できる
- 事業拡大に繋がる
- 後継者不在を解消できる
- 従業員の雇用が保証される
- 個人保証から解放される
保険代理店のM&Aでは売り手側に以上のようなメリットがあります。
保険代理店業界の動向や自社の業績などをしっかり確認して慎重に進めることができれば、以上のようなメリットを得ることが可能です。
買い手側
- 競争力が強化される
- 事業拡大に繋がる
- 取引先や顧客を獲得できる
- 競合他社が減少する
- 低コストで新規事業を獲得できる
保険代理店のM&Aでは買い手側に以上のようなメリットがあります。
競争力や販売力が必要な保険代理店業界の動向を見て、シナジー効果の期待できる企業を買収することをおすすめします。
デメリット
保険代理店のM&Aのデメリットは、売り手側・買い手側それぞれで以下のようなものが挙げられます。
売り手側
- 希望の価格・条件で売却できない
- 買収先が見つからない
- 顧客の不利益に繋がることがある
- シナジー効果が期待できない
- 取引先との関係悪化
保険代理店のM&Aでは売り手側に以上のようなデメリットがあります。
M&Aで自社の売却を検討している場合は、以上のデメリットに注意して進めましょう。
買い手側
- 買収に多額の費用がかかる
- 従業員の大量離職が起きる
- 取引先や顧客との関係悪化
- 期待したシナジー効果が得られない
- 経営統合に失敗する
保険代理店のM&Aでは買い手側に以上のようなデメリットがあります。
M&Aで企業を買収する場合、多くのコストがかかるため、以上のデメリットをできるだけ防ぐことが大切です。
保険代理店のM&Aの手法
M&Aは、目的や条件によってさまざまな手法で取引が行われます。
M&Aを検討する場合は、自社はどの手法によって進めていくのかも検討することが大切なため、M&Aの手法を把握しておきましょう。
ここでは、保険代理店のM&Aの手法を主に6つ解説します。
①株式譲渡
株式譲渡とは、売り手側が自社株式を買い手側に譲渡することで自社を承継する手法です。
最も活用されているM&Aの手法の1つであり、売り手側は基本的に50〜100%の自社株式を譲渡します。
買い手側は原則として、現金による対価の支払いを行います。
②株式交換
株式交換とは、売り手側が買い手側の完全子会社になるという手法です。
組織再編の1つであり、売り手側は買い手側に自社株式を譲渡し、買い手側の株式を一部受け取ります。
この手法は基本的に買い手側が上場企業の場合に用いられる手法になります。
③合併
合併とは、複数の会社をM&Aによって1つにするために用いられる手法です。
合併には、合併する会社が全て解散し新たな会社に資産・権利を承継する「新設合併」・既存の会社に全て承継する「吸収合併」の2種類があります。
④事業譲渡
事業譲渡とは、特定の事業のみを譲渡する手法です。
株式譲渡は会社を全て譲渡しますが、事業譲渡では買い手側が赤字事業のみ避けて取引したい場合や売り手側が1部の事業のみ譲渡したい場合に用いられます。
⑤事業承継
事業承継とは、会社の経営を後継者に引き継ぐことです。
事業承継は、親族内承継・従業員承継が厳しい場合に第三者から後継者を選対するために実施される場合がほとんどです。
⑥会社分割
会社分割とは、売り手側が特定の事業のみを第三者に承継することです。
会社分割には、新設する会社に承継する「新設分割」と既存の会社に承継する「吸収分割」の2種類があります。
保険代理店のM&A・売却・買収事例
M&Aを検討する場合はこれまでに行われたM&A・売却・買収事例を参考にすることで、
自社や業界の動向も知ることができます。
ここでは、保険代理店のM&A・売却・買収事例を主に11個解説します。
①フォルテシモ×メットライフ生命保険
1つ目のM&A事例は、メットライフ生命が2019年6月にフォルテシモの全株式を取得し完全子会社化させた事例です。
メットライフ生命は日本初の外資系生命保険会社で、フォルテシモは複数社の生命保険・損害保険を取り扱う保険代理店です。
フォルテシモは、競争力が求められる業界の動向から、自社の事業拡大を目的にM&Aを行いました。
②株式会社エクサウィザーズ×アフラック生命保険株式会社
2つ目のM&A事例は、株式会社エクサウェザーズが2021年3月にアフラック生命保険株式会社との業務提携を締結した事例です。
エクサウェザーズはAIを活用したサービスの開発を通して社会的課題の解決を行う企業で、アフラック生命保険はがん保険・医療保険などの販売を行う保険会社です。
この業務提携は、アフラックの保険領域の豊富なデータや顧客基盤などの資産と、エクサウェザーズのDX・AIノウハウを相互活用することを目的に行われました。
③NHSインシュアランスグループ×朝日生命
3つ目のM&A事例は、朝日生命が2021年1月にNHSインシュアランスグループの全株式を取得し完全子会社化させた事例です。
朝日生命はインターネットでさまざまな医療保険を販売している保険会社で、NHSインシュアランスグループは保険代理店である株式会社NHS・株式会社創企社・株式会社FEA・ライフナビパートナーズ株式会社の4社を傘下に持つ持株会社です。
朝日生命は、withコロナ・afterコロナに対応した営業スタイルの構築を目的に、非対面でのオンライン営業ノウハウを持つNHSインシュアランスグループを買収しました。
④アルファコンサルティング×第一生命
4つ目のM&A事例は、第一生命が2018年4月にアルファコンサルティングの全株式を取得し完全子会社化させた事例です。
第一生命は大手保険会社の1つで、アルファコンサルティングは複数の保険会社の保険商品の販売を行う保険代理店を展開しています。
第一生命は、「複数社の保険商品と比較した上で契約したい」と考える顧客ニーズに対応するために、アルファコンサルティングとのM&Aを行いました。
⑤信和実業×トータル保険サービス
5つ目のM&A事例は、信和実績が2021年1月にトータル保険サービスと事業譲渡契約を締結した事例です。
不動産事業をメインに展開する信和実績は、自社の保有していた保険代理店事業を総合保険代理店であるトータル保険サービスに売却しました。
信和実績はクリーニング事業・レンタル事業などを展開している白洋舍の子会社であり、グループ全体の業務効率化を目的に保険代理店事業を売却しました。
⑥日本生命保険×ほけんの110番
6つ目のM&A事例は、日本生命保険が2017年3月にほけんの110番の全株式を取得し完全子会社化させた事例です。
日本生命保険は、複数社の保険商品を販売する保険代理店を全国的に展開するほけんの110番を買収することで、顧客ニーズへの対応を目指しました。
ほけんの110番の動向は、M&Aによって事業資金を獲得したため、保険代理店事業の拡大・成長を進めていきました。
⑦朝日生命×NHSIG社
7つ目のM&A事例は、朝日生命が2021年1月にNHSIG社の全株式を取得し完全子会社化させた事例です。
朝日生命は、withコロナ・afterコロナに対応した販売力の獲得を目的に、オンライン営業ノウハウ・ビジネスモデルを持つNHSインシュアランスグループとのM&Aを実施し買収しました。
このM&A事例のように、保険会社と保険代理店がM&Aを行うケースは増加傾向にあります。
⑧幸楽苑ホールディングス×ヒューリック保険サービス
8つ目のM&A事例は、2018年11月に幸楽苑ホールディングスがヒューリック保険サービスに子会社のデン・ホケンの保険代理店事業を譲渡した事例です。
幸楽苑ホールディングスは主に飲食店の運営・管理を行っており、グループの事業選択・資源の集中を検討していました。
そこで保険代理店事業を行うヒューリック保険サービスに対して事業譲渡を行いました。
このM&Aの動向として、幸楽苑ホールディングスが競争力強化・業務効率化を進め、ヒューリック保険サービスは事業拡大を進めていきました。
⑨エイチ・エスライフ少額短期保険×フジトミ
9つ目の事例は、フジトミが2017年7月にエイチ・エスライフ少額短期保険の株式を取得し子会社化させた事例です。
フジトミは証券会社であり、小林洋行の子会社でもあるため、エイチ・エスライフは小林洋行の孫会社になります。
フジトミは、金融商品販売に加えて複数社の保険商品を販売する保険代理店を運営しています。
そのため、競争力が必要な保険代理業界の動向を見て、エイチ・エスライフの保険代理店事業を買収しました。
⑩東海東京フィナンシャル・ホールディングス×ETERNAL
10個目のM&A事例は、東海東京フィナンシャル・ホールディングスが2017年3月にETERNALの全株式を取得し完全子会社化させた事例です。
東海東京フィナンシャル・ホールディングスは複数の証券会社を傘下に持つ持株会社で、ETERNALは保険代理店を全国的展開しています。
このM&Aによって、東海東京フィナンシャル・ホールディングスはETERNALの顧客層である若年層との接点を強化し、ETERNALは東海・関東圏の経営基盤を図れました。
⑪ファイナンシャルジャパン×新生銀行
11個目のM&A事例は、新生銀行が2019年5月にファイナンシャルジャパンの全株式を取得し完全子会社化させた事例です。
新生銀行はSBIホールディングス傘下の普通銀行で、ファイナンシャルジャパンは複数社の保険商品を訪問販売している保険代理店です。
このM&Aでは、新生銀行は個人向け保険ビジネスの強化、ファイナンシャルジャパンは新生銀行が持つ資源やブランド力を活用した金融コンサルティング事業の展開をしました。
保険代理店でM&Aを成功させるポイント
M&Aを成功させられれば事業拡大や競争力の強化などさまざまなメリットが得られます。
そのため、M&Aを検討している場合M&Aを成功させるポイントを把握しておくことが大切です。
ここでは、保険代理店でM&Aを成功させるポイントについて解説します。
M&Aの目的を明確にする
1つ目のM&Aを成功させるポイントは、M&Aの目的を明確にさせることです。
M&Aで期待できるシナジー効果や経営資源・ノウハウの獲得などを獲得するためには、M&Aの目的を明確にして戦略やプランを立案する必要があります。
さらに、M&Aは業界の動向に左右されやすいため、それらも踏まえて検討しましょう。
シナジー効果が期待できる企業に売却する
M&Aは、シナジー効果が期待できる企業に売却しましょう。
M&Aは手段であり目的は事業拡大や経営資源の獲得などのシナジー効果を得ることです。
その目的達成できる企業に売却しなければM&Aを成功させることは難しくなるため、M&Aの企業選定は成功を左右させる要因になります。
税金対策をしっかりと行う
M&Aは取引の中で株式や現金が伴うため、そこに税金が課せられます。
そのため、税金対策をしっかりと行わなければM&Aで得た利益の多くを税金として支払わなければなりません。
ただ、のれん償却して売却益を相殺や株式譲渡でのM&Aにするなどの方法で、税金を抑えられます。
相場を把握する
自社や業界の売却相場を把握しておくことも大切です。
M&Aでは、自社の評価・価格算出や交渉・デューデリジェンスによる買収価格の提示が行われます。
相場を把握していない場合、買い手が見つからなかったり交渉が破断する可能性があります。
さらに、相場よりも低い価格での取引してしまうリスクもあるため、相場は把握しておきましょう。
実績や経験が豊富なM&A仲介会社を選ぶ
M&Aには、専門知識や業務が必要になるため、実績や経験が豊富なM&A仲介会社を選ぶことが大切です。
優秀なM&A仲介会社であれば、自社に適したM&A案件の獲得・戦略の立案をサポートしてくれます。
自社の業界に詳しいM&A仲介会社であれば、M&Aはさらに成功させやすくなります。
保険代理店でM&Aを行う場合の注意点
M&Aには、さまざまな手続きや業務があり、しっかりと検討した上で進めていかなければ失敗してしまうリスクがあります。
M&Aに失敗してしまうと大きな損失を発生させてしまうため、十分に注意が必要です。
ここでは、保険代理店でM&Aを行う場合の注意点について解説します。
デューデリジェンスは入念に行う
デューデリジェンスとは、買い手側が売り手側の財務・税務・事業内容・雇用・債務などを調査することで、M&A取引には欠かせない業務の1つです。
このプロセスはM&Aにおいて非常に重要であり、デューデリジェンスの結果を元に契約内容や買収価格の調整も行われます。
デューデリジェンスを怠ってしまうと、売り手側の潜在債務を見落としたまま買収してしまうなどのリスクがあるため、十分に注意しましょう。
情報漏洩には十分に注意する
M&Aを検討していることが従業員・取引先などにバレてしまうと、不安感や不信感から関係性が悪化するリスクがあります。
その結果、従業員の離職・取引先との契約解除などに繋がり企業価値の低下からM&Aが失敗するリスクが高まります。
そのため、M&Aに関する情報漏洩には十分に注意しましょう。
適正価格で取引を行う
M&Aには適正価格が業界ごとにあり、その適正価格でM&A取引を行いましょう。
適正価格での取引ができなければ、交渉が成立しなかったりどちらかに不利益が発生してしまいます。
そのため、M&Aを行う際は自社の適正価格の算出に注意して行うことをおすすめします。
保険代理店のM&A相談は専門家へ!
保険代理店の業界はM&Aを積極的に行うケースが増加しており、今後も盛んになることが予想されています。
ただ、M&Aは慎重に進めていかなければ失敗してしまうリスクが高くなるため、M&Aの専門家に相談することをおすすめします。
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