倉庫業界のM&A事情をチェック!事例や売却・買収相場・メリット・注意点は?

倉庫業界のM&Aは、取引件数・金額ともに過去10年で最高値を記録しており、今後も事業譲渡や買収の動きが活発化することが予想されます。本記事では、倉庫業界・運送業界のM&A事情や事例相場について解説します。

目次

  1. 倉庫業界とは?
  2. 倉庫業界のM&Aの動向
  3. 倉庫業界のM&Aの事例
  4. 倉庫業界でM&Aを活用するメリット・デメリット
  5. 倉庫業界のM&A・売却・買収相場と費用
  6. 倉庫業界のM&Aに関する注意点
  7. 倉庫業界でのM&Aを成功させよう

倉庫業界とは?

倉庫業界は運送業界と並び、物流を支える分野の一つです。

主な業務内容には、場所の貸し借りにとどまらず、商品の維持管理や発送代行等も挙げられます。

また流通加工や輸配送なども含めて包括的に行っている事業者は、倉庫業ではなく物流業に分類されます。

倉庫業界の定義

倉庫業界とは、寄託された荷物の維持管理に必要な設備を有する製品や原料のほか、冷蔵・冷凍品など国民生活において欠かせない物品を大量かつ安全に保存する事業を指します。

倉庫業界の現状

経済予測プラットフォームゼノブレインの調査分析によると、倉庫業界での現在の国内市場規模は3兆6,499億円であり、今後5年の成長率は+0.94%を見込んでいます。

市場シェア動向では、以下の企業が主要項目を占めています。

ランキング

企業名

国内マーケットシェア

1位

三菱倉庫

5.22%

2位

郵船ロジスティクス

3.99%

3位

キューソー物流システム

2.96%

4位

上組

2.86%

5位

住友倉庫

2.42%

6位

三井倉庫

1.40%

7位

日本トランスシティ

1.33%

出典:倉庫業界のAIによる推定マーケットシェアランキング(ゼノブレイン)

倉庫業界のM&Aの動向

倉庫業界のM&A動向としては、以下のような特徴が挙げられます。

  • 大手物流会社・倉庫会社への事業譲渡が盛ん
  • 中小企業対象のM&Aの増加
  • 国際的ネットワークの拡充が進む

上記の動向について、以下より解説します。

大手物流会社・倉庫会社への事業譲渡が盛ん

倉庫業界のM&A動向として、大手物流会社への事業譲渡が盛んであることが挙げられます。

例としては、以下の企業が挙げられます。

譲渡元

譲渡先

丸久運輸

セイノーホールディングス

丸協グループ

三井倉庫

新生倉庫・御幸倉庫

トナミホールディングス

東洋運輸倉庫

SBSホールディングス

若洲

住友倉庫

倉庫・物流業界におけるM&A市場は、他業種と比べ海外資本との提携が多いことが特徴の一つに挙げられます。

動向として、国内産業と海外資本が連携する事で事業展開の方式や働き方を変えている企業も併せて多く見られます。

中小企業対象のM&Aの増加

中小企業対象のM&A取引も増加しています。

国内の倉庫業は6557社が競合しており、そのうちの91%が中小規模の企業です。

M&A市場や相場の活性化もあり、倉庫の大型化や高機能化、DX(デジタルトランスフォーメーション)による業務の効率化などを目的として、多くの企業において、事業買収などのM&A取引が検討されています。

国際的ネットワークの拡充が進む

多くの倉庫業では、DHLやFedex、プロロジスなどの国際的な物流業界との連携やネットワークの拡充が進んでいます。

特に物流拠点を同市区町村内に複数保有する事例や、大規模拠点を郊外へ建て成功する事例もあります。

海外企業と連携するケースとしては、ZOZOベースなどの大手企業が挙げられます。

倉庫業界のM&Aの事例

ここからは、倉庫業界のM&A成功事例について解説します。

本記事で取り上げるM&A成功事例は、以下の7社です。

  • セイノーホールディングスによる丸久運輸の完全子会社化
  • 日本通運によるアメリカの倉庫事業会社の子会社化
  • 三井倉庫による丸協グループの子会社化
  • トナミホールディングスによる新生倉庫・御幸倉庫の子会社化
  • 三井倉庫ホールディングスが子会社のPrime Cargoグループの株式をDSV Panalpinaグループに譲渡
  • SBSホールディングスによる東洋運輸倉庫の子会社化
  • 住友倉庫による若州の子会社化

セイノーホールディングスによる丸久運輸の完全子会社化

2021年8月、岐阜県大垣市に拠点を置くセイノーホールディングスは、阪和地域を中心に展開する丸久運輸をM&A取引での完全子会社化に成功しました。

阪和地区の食品輸送会社を新たに拠点として取り入れたことで、首都圏・近畿圏・名古屋圏の全温度帯における輸送ネットワークが強化されています。

これによる、社内の中期経営計画の達成を見込んでいます。

日本通運によるアメリカの倉庫事業会社の子会社化

2020年9月、米国日本通運はアメリカの倉庫会社MD Express, LLCの完全子会社化に成功しました。

MD社は、医薬品物流産業を展開するアメリカインディアナ州に本拠地を置く会社です。

双方の企業の異なる顧客層を一体化させ販路を統合することで、より高いシナジー効果の創生を見込んでいます。

三井倉庫による丸協グループの子会社化

2015年11月、大阪府を中心にトラック倉庫業を営む丸協グループを総額100億円での買収に成功しました。

丸協グループの買収対象6社の総売り上げは約250億円であり、三井倉庫が同規模のトラック事業者を買収するのは本事例が初です。

トナミホールディングスによる新生倉庫・御幸倉庫の子会社化

2020年7月、トナミホールディングスは広島市南区に拠点を置く新生倉庫と愛知県春日井市に拠点を置く御幸倉庫の買収に成功しました。

トナミホールディングスは、富山県高岡市に本拠地を置く物流業者です。

一連のM&A取引により、業容及び事業規模の拡大を見込んでいます。

三井倉庫ホールディングスが子会社のPrime Cargoグループの株式をDSV Panalpinaグループに譲渡

2020年10月、三井ホールディングスは同年12月末を目処に子会社であるプライムカーゴグループの株式をDSV Panalpinaに全株式譲渡することを発表しています。

三井HDは、アジア物流拡大のため、2015年プライムカーゴグループを買収していましたが、経営資源をコア資源へ注力させる狙いから手放すことを決定しています。

SBSホールディングスによる東洋運輸倉庫の子会社化

2021年1月、総合物流事業や物流施設等の不動産賃貸を手掛けるSBSホールディングスは、東京臨海部を中心に通関・倉庫業を運用する東洋運輸倉庫の株式譲渡による取得に成功しました。

両者の物流インフラや得られたノウハウを共有することで、さらなるポテンシャルの発揮を目指しています。

譲渡金額は72億円でした。

住友倉庫による若州の子会社化

2017年7月、住友倉庫は東京都江東区に拠点を置く倉庫業者若洲の全株式の取得に成功しました。

若洲は、臨海区に倉庫2棟を保有しており、物流サービスを中心としたアウトソーシング業務を引き受けています。

倉庫業界でM&Aを活用するメリット・デメリット

ここからは、倉庫業界の経営でM&A取引・M&Aプラットフォームを活用するメリットやデメリットを解説します。

売却側企業のメリット

倉庫事業の売却で得られるメリットは、以下の通りです。

  • 譲渡益を獲得できる
  • コア事業へ集中し、運営リスクを軽減できる
  • 業界内での競争力が向上する

売却によって得られるメリットは、譲渡益の獲得のみではありません。

必要無い事業を他者へ引き渡すことで、注力したい分野の事業へ多くのリソースを割くことができるため、M&A取引を行わなかった場合と比べて、運営のリスクを軽減できます。

周辺動向と歩調を合わせ、注力すべき事業へ多くのリソースを割けるようになるため、必然的に業界内での人や競争力も向上する傾向にあります。

買収側企業のメリット

倉庫事業の買収で得られるメリットは、以下の通りです。

  • 事業範囲の拡大
  • 人材の獲得
  • リソース統合による設備の効率的活用

動向を考慮したM&A取引によって、倉庫事業を買収した場合、相手企業の設備やノウハウを有効活用することで、自社の事業範囲を拡大させることができます。

単にエリアを拡大するだけでなく、他社がその場所で培ってきた物流インフラや人脈などのネットワークもフル活用できるため、より高いシナジー効果を発揮できるでしょう。

売却側企業のデメリット

現在の総合事業を売却することにより、コア事業へより注力できるようになります。

一方で、該当の事業は売却により損失してしまいます。またそれらに関連する人材や顧客も流出してしまうため、注意が必要です。

またあまりに突然にM&Aを行ってしまうと、他社へ異動する社員と繋がりがあった、既存社員の精神状態にも影響が及ぶ可能性があります。

インフレの規模の企業においても、全ての社員が許容できる範囲でM&A取引や、それに伴う情報公開を行うべきです。

買収側企業のデメリット

倉庫事業を買収する企業のデメリットとしては、買収後の経営統合に失敗するリスクがあげられます。

バリュエーション等を適切に行い、M&A取引を成功させたとしても、デューテリジェンスや事前の交渉等のやり取りが不足していると、双方の企業文化を完全に把握しきれておらず、異動となった社員が譲渡先企業の方針に納得できないケースがあります。

手続きや取引などの契約と周知のタイミングを、動向を考慮しながら調整しなければ、社員にストレスがかかってしまうことも考えられるため、信頼できる専門家とともにより安全なM&Aスキームを立案すべきです。

倉庫業界のM&A・売却・買収相場と費用

ここからは、倉庫業界におけるM&A取引の相場動向や費用を解説します。

大まかな相場

倉庫業界のM&A取引相場や動向に明確な基準はありません。

これは中小規模のものから大規模なものまで、様々な事業者が存在するためです。

M&A取引の中で頻出する取引金額は、1億円から2億円の間であり、大まかな相場も同等の金額です。

2022年の倉庫業を含む運送業界においては、M&Aの件数・取引総額ともに過去10年で最高を更新しています。

コロナの不況から一転し、運送業・倉庫業共に需要増加が相場のピークを迎え、トップ3では1000億円越えの大型案件となっています。

仲介会社への手数料

M&A取引の仲介手数料には、相談料・契約金・中間報酬・成功報酬等数回に分けて発生する会社や、取引が成功するまで一切の費用がかからない「完全成功報酬型」を採用している会社があります。

サービス内容に大きく差は生じませんが、より確実に、少ないリスクで取引を進めたい場合は、後者の完全成功報酬型を採用したM&A仲介機関のご利用がおすすめです。

全国4箇所に拠点を置くM&A総合研究所では、完全成功報酬型によるM&A取引をサポートしています。

取引の進行について相談したいことがございましたら、是非当社までご連絡くださいませ。

倉庫業界のM&Aに関する注意点

倉庫業界のM&A取引に関する注意点としては、以下の項目が挙げられます。

  • M&Aを実施するタイミング
  • 情報漏洩をしない
  • 身長に売却先を選定する

上記の注意点について、以下より解説します。

M&Aを実施するタイミング

M&Aを実施するタイミング、またそれらに関する事項を周知するタイミングを間違えてしまうと、想定外の損失を生んでしまったり、突然従業員が離職を申し出るトラブルが発生したりする場合もあります。

このような失敗事例を事前に把握することは難しいケースが多く、取引実績の豊富なM&A仲介の専門家との連携が推奨されます。

情報漏洩をしない

M&A取引を行う際は、関連する情報管理を徹底しましょう。

周辺動向と歩調を合わせ、自社役員・自社の従業員、相手企業の役員・従業員の双方から同意を得られるよう、安全に取引を進めていきましょう。

慎重に売却先を選定する

売却先の選定は慎重に行うべきです。

相場を考慮したデューデリジェンス(事前調査)により企業情報を把握することは可能ですが、企業文化や企業体質までは把握しきれないことがあります。

売却先の企業が多少遠い場合でも、現地に赴き、事業へ携わる人と一定の関わりを持っておくことが大切です。

倉庫業界でのM&Aを成功させよう

ここまで倉庫業界のM&A取引の相場や取引事例、M&A取引を行うことのメリットやデメリットについて解説しました。

コロナ不況の一転により、倉庫業界のM&Aは、取引件数・金額ともに急増しています。

また、時間外労働に関する規制を設けた働き方改革関連法が2024年4月1日から施行されることにより、M&A取引を活用した事業範囲の拡大や、シナジー効果の獲得の流れは、今後より一層盛んになることが予想されます。

企業統合や事業買収・事業売却等のM&A取引についての関心がありましたら、是非M&A総合研究所までご連絡くださいませ。

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