医療法人のM&Aとは?業界動向や事例・価格相場・メリットも調査!
近年は多くの医療法人で後継者不在や経営者の高齢化などの動向が発生し、問題解決のためにM&Aで事業承継を行う医療法人が増加しています。本記事では医療法人のM&Aを詳しく解説し、業界動向や事例・価格相場やメリットも調査します。
目次
医療法人のM&A動向と今後の課題
効率的な事業展開を図るためにM&Aを行う動向の医療法人も多く見受けられますが、実際の医療法人のM&Aの動向はどのように推移しているのでしょうか。
では医療法人のM&A動向と今後の課題を解説します。
医療法人の業界の特性
負傷したけが人や病人に対して何らかの治療や、入院させて治療をする施設を医療法人といいます。
医療法人は医師が担当する患者数や、所有するベッド数によって病院と診療所とに分類されます。
また医療法人は株式を一切発行しない点が他の法人との違いで、利益に関する配当などは一切発生しません。
医療法人のM&Aの現状と動向
現在医療法人を取り巻く環境は厳しい状況にあり、医療コストの増加や人件費の高騰、診療報酬の引き下げによって廃院するケースも多く見受けられます。
中には廃院を避けるため積極的にM&Aを行い、大手グループに事業を売却する医療法人も多いです。
特に近年の動向として医師不足や施設老朽化などの負担を解消できず、患者のニーズの動向に応えるため社団法人に売却する医療法人も増加しています。
また近年の医療法人業界では経営者の高齢化の動向が急速に進んでおり、有力な後継者を擁立できずにM&Aによる売却を行う事例も多いです。
医療法人の今後の課題
前述のように近年は医療法人業界においても経営者の高齢化が急速に進んでおり、早急的な後継者の擁立が課題の1つとして挙げられます。
また医療法人業界では医療法によって各病床の有資格者の配置基準が定められており、制度を満たすための人員確保も重大な課題です。
診療報酬に関しても有資格者の配置状況により配分が決定されるので、経営状況を好転させるためにも優秀な人材確保は欠かせません。
医療法人のM&A手順
医療法人業界では事業継続や収益確保のため積極的なM&Aによる売却や買収が行われています。
では医療法人のM&A手順を詳しく解説します。
①M&Aの選定・交渉
医療法人のM&Aでは、最初にM&Aの選定や交渉を進めます。
取引相手企業の選定時や交渉には専門的な知識が必要なので、M&A仲介会社などへの依頼がおすすめです。
仲介会社への依頼が完了したら綿密な打ち合わせを行い、自社の取引条件を伝えます。
その後仲介会社が絞り込んだリストに従い、取引成立後のシナジー効果などを検討しながら相手先を見つけて交渉を開始します。
②基本合意の締結
取引相手が決定し、トップ面談や交渉が開始した時点でお互いに基本合意書を締結します。
基本合意の締結は完全な契約成立ではなく、取引に関するお互いの意志を統一するための仮契約です。
基本合意書では取引金額や取引完了日などの細かな詳細について記載します。
③デュ―デリジェンス
基本合意が締結されれば、次に相手企業を財務的な側面から監査するデュ―デリジェンスを行います。
デュ―デリジェンスを行わなければ、取引完了後に帳簿外の債務である簿外債務や突発債務が発生する可能性が高くなり、支払い義務が発生します。
このような事態を防ぎ、健全な取引を行うのがデュ―デリジェンスの目的です。
一般的にデュ―デリジェンスは、買い手が売り手側企業に関して知りたい事項を訪ねる形式で行われます。
④最終条件交渉
デュ―デリジェンス完了後は、基本合意書で締結した内容に沿って最終条件の交渉を行います。
交渉時には取引金額や事業譲渡の範囲を決定し、デュ―デリジェンスの結果も検討しながら最終条件の交渉を進めます。
最終条件交渉時には特に重要な従業員の処遇などの話し合いも行うので、M&A後の従業員の待遇が少しでも良くなるように交渉を進めるのも重要なポイントです。
⑤最終契約締結
最終条件交渉が完了すれば、実際の契約を締結する最終契約締結を行います。
最終契約で決定した事項は、基本合意とは異なり法的な拘束力を持つので契約内容の変更はできません。
したがって一度最終契約を締結すれば、正式に取引が完了するので慎重に手続きを進めましょう。
この時点でM&Aを行ってもシナジー効果が得られないと判断すれば、交渉そのものを破棄するのも1つの手段です。
⑥クロージング
最終契約が締結され、取引が正式に完了すれば契約内容を実行するクロージングに進みます。
クロージングでは売却金額の納付、従業員の移動などM&A完了後の実質的な操業に向けてさまざまな準備を行います。
クロージングでは多額の資金の流動や人材の移動が行われ、混乱が予測されるので事前に契約書などを作成して取引に臨みましょう。
医療法人のM&Aのメリットとデメリット
医療法人のM&Aを行えば、買い手・売り手側双方ともにメリットやデメリットが発生します。
では医療法人のM&Aのメリットとデメリットを買い手側・売り手側双方の立場から解説します。
メリット
医療法人のM&Aでは、売り手・買い手側双方ともにいくつかのメリットを得ることができます。
では医療法人業界のM&Aにおける売り手・買い手側双方のメリットを解説します。
売り手側
医療法人業界のM&Aで、売り手側が得られるメリットを下記に表記します。
・スタッフの雇用を確保できる
スタッフの雇用を確保できる点も、医療法人のM&Aで売り手側が得られるメリットの1つです。
経営不振に陥って廃院すれば、その動向に伴ってスタッフも失業しますが、事前にM&Aで他社に事業を売却すればスタッフもそのまま引き継がれる可能性が高くなります。
・廃院を回避できる
医療法人業界でM&Aによる売却を行えば、廃院を回避できるのも売り手側のメリットです。
前述のように近年は医療法人業界においても、経営者の高齢化や後継者不在により廃院するケースも少なくありません。
そこでM&Aを行って事前に他社に事業を売却すれば、廃院を回避して円滑に事業を継続できます。
買い手側
医療法人業界のM&Aでは、売り手側同様に買い手側も数点のメリットを得られます。
では医療法人のM&Aで買い手側が得られるメリットを下記に表記します。
・優秀な人材を確保できる
医療法人業界でM&Aを行えば、優秀な人材を確保できる点が買い手側のメリットです。
M&Aで既存の事業を買収するのではなく、新規事業を立ち上げる際には多くのスタッフを雇用して教育・指導しなければいけません。
一方でM&Aで既存の事業を買収すれば、業務になれた従業員もそのまま雇用されるのもメリットです。
・効率的な事業シェアの拡大
効率的に事業シェアを拡大できるのも、医療法人業界でM&Aを行う際の買い手側のメリットです。
新規事業を立ち上げ、未開拓エリアなどに医療法人を展開する場合には、複雑な手続きや設備投資や人材確保に大変な手間がかかってしまいます。
そのような状態で新規医療法人を立ち上げても、競合他社との競争は困難です。
一方でM&Aにより既存の医療法人を買収すれば、さまざまな手間を省けるうえに事業シェアを拡大できます。
デメリット
医療法人のM&Aではメリット同様に、いくつかのデメリットも発生します。
では医療法人のM&Aでの売り手・買い手側双方のデメリットを紹介します。
売り手側
医療法人のM&Aにおける売り手側のデメリットとして挙げられるのが、買い手が見つからない場合がある点です。
医療法人業界のM&Aも他のM&A同様にお売り手・買い手側双方の条件が合わなければ取引が成立しません。
そして希望通りの条件を提示してくれる取引相手が見つからず、M&Aを諦めて廃業するケースも少なくありません。
このような事態を防いでスムーズな買収を進めるためにも、買収により買い手が得られるシナジー効果などを明確にして取引に臨みましょう。
買い手側
買い手側スタッフのモチベーションが低下する可能性がある点も、医療法人のM&Aを行う際の買い手側のデメリットです。
M&Aが成立すれば2つの医療法人が買収により1つに統合されるので、今までとは異なる人間関係内で業務を行うケースも多く見受けられます。
買い手側のスタッフの中には新しい環境に馴染めず、モチベーションが低下する場合も多いです。
中には新しい人間関係に馴染めずに離職するケースもあるので、M&A後のスタッフのフォローも重要なポイントといえます。
医療法人のM&Aの売却・買収相場
医療法人業界では後継者不足の解消や経営状況改善のため、積極的にM&Aを行う企業も多く見受けられます。
では実際の医療法人のM&Aの売却・買収相場を紹介します。
売却相場
医療法人のM&Aの売却相場は、時価純資産に営業利益を加算して算出された数値に3~5を掛けた企業価値評価を行う方法がほとんどです。
下記に企業価値評価法の簡単な計算式と事例を紹介するので参考にして下さい。
・企業価値評価=時価純資産+営業利益×3~5
例:時価純資産5,000万円、営業利益3,000万円の場合
・企業価値評価=5,000万円+3,000万円×3~5=2億4,000万円~4億円
企業価値評価を算出する際には、時価資産から時価負債を差し引いた数値が時価純資産として算出されて計算式に利用されます。
買収相場
医療法人業界でのM&Aの買収相場は、買収により発生しかねないリスクなどを考慮し、そのうえで将来的に算出可能な利益を予測して買収額を決定するDCF法が多く利用されています。
DCF法を活用するためにはM&Aに関する専門的な知識が必要なので、仲介会社などに手続き・交渉を依頼するのも有効な手段です。
DCF法は株主や債権者への買収の説明が必要な、大企業や上場企業のM&Aのシーンで広く利用されています。
医療法人のM&A事例
近年は多くの医療法人が積極的にM&Aを行い、事業再編や効率的な事業承継を手掛けていますが、どのようなM&Aが行われているのでしょうか。
では実際に行われた医療法人業界におけるM&A事例を紹介します。
①沖縄徳洲会と木下の吸収合併
2019年12月にはクリニックや病院事業を手掛ける沖縄徳洲会が、同じく病院事業を手掛ける社会医療法人木下を吸収合併しました。
このM&Aは沖縄徳洲会が経営合理化のために行った事例です。
②啓仁会と秀島病院の吸収合併
2008年1月には主に病院事業を手掛ける啓仁会が、秀島病院を吸収合併しました。
このM&Aは秀島病院は事業の再編、啓仁会は事業シェアの拡大のために行った事例です。
③東芝による緑野会への譲渡
2018年3月に東芝は、自社運営の東芝病院の事業を医療社団法人緑会に譲渡しました。
このM&Aは東芝は業績回復、緑野会は医療品質向上のために行った事例です。
④NTT東日本による東北医療薬科大学への譲渡
2015年9月にNTT東日本は、自社経営のNTT東北東日本東北病院の事業を東北医療薬科大学に事業譲渡しました。
このM&AはNTT日本は医療事業の効率化、東北医療薬科大学は更なる医療提供を目的として行われた事例です。
⑤翔洋会からときわ会への事業譲渡
2019年8月には主に病院やクリニック事業を展開していた翔洋会が、主に介護老人保健施設などを運営するときわ会に医療・介護事業を譲渡しました。
このM&Aは翔洋会は負債からの脱却、ときわ会は事業シェア拡大のために行った事例です。
⑥博洋会から竜山会への事業譲渡
2021年8月には主に病院やクリニック事業を手掛ける博洋会が、石川県金沢市の藤井病院を同業種の竜山会に事業譲渡しました。
藤井病院は診療報酬の不正請求や夜勤時の人員配置の虚偽が判明し、業務停止命令を受けていましたがこのM&Aにより事業継続が可能になりました。
このM&Aは博洋会が事業再編するために手掛けた事例です。
医療法人のM&Aの注意点
医療法人でM&Aを行えば、効率的な事業承継や事業再編が展開されますが、成功させるためにはいくつかの注意点に留意しなければいけません。
そこでここからは、医療法人のM&Aの注意点を紹介します。
事前の準備をしっかりと行う
医療法人のM&Aを行う際は、事前の準備をしっかり行うのも注意点の1つです。
医療法人のM&Aでは一般企業のM&Aよりも複雑な手続きが多く、資料作成や手続きに大変な時間がかかってしまいます。
M&Aの取引の中には手続きや交渉に時間がかかりすぎてしまい、交渉が決裂するケースも少なくありません。
このような事態を防いでスムーズに取引を進めるためにも、必要書類作成や手続きは事前に行いましょう。
契約内容をしっかりと確認する
医療法人のM&Aを成功させるためにも、契約内容をしっかり確認するのも注意点の1つです。
特に契約内容や買収金額などの事項をきちんと確認しなければ、取引完了後のトラブルにもなりかねません。
後々のトラブルを防ぐためにも、事業権や金額などに関する事項はしっかり確認しましょう。
デュ―デリジェンスは必ず行う
医療法人のM&A時には、デュ―デリジェンスも必ず実施しましょう。
取引時にデュ―デリジェンスを行って売り手企業の財務状況を監査しなければ、取引完了後に簿外債務や突発債務の支払義務が発生する可能性もあります。
このような事態を防いで公正な取引を進めるためにも、事前のデュ―デリジェンスを徹底しましょう。
M&Aの目的を明確にする
M&Aの目的を明確にするのも、医療法人でM&Aを行う際の注意点の1つです。
M&Aを行う目的を明確にしなければ自社に必要な事項を明確にできず、最適な取引相手を見つけることもできません。
一方で事前にM&Aの目的を明確にすれば、自社に必要な事項も明確になりその事項を満たせる取引相手を見つけることができるでしょう。
M&Aの専門家に相談する
医療法人のM&Aを行う際には、M&Aの専門家に相談するのも注意点の1つです。
医療法人のM&Aには税務や財務、法務に関する専門的な知識が必要で、自社のみで対応すれば大変な手間と時間がかかります。
そこでM&Aの実績が豊富な専門家に相談すれば、今までの経験や豊富な知識を活かして効率的に取引を進めてくれるでしょう。
医療法人のM&Aは専門家に相談してみよう
近年は多くの医療法人が積極的なM&Aを展開し、事業再編や事業承継を図っています。
しかし前述のようにM&Aには複雑な手続きが多く、法務や税務、財務に関する専門的な知識も欠かせません。
そこでM&Aに関する豊富な知識と実績を持った仲介会社などの専門家に相談すれば、スムーズに取引を進めてくれるので利用を検討してください。
またM&Aでも効率的に医療法人の事業引継ぎや買収が可能ですが、さらにスムーズな引継ぎや買収を行うのであれば事業承継がおすすめです。
事業承継を活用すれば、自社親族内の後継者を擁立できれば簡単に手続きが完了します。
さらに親族や従業員内に後継者がいなくても、第三者企業から最適な後継者の擁立ができるのも事業承継のメリットです。
特に近年は事業承継に特化している仲介会社も多いので、一度利用を検討してみてはいかがでしょうか。
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