印刷会社のM&A動向は?事例や価格相場・メリット・成功のポイントまで解説!

印刷会社のM&Aは、紙媒体の情報が電子化したことで、従業員の雇用を守るためなどの理由から増加傾向です。印刷会社のM&Aには、売却側と買収側にそれぞれメリットやデメリットも存在します。印刷会社のM&Aを行うには、事例や相場を理解することが大切です。

目次

  1. 印刷会社の現状とM&A動向
  2. 印刷会社がM&Aを行うメリット
  3. 印刷会社のM&Aの成功事例
  4. 印刷会社のM&Aの価格相場
  5. 印刷会社のM&Aを成功させるためのポイント
  6. 印刷会社のM&Aを行う上での注意点
  7. 印刷会社のM&Aは専門家に相談して慎重に進めよう

印刷会社の現状とM&A動向

印刷業界のM&Aの現状や動向は、以下の通りです。 

印刷会社・印刷業界の現状

出版不況やマンガを中心とした電子書籍の普及や、企業および官公庁でのペーパーレス化などが要因となり、印刷業における市場規模は年々縮小し続けている動向です。

2005年から2014年での10年間では、印刷業の出荷額が20.2%低下し、関連産業でもある製版業や印刷物・製本加工業からしても非常に厳しい状況です。

印刷需要が低下したことで、小規模経営の事業者を中心に、印刷事業所の稼働率が低がっている問題が発生しています。

また、印刷需要が全体的に減少する反面、多品種小ロット生産の市場が拡大している動向ですが、抜本的な設備投資により、多品種小ロット生産に対応できる事業者は多くなく、多数の事業所で生産効率が低がっている動向です。

さらに、インターネット通販のような、ネット上で印刷物の受注生産を行ったり、配送したりする業務を請け負う格安業者が増えていることもあり、これまでの印刷業界は圧迫されています。

このような流れから、印刷事業者の倒産や廃業が後を絶たず、中小事業者の淘汰は特に増加している動向です。

また、後継者不足を理由に廃業を検討する会社も多く、事業承継も印刷業界の大きな課題です。

中小企業が大半を占める業界

印刷業界は、売上高が約1兆5,000億円にも及ぶ大手事業者が存在する反面、従業員数が300人にも満たない中小企業が99%以上存在しています。

このような業界構造により、出版や商業印刷といった顧客から大手の印刷事業者が受注され、工程の一部や全部を下請け事業者に依頼するケースも多い動向です。

紙媒体を電子化が進み市場規模は縮小傾向

デジタル化が進行したことで、出版印刷の需要の減少が特に深刻化している動向です。

スマートフォンやタブレットなどの普及により、紙媒体での販売数が減少し、雑誌の廃刊が後を絶ちません。

その代わりにスマートフォンやタブレットを利用する、電子書籍の需要が増加し続けている動向です。

近年、PC上のレイアウトがそのまま印刷可能なDTP技術が大きく発達したこともあり、外注しなくても個人で簡単に印刷ができることも、印刷会社に大きな打撃を与えています。

このようなデジタル化は、今後も勢いが加速していく動向が予想可能です。

M&Aを行う企業が増えている

印刷業界では、M&Aを行う企業が増えている動向です。

印刷会社のM&Aでは、以下のようなM&Aが増加している動向になります。

【印刷業界におけるM&A動向】

① 既存事業を強化するため

印刷業界において、M&Aを行う理由の一つは既存事業の強化です。

売り手と買い手の双方の顧客基盤や、販路などの経営資源を共有すれば、グループ全体での競争力が高められるメリットがあります。

掲げた目的が自社だけでは達成が困難な場合、または達成できそうなものの時間を多く要する場合に、既存事業を強化のためにM&Aが行われます。

② 海外企業とのM&A

印刷業界においてM&Aを行う理由の二つ目は、新たに市場を獲得するための海外企業の買収です。

アジア圏は経済成長が著しいため、印刷業界は事業を拡大するビジネスチャンスが特に多い地域と認識されています。

また、海外に拠点を設置すれば、人件費が削減できるメリットがあります。

印刷業界は労働集約的な側面を持っているため、人件費の削減は製品別原価を大きく左右します。

③ 電子書籍への対応や事業の拡大のため

印刷業界においてM&Aを行う理由の三つ目は、電子書籍への対応や事業の拡大のためです。

現代では、紙媒体の他にWEBやタブレットといった、さまざまな媒体から情報が入手できます。

特に、若い年代の方であれば紙媒体以外が情報源となることも多く、印刷業界における紙媒体の売上高は年々減少傾向です。

現状のまま何も対策を打たなければ、印刷業界の業績回復は難しく、M&Aによりデジタルメディア領域に参入し、電子書籍への対応や事業の拡大を狙った企業が増えている動向です。

印刷会社の経営者がM&Aを行う理由

印刷会社では、基本的に大規模の設備が必要なため、数年先の設備投資など、将来のイメージや事業計画を立てている経営者がほとんどです。

しかし、戦略の上での機械や設備なのにも関わらず、目先の売上ばかり見てしまい、手当たり次第設備投資したことで、最終的に利益が出ずに困っている会社も多い動向です。

これは、経営者の多くが、紙の印刷物が順調に右肩上がりで伸びていた時代から抜けられず、自社の会社構造を環境の変化に合わせて変えられなかったことに問題があります。

このような事態を繰り返さないためにも、将来的に会社の売却を検討している場合は、事業の将来像をしっかりと考え、社内共有し御商売をしておいた方が、業績も安定し買手が見つかりやすくなります。

印刷会社がM&Aを行うメリット

印刷業界のM&Aのメリットについて、売却側と買収側に分けて解説します。 

売却側のメリット

経営が安定している大手企業に対し、M&Aにより印刷業を承継すれば、従業員の雇用が維持できるだけでなく、事業をさらに成長できるメリットがあります。

得意先の出版社や事業会社に関しても、緊密な関係の印刷業者と取引が継続できます。

また、小規模事業者だけでは苦戦していたIT投資でのデジタル化を推進できることで、印刷業での経営高度化も可能な点もメリットです。

そうなれば、結果的に生産性が向上し、従業員の給与水準を上げられる可能性もあります。

さらに、買い手の企業が大手企業の場合、生産規模を拡大することで生産性が向上し、大量仕入れも可能なため、原材料費の引下げ、広告宣伝費、人材採用コスト、本社経費なども削減できる可能性が高く、M&Aでシナジー効果を得られるメリットもあります。

買収側のメリット

近年の印刷業界は、前述したようにデジタル化が進んだことで、電子媒体が急激に普及したため、市場規模が縮小し、中小規模の印刷会社では、これまでの経営を続けていくだけでは生き残るのは困難です。

このような背景もあり、中小規模の印刷会社では、事業承継の目的に加え、他分野への進出や、事業の存続を考える必要があります。

このような中小規模の印刷会社がM&Aを行えば、中小規模の印刷会社においても事業の展開ができるメリットがあります。

実際に、印刷業者同士によるM&Aで、事業の内容や営業の領域を拡大した事例も多くあります。

電子媒体が普及を続ける現状を考えると、スピーディーな対応が可能なM&Aは、今後さらに増加するでしょう。

印刷会社のM&Aの成功事例

印刷業界のM&Aの成功事例を8つ紹介します。 

朝日印刷とHarleigh(Malaysia)Sdn.Bhd.およびShin-Nippon Industries Sdn.Bhd.のM&A

1つ目の事例は、朝日印刷とHarleigh(Malaysia)Sdn.Bhd.およびShin-Nippon Industries Sdn.Bhd.のM&Aです。

朝日印刷が、Harleigh Sdn.Bhd.およびShin-Nippon Industries Sdn.Bhd.のそれぞれの株式65.0を取得し、子会社化することで株式譲渡契約を締結した事例です。

株式所有割合はそれぞれに対して65.0%になります。

朝日印刷は、医薬品や化粧品包材の製造、販売に取り組む印刷包材事業および包装システム販売事業を主に事業としている企業です。

進行している中期経営計画で、美容や健康市場におけるトップシェアを目標とした売上の拡大や、海外市場での販売や製造拠点の確立、および海外への展開、幅広い知識と経験のある人財育成などを目標に掲げています。

HL社およびSN社は、マレーシアにある印刷会社です。

マレーシアの医薬品市場において一定の地位を持っており、国内外で顧客基盤を所有しています。

本件M&Aにより、朝日印刷は、ASEANを中心とした販売や製造拠点の確立だけでなく、人材交流などを通じ人財を育てるなど中期経営計画を加速させていく狙いです。

朝日印刷株式会社による連結子会社の株式追加取得に関するお知らせ

共立印刷と西川印刷のM&A

2つ目の事例は、共立印刷と西川印刷のM&Aです。

共立印刷株式会社は、株式会社西川印刷の株式すべてを取得する内容で基本合意書を締結した事例です。

共立印刷とは、関東を拠点にオフセット輪転印刷での商業印刷物、および出版印刷物の製造をメインに総合的な印刷事業に取り組んでいる企業になります。

西川印刷は、拠点が熊本にある印刷会社で、オフセット輪転印刷機・オンデマンド印刷機等などを所有しています。

共立印刷は今回のM&Aにより、生産拠点を九州に獲得し、持続的な成長を狙っているようです。

光村印刷と新村印刷のM&A

3つ目の事例は、光村印刷と新村印刷のM&Aです。

光村印刷が、新村印刷株式会社の株式すべてを取得し、子会社化した事例です。

光村印刷は、印刷事業を中核にしつつ、電子部品製造事業など、印刷技術をベースに事業領域を拡大しています。

新村印刷とは、主に印刷事業に取り組んでおり、商業印刷や包装、パッケージ、証券印刷、出版物または地図をメインに行っており、特に包装やパッケージ分野において多くの実績と一定の数のシェアを持っている企業です。

今回のM&Aにより、光村印刷は、新分野に進出するだけでなく、既存の事業とシナジーを創出させ、成長の実現を狙っています。

オストリッチダイヤと北越パッケージのM&A

4つ目の事例は、オストリッチダイヤと北越パッケージのM&Aです。

一般印刷物の企画や印刷、加工といった事業を取り組むオストリッチダイヤは、パッケージの企画や、デザイン、液体容器の製造、加工紙の製造といったサービスを手掛ける北越パッケージより印刷事業を譲り受けた事例です。

オストリッチダイヤでは、各種紙類やプラスチックフィルムの印刷加工、断裁および製本などの事業を展開する企業になります。

今回のM&Aにより、印刷関係事業を切り離すことで、メイン事業のパッケージング事業に経営資源を集中させる予定です。

一部事業譲受に関するお知らせ

日本創発グループと日経印刷のM&A

5つ目の事例は、日本創発グループと日経印刷のM&Aです。

株式会社日本創発グループは、完全子会社である日経印刷株式会社と、日経印刷の完全子会社である日経土地株式会社と合併した事例です。

日経印刷を存続する会社、日経土地を消滅する会社とした吸収合併方式であり、日経土地は解散しました。

日本創発グループとは、DTP大手の印刷会社であり、印刷事業やITメディアを組み合わせたセールスプロモーション開発、プロダクツ開発を行う企業です。

日経印刷では、総合印刷業に取り組んでおり、日経土地では、不動産賃貸業に取り組んでいます。

今回のM&Aでは、日経印刷の事業運営を効率化するのが狙いです。

日本創発グループと小西印刷所のM&A

6つ目の事例は、日本創発グループと小西印刷所のM&Aです。

株式会社日本創発グループは、株式会社小西印刷所の株式における一部を取得し、持分法適用関連会社とした事例です。

日本創発グループとは、傘下グループ会社の経営管理や、付帯する業務を行っている企業です。

デジタルコンテンツ事業やセールスプロモーションをはじめ、クリエイティブサポート、ロイヤルカスタマー、メーカー・OEM事業、印刷・製造事業など、さまざまな事業を展開しています。

小西印刷所は、総合印刷業に取り組んでいる企業です。

今回のM&Aにより、日本創発グループは、各社が保有している製造設備や、製造管理技術、印刷技術といった経営資源の融合発展を加速させる予定です。

それにより、印刷物の製造効率アップや、品質の向上だけでなく、ワンストップサービスと顧客の要望への対応力を向上させ、小西印刷所および企業グループ相互における企業価値のさらなる向上を狙っています。

図書印刷とシー・ティー・エスのM&A

7つ目の事例は、図書印刷とシー・ティー・エスのM&Aです。

図書印刷の連結子会社の株式会社KGエデュケーションホールディングスが、株式会社シー・ティー・エスの株式すべてを取得し、子会社化した事例です。

図書印刷とは、KGエデュケーションHDで、傘下に学校図書株式会社および株式会社桐原書店を配置し、教育ソリューション事業を展開している企業です。

現在、実用的な英語能力の養成が目的の書籍教材、学習アプリおよび短期語学留学事業などの事業展開を進めています。

シー・ティー・エスは、企業や官公庁に向けた語学研修サービスを提供している企業です。

今回のM&Aで、図書印刷は、語学研修サービスを新規でラインナップに追加するだけでなく、学校図書および桐原書店が所有する学習コンテンツの編集ノウハウ・自社が所有する販売チャネルやシステム開発力などと組み合わせることでシナジー創出を狙っています。

プリントネットとウイズプリンティングのM&A

8つ目の事例は、プリントネットとウイズプリンティングのM&Aです。

プリントネットが、民事再生手続き中のウイズプリンティング印刷・製本事業を取得した事例です。

ウイズプリンティングは、印刷から製本までの工程をワンストップで対応可能な体制を整えており、プリントネットはウイズプリンティングの事業を譲り受けることにより、関西地区におけるサービス強化および運送コスト低減などに寄与すると予測しています。

今回のM&Aにより、ウイズプリンティングのワンストップで対応できる体制を活用し、さまざまn顧客ニーズに対応できる可能性があると期待されています。

印刷会社のM&Aの価格相場

印刷業界のM&Aの価値の算出方法について解説します。 

企業評価価値の計算方法

企業評価価値の相場を求める方法は、上場企業と非上場企業・非公開会社で違います。

上場企業であれば、すでに相場の株価が市場に公開されているため、企業評価価値の相場は以下のように簡単に、求めることが可能です。

『計算式』

基準価値=時価総額(株価×発行済総株式数)

一方、非上場企業などの場合、企業評価価値の求め方は、大きく分類し「コストアプローチ」「マーケットアプローチ」「インカムアプローチ」の3種類があります。

それぞれ解説します。

【コストアプローチでの相場の求め方】

ストック・アプローチやネットアセット・アプローチなどと呼ばれることもあり、会社の純資産を基に企業価値の相場を求める方法です。

会計上の純資産額を基準に評価する「簿価純資産法」と、評価対象の企業や事業の全ての資産や負債を時価に置き換えて純資産を評価する「時価純資産法」に分類されます。

『簿価純資産方式での相場の求め方』

企業が出す決算書により、計上されている資産から負債を差し引きして、企業価値の相場を求めます。

企業価値を発行済の株式総数で割ることにより、1株当たりの価値を求めることが可能です。

『時価純資産法での相場の求め方』

企業が保有している資産や負債に対し時価評価を行い、時価評価後の資産に対し負債を引いた金額を企業価値の相場とします。

そこかから企業価値を発行済の株式総数で割ることにより、1株当たりの価値を求めることが可能です。

【マーケットアプローチでの相場の求め方】

市場で成立している価格を基準に企業の価値の相場を求める方法です。

代表的なものには、評価対象の企業自体における株式の市場価格を基に評価する「市場株価法」と、評価対象の企業と類似する上場企業における市場株価や、類似したM&A取引での成立価格を基にする一定の倍率を評価対象の企業における経営指標に乗じることで価値を求める「マルチプル法」の2種類があります。

「市場株価法での相場の求め方」

評価対象となる企業が、上場している会社の場合に用いられます。

毎日の終値を1~3ヵ月の平均を取り、評価額と考えるのが一般的です。

「マルチプル法での相場の求め方」

『計算式』

企業価値=自社のEBITDA×類似上場企業のEBITDA倍率

EBITDAとは、金利や税、無形資産、有形資産の減価償却費が差し引かれる前の利益のことです。

EBITDAの計算方法で主に使用されるのは、以下の2通りです。

1. 減価償却費+営業利益

2. 利息(支払利息-受取利息)+減価償却費+経常利益

【インカムアプローチでの相場の求め方】

キャッシュフローや将来的な利益などの収益性をメインに企業価値の相場を求める方法です。

代表的な方法には、評価対象の企業が将来的に生み出すキャッシュフローを、現在の価値から割り引くことで事業価値を求めるDCF法があります。

『計算式』

企業価値=企業が創出するフリーキャッシュフローによる期待値に対し加重平均資本コストを割り引いた現在価値

現在価値は、将来もらう貨幣価値を金利などを考え一定の割引率で割り引き、現在の貨幣価値に換えることです。

また、フリーキャッシュフローは、税金を政府に支払い、事業で必要な投資をした後に株主と債権者に分配できるキャッシュフローのことです。

最終的な価値は交渉により決まる

ここまでM&Aにおける企業評価価値の算出方法を解説しましたが、算出した結果がそのまま最終的な買収価格になるわけではありません。

企業価値の算出には、上記で解説した方法が利用されますが、最終的な価値は交渉により判断されます。

印刷会社のM&Aを成功させるためのポイント

印刷会社のM&Aを成功させるためのポイントは、以5つです。

時間に余裕をもって準備に入る

1つ目のポイントは、時間に余裕をもって準備に入ることです。

M&Aで会社を譲渡・売却するためには、約1年かかると言われています。

1年の内訳は、買い手側企業とマッチングするまでに約半年かかり、条件交渉や買収監査、最終契約などの手続きに約半年かかると言われています。

さらに、M&Aが成立した後の引き継ぎでも相応の時間が必要です。

そのため、M&Aを行う際は少し早いと感じるくらいが、準備を開始するベストタイミングです。

M&Aでは、遅すぎてタイミングを逃してしまうことはあるものの、早すぎてタイミングを逃してしまうことはありませんので、時間に余裕を持って早めに準備に入るようにしましょう。

タイミングを見逃さない

2つ目のポイントは、タイミングを見逃さないことです。

世の中の企業は市場の中で競争をしながら存在しているので、時間の流れとともに状況が変わります。

そのため、対象企業を確認する際には特定期間の状況のみでなく、さまざまな期間の状況を確認し理想的なタイミングの買収がおすすめです。

特に中小企業においては、短期間で財務状況が悪化するケースも珍しくありません。

例えば、デューデリジェンスの実施後に長い期間が経過してからM&Aが成約すると、調査時に検討した対策ではうまく対応できない可能性があります。

また、仲介会社といった第三者から情報を得る場合では、収集した情報が最新のものかを確認する必要があります。

保有している情報量が多いからと言って、その情報が最新のものとは限らないため注意が必要です。

売却側は自社の強みをしっかりアピールする

3つ目のポイントは、売却側は自社の強みをしっかりアピールすることです。

M&Aの売却価格は、貸借対照表および損益計算書などに記載された数値以外に、これからの収益性や成長性などを加えて決まるのが多いです。

これらをPRできるうように、魅力的な案内書の準備が必要です。

会社の強みを明確に記載し、数字だけでは伝えきれない独自の技術があること、人材が充実していること、将来性などをうまくPRすることで、相手企業もどんなシナジーがあるのか判断しやすくなります。

また、リスクについても記載することにより、より良い印象を持ってもらいやすくなります。

売却側買収側双方が相手をよく知る

4つ目のポイントは、売却側買収側双方が相手をよく知ることです。

買い手側も売り手側も、双方が相手への理解を深めることが、M&Aを成功させるためには大切なポイントです。

売り手側においては、自社が持つ強みや現状抱えている課題、持っている技術などを細かく把握することで、より好条件でM&Aが行えます。

またこのタイミングで、譲渡や売却における取引関係の維持や売却価格、社名など優先する順位についても決めておくことがおすすめです。

買い手側においても、自社の経営理念やビジョンだけでなく、経営の状況やM&Aを実施する目的をできるだけ明確にしておきましょう。

自社への理解を深めることは、マッチする企業を見つけやすくする上でも重要なポイントです。

M&Aの経験と知識が豊富な専門家に相談する

5つ目のポイントは、M&Aの経験と知識が豊富な専門家に相談することです。

印刷会社のM&Aを成功させるポイント5つ目は、M&Aの経験と知識が豊富な専門家に相談することです。

多くの経営者にとって、M&Aが初めての場合は多いです。

実際にM&Aの方法や成功させるポイントについて調べても、具体的にどうすれば良いのか悩む経営者は多く、取り組み自体を先送りしてしまっていることも多くあります。

そのように初めてのM&Aで手順やその他諸々のことに関して不安がある場合、M&Aに関する知識と経験が豊富な専門家に相談するのがおすすめです。

M&Aを成功させるためには、売却するタイミングも重要になりますので、タイミングを逃さない様に、一度専門家に相談してみましょう。

印刷会社のM&Aを行う上での注意点

印刷会社のM&Aを行う上での注意点は、以下3つです。

情報の漏洩に注意する

M&Aを行う場合、特に売り手は独自の印刷技術を持っている場合、買い手にその情報を開示する必要が出てきます。

もちろん、開示した買い手と必ずM&Aが成立する保証はありません。

複数の買い手候補が存在し、各相手と交渉する際には、その度に独自の印刷技術などの開示が必要です。

そのため、売り手が秘匿を望む情報が漏洩してしまう危険があります。

万が一、情報漏洩すれば、売り手企業に不測の損害が発生するおそれもあるのです。

従業員の流出に注意し取引先との関係を良好に保つ

有能な従業員の離脱に注意しましょう。

理由は、有能な従業員がいることで、企業価値が上がるメリットがあるからです。

事業は、従業員がいなければ行えず、どんなに優れたシステムを所有していても運営する従業員がいなければ意味がありません。

そのため、買収側にとっては従業員の能力も買収する際の重要な判断材料です。

買収側は、買収した後に効率的な運営を行いたいのが一般的なため、売却側として従業員の能力に自信がある場合、そのことを伝えるだけで安心させる効果があります。

汎用性の高い能力があるような従業員であれば、買収側の事業に参画させることも可能なため、企業価値が上がる可能性が高いです。

また、顧客の流出にも注意しましょう。

売却企業にどんな取引先が存在するのかも、企業の価値に影響を及ぼします。

大手企業といった取引を始めるのが困難な企業が取引先にある場合、既にある繋がりを評価される可能性が高いです。

特に買収企業が営業力を強化したいと思っている場合、既に取引先が多くあること、企業価値が高くなるメリットがあります。

そのため、M&Aでは自社と関わりがある取引先をリスト化し、分かりやすいようにすることで、買収企業に効果的なアピールが可能です。

リスクを予測し対策を怠らない

印刷会社のM&Aだけでなく、希望条件がそのまま通りスムーズに会社が売却できるとは限りません。

買収企業にも希望条件はありますので、自社の希望条件を貫こうとするだけでは、交渉が長引いたり、もしくは白紙になったりする場合もあります。

また、希望条件で売却できたとしても、M&A後に買収企業とトラブルになることも考えられます。

そのため売却する際には、トラブルが起きた際の対処法を考えておくことがポイントです。

事前にトラブル対処法を検討しておくことで、交渉をスムーズに進められ、M&A後のトラブルにも柔軟に対応可能です。

印刷会社のM&Aは専門家に相談して慎重に進めよう

ここまで解説してきた通り、印刷会社のM&Aを成功させるためにはタイミングを見逃さない、自社のアピールポイントを知るなど、ある程度の専門的な知識が必要になります。

また、M&Aを行う目的を明確にしたり、M&A相手企業を慎重に選んだりしておくことで、M&Aを成功させる確率が高くなりますので、メリットや成功のポイントを意識しつつ慎重にすすめることが大切です。

しかし、普段の業務が忙しくM&Aで高く会社を売却する方法や成功させるポイントは分かったものの、具体的にどのように取り組めば良いか分からず、時間ばかり経過してしまっている経営者も多いです。

そのため、M&Aの成功確率を少しでも上げるために、少しでも不安のある方は専門家に相談するようにしましょう。

当記事が、印刷会社のM&Aを行う上で、参考になりましたら幸いです。

M&A・事業承継のご相談ならM&Aエグゼクティブパートナーズ

M&A・事業承継については専門性の高いM&AアドバイザーがいるM&Aエグゼクティブパートナーズにご相談ください。

M&Aエグゼクティブパートナーズが選ばれる4つの理由

①譲渡企業様完全成功報酬制で成約まで費用がかからない
②各業界でのM&A実績が豊富なトップコンサルタントのみ在籍
③オーナー様を第一に考えたM&A仲介サービス
④グループ間のネットワークによる幅広いサービスのご提供
>>M&Aエグゼクティブパートナーズの強みの詳細はこちら

M&Aエグゼクティブパートナーズは、成約するまで無料の「譲渡企業様完全成功報酬制」のM&A仲介会社です。
無料で相談可能ですので、まずはお気軽にご相談ください。

>>無料でのお問い合わせはこちら

関連記事

英会話教室・語学学校のM&Aを徹底チェック!動向・事例・メリットは?

業界別M&A情報

英会話教室・語学学校のM&Aを徹底チェック!動向・事例・メリットは?

英会話教室・語学学校ではM&Aが盛んにおこなわれています。 近年は英語をはじめとした外国語の需要が高まっており、様々な企業が参入してきています。英会話教室・語学学校業界で差別化を図り、市場で生き残るためにM&Aを活用してみましょう。

M&Aでのファンドの役割・種類まとめ!買収後のメリット・デメリットは?

業界別M&A情報

M&Aでのファンドの役割・種類まとめ!買収後のメリット・デメリットは?

M&Aではファンドを活用して投資資金を集めることが多くありますが、具体的にファンドはどのような役割を果たしているのか知らない方も多くいます。 今回は、M&Aでのファンドの役割・種類、買収後のメリット・デメリットについて解説します。

製麺会社のM&A動向や事例は?価格相場やメリット・注意点も解説!

業界別M&A情報

製麺会社のM&A動向や事例は?価格相場やメリット・注意点も解説!

競争が激化しやすい製麺会社では、独自の製麺技術の獲得や事業拡大で差別化を目指すM&Aの動きが顕著です。当記事では、過去の売却・買収事例を交えながら製麺会社のM&A事情を解説します。M&Aの価格相場やメリット、成功のための注意点も併せてチェックしましょう。

輸送用機械・部品製造業のM&A動向を調査!事例やメリット・取引相場は?

業界別M&A情報

輸送用機械・部品製造業のM&A動向を調査!事例やメリット・取引相場は?

輸送用機械・部品製造業界では、先端技術における競争激化や人材不足の課題に対処するためM&A動向が活発です。当記事では、過去に行われた売却・買収事例を踏まえながら、輸送用機械・部品製造業界のM&A事情を解説します。取引価格相場や注意点も併せてチェックしましょう。

産業用・業務用機械製造業のM&Aの市場動向は?売却・買収事例・相場も調査!

業界別M&A情報

産業用・業務用機械製造業のM&Aの市場動向は?売却・買収事例・相場も調査!

海外進出や事業拡大・効率化が求められる産業用・業務用機械製造業界では、M&Aで現状打破を目指す動向が活発です。当記事では、過去の売却・買収事例を踏まえながら、産業用・業務用機械製造業界のM&A事情を解説します。売却・買収価格相場や注意点も併せて確認しましょう。

精密部品製造業のM&A動向や事例を徹底解説!取引相場やメリット・注意点は?

業界別M&A情報

精密部品製造業のM&A動向や事例を徹底解説!取引相場やメリット・注意点は?

精密部品製造業界では、IoT技術の導入や生産効率化、新規事業参入を狙ったM&A動向が活発です。この記事では、過去実施された売却・買収事例を踏まえながら精密部品製造業界のM&A事情を解説します。取引価格の相場やM&A成功へのポイントも併せてチェックしましょう。

繊維製品製造業のM&A事情を調査!業界の現状や動向・事例・価格相場は?

業界別M&A情報

繊維製品製造業のM&A事情を調査!業界の現状や動向・事例・価格相場は?

私たちの生活に欠かせない「衣食住」の「衣」に携わる繊維製品製造業では、新しいサービスへの対応や海外進出、差別化といった目的でM&Aを行う企業が多く見られます。当記事では、過去の売却・買収事例に触れながら繊維製品製造業界のM&A事情を解説します。

訪問介護・看護業界のM&Aの最新動向は?事例から価格相場・メリットまで解説!

業界別M&A情報

訪問介護・看護業界のM&Aの最新動向は?事例から価格相場・メリットまで解説!

訪問介護・看護業界では、需要増加の一方で人材不足や競争激化といった課題に対処しなければなりません。当記事では、過去に行われた売却・買収事例に触れながら、訪問介護・看護業界のM&A動向を解説します。メリットやデメリット、価格相場も併せてチェックしましょう。

英会話スクールのM&A事情を徹底解説!現状や業界動向・事例・価格相場は?

業界別M&A情報

英会話スクールのM&A事情を徹底解説!現状や業界動向・事例・価格相場は?

オンライン英会話の需要増加で注目される英会話スクール業界では、M&Aが活発です。当記事では、過去実施された売却・買収事例に触れながら、英会話スクール業界のM&A事情を解説します。メリットやデメリット、気になる価格相場も併せてチェックしましょう。

家具・オフィス業界のM&Aの最新動向を徹底チェック!事例や価格相場は?

業界別M&A情報

家具・オフィス業界のM&Aの最新動向を徹底チェック!事例や価格相場は?

家具・オフィス業界では、現状課題の解決や異業種からの参入、異業種への進出といったM&A動向が活発です。当記事では、過去に行われた売却・買収事例を交えながら家具・オフィス業界のM&A事情を解説します。メリットや気になる相場も併せてチェックしましょう。

webバナー

業界別M&A情報の人気記事

人気ランキング

話題のキーワード