学校法人のM&Aの現状や最新動向を徹底調査!事例や価格相場・メリットは?
近年の少子高齢化の余波を受け、多くの学校法人が生徒数確保のために積極的にM&Aを行っているのが現状です。本記事では学校法人のM&Aの現状や最新の動向の徹底調査を行い、事例や価格相場・メリットを紹介します。
目次
学校法人のM&Aの現状や動向
前述のように少子高齢化による生徒数の減少により、M&Aを行って多くの生徒を確保する学校法人が増えているのが現状です。ここからは学校法人の具体的なM&Aの現状や動向を解説します。
学校法人とは?
公益法人の1つとして認識され、私立学校を開設するために設立された法人のことを学校法人といいます。
学校法人の設立に関しては高い公共性が求められるので、設立の際には文部科学省からの指導や認可が必要です。
さらに運営方針を決定する理事会や調査・監督業務を行う評議会など、設立に関しては多岐にわたる期間の設置が欠かせません。
ちなみに学校教育法の定義によると、学校とは、「幼稚園、小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校、大学及び高等専門学校」を指します。
学校法人の生徒数が少子化により減少
現在多くの学校法人が少子化の影響を受けて学生数が減少しています。
国土交通省の調査によると、2010年時点で1,684万人だった15歳未満の人口は、2060年には791万になると予想されています。
そのような動向に伴って高校や各種高等教育機関に進学する生徒数も減少しており、今後は生徒数確保のための学校法人間のさらなるM&Aが増加する見込みです。
生徒数が減少する一方で、大学や専門学校に進学する動向は増加傾向にあります。
このような動向の背景には大学や専門学校へ進学して専門知識を身に着けることにより、就職活動を有利にしたいという学生の心理が影響しているようです。
とはいえ年少人口減少の影響の方が圧倒的に大きく、学校の運営はますます厳しくなることが予想されています。
定員割れの学校法人も
特に地方の大学や専門学校においては、定員割れが発生している場合も多くあります。
少子化に加えて都市部への移住が進んでいることも大きな原因の一つです。
こういった傾向は今後も続くことが考えられるので、特に地方の学校法人においてはますます経営状態が悪化していくことが見込まれます。
こういった状況を打破するために特殊な教育プログラムを作成したり、ブランディングに力を入れるなどの施策に取り組んでいる学校法人も多いですが、一方でM&Aにより解決を図る動きも見られます。
学生数確保を目的としたM&Aが増加
前述のように近年は多くの学校法人が少子高齢化の影響を受け、学生数の確保の施策に頭を抱えています。
一方で毎年入学してくる新入生だけでは、十分な生徒数を確保できないのが現状です。
また私立大学における、主な収益源の7割以上が生徒から支払われる校納金が占めています。
このような観点からも、生徒数の確保は学校法人に欠かすことができない施策の1つとして挙げられ、1つの解決策としてM&Aに取り組む学校法人が増えているのが現状です。
学校法人のM&Aの手法
近年は十分な生徒数確保のため、積極的にM&Aを行う学校法人が多く見受けられますが、実際にはどのような手法でM&Aを行えばいいのでしょうか。
ここからは、学校法人のM&Aの手法を解説します。
法人譲渡
学校法人のM&Aは、株式会社のM&Aとは方法が大きく異なります。
学校法人には一般的な株式会社における株式に該当するものがないので、役員の入れ替えのみで法人の譲渡が完了します。
このような譲渡の手法を法人譲渡と呼び、譲渡側の理事長や理事や監事に支払われる退職金が譲渡の対価として認識されています。
一方で退職金という名目以外で譲渡の対価が支払われるケースもあるので、支払い方法時の課税額の算出を明確にしましょう。
そして譲渡時の条件として企業が学校法人を買収する際には、買収側の支配下にほとんどの理事を配置し、理事会を掌握しなければいけません。
事業譲渡
学校法人が他の学校法人に事業譲渡する際には、事業譲渡が活用されます。
事業譲渡はすべての事業を譲渡する手法ではなく、個々の学校のみ譲渡する方法で譲渡側は事業を縮小して継続するか、解散するかを選択しなければいけません。
譲渡価格の算出には基本的に純資産価値に暖簾代を加算した金額で算出され、その際の資産は時価で評価されるのが一般的です。
合併
私立学校法52条から57条によれば、学校法人間で合併を行うことも可能です。
合併には現状の法人の全てを解散させて新規法人を設立する新設合併と、一方の学校法人のみが存続する吸収合併の2つの方法があります。
一般的に吸収合併の方が新設合併よりも多くのM&Aで執り行われています。
合併では理事の3分の2以上の賛成が必要で、法人の定款にて評議員の賛成が必要な場合には賛成・同意を得なければいけません。また合併時に理事が退任する際には退職金の支払いも必要です。
学校法人のM&Aのメリット・デメリット
学校法人間でM&Aを行えば、生徒数を確保して収益性を向上させることができます。
一方で他にどのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか。
ここからは学校法人のM&Aのメリットやデメリットを、買い手側・売り手側の双方の立場から検証していきます。
メリット
学校法人間でM&Aを行えば、売り手側・買い手側双方ともに多くのメリットを得ることができます。
では学校法人のM&Aにおける買い手側・売り手側双方における具体的なメリットを紹介しましょう。
売り手側
売り手側のメリットとして最初に挙げられるのが、教育事業を継続できる点です。
学校法人の中には生徒数の減少により経営難に陥る法人も多く、廃業してしまえば生徒たちの学びの場がなくなってしまいます。
一方で迅速にM&Aを行い、他の学校法人に事業譲渡すれば廃業の危険を事前に防ぎ、生徒たちの混乱を防ぐことも可能です。
また従業員の雇用を維持できるというメリットもあります。経営破綻すれば現状の職員はすべて職を失ってしまいますが、M&Aを行って買収されれば従業員の雇用を継続できるのもメリットといえます。
買い手側
学校法人間でM&Aを行えば、買い手側は売り手側の優秀な人材を確保できるのもメリットの1つです。
買収でなく新規で学校法人を設立すれば、勤務する教員や職員を最初から採用し、教育しなければいけません。特に近年は賃金の上昇の影響もあり、教育の採用はハードルが高く、大きなコストがかかります。
一方M&Aでは現状の教員や職員をそのまま雇用し、今まで通りの業務を継続するだけなのでお互いに労力がかからないのもメリットです。
さらに学校法人間でM&Aを行えば、売り手側の資産をそのまま引き継いで今後の事業展開に生かすことができる点もメリットといえます。
デメリット
学校法人間でM&Aを行えば、メリット同様にいくつかのデメリットも発生します。
では学校法人のデメリットを紹介します。
売り手側
学校法人でM&Aを行えば、売り手企業側は経営権を失ってしまう点がデメリットとして挙げられます。
特に前述のような法人譲渡や吸収合併のような方法で譲渡を行えば、実質的な経営権のほとんどが買い手側に移ってしまう点も把握しておきましょう。
また、運営者が替わるため教育方針の違いにも気をつける必要があります。既存の生徒はその学校の教育方針に賛同して入学しているため、途中で方針が変わることは大きなデメリットです。
M&Aを行う場合は事前にトップ面談などでしっかりと方向性をすり合わせ、齟齬が無いようにする必要があります。
買い手側
学校法人でM&Aを行えば、買い手側は多額の資金を支払わなければいけない点がデメリットです。
特に事業規模の大きな学校法人を買収するのであれば、その資産価値が多いほど多額の買収金が必要になります。
さらに暖簾代も加算されれば想定外の出費になることもあるので、事前にある程度の金額を算出しておきましょう。
またM&A後に生徒の流出がおきないように注意する必要があります。経営体制が変わり、生徒に影響が及ぶことがあれば、生徒が流出してしまう可能性があります。
そうならないために事前のトップ面談や買収監査などでお互いの方向性をしっかりとすり合わせておく必要があります。
学校法人のM&Aの価格相場
学校法人でM&Aを行えば、生徒数の確保や事業拡大などさまざまなメリットを得ることができますが、M&Aの価格相場はどのように算出するのでしょうか。
ここからは学校法人のM&Aの価格相場の算出方法を紹介します。
一般のM&Aと異なり対価の発生は限られる
一般的な企業間同士のM&Aでは事業譲渡・譲受による株式の取得により価格が算出されて支払いが行われます。
一方の学校法人の場合は売り手側の理事や理事長の入れ替えのみによって経営権が移動する場合が多いので、一般的には理事や理事長への退職金の支払いを、譲渡対価代わりとする場合が多いです。
しかし経営権の入れ替え時に理事や理事長への退職金の支払い義務が発生する場合があるので、この退職金をM&Aにかかる費用として認識しましょう。
価値の算出方法
学校法人のM&Aの事業譲渡における学校法人の価値の算出方法として挙げられる3つの方法を下記に表記しておきます。
・年買法:譲渡の対象になる資産の時価評価を行い、営業権である暖簾代を譲渡対象の負債を差し引いた時価純資産に加算して算出する方法
・EBITDAマルチプル:譲渡の対象企業と同様の事業を営んでいる、上場企業の評価を参考に企業価値を算出する方法
・DCF法:M&A後、将来的に事業が生み出す利益や価値を想定して資本コストを差し引き、現状の企業価値を算出する方法
学校法人でM&Aを成功させるポイント
学校法人でM&Aを成功させれば、生徒数を確保して利益を高めることができるうえに優秀な人材を確保することができます。
では学校法人でM&Aを成功させるポイントを紹介します。
学校法人のガバナンスを確認する
学校法人のガバナンスを確認するのも、学校法人でM&Aを成功させるポイントの1つです。
明確なガバナンスのない学校は経営方針や管理体制も不完全なうえに、M&A完了後に職員間のトラブルが発生する可能性もあります。
このような事態に陥ればM&Aにおける高いシナジー効果を得ることができないので、取引前に譲渡側のガバナンスを確認しておきましょう。
学校法人の質を確認する
学校法人でM&Aを成功させるためには、譲渡側の学校法人の質を十分に確認しましょう。
具体的には経営方針や学校の設備や環境、学科や学部の設定の確認が重要です。
特に既存の自社の学校法人と大きく経営方針が異なる場合などは買収後に統合作業で問題が生じる可能性もあるので、買収監査時にしっかりと明確にしておく必要があります。
さらに譲渡側の学校法人に生徒確保のための妨げになる問題がないかどうかも事前に確認しましょう。例えば経営の数字を優先するあまりコストカットをしすぎて学校の備品が疎かになり、生徒が離れていくなどのリスクが発生しないように事前に確認しておくべきです。
シナジー効果を明確にする
生徒の増加やより高い教育の実施を目的として行われることが多い学校法人のM&Aですが、M&Aを行ったとしてもその後教育機関として伸びなければ将来的に発展していくことは難しくなります。
合併したことで価値を発揮できなければ生徒にとっても魅力的ではないですし、合併したからといって集客ができるわけではありません。そこには新たな価値の創出が必要です。
そのため、合併をすることによりどういう相乗効果が期待できるのか、何が実現できるのか、どういう教育を世の中に提供できるのか、ということを事前に明確にしておく必要があります。
M&Aを行う際にはまずそういったことを確認し、自社が「どういうところと組めばより価値を最大化できるか」を明確にした上で、相手を探す必要があります。さらに相手が見つかってからはトップ面談で双方の意向や統合後の方針などをしっかりと確認する必要があります。
M&Aの専門家に依頼する
学校法人のM&Aにおいても一般的なM&Aと同様に、法務や財務、税務に関する専門的な知識が欠かせません。
M&Aの取引や手続きには多くの時間と手間がかかるうえに、前述のような専門的な知識がなければ取引成立までに時間がかかりすぎてしまいます。
そして結果的に時間がかかりすぎて交渉が決裂してしまうケースも少なくありません。
このような事態を予防し、交渉をスムーズ且つ正確に行うためにもM&Aの専門家に依頼するのも重要なポイントの1つです。
またM&Aの仲介会社に依頼する場合も、学校法人のM&Aは通常の株式会社のM&Aとは異なり特殊なスキームに関するノウハウが必要になるため、依頼する際はしっかりと学校法人のM&Aで実績があるかどうかを確認するようにすべきです。
学校法人のM&Aの事例
近年は少子高齢化により各学校法人ともに十分な生徒数を確保できず、より多くの生徒を確保するために積極的にM&Aを行っています。
ここからは実際に行われた過去の学校法人のM&Aの事例を紹介します。
学校法人永守学園と学校法人京都光楠学園の合併
2021年4月には京都先端科学大学などの学校法人を運営する学校法人永守学園と、高等学校などの教育機関を運営する学校法人京都光楠学園が合併しました。
このM&Aは、双方が「グローバル社会で通用する人材を育成・輩出していくことに限界がある」という認識のもと行われたもので、中学・高校・大学の一貫教育を目指すために行われた事例です。
今後の展望としては、内部進学制度の導入、中高大一貫カリキュラムの設計・新たな教育プログラムの開発、京都先端科学大学工学部との連携によるSTEAM教育の推進などを想定しています。
学校法人龍谷大学と学校法人平安学園の合併
2015年4月には、龍谷大学や龍谷短期大学を運営している学校法人龍谷大学と、同大学の付属高校である平安高等学校や平安中学校とが合併しました。
このM&Aは、運営体制をさらに高めるために行われた事例の1つです。
高大連携教育プログラムや教育交流の制度をを通して、高校と大学が同じ法人で運営されていることのメリットを多いに活かしていくことが想定されています。
東京工業大学と東京医科歯科大学の基本合意書締結
2022年10月には東京工業大学の運営を手掛ける国立大学法人東京工業大学と、東京医科歯科大学を運営している国立大学法人東京医科歯科大学が基本合意書を締結しました。
このM&Aは、2024年の統合を目指しており、両大学の研究効果を高めるための事例です。
新大学の名称は仮で「東京科学大学」とされています。
国立大学同士が統合して新たな名称の大学となるのは、2003年に東京商船大学と東京水産大学が統合して東京海洋大学ができた事例依頼で、今回の統合が実現すれば研究費が大きな二つの国立大学の統合ということで、注目されています。
学校法人駿河台学園とリソー教育の資本業務提携
2019年7月には駿台グループで集団指導事業を運営している学校法人駿河台学園と、個別指導事業を運営しているソリー教育が資本業務提携を行いました。
このM&Aは、超難関校を受験するための対策システムを確立するために行われた事例で、大手同士の資本提携ということで注目をされています。
国立大学法人京都大学による関西ティー・エル・オーのM&A
2016年2月には京都大学の運営を手掛ける国立大学法人京都大学が、複数の大学の知的資産による技術移転やベンチャー支援を行っている関西ティー・エル・オーの株式の68%を取得しました。
このM&Aは、さらなる研究によるイノベーション活動を促進するために行われた事例です。
京都大学によると、「産官学連携研究等を通したイノベーションの創出」を大きな目標としています。
学校法人天理大学と学校法人天理よろづ相談所学園の合併
2021年4月には天理大学の運営を手掛ける学校法人天理大学と、天理医療大学などを運営する学校法人天理よろづ相談所学園が合併しました。
このM&Aは大学運営を効率化させるために行われた事例で、さらなる優秀な人材の確保にも繋げるために行われた事例ともいえます。
学校法人で学生数の確保や競争力を強化するにはM&Aがおすすめ
近年では経営のための十分な生徒数を確保できず、経営難に陥っている学校法人も多く見受けられます。
一方学校法人間でM&Aを行えば、生徒数を確保して十分な財源を得ることも可能です。
またM&Aを行えば、優秀な人材を確保して自社の競争力を高めることもできます。
このような観点からも、自社の経営効率を高めるために積極的にM&Aを行ってはいかがでしょうか。
またM&Aでも効率的な学校法人の合併を行うことができますが、さらにスムーズな合併を行うのであれば事業承継がおすすめです。
事業承継を活用すれば、自社親族内の後継者を擁立できれば簡単に手続きが完了します。
さらに親族や従業員内に後継者がいなくても、第三者企業から最適な後継者の擁立ができるのも事業承継のメリットです。
特に近年は事業承継に特化している仲介会社も多いので、一度利用を検討してみてはいかがでしょうか。
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