専門学校のM&Aの現状や業界動向は?価格相場や事例も解説!
学校や専門学校では、教員の高齢化や経営面での課題を多く抱えているため、M&Aで解決を模索する事例が顕著です。当記事では、学校・専門学校で過去に実施されたM&A事例を交えながら業界動向を解説します。気になる価格相場も併せてチェックしましょう。
目次
専門学校とは?
まずは学校・専門学校とはどのような学校なのかを確認しましょう。日本における学校の分類・違いを押さえた上で、学校・専門学校の現状課題を解説します。
※当記事では、専門学校に加えて大学などの学校法人の事例も取り上げます。
一条校と準一条校の違い
学校や専門学校は主に「一条校」と「準一条校」の2種類に分類されます。それぞれの意味を確認しましょう。
一条校 | ・学校教育法第1条で定められた学校のこと ・主に小学校・中学校・高等学校・大学を指す ・高等専門学校・盲学校・聾学校・養護学校・幼稚園も含まれる ・国立・公立・私立は問わず一般的な「学校」を表す ・小児から20代初めまでの期間で習得する教育機関 |
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準一条校 | ・学校教育法第1条で規定されない専門学校 ・高校卒業後、専門分野の就学や特定の技能を修得する場 |
2つの大きな違いは、学校教育法第1条に定められている学校かどうかにあります。
専門学校運営の現状
学校・専門学校は、就職に必要な学歴を獲得するために、進学率は上昇しているものの、人口減少の影響から生徒数は減少傾向にあります。
また、教員数が生徒数よりも多い状況のため、運営が圧迫されているのが現状です。
学校・専門学校を運営する各法人は教育の質を上げて生徒数を確保しなければならない状況と言えるでしょう。
さらに、学校・専門学校職員の高齢化も深刻な課題です。
職員を確保しようにも、激務なイメージから教員を目指す人の数は年々減少傾向にあるため、社会問題化しています。
専門学校のM&Aの特徴や動向
生徒数減少や職員高齢化といった多くの課題を抱える学校・専門学校では、M&Aの実施動向が活発です。
各校では、どのような狙いうから売却・買収を行っているのでしょうか。ここでは、学校や専門学校のM&Aで見られる特徴と動向パターンを解説します。
主なM&A動向
まずは、学校・専門学校で行われることが多いM&A動向を確認しましょう。
業界内では、主に以下の4種類のM&A動向が活発化しています。
- 動向①:生徒数減少に対処するためのM&A
- 動向②:教育の質を上げるためのM&A
- 動向③:教員の高齢化に対処するためのM&A
- 動向④:一貫教育を念頭に置いたM&A
人口減少で生徒数が減っている
1つ目の動向として見られるのが、生徒数減少に対処するためのM&Aです。
日本の人口減少に伴い、学校・専門学校に通う生徒の数の減少は避けられません。そのため、M&Aで統合を検討する事例が見られています。
ブランド力向上も行い、生徒が通いたくなるような学校・専門学校を目指す必要があるでしょう。
進学率は若干だが増加している
2つ目の動向は、進学率増加に伴う教育の質向上のためのM&Aです。
就職活動の際優位に働くため、学歴をつくる目的で学校・専門学校に通う方が増えました。学校としては、この流れを有意義に活用したいところです。
進学するからには生徒に対して質の良い授業を提供し、高度な知識を習得してもらう必要があります。
M&Aなら効率的に優秀な教師を獲得できるので、この状況に対処できるでしょう。
教員が高齢化してきている
3つ目に見られる動向は、学校・専門学校の教員高齢化に対処するためのM&Aです。
上で触れましたが、教員は激務で労働環境が厳しいというイメージが定着しており、教員を目指す人が減少傾向にあるので、若手の職員確保が難しい状況にあります。
就職者を待つよりもM&Aで人材を獲得した方が効率的なので、多くの学校・専門学校で検討されています。
一貫教育を念頭にしたM&Aが増加する可能性あり
4つ目はこれからのM&A動向ではありますが、一貫教育を念頭に置いたM&Aが増えるかもしれません。
一貫教育なら生徒の囲い込みができるだけでなく、独自のカリキュラムで差別化を図れるといったメリットもあります。
M&Aで既存の設備や資源を活用できるので、一貫教育に必要な環境を効率よく整備できるでしょう。
専門学校のM&Aでのメリット・デメリット
ここでは、専門学校の売却・買収におけるメリットとデメリットを紹介します。
M&Aは決して良い点ばかりではありません。より成功確率を上げるためには、リスクとなる点も抑えた上で進めることが大切です。
メリット
まずは、学校・専門学校のM&Aにおけるメリットを確認しましょう。
売却側・買収側それぞれの視点に分けて解説します。
売り手側
専門学校のM&Aにおける売却側のメリットは、以下の通りです。
売却側のメリット | ・経営難による破綻を回避できる ・ブランド力や知名度を獲得できる ・学生が安心して学習できる場を提供し続けられる ・職員の雇用を維持できる ・万一の場合でも退職金を支給できる ・売却益が得られる ・後継者問題を解決できる |
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経営状況が悪化し経営破綻となると、教員や生徒は困惑します。
既に一定の知名度を誇る学校に売却すれば、経営も安定化するだけでなく教員の生活や生徒の学習機会も守れる点は、特に大きなメリットです。
買い手側
専門学校のM&Aにおける買収側のメリットは、以下の通りです。
買収側のメリット | ・教育や研究に必要な人材を獲得できる ・既存設備や不動産といった資産を活用できる ・学部を新設できる ・付属校化で生徒を囲い込みできる ・ブランドを強化できる ・低コストで学校を設立できる |
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M&Aなら買収側は経験豊富な教員を獲得できるだけでなく、既存設備を活用できるので大幅にコスト削減できる点が大きなメリットです。
デメリット
では次に、デメリットをチェックしましょう。
こちらも同様に、売却側・買収側の視点に分けてデメリットを紹介します。
売り手側
専門学校のM&Aにおける売却側のデメリットは、次の通りです。
売却側のデメリット | ・教育や経営における方針が変わる可能性がある ・学生や職員が困惑するおそれがある ・合理化により人員削減の可能性がある ・環境や文化の違いが学生や職員に影響を及ぼすおそれがある |
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特に注意したいのが、M&A後の環境変化です。生徒や職員のモチベーション低下といったリスク対策を事前に考える必要があります。
ミスマッチを防ぐためにも、交渉の時点で理念や方針の相互理解に努めましょう。
買い手側
専門学校のM&Aにおける買収側のデメリットは、次の通りです。
買収側のデメリット | ・買収にかかる資金の調達が必要 ・必ずしも効果が得られるとは限らない ・完了までにかなりの時間を要する場合がある ・ブランド価値が低下するおそれがある |
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専門学校のM&Aの価格相場
専門学校でM&Aを実施するとなると、各学校・専門学校はどの程度の相場を見込めば良いのでしょうか。
ここでは、学校・専門学校のM&A取引価格相場と相場価格の決め方を解説します。
価格相場
学校・専門学校におけるM&A取引額相場は、数千万円から数億円程と言われています。ただ、一概に言えるこれよりも具体的な数字はありません。
M&A手法や最終条件でも相場が変動するため、費用想定の際は注意が必要です。
価格の決め方
相場価格の決め方として、合併と事業譲渡の2つのケースを解説します。
合併の場合は、一般的に理事の退職金が価格相場です。これに対して事業譲渡でM&Aを行う場合、資産や学校・専門学校としてのブランド価値も考慮されます。
相場算出に必要な価値評価は、専門家のサポートを受けながら行いましょう。
専門学校のM&A手続きの流れ
ここでは、学校・専門学校のM&Aにおける手続きの流れを解説します。
基本的なプロセスは一般企業と共通していますが、届け出や行政手続きといった手続きもあるので注意が必要です。
- 専門学校のM&Aに強い専門家に相談する
- 対象となる専門学校の情報整理・希望条件の設定
- 候補先探し・条件交渉・面談
- 基本合意契約締結・デューデリジェンス
- 最終契約書の締結
- クロージング
専門学校のM&Aに強い専門家に相談する
最初に行われるのが、M&Aに強い専門家への相談と依頼です。
M&Aは学校・専門学校に限らず、多くの場面で専門知識が求められます。個人で進めるのは難易度が高く、予期せぬトラブルのリスクも高まるでしょう。
学校・専門学校のM&A実績がある経験豊富な仲介会社に相談をおすすめします。
対象となる専門学校の情報整理・希望条件の設定
次に行われるのが、学校・専門学校の情報整理と希望条件設定です。
M&A仲介会社のサポートを得ながら、学校情報をまとめた資料を作成します。この資料は匿名性が保たれた「ノンネームシート」と呼ばれる書類です。
ノンネームシートには、希望の売却額や条件も併せて記載しましょう。この他にも「法人概要書」と呼ばれる財務状況が把握できる書類をまとめます。
候補先探し・条件交渉・面談
次に、M&A相手候補の絞り込みと条件交渉です。
相手候補とトップ会談を行い、M&Aの方向性や条件を交渉でまとめましょう。状況によって面談は複数回行われることもあります。
当事者双方が合意できる条件を目指すことがポイントです。
基本合意契約締結・デューデリジェンス
M&Aの条件がまとまったら、次は基本合意契約締結とデューデリジェンスです。
基本合意書には、取引期日、M&A手法、取引価格、支払方法といった項目を記載するのが一般的です。また、基本合意書は法的拘束力を持ちません。
その後、売却側の財務状況や資源、人材、リスクや負債などのあらゆる項目を調査する「デューデリジェンス」を実施します。
最終契約書の締結
デューデリジェンスが完了したら、いよいよ最終契約書の締結です。
基本合意書に記載された内容とデューデリジェンス結果をもとに、より詳細な条件を当事者間で調整します。
最終契約書は法的拘束力を持つので、今一度条件を入念に確認しましょう。
クロージング
M&Aの手続きで、最後に位置するのがクロージングです。
契約書に記載されたスケジュール・方法に従って事業の譲渡と対価の支払いが執り行われます。(取引内容はM&A手法や条件によって異なります。)
ここまで終われば、一連のM&A手続きは完了です。
専門学校のM&A事例
ここでは、学校・専門学校で過去に実施されたM&Aの事例を2つ紹介します。
今回記載するのは、国立大学メインの売却・買収事例です。それぞれの学校が掲げた目的に注目しながら事例をチェックしましょう。
より詳しいM&A情報は、各事例の下にあるリンクから確認できます。
- 事例①:東京工業大学と東京医科歯科大学
- 事例②:国立大学法人京都大学と関西ティー・エル・オー
東京工業大学と東京医科歯科大学のM&A
大学① | 東京工業大学 (東京都の国立大学) |
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大学② | 東京医科歯科大学 (東京都の国立大学) |
M&Aの手法 | 統合 ※統合後「東京科学大学」に名称変更予定 |
M&Aの目的 | 両大学の理工学、医歯学の実績と知の結集 社会に貢献できる大学へのさらなる進化 「国際卓越研究大学」の認定を目指す |
実施時期 | 2024年度中を予定 |
国立大学法人京都大学と関西ティー・エル・オーのM&A
売却企業 | 関西ティー・エル・オー (大学の知的財産技術移転活動事業) |
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買収企業 | 京都大学 (京都の国立大学) |
M&Aの手法 | 株式譲渡 |
M&Aの目的 | 知財活動の本格的かつ持続的な展開 一層の関係強化 技術移転活動の活性化 産官学連携研究等を通したイノベーション創出・社会貢献 |
実施時期 | 2016年1月 |
譲渡価格 | 3,500万円 |
専門学校の経営難はM&Aで解決しよう!
学校・専門学校では教員高齢化への対処だけでなく、経営維持のため生徒の確保も同時に行わなければなりません。
M&Aは、学校・専門学校が抱える多くの課題を効率的に解決できるので有効な手段と言えます。
M&A仲介会社のサポートを得ながら、経営安定化を目指しましょう。
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