特殊運送・輸送会社のM&Aを徹底解説!業界動向や事例・流れは?

近年、特殊運送・輸送会社の間でM&Aが盛んにおこなわれています。M&Aをすることで、事業を拡大したり利益を高めたりする会社が散見されています。

自社がM&Aで成功するため、M&Aの事例や流れ、ポイントを把握しましょう。

目次

  1. 特殊運送・輸送業界とは
  2. 特殊運送・輸送会社のM&Aの動向
  3. 特殊運送・輸送会社のM&Aの流れ
  4. 特殊運送・輸送会社をM&Aするメリット
  5. 特殊運送・輸送会社のM&Aの事例
  6. 特殊運送・輸送会社のM&A仲介会社の選び方
  7. 特殊運送・輸送会社のM&A実施の際の注意点
  8. 特殊運送・輸送会社のM&Aは専門家に相談しよう

特殊運送・輸送業界とは

特殊運送・輸送業界の概要について解説します。

特殊運送・輸送とは

特殊運送・輸送とは、以下の貨物を運ぶことを指します。

  • 大型機械・車両
  • 医薬品
  • 化学品
  • 医療品・医療機器
  • 電子機器

特集運送・輸送業界は一般的な運送業と異なり、繊細な取り扱いを求められる貨物を運ぶ業界を指します。

貨物の運送以外にも、荷下ろし・組立・保管・管理といった事業を請け負っている場合もあります。

特殊運送・輸送事業を始める方法

運送業を開始するには、国土交通大臣もしくは地方運輸局長から、以下の認可を取得する必要があります。

  • 一般貨物自動車運送事業許可
  • 特定貨物自動車運送事業許可

一般貨物自動車運送事業許可とは、トラックで不特定多数の荷主から依頼された荷物を有料で運ぶ事業の許可を指します。一方で特定貨物自動車運送事業許可は、特定の荷主から依頼された荷物を、有料でトラック・特殊車両で運ぶ事業を指します。

特殊運送・輸送事業を始める際の注意点

特殊運送・輸送事業を始めるにあたり、先述した2種類の認可を取得しなくてはなりません。その際には、以下の点を押さえる必要があります。

  • 特殊車両の保有(種類ごとに5台以上必要)
  • 営業所ごとに5台以上の車両を確保
  • 道路運送車両法の資格を持つ従業員の配備(営業所ごと)
  • 車両保管場の確保(使用期間1年以上)
  • 保管場の駐車車両間の距離確保(車間50センチ以上)
  • ドライバーの在籍(日雇い・試用期間者は除く)
  • 運行管理者の配備(営業所ごと)
  • 船舶運航事業者の届け出提出(海運輸送をする場合)
  • 港湾運送事業の認可取得(海運輸送をする場合)

特殊運送・輸送会社のM&Aの動向

特殊運送・輸送業界のM&A動向について解説します。

特殊運送・輸送業界でどのような目的・きっかけでM&Aを行っているかを知ると、業界の動きを知れたり、自社にM&Aを取り入れるヒントになったりする可能性があります。自社業界のM&A動向については、あらかじめ把握してきましょう。

後継者不在の深刻化

特殊運送・輸送業界問わず、さまざまな業界で後継者不足問題が発生しています。それを解決する方法として、M&Aを実施する動向が多くの業界で見られています。

地方の会社や小規模な会社では、後継者不足問題がきっかけで倒産・廃業になるケースが散見されています。M&Aで大手会社の傘下に入ったり、会社・事業を売却することで会社を存続させることが可能です。

人材確保のためのM&A

特殊運送・輸送業界では、人材不足の傾向が見られていることから、人材不足解消のためのM&Aが実施される動向にあります。

特に、若者の人材が著しく減少しており、特殊運送・輸送会社では人材の高齢化が深刻化しています。

そもそも特殊車両を運転できる人材も少ないことから、他社からそのような人材を吸収できるM&Aは業界全体で頻繁に活用されています。

特殊車両の獲得を目的としたM&A

特殊車両を獲得するために、M&Aが実施されている動向も頻繁に見られています。

特殊運送・輸送会社の業界に参入するためには、先述した2種類の認可が必要です。認可を獲得するには特殊車両の獲得が必須です。そのため、M&A実施により他社から特殊車両を買収するといった動向が見られています。

特殊車両を獲得するメリットは、業界への新規参入だけではありません。既存の特殊運送・輸送会社が他社を買収することで、買収企業の特殊車両を獲得する以外にも、事業エイリアを拡大されたり燃料費を削減したりできるといったメリットがあります。

特殊運送・輸送のノウハウ獲得を目的としたM&A

ノウハウ獲得のためにM&Aを実施する動向も見られています。

特殊運送・輸送会社は、企業ごとに持ち合わせているノウハウや技術が異なります。得意とする貨物やサービスが企業ごとに異なるためです。

そのため、事業を拡大しようとしたり既存の事業の強化を図る観点から、M&Aが実施される動向が見られています。

特殊運送・輸送会社のM&Aの流れ

特殊運送・輸送会社のM&Aの流れについて解説します。

通常、M&Aを実施するにはM&Aの専門家や仲介業者が介入することとなります。専門家や仲介業者に依頼すればM&Aの流れは教えてももらえますが、あらかじめ自社でM&Aの流れを理解しておくことは重要です。

M&Aの流れを把握することで、自社が進めるべき準備への理解を深めたり、スムーズなM&Aの動向計画を確立できたりするためです。

M&A仲介会社への相談

まずは、M&Aの仲介業者へ相談を行います。

依頼する仲介業者を決めたら、自社のM&Aの目的・動向・強み・弱み・アピールポイントなどを整理します。特にM&Aの実施目的を明確化することで、自社がM&Aで求める要素や会社が具体的になります。

買い手企業の選定

自社のM&Aの目的に見合った買い手企業(交渉相手)を選定します。

個人だけで交渉相手を探すのは非常に困難です。仲介業者やM&Aのマッチングサイト、M&Aの相談ができる公的機関の買い手企業をピックアップしてもらい、その中から選定します。

基本合意書締結

買い手企業を選択して交渉を始める前に、トップ面談を呼ばれる経営者同士の面会が実施されます。トップ面談は双方の理念・経営方針・人間性に対して理解を深める場となります。

ここで互いの信頼関係を気付くため、もし相手方の経営者に不信感を抱いたら、交渉を止める判断をしてもよいでしょう。

トップ面談後、M&A仲介会社によって相手方と交渉が行われ、双方で条件の一致・合意がされたら基本合意書を締結します。基本合意書は、仮契約のようなもので合意内容の確認のような扱いがされるものです。

デューデリジェンスの実施

基本合意が締結されたら、買い手企業によるデューデリジェンス(売り手企業の社内調査)が実施されます。デューデリジェンスの結果をもって、買い手企業が最終契約の有無を判断します。

デューデリジェンスは専門家が介入し、売り手企業の税務・財務・法務といった専門分野の調査や、そのほかの社内調査が行われます。

デューデリジェンスでは、売り手企業の簿外債務や社内トラブルの有無を入念にチェックする必要があります。そうしないと、買収後に思わぬトラブルに発展し、最悪裁判沙汰になりかねません。

売り手企業側も、相手との信頼関係を壊さないために隠し事はせずに内情をしっかりと伝えるようにしましょう。

最終契約書締結

デューデリジェンスの結果をもって、最終契約の条件交渉が行われます。

最終契約では、実施するM&Aスキームの種類や取引金額といったものから、表明保証・補償条項・解除条件といった詳細まで取り決めされます。

それらすべての調整・交渉が完了したら、最終契約の締結を実施します。

最終契約は基本合意と異なり、本契約の扱いとなるため、締結語の内容変更はできなくなります。最終契約締結前に、双方で内容の確認を入念に行う必要があります。

クロージング

最終契約の内容をもって、クロージング(M&Aの実施)を行います。

クロージングでは、売却企業のヒト・モノ・カネを実際に移動させ、クロージングをもってM&Aは完了となります。

クロージング当日は混乱することが想定されるため、あらかじめクロージング計画書を作成し、当日の動向を検討しておきましょう。クロージング当日は計画書を基づいた動向を実施することで、スムーズに実施ができます。

特殊運送・輸送会社をM&Aするメリット

特殊運送・運輸会社のM&Aのメリットについて解説します。

M&Aのメリットを知り、M&Aという選択肢が増えることで、企業の動向や経営方針の計画の役に立ちます。買い手・売り手それぞれの観点からメリットを解説するため、ぜひ参考にしましょう。

売り手側

  • 後継者不足問題を解決できる
  • ノウハウを獲得できる
  • 売却利益を獲得できる
  • 大手企業の傘下に入ることの恩恵を得られる
  • ドライバー・従業員の雇用確保ができる
  • 債務から解放される

上記で挙げた6点は、売り手企業のM&Aのメリットです。

後継者不足問題・ノウハウの獲得は、業界問わずに得られるメリットです。経営者が高齢化・後継者の不足の問題が生じる前にあらかじめ後継者を見つけておけば、会社を存続させられます。会社を存続させることで、自社に従事するドライバーや従業員の雇用を確保できることも大きなメリットです。

また、既存事業を買収することで、その企業・事業が持つノウハウを獲得し、自社の事業に活用できることも大きなメリットです。

売却利益を獲得することで、経営者引退後の生活や新事業立ち上げのための資金として活用できるメリットもあります。

M&Aで大手企業の傘下に入ることで、グループ会社としての恩恵を受けられるメリットもあります。大手企業のブランド力を活かした求職者の確保や、安定した環境での労働が可能となります。

M&Aは、経営者の債務ごと買収されるケースがあるため、経営者の債務・個人保証といった負担を解消できるメリットもあります。

買い手側

  • 事業拡大ができる
  • 買収企業とのシナジー効果に期待できる
  • 新事業参入への時短・リスク回避が可能

上記の3点は、買い手企業側のM&Aのメリットです。

買い手側における一番大きなメリットは、事業拡大が簡便にできる点です。通常、事業を拡大するには新たな従業員の確保や技術力の向上、エリア拡大といったことをしなくてはなりません。しかし、M&Aを実施することでそれらを簡単に獲得することができます。

併せて車両の確保もできるため、コストを抑えながら事業拡大を図る観点においては、最適だといえます。

買収企業の技術・ノウハウを獲得することで、自社事業にシナジー効果をもたらすメリットも存在します。シナジー効果が生じて更なるサービス・事業が提供できれば、これまで以上に利益を獲得できる可能性があります。

新規事業参入の際の、時短・リスク回避のメリットもあります。通常、新規参入をするには1から従業員と技術を養う必要がありますが、M&Aで既存事業を買収すれば、それらが簡単に獲得できます。また、既存事業を買収するため、新規事業に参入して失敗するリスクを大きく抑えられるメリットもあります。

特殊運送・輸送会社のM&Aの事例

特殊運送・輸送会社のM&A事例について紹介します。

M&Aを実施する際は、過去のM&A事例を参考にするとよいでしょう。他企業がM&Aを実施した目的を知ることができたり、自社のM&A動向を参考にできたりします。

今回はM&A事例の買い手・売り手の事業内容と、M&A実施目的に着目して解説します。

ハマキョウレックスによる東日本急行のM&A

最初に紹介するM&A事例は、ハマキョウレックスによる東日本急行の買収事例です。

買い手のハマキョウレックスは物流会社を経営しており、商品調達・管理・流通加工・配送業務といった事業を展開しています。売り手の東日本急行は、関東を中心に一般貨物自動車運送事業を展開しています。

本事例のM&Aは、双方の事業内容のシナジー効果を期待して実施されました。M&Aスキームは、株式譲渡です。

特殊運送・輸送会社のM&A・売却事例はある?流れや注意点を解説

安田倉庫による大西運輸とオオニシ機工とのM&A

続いて紹介するM&A事例は、安田倉庫によるオオニシ機工の買収事例です。

買い手の安田倉庫は物流会社を経営しており、国際輸送・税関手続き・海外拠点での保管・管理・配送といった一貫したサービスを展開しています。売り手のオオニシ機工は、石川県を拠点に小型車両や大型車両を使用した配送業をしています。

本事例のM&Aは、オオニシ機工のエリアを獲得することで安田倉庫の営業範囲の拡大およびサービス向上が図れるとして、実施されました。

M&Aスキームは、株式譲渡です。

株式の取得(子会社化)に関するお知らせ

ゼロによるHIZロジスティクスのM&A

3つ目に紹介する事例は、ゼロによるHIZロジスティクスの買収事例です。

買い手のゼロは、幼稚園や医療機関、リゾート施設の送迎、物流業界向けのドライバー派遣、人材派遣をしている会社です。売り手のHIZロジスティクスは、青森県に拠点を置く車両輸送を営む会社です。

本事例のM&Aは、ゼロの物流ネットワークの拡大を図るために実施され、その一環で東北地区を掌握するHIZロジスティクスを買収しました。

M&Aスキームは、株式譲渡です。

子会社の異動(取得)および商号変更に関するお知らせ

トナミホールディングスによるケーワイケーとのM&A

最後に紹介する事例は、トナミホールディングスによるケーワイケーの買収事例です。

買い手のトナミホールディングスは総合物流企業で、引っ越し・倉庫・航空国際事業などと幅広く物流を展開しています。売り手のケーワイケーは、千葉県に拠点を置く配送会社です。

本事例のM&Aは、ケーワイケーの配送サービスのノウハウ獲得によるシナジー効果を狙い、実施されました。

M&Aスキームは、株式譲渡です。

「株式会社ケーワイケー」の株式取得のお知らせ

特殊運送・輸送会社のM&A仲介会社の選び方

特殊運輸・輸送会社のM&A仲介業者の選び方について解説します。

通常、M&AはM&A仲介会社を介して交渉を進めていきます。仲介会社あってのM&Aであるため、仲介会社を選ぶ際は慎重になる必要があります。

今回は、仲介会社の選び方について3つの視点で解説します。

業種ごとの案件実績

M&A仲介会社は得意な業種やジャンルが異なるため、特殊運送・輸送会社に特化した仲介会社を選択する必要があります。

特定の業種に特化した仲介会社であれば、独自のネットワークや知識を活かした交渉相手の選択・交渉を行えます。一方、幅広く業種を扱っている仲介会社では、特化している仲介会社に比べてネットワークが狭いことが想定されます。

まずは特殊運送・輸送会社に特化したM&A仲介会社を探すことから始めましょう。

料金体系

料金体系をもとに仲介会社を選択する方法があります。

仲介会社にM&Aの相談・依頼をする際は、当然手数料や費用が発生します。また、支払いのタイミングや支払い方法も異なります。

先述した特殊運送・輸送会社に特化した仲介会社をピックアップしたら、まずは料金体系を比較しましょう。その中で費用対効果が一番良い仲介会社を選択できるとよいでしょう。

また、中には支払い方法に柔軟に対応してくれる仲介会社もあるため、まずは無料相談や問い合わせをしてみるとよいでしょう。

担当者との相性

担当者との相性も、特殊運送・輸送会社のM&Aには重要です。

担当者と話が合わないと、スムーズにM&Aを進められなかったり、動向や目的が不明瞭なまま準備が進んでしまう可能性があります。そのため、複数社の無料相談を活用して相性が良い仲介会社を探してみましょう。また、相性に加えてその仲介会社・担当者が保有するスキル・実績・知識にまで着目して選択できるとベストです。

特殊運送・輸送会社のM&A実施の際の注意点

運送会社・輸送会社のM&Aの注意点について解説します。

M&Aはさまざまなメリットをもたらすフレームワークですが、ポイントを抑えながら動向を確立させないと失敗するおそれがあります。

ここまで解説したメリット・事例・仲介会社の選択の仕方を踏まえ、注意点について理解しましょう。

M&Aの目的を明確にする

M&Aを実施する際は、M&Aの目的を明確化させましょう。

M&Aの実施目的は、シナジー効果への期待・従業員やノウハウの確保・売却利益の獲得などさまざまです。それらを明確にしたうえでM&Aの実施準備・動向確立を行わなくてはなりません。目的を明確化せずにいると、M&Aを行うことが目的となってしまい、M&Aで売却・買収をしても何も得られずに失敗するリスクがあります。

仲介会社に相談しながら、自社のM&Aの実施目的を確立させましょう。

情報漏洩に注意する

情報漏えいに注意することも、M&A実施の注意点です。

M&Aを行う際、情報漏えいをしてしまっては交渉相手からの信頼が落ちます。また、M&A実施に限らず会社のブランド力に悪い影響を与えかねません。そうすると、自社がM&Aによる経営戦略を計画してもそもそも実行できなかったり、自社評価額が下落し、M&Aで相場以下の価格で買収されるおそれがあります。

交渉相手とは秘密保持契約を締結したり、まだM&A動向・目的が明確化していないときに

従業員に情報が漏れないようにしたりと、さまざまな場面で情報漏えいに注意する必要があります。

運送業の認可の引き継ぎ

運送業を引き継ぐ際は、国土交通省から認可を得る必要があることを覚えておきましょう。

貨物自動車運送事業法の第30条に「国土交通大臣の認可を受けなければ、運送事業の譲渡および譲受の効力は生じない」規定があります。

国土交通省から認可を受けるためには、事業の譲渡譲受認可申請書を提出する必要があります。

良い専門家を見つける

先述した内容ですが、M&A実施には良い専門家・仲介会社を見つけることが、M&A成功のための近道です。

M&A専門家・仲介会社では、無料相談を開催しているケースがあります。複数社の無料相談を実施し、自社に相性が良く、業種への理解・実績が深い相手を探しましょう。

特殊運送・輸送会社のM&Aは専門家に相談しよう

特殊運送・輸送会社のM&Aは、専門家に相談しましょう。

M&Aは、交渉相手を探したり動向・目的を確立させて準備を進めるほかに、税務・財務・法務といった専門知識が必要になります。業種に特化した専門家であれば、それらの知識を網羅しているため、M&Aの交渉で困ることがあってもすぐに相談できます。

M&A専門家・仲介会社の無料相談を利用し、ベストな相談相手を探しましょう。

M&A・事業承継のご相談ならM&Aエグゼクティブパートナーズ

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