産業廃棄物業界のM&A事情を徹底調査!事例や相場・成功のポイントは?
産業廃棄物業界の市場規模は直近20年でも拡大傾向にあり、同時にM&Aの動きも活発化しています。本記事では、産業廃棄物業における事業譲渡、売却などのM&A取引の概要や方法について徹底解説します。
目次
産業廃棄物業界の現状とM&Aの動向
産業廃棄物業界のM&Aにおいては、固定費が大きい・商圈が地元に根ざしており、競合が少ないといった特徴があります。
ここからは、産業廃棄物業界におけるM&Aの特性や動向について解説します。
産業廃棄物業界の特性
結論から述べると、産業廃棄物業界のM&Aのハードルは高くありません。要因としては、産業廃棄物業界が他産業と比べると、地域に根ざしたローカルビジネスが中心であることが挙げられます。
加えて、マーケットが細分化されているため、競合が発生しにくいといったメリットもあります。
この他にも、産業廃棄物業界のM&Aには、以下の様な特性が挙げられます。
- 都道府県による認可性のため、新規参入が難しい
- 柔軟な対応が可能のため、兼業として営む事業者が多い
上記の様な要因もあり、産業廃棄物業界においては、比較的容易にM&Aが行える環境が整えられています。
産業廃棄物業界の現状
産業廃棄物業界では、今後廃棄物そのものを減少させ、資源を大切に扱う3Rの取り組みが活発となっています。
人口減少の状態が続いているにも関わらず、排出される廃棄物の量は増加傾向にあります。
但し、最終処分場における廃棄物の量は減少傾向にあります。
産業廃棄物業界のM&Aの動向
廃棄物の量は依然として増加傾向にありますが、環境に対する取り組みの影響もあり、処理場の数自体は今後も減少することが考えられます。
このため業界動向としては、大手企業は廃棄物処理場の確保に伴うM&A取引を活発化させています。
産業廃棄物業界のM&Aの活用事例
ここからは、廃業廃棄物業界におけるM&Aの活用事例・成功事例についてご紹介します。
具体的な事例としては、以下の企業間でのM&A取引が挙げられます。
- ダイキアクシスとアルミ工房萩尾
- 大栄環境ホールディングスと阪神トラック
- アシードホールディングスとロジックイノベーション
- 大晃運送と大興商会
- タケエイとイコールゼロ
- 鴻池運輸と日鉄住金リサイクル
- 新東京グループとグリーンシステムズ
- 共栄と誠美社工業
①ダイキアクシスとアルミ工房萩尾
2021年10月、ゼネコンや建築業者へ水回りの住宅機器販売事業を行っているダイキアクシスは、住宅サッシ・エクステリア建材の施工を手掛けるアルミ工房荻尾に対するM&A取引を行い、全ての株式を取得した上で子会社化しています。
一連のM&A取引により、多くのシナジー効果や、さらなるサービス品質向上が計画され、成功事例の1つとして数えられています。
②大栄環境ホールディングスと阪神トラック
2018年7月、産業廃棄物処理業を営む大栄環境ホールディングスは、子会社である大栄環境を通じて、家庭ゴミの運搬業務を行う阪神トラックを買収しています。
これまで、大栄環境ホールディングスは産業分野の廃棄物処理を手掛けていましたが、今回の買収により、京都市の一般廃棄物処理事業への参入を果たしています。
③アシードホールディングスとロジックイノベーション
2021年7月、広島に拠点を置く自動販売機の設置・販売を行うアシードホールディングスは、物流代行や廃プラのリサイクルを手掛けるロジックイノベーションの全株式を取得した上で子会社化しました。
④大晃運送と大興商会
2016年9月、産業廃棄物の運搬収集を行う大晃運送は、環境プラントを手掛ける大興商会を、株式譲渡により買収しています。
一連の譲渡では、大興商会における後継者不在問題を解決し、経営統合によるシナジー効果も見込んでいます。
⑤タケエイとイコールゼロ
2015年9月、産業廃棄物の処理事業を行うタケエイは、有害物質の廃棄処理を行うイコールゼロを、事業譲渡により完全子会社化しました。
これによりタケエイは、より幅広い事業分野において業務へ注力できるようになり、イコールゼロは、タケエイで培われた営業力を活かして、より柔軟な提案を行えるようになりました。
⑥鴻池運輸と日鉄住金リサイクル
2016年2月 リサイクル事業などを手掛ける鴻池運輸は、同業種を手掛ける日鉄住金リサイクルを事業譲渡により買収しました。
一連の経営統合で、これまでよりも質の高いリサイクル技術やサービス提供の確立を図っています。
⑦新東京グループとグリーンシステムズ
2019年、環境プロデュースや建設解体事業を担う新東京グループは、産業廃棄物の運搬や収集を行うグリーンシステムズを子会社化しています。
一方、2021年3月には新東京グループは産業廃棄物処理業のグリーンシステムズの全株式を譲渡しています。
⑧共栄と誠美社工業
2016年9月、鉄スクラップの販売を手掛ける共栄は、愛知県にある環境リサイクル業を営む誠美社工業を、株式譲渡の方法で子会社化しました。
産業廃棄物業界のM&Aのメリット・デメリット
ここからは、産業廃棄物業界におけるM&Aのメリットやデメリットを、売り手側・買い手側双方の視点から解説します。
メリット
産業廃棄物業界の特徴や動向として、マーケットが細分化されているため、競合が発生しにくいことが挙げられます。
地域と関わりの深いビジネスを展開しているため、動向を調べた上でM&A取引が成功した際には、売り手側・買い手側の双方で多くのメリットを得られるのが特徴です。
売り手側
産業廃棄物業界のM&A取引において、売り手側は以下のメリットを享受することができます。
- 後継者問題が解決する
- 売却による利益を確保できる
- 買い手側が大資本の場合、経営基盤が安定する
- 個人保証問題・廃業費用問題が解決する
特に地方においては、後継者問題が顕著です。
後継者不足で頭を悩ませている経営者の方は多い傾向にあり、今後の見通しとしては、廃業のほか、周辺地域への事業売却や大資本を活用したM&A取引による出口戦略の策定が有効です。
買い手側
一方で、事業の買い手側には以下のようなメリットがあります。
- 新たな人材を確保できる
- 他社の経営ノウハウを獲得できる
- 設備・施設等を相場より安く獲得できる
- 周辺の事業へ新たに参入できる
デメリット
一方、産業廃棄物のM&A取引においては、取引先が限定される・譲渡側企業の負債を全て負担する必要が出てくるなどのデメリットも生じます。
売り手側
事業を譲渡する売り手側からは、以下のようなデメリットが生じます。
- 経営者の交代により、取引が停止する恐れがある
- 売却先が見つからないリスクがある
- 移転により技術やノウハウが損なわれることもある
産業廃棄物業界のM&Aにおいては、商圈が限られてくるため、動向を読んだ上でも売却先が見つからなくなる恐れがあります。
また、経営者が交代することにより、これまで当たり前のように行われていた取引が突然停止することもあるため注意が必要です。
加えて、会社売却で行うことで、これまで自社に蓄えられていた技術等のノウハウが失われることがあります。
ノウハウを適切に継承していくためには、働き方改革や、新人教育を効率よく行うなどの柔軟性が必要となってきます。
買い手側
一方で事業の買い手側には、以下のようなデメリットが生じることがあります。
産業廃棄物業界のM&Aの売却・買収相場
業界動向としては、廃棄物の量が増加していることを受け、産業廃棄物の全体に占める業界規模は上昇傾向にあります。
環境庁が令和2年度にまとめた「環境産業の市場規模・雇用規模等に関する報告書」によると、業界に占める産業廃棄物業の割合は2000年の6.1%から2018年の18.1%まで増加しています。
産業廃棄物業を扱う業種は中小企業が多く、M&A取引を含む競争は年々激化しています。
一方で、的確な情報判断を行うことで、M&A取引へ成功するでしょう。
ここからは、産業廃棄物業界の売却相場や買収相場について解説します。
売却相場
M&Aの売却相場は企業によって大きく異なるため、相場価格の決定は困難です。
このような場合は、適切な企業評価価値(バリュエーション)により、適切な売却価格を決めることが可能です。
自社の企業価値評価については、DCF法などのインカムアプローチが有効ですが、算定には多くのコストと専門的知識を要します。
自社の企業価値について詳しくお知りになりたい場合は、M&A総合研究所へご連絡ください。
買収相場
企業の買収相場については、M&A仲介のプラットフォームへ掲載されている取引情報を参照することで把握することができます。
周辺の動向や相場についてをお知りになりたい場合は、是非M&A総合研究所へご連絡下さいませ。
産業廃棄物業界のM&Aを行う手順
ここからは、産業廃棄物業界のM&Aを行う手順について解説します。
①M&Aの選定・交渉
まずは、M&Aを行う企業の選定作業を行います。
産業廃棄物業界のM&A取引においては、対象エリアが地域商圏内に限られていることから、他職種よりも容易に選定を行える傾向にあります。過去の成功事例を積極的に収集しましょう。
対象企業の選定が完了したら、M&Aを行う企業への交渉に入ります。
②基本合意の締結
企業との交渉が一通りまとまり、M&A取引が行われることが決定した際には、基本合意の締結を取り交わします。
M&Aにおける基本合意は、買収もしくは売却の対象企業に対するデューテリジェンス(事前調査)を行う前に実施されます。
基本合意の段階では、取引にかかる大まかな概要のみを共有するため、これらの手続きで全ての契約が完了するわけではありません。
③デューデリジェンス
デューディフェンスとは、対象企業に対する事前調査のことを指します。
特に、以下のような項目に焦点を絞り、対象企業が安全であるかどうかや、経営統合後の運営まで成功するかをチェックする意味合いで行われます。
- 法務関係(契約・特許・訴訟問題など)
- 財務関係(財務諸表・債務や負債・キャッシュフロー・税金など)
- 人事・労務関係(従業員数・重要役員・労基・福利厚生など)
- 周辺市場
- サプライチェーン・インフラ
④最終条件交渉
M&A取引の大まかな概要を取り交わす基本合意の後に行われるデューデリジェンスが完了したら、対象企業との最終的な条件交渉に入ります。
一連の交渉は最終契約締結に向けた取り組みであり、後に訴訟などのトラブルに発展することのないよう、動向や事例などの調査内容に関する共有や関係者との打ち合わせを念入りに行う必要があります。
以下の項目について、十分に共有を行っておきましょう。
- 従業員の退職金や処遇について
- 譲渡代金の支払い方法(エスクローなどの条件)
- 担保提供や連帯保証の解除方法
これらに加えて、社長や従業員の個人のものに関する取り扱いなどの細かい事項の決定する(細目事項の決定)ことも重要です。
最終契約締結前に、これらの共有や話し合いを行っておくことで、柔軟に企業売却を進められる傾向にあります。
⑤最終契約締結
基本合意に基づいたデューデリジェンスと最終契約締結前の交渉完了後に、最終契約締結へ入ります。
最終契約締結においては、契約締結書(DA)を用いて、以下の項目の決定を行います。
取引対象物 | 株式or事業,取引金額,支払い方法など |
---|---|
前提条件 | クロージングを行う条件を明確にする |
表明保証 | 事項の正確性について保証する |
誓約事項 | クロージング前後で実施する事を義務付ける |
補償条項 | 損害補償等について定める |
いずれの項目においても、デューデリジェンスで得た結果をしっかりと反映させることが重要です。
⑥クロージング
M&A取引はクロージングを持って終了です。
クロージングは、取引に関する前提条件を満たし、代表印等の重要物の引き渡しを行い、売主が対価を得た時点で成立します。
産業廃棄物業界のM&Aを成功させるポイント
ここからは、産業廃棄物業界のM&Aを成功させるポイントについて解説します。
具体的には、以下のポイントに気を配っていきましょう。
事前の準備をしっかりと行う
M&A取引を問題無く完了させるためには、対象企業に対するデューデリジェンス(事前調査)をしっかりと行うべきです。
また、デューデリジェンスは基本合意の後に行われます。
基本合意の段階では全ての事項が確定するわけではないため、確認しておきましょう。
契約内容をしっかりと確認する
最終契約締結時に交わされる「契約締結書(DA)」に記載されている内容をしっかりと確認しましょう。
これらの決定事項に加え、オブジェなどの個人所有物の取り扱いについても記した「細目事項の決定」についても忘れないようにしましょう。
自社の強みをアピールする
自社の強みが何かを、周辺動向や取引事例と併せて把握したうえ、M&A取引を行うことで得られるメリットやシナジー効果を確認します。
自社の強みを調べる方法には、3C分析、SWOT分析、バリュープロポジションキャンバス等があります。
M&Aの目的を明確にする
M&Aの目的を明確にすることで、取引を完了できる確率は高まります。
反対に、動向を読みそびれるなど目的が明確になっていないと、再度売却を行うなど無駄足を踏みかねないため、注意が必要です。
M&Aの専門家に相談する
M&A取引の完了までには、入念なデューデリジェンスや相場を把握するための膨大な取引情報、企業価値評価など、様々な専門的知識が要求されます。
成功事例などの詳細についてを把握し、準備を計画されている場合は、M&A仲介を行う専門家への相談がおすすめです。
産業廃棄物業界のM&Aは事前準備を万全にしよう!
産業廃棄物業の市場規模は直近20年でも急拡大しており、事業譲渡などのM&A取引も盛んになっています。
デューデリジェンスなどの事前準備を万全にすることで、M&A取引が成功します。
取引に関する成功事例について知りたい情報がありましたら、是非M&A総合研究所へご連絡ください。
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