産業用・業務用機械製造業のM&Aの市場動向は?売却・買収事例・相場も調査!
海外進出や事業拡大・効率化が求められる産業用・業務用機械製造業界では、M&Aで現状打破を目指す動向が活発です。当記事では、過去の売却・買収事例を踏まえながら、産業用・業務用機械製造業界のM&A事情を解説します。売却・買収価格相場や注意点も併せて確認しましょう。
目次
産業用・業務用機械製造業界の現状とM&Aの動向
ここでは、産業用・業務用機械製造業界の業務内容と特性、業界を取り巻く現状を押さえた上で、多くの企業で見られるM&A動向をチェックしましょう。
産業用・業務用機械製造業界の特性
産業用・業務用機械製造業界は、産業や法人で使う機械を製造する業務を行う業界です。建設業から医療業界までさまざまな業界で活用する機械を製造します。
企業からの発注を受け、それぞれのニーズに合った機械を製造するため、各業界の景気状況に影響されやすい点が大きな特徴です。
また、専門知識を持った高度な技術とノウハウが求められる業界でもあります。
産業用・業務用機械製造業界の現状
国内製品は高品質なため、海外でも注目されています。ただ、海外も日本の製造技術をM&Aで獲得する企業が増え、低価格で高品質な機械を製造することが可能になりました。
つまり、国内外で競争が激化しやすい業界になったということです。
国内でも人口減少により受注の減少が危ぶまれる中、産業用・業務用機械製造業界の各企業は海外進出や事業効率化を目指さなければならない状況にあると言えます。
産業用・業務用機械製造業界のM&Aの市場規模と動向
産業用・業務用機械製造業界では、上記のような課題を解決すべくM&Aを実施して現状打破を目指す動向が活発化しています。
産業用・業務用機械製造業界で多く見られるM&A動向・パターンは、以下の通りです。
- 動向①:産業用・業務用機械製造のノウハウを獲得するためのM&A
- 動向②:海外進出のためのクロスボーダーM&A
- 動向③:後継者不在に対処するための事業承継M&A
- 動向④:IoTなど新しい技術を導入するためのM&A
- 動向⑤:事業安定化を目指した他業種とのM&A
産業用・業務用機械製造業界のM&A事例
産業用・業務用機械製造業界で過去に実施されたM&A事例を5つ紹介します。
当事者となる企業は、どのような目的で売却・買収を行ったのでしょうか。この点にも注目しながら各事例を確認しましょう。
※詳しいIR情報は、各事例の下部分に掲載のリンクからすぐに参照できます。
- 事例①:オムロンとJMDC
- 事例②:ブラザー工業とニッセイ
- 事例③:ブイ・テクノロジーとアイテック
- 事例④:ニッコンホールディングスと安川トランスポート
- 事例⑤:オーイズミとバブルスター
①オムロンとJMDC
売却企業 | JMDC (医療統計データ分析事業) |
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買収企業 | オムロン (電気機器メーカー・ヘルスケア関連の業務用機械製造) |
M&Aの手法 | 資本業務提携 |
M&Aの目的 | ・ヘルスデータプラットフォームの強化 ・予防ソリューション開発 ・海外事業展開 ・クロスセル |
実施時期 | 2022年2月 |
譲渡価格 | 1118億円 |
②ブラザー工業とニッセイ
売却企業 | ニッセイ (減速機等の業務用機械製造販売、各種小型歯車製造販売) |
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買収企業 | ブラザー工業 (プリンターやミシン等の産業用・業務用機械製造・販売) |
M&Aの手法 | 公開買付け(TOB) |
M&Aの目的 | ・海外展開更なる強化 ・新製品開発や技術面でのシナジー効果創出 ・人事交流・育成の強化 ・経営資源最適化と収益性強化 ・コスト削減とリスク排除 |
実施時期 | 2021年11月 |
譲渡価格 | 165億6700万円 |
③ブイ・テクノロジーとアイテック
売却企業 | アイテック (システムソリューション事業、インフラソリューション事業) |
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買収企業 | ブイ・テクノロジー (フラットパネルディスプレイ・半導体に用いる装置開発、 産業用・業務用機械製造) |
M&Aの手法 | 株式譲渡 |
M&Aの目的 | ・装置用ソフトウェアの開発力強化 ・農業事業での協働 ・新たなビジネス機会の創出 ・グループの競争力強化と事業拡充 |
実施時期 | 2022年1月 |
譲渡価格 | 非開示 |
④ニッコンホールディングスと安川トランスポート
売却企業 | 安川トランスポート ※安川電機傘下 (運輸・物流サービス、貨物運送事業) ※当事例後に社名を「ニッコン北九」に変更 |
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買収企業 | ニッコンホールディングス (総合一貫物流事業) |
M&Aの手法 | 株式譲渡 |
M&Aの目的 | ・九州北部の輸送力強化 ・首都圏・関西圏出発のトラックの帰り便確保 ・シナジー効果の創出 |
実施時期 | 2022年4月 |
譲渡価格 | 非開示 |
⑤オーイズミとバブルスター
売却企業 | バブルスター (健康食品の製造・Eコマース事業、食品輸入・卸販売) |
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買収企業 | オーイズミ (産業用・業務用機械製造、太陽光発電、ゲームソフト、 酒類販売、遊技場設備機器等幅広い事業) |
M&Aの手法 | 株式譲渡 |
M&Aの目的 | ・更なる事業分野拡大 ・グループにおけるシナジー効果の創出 ・企業価値の向上 |
実施時期 | 2022年3月 |
譲渡価格 | 非開示 |
産業用・業務用機械製造業界のM&Aのメリット・デメリット
産業用・業務用機械製造業界のM&Aのメリットとデメリットを確認しましょう。M&Aは課題を効率的に解決できる点が魅力ですが、考慮すべき点も存在します。
メリットとデメリットの両方を把握してから、M&Aの手続きに入りましょう。
メリット
まず、産業用・業務用機械製造業界のM&Aにおけるメリットをチェックしましょう。売却側・買収側の視点に分けて解説します。
売り手側
産業用・業務用機械製造業界のM&Aにおける売却側のメリットは、次の通りです。
売却側のメリット | ・株式や事業譲渡による売却益が得られる ・従業員の雇用を維持できる ・後継者問題を解決できる ・大手傘下に入れば経営が安定する ・経営者が個人債務から解放される |
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買い手側
産業用・業務用機械製造業界のM&Aにおける買収側のメリットは、次の通りです。
買収側のメリット | ・顧客や人材を獲得できる ・低コストで産業用・業務用機械製造業界に参入できる ・効率的に事業拡大できる ・事業エリアを拡げられる ・売却側とのシナジー効果を期待できる |
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デメリット
では次にデメリットを確認しましょう。こちらも同様に売却側・買収側それぞれの視点で解説します。
売り手側
産業用・業務用機械製造業界のM&Aにおける売却側のデメリットは、以下の通りです。
売却側のデメリット | ・理想通りの条件にならない場合がある ・不安を感じた従業員が退職するおそれがある ・取引先との関係が悪化するおそれがある ・会社経営における影響力が小さくなる ・マッチングに苦戦する場合がある |
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買い手側
産業用・業務用機械製造業界のM&Aにおける買収側のデメリットは、以下の通りです。
買収側のデメリット | ・期待通りのシナジー効果が得られない場合がある ・買収にかかる資金の調達が必要 ・売却側の簿外債務を引き継ぐおそれがある ・売却側従業員が待遇に不満を抱くおそれがある ・文化の融合にかなりの時間を要する場合がある |
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産業用・業務用機械製造業界のM&Aの買収・売却価格相場
産業用・業務用機械製造業界でM&Aを実施する場合、各企業はどの程度の相場を想定すれば良いのでしょうか。
ここでは、産業用・業務用機械製造のM&A価格相場で押さえておきたい知識と価値算出方法を簡単に解説します。
価格相場
産業用・業務用機械製造業界のM&A相場は、多くの場合数億円を超えると言われています。ただケースバイケースなので、一概に言える数字が存在しません。
例えば、当事者となる会社の大きさや事業規模、期待できるシナジー効果の大きさや収益性といった項目が取引価格に影響を与えます。
価値の算出方法
上記の通り産業用・業務用機械製造業界には明確な相場基準が存在しませんが、大まかな相場を算出することはできます。
さまざまなアプローチが存在しますが、以下のような式を用いるのが一般的です。
大まかなM&A相場の算出方法 |
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M&A取引価格相場 = 時価純資産 + 営業利益 × 2~5年分 |
ただし、価値相場の算出には「のれん代」という見えない企業資産を評価しなければなりません。専門家のサポートを受けながらの算出をおすすめします。
産業用・業務用機械製造業界のM&Aの手順
ここでは、産業用・業務用機械製造業界でM&Aを行う際の手順を8つのステップに分けて解説します。
こちらで記載する内容は、他の業種にも共通です。戦略策定からクロージングまで基本的な流れをチェックしましょう。
- 戦略策定
- 委託契約
- 本格的な戦略策定
- 会社売却・買収の手続き
- 基本合意書の締結
- デューデリジェンス
- 最終条件交渉・契約締結
- クロージング
①戦略策定
M&Aの準備として最初に行うのが、戦略策定です。会社状況を分析し、改善したい課題点を明確にします。M&A手法を含め、大まかな方向性を定めましょう。
M&Aを実施することで、効果が得られる見込みが立てられたら手続きに入ります。
②委託契約
大まかなM&Aの方向性が決まったら、委託契約の締結です。M&Aは、一般的にM&A仲介会社など知識を持つ専門家に相談・依頼して手続きを進めます。
仲介手数料や料金体系を事前に確認し、信頼できる仲介会社を見つけましょう。
③本格的な戦略策定
専門家の助言のもと、本格的な戦略策定と相手企業候補の絞り込みを実施します。市場動向を分析し最適なM&A手法を見つけ、候補企業経営者と会談を行いましょう。
トップ会談で共感できる部分が多い企業が見つかれば、マッチング成功です。
④会社売却・買収の手続き
相手企業の絞り込みが終わったら、いよいよ売却・買収手続きに入ります。M&Aの具体的な条件を当事者間でまとめましょう。双方が合意できる内容を目指します。
売却側の場合は、従業員の処遇など不安要素を明確化しておくと良いでしょう。
⑤基本合意書の締結
M&Aの条件がまとまったら、基本合意書を締結します。基本合意書には、取引日、M&A手法、株式の種類・数量、譲渡価格、支払い方法を記載するのが一般的です。
基本合意書は双方によるM&Aへの合意を示すもので、法的拘束力がありません。
⑥デューデリジェンス
次に、デューデリジェンスを実施します。デューデリジェンスとは、売却側の経営状況、設備や資源、負債やリスクといった項目を調査する実態把握プロセスです。
デューデリジェンスは、主に買収側企業が専門家に依頼して執り行われます。
⑦最終条件交渉・契約締結
デューデリジェンスが完了したら、最終条件交渉と契約締結です。基本合意書の内容とデューデリジェンス結果をもとに、細かい条件調整を当事者間で行います。
最終契約書は法的拘束力があるので、締結前に入念に条件を確認しましょう。
⑧クロージング
M&Aの最終段階に位置するプロセスが、クロージングです。契約書の条件・スケジュールに従って、株式や事業の譲渡と対価の支払いが当事者間で執り行われます。
クロージングの行程まで済めば、一連のM&Aの手続きは完了です。
産業用・業務用機械製造業界のM&Aを行う場合の注意点
ここでは、産業用・業務用機械製造業界でM&Aを行う際の注意点を紹介します。以下5つのポイントに留意しながら、手続きを進めましょう。
- 事前の準備をしっかりと行う
- 従業員のモチベーション維持を徹底する
- 自社の強みをアピールする
- M&Aの目的を明確にする
- M&Aの専門家に相談する
事前の準備をしっかりと行う
1つ目の注意点は、事前準備を入念に行うことです。経営難や人材不足といったリスクが多い状況では、M&Aを実施してもマッチングに苦戦する可能性があります。
経営が安定している頃から計画し、適切なタイミングで動けるよう準備しましょう。
従業員のモチベーション維持を徹底する
2つ目の注意点は、従業員のモチベーション維持を徹底することです。M&Aの情報を聞きつけた従業員が困惑し、最悪の場合離職してしまう可能性があります。
待遇やM&A条件が決定したタイミングで従業員に伝え、納得してもらいましょう。
自社の強みをアピールする
3つ目の注意点は、自社の強みをアピールすることです。会社状況を客観的に分析し、得意分野や取引実績など武器になるデータを資料にまとめましょう。
アピールポイントが明確な企業は、M&Aの相手候補に挙がりやすくなります。
M&Aの目的を明確にする
4つ目の注意点は、M&Aの目的を明確にすることです。目的が漠然としたM&Aは、多くの場合マッチングできてもかえって損失になる可能性があります。
自社状況を分析した上で、方向性やニーズに合致した相手企業を見つけましょう。
M&Aの専門家に相談する
5つ目の注意点は、M&Aの専門家に相談することです。産業用・業務用機械製造業界に限らず、M&Aは法務・税務といった専門知識が多くの場面で求められます。
産業用・業務用機械製造業界で実績がある仲介会社のサポートを受けましょう。
産業用・業務用機械製造業界のM&Aは専門家に相談して成功させよう!
産業用・業務用機械製造業界で海外進出や事業拡大を目指す際は、M&Aが有効なです。既存ノウハウや技術を活用できるので、効率的に課題解決を狙えるでしょう。
産業用・業務用機械製造業界の実績がある知識豊富なM&A仲介会社に相談・依頼し、アドバイスを受けながらM&A成功を目指しましょう。
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