福祉用具レンタル会社におけるM&Aとは?業界動向や相場・メリットまで解説!
福祉用具は、高齢化が進む日本では、需要の高い業界と言えます
本記事では、福祉用具レンタル業界におけるM&Aの事例や売却相場、メリットについて解説します。
福祉用具レンタル業界のM&Aを検討の方は、ぜひ参考にしてください。
目次
福祉用具レンタル会社のM&Aの業界動向と課題
福祉用具レンタル会社のM&Aの業界動向と課題を以下の項目に分けて解説します。
- 福祉用具レンタル会社の特色とは?
- 福祉用具レンタル会社のM&Aの現状と業界動向
- 福祉用具レンタル会社の今後の課題
福祉用具レンタル会社の特色とは?
高齢者が生活する上では、様々な福祉用具が必要かもしれません。
福祉用具を貸し出すのが福祉用具レンタル業界であり、高齢化社会によって、レンタル介護事業所が全国的に増えています。
また、福祉用具レンタル業界は初期投資が少なく参入しやすいという特色があります。
福祉用具レンタル会社のM&Aの現状と業界動向
2000年に導入された介護保険制度の対象になったことから、福祉用具レンタル業界の市場規模は急激に拡大しました。
しかし、2018年10月からの「上限価格の設定」と「平均貸与価格の公表」によって事務処理などが増加し、レンタル介護事業から撤退する企業が増えています。
その一方で、経営者の高齢化による事業承継やM&A(企業の合併・買収)が目立つようになり、中小規模の会社から資本力のある大手業者へと経営状況が変化しつつあります。
福祉用具レンタル会社の今後の課題
現在、中小規模のレンタル介護事業の経営者の多くは、高齢化が問題となっています。
懸念されるのは、事業の廃止を決断せざるを得ない経営者が増えていることです。
さらなる高齢化が予想される状況において、福祉用具レンタル会社の社会的使命はますます大きくなることでしょう。
福祉用具レンタル業界の今後の課題は「事業継承やM&Aによる買収・合併などによっていかに事業を続けていくか」ということです。
福祉用具レンタル会社のM&Aの手法
福祉用具レンタル業界のM&Aの手法は、以下の通りです。
- ①株式譲渡
- ②株式交換
- ③合併
- ④事業譲渡
- ⑤事業承継
- ⑥会社分割
それぞれのM&A手法について、具体的にみていきましょう。
①株式譲渡
M&Aで最も多く行われるのが株式譲渡で、対象会社の株主が買い手に持株を譲渡するという方法です。
基本的に買い手は100%全ての株式取得します。
②株式交換
株式交換は、買い手が相手会社の発行済み株式をすべて取得し、対価として自社の発行済み株式を交付する方法です。
完全子会社化する場合に使われるスキームです。
③合併
合併というのは複数の会社を一つの会社に統合する方法で、吸収合併と新設合併の二種類があります。
吸収合併は、合併により消滅する会社の権利義務のすべてを、合併で存続する会社が引き継ぐスキームです。
一方、新設合併は、同様の権利義務のすべてを、合併時に新しく設立した会社が引き継ぐスキームです。
多くの合併で行われているのは、吸収合併のスキームと把握しておきましょう。
④事業譲渡
事業譲渡は、対象会社の事業だけを買い手に譲渡する方法です。
対象会社は譲渡の対価を受け取り、買い手がその後の事業を運営していきます。
⑤事業承継
事業承継とは、事業の経営権を後継者に引き継ぐスキームのことです。
親族が引き継ぐ親族内承継、親族以外の役員や従業員が引き継ぐ親族外承継、社内以外の第三者が引き継ぐM&Aがあります。
⑥会社分割
会社分割は、様々な事業を運営している場合、その中身を分けて一部の事業を別会社に承継させる方法です。
事業を切り出す元会社を分割会社、受け入れる会社を承継会社と呼びます。
福祉用具レンタル会社のM&Aのメリット・デメリット
M&Aによる福祉用具レンタル業界の売却・買収にはどのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか。
売り手側と買い手側それぞれのメリット・デメリットについて説明します。
メリット
売り手側・買い手側のメリットについて具体的に解説します。
売り手側
売り手側のメリットは、以下の通りです。
- 後継者問題を解決できる
- 人材不足を解消できる
- 介護報酬の改定による不安を解消できる
- 売却益を得ることができる
- 事業運営における競争激化の心理的負担を解消できる
福祉用具レンタル業界では、中小企業の多くが後継者問題を抱えており、M&Aによって自社を存続できます。
また、要介護高齢者が増加してるにもかかわらず、人材不足が深刻化しており、M&Aにより人材不足を解消できるだけでなく、売り手企業に在籍する人材も活用できます。
福祉用具レンタル会社にとって、介護報酬の改定は報酬の引き下げという不安が付きまといますが、M&Aで売却すれば不安が解消できます。
さらにM&Aの取引金額によっては、市場動向や交渉によりますが、億単位の売却益を得られます。
福祉用具レンタル業界は、新規参入の増加により競争が激化しています。
とくに中小企業の心理的負担は大きく、M&Aを実施すれば競争激化の負担から解放されるでしょう。
買い手側
買い手のメリットは、以下の通りです。
- 人材不足が解消できる
- ノウハウを獲得できる
- 利用者数の増加に対応できる
介護事業者の多くは慢性的な人材不足に悩まされていますが、M&Aによる買収を実施すれば自社の人材を増強・確保できます。
また新たに福祉用具レンタル事業に参入する場合、ノウハウやスキルの習得という問題が生じますが、M&Aによってすでにノウハウが身についているスタッフを獲得できるのでスムーズな新規参入が可能です。
要介護高齢者の増加に対応できないと獲得できる顧客を逃してしまいます。
しかし、M&Aにより買収すれば、設備の拡大・充実が可能になり利用者数の増加に対応できます。
デメリット
売り手側・買い手側のデメリットについて具体的に解説します。
売り手側
売り手側のデメリットは、以下の通りです。
- 技術やノウハウが流出する
企業が長年培ってきた技術やノウハウが、買収や合併によって他社に流出するリスクがあります。
買い手側にとってはメリットになりますが、やはり売り手側にとってはデメリットといえるでしょう。
買い手側
買い手のデメリットは、以下の通りです。
- 法的なリスクを被る可能性がある
買い手側にはメリットが多いM&Aですが、買収・合併後に法的なリスクが見つかる場合があります。
リスクに対する対応が遅れて事業運営に支障をきたすこともあるでしょう。
福祉用具レンタル会社のM&Aの価格相場
M&Aで売却する場合、「自社がどのくらいの価格で売れるのか」気になる方が多いかもしれません。
また、買収する側にとっても取引価格は重要なポイントです。
福祉用具レンタル業界のM&Aにおける譲渡価格相場について解説します。
買収相場
買い手側にとって重要なのは、どの程度の価格で買い取れるのかという買収相場です。
買収相場を知る上で欠かせないのが、企業評価価値の算出です。
企業価値の算出方法には、次の3つのアプローチがあります。
- コストアプローチ
- インカムアプローチ
- マーケットアプローチ
コストアプローチというのは純資産を基準として企業価値を算出する方法で、帳簿の内容をもとにして価値を算定します。
客観的で精密な算出が可能なため、多くのM&Aで活用されています。
インカムアプローチは、将来期待できる収益やキャッシュフローから企業価値を評価します。
あらかじめリスクを考慮した率を割り引いておきます。
マーケットアプローチは、株式市場での価格をもとにして企業価値を算出する方法で、類似業種比準方式と類似会社比準方式の2つがあります。
売却相場
福祉用具レンタル会社の売却相場では、売上規模が大きく、展開地域の人口が多いほど高い金額になりやすい傾向があります。
また、買い手の戦略的地域に合致している場合も売却相場は高くなります。
具体的な目安としては、既存利用者、レンタル資産、介護事業者とのコンタクトのみを譲渡・売却する場合、年間売上の80~110%の評価額になります。
福祉用具レンタル会社のM&A・売却・買収事例
福祉用具レンタル会社のM&A・売却・買収事例は、以下の通りです。
- ①芙蓉総合リース×日本信用リースのM&A事例
- ②内藤建設×トーカイのM&A事例
- ③カスケード東京×フォービスライフのM&A事例
- ④ホームケアサービス山口×フランスベッドホールディングスのM&A事例
- ⑤栗原医療器械店×セラピのM&A事例
- ⑥フルケア×インターネットインフィニティーのM&A事例
- ⑦プロトメディカルケア×ベネッセHDのM&A事例
- ⑧日本ケアサプライ×ALSOKのM&A事例
- ⑨日本パムコ×日本毛織のM&A事例
- ⑩ソラスト×日本エルダリーケアサービスのM&A事例
- ⑪ココカラファイン×キコーメディカルのM&A事例
それぞれの事例について詳しくみていきましょう。
①芙蓉総合リース×日本信用リース
2021年4月に介護福祉用具や医療機器のリース・販売事業を行っている日本信用リースをM&Aによって買収しました。
芙蓉総合リース株式会社は全国で総合リース事業を展開しています。
本M&Aの特徴は、芙蓉総合リースがすでに日本信用リースの株式30%を保有していたことです。
これによって、100%子会社化に成功しています。
本事例の今後の動向として、芙蓉総合リースグループ内の医療事業と福祉事業の取り組みを強化するでしょう。
②内藤建設×トーカイ
会社分割の手法で自社の福祉用具レンタル事業と福祉用具販売事業を、2019年5月にトーカイへ譲渡しています。
内藤建設は岐阜・美濃エリアで事業展開しています。
本事例の今後の動向として、トーカイは福祉用具レンタル事業と福祉用具販売事業の顧客基盤とシェアの拡大を図っていくでしょう。
③カスケード東京×フォービスライフ
2022年2月、主に江戸川区、江東区、杉並区で介護事業や福祉用具レンタル・販売を行っているフォービスライフの株式を取得しました。
ケスケード東京は首都圏で通所介護、居宅介護、整骨院・鍼灸・訪問鍼灸マッサージ、リラクゼーション事業、児童福祉支援事業などを首都圏で幅広く運営しています。
本事例の今後の動向として、グループ介護施設と連携したきめ細かい介護サービスを提供するでしょう。
④ホームケアサービス山口×フランスベッドホールディングス
2021年に福祉用具レンタルなどを手掛けているホームケアサービス山口を株式譲渡により買収しました。
フランスベッドホールディングスは介護用品・福祉用具のレンタルや販売事業を行っています。
本事例の今後の動向として、福祉用具レンタル事業のシェアを拡大し、介護事業の基盤を強化するでしょう。
⑤栗原医療器械店×セラピ
2021年4月に福祉用具などの卸事業・レンタル事業を行っているセラピから、事業譲渡により介護・福祉用具のレンタル事業を取得しました。
栗原医療器械店は医療機器販売事業を運営しています。
本事例の今後の動向として、営業エリアと事業領域の拡大を目指すでしょう。
⑥フルケア×インターネットインフィニティー
2021年に福祉用具レンタル・販売を手掛けるフルケアを株式譲渡で買収しました。
インターネットインフィニティーは、様々なヘルスケアサービスおよび医療や介護事業を展開しています。
本事例の今後の動向として、介護事業をさらに拡大させ、サービス品質の向上や経営の効率化に努めるでしょう。
⑦プロトメディカルケア×ベネッセHD
2021年には福祉用具レンタルなどを手掛けているプロトメディカルケアを株式譲渡で買収しました。
教育事業で知られているベネッセHDでは、長年にわたり介護事業を行っています。
本事例の今後の動向として、介護領域の拡大により、「自分らしく生きる」という高齢者の願いを叶える社会課題に応えていくでしょう。
⑧日本ケアサプライ×ALSOK
2020年、福祉用具レンタル・販売を行っている日本ケアサプライの株式を32%取得し、資本参加を実現しました。
警備事業で知られているALSOKですが、有料老人ホームやグループホーム、デイサービスの運営、福祉用具レンタル・販売にも力を入れています。
本事例の今後の動向として、ALSOKの介護事業はサービス利用者や高齢者向けの生活支援サービスの拡充を図っていくでしょう。
⑨日本パムコ×日本毛織
2015年、千葉県で福祉用具レンタル事業を運営する日本パコムを株式譲渡で買収しました。
日本毛織は1896年(明治29年)創業の毛織メーカーですが、街づくり事業の一環として介護事業にも取り組んでいます。
本事例の今後の動向として、関東地方での地盤強化を推し進めることができ、さらなる介護事業の拡大を図っていくでしょう。
⑩ソラスト×日本エルダリーケアサービス
2020年8月、介護サービス事業を行う日本エルダリーケアサービスの全株式を取得して完全子会社化しました。
ソラストは医療関連受託事業、保育事業、教育サービス事業をはじめ、福祉用具レンタルなどの介護事業を行っています。
本事例の今後の動向として、介護事業の展開エリア拡大と提供サービス内容を拡充するでしょう。
取得価格は23億7,500万円です。
⑪ココカラファイン×キコーメディカル
2021年に福祉用具レンタル・販売事業を手掛けるキコーメディカルを株式譲渡により買収しました。
ココカラファインはドラッグストアチェーンや調剤事業を展開している会社です。
本事例の今後の動向として、ドラッグストア・調剤事業のみならず、介護事業とのより一層の連携を図るでしょう。
福祉用具レンタル会社でM&Aを成功させるポイント
福祉用具レンタル会社でM&Aを成功させるポイントは、以下の通りです。
- M&Aの目的を明確にする
- シナジー効果が期待できる企業に売却する
- 税金対策をしっかりと行う
- 相場を把握する
- 実績や経験が豊富なM&A仲介会社を選ぶ
それぞれのポイントについて詳しく解説します。
M&Aの目的を明確にする
福祉用具レンタル会社のM&Aでは、利用者に不安を与えないことが最優先です。
そのため、情報を漏らさず、不安を与えないよう細心の注意を払ってください。
全国的に様々な介護事業が展開されていますが、M&Aの目的は各会社によって違います。経営者の高齢化であったり、事業を継承する者がいないなど売り手側の事情も様々です。また、買い手側の事情も経営基盤の強化、事業の拡大など目的は色々でしょう。
最も大切なことは、何のためにM&Aを行うのか、目的をはっきりさせることです。
目的が明確になれば、売り手側との交渉もうまくいきます。
シナジー効果が期待できる企業に売却する
売却側にとって重要なポイントは、譲渡先の選定です。
そのために、自社の強みをしっかり理解しておきましょう。
M&Aによって、高いシナジー効果を上げることができる相手を見つけることをおすすめします。
また、お互いの経営理念を理解することが重要です。
シナジー効果の高い相手なら売却価格も高くなり、譲渡後の経営もうまく進めることができます。
税金対策をしっかりと行う
M&Aによる株式譲渡では、税金の支払いが必須です。
税金の種類や算出方法などは個人と法人では異なるので、事前にしっかりと把握しておきましょう。
また、個人が株式譲渡で得た利益に対する税金は、所得税と住民税です。
法人の場合は、譲渡益に対する法人税が課されます。
また、法人の株主は欠損金の繰越控除が利用でき、M&Aにおける株式譲渡の対価の一部を役員退職金で支払うといった方法もあります。
税金対策には色々ありますので、福祉用具レンタル会社のM&Aを実施するのなら、税金対策をしっかり行なっておきましょう。
相場を把握する
M&Aを実施するにあたって、最も重要なポイントは価格です。
どのくらいの価格になるのかを判断するのは難しいですが、相場をしっかり把握しておくことが大事です。
自身で判断するのが難しい場合は、M&Aの専門家に相談してみましょう。
実績や経験が豊富なM&A仲介会社を選ぶ
譲渡価格・買収価格の相場を自分で見極めるためにマッチングサイトを利用するという方法があります。
多くの福祉用具レンタル会社の経営者はM&A経験がないのでスムーズに進みません。
福祉用具レンタル会社のM&A・事業譲渡・売却をスムーズに行うためには、専門家に相談することをおすすめします。
その他の方法は、地元の金融機関、地元の公的機関、地元の弁護士・税理士・会計士などがあります。
福祉用具レンタル会社でM&Aを行う際の注意点
福祉用具レンタル会社でM&Aを行う際の注意点は、以下の通りです。
- デューデリジェンスは入念に行う
- 情報漏洩には十分に注意する
- 適正価格で取引を行う
それぞれの注意点について、詳しくみていきましょう。
デューデリジェンスは入念に行う
企業の経営状況や財務状況を事前に調べることを「デューデリジェンス」といいます。
デューデリジェンスを行うことで、事前にリスクを洗い出せますし、リスク対策も立てられます。
また、リスクが発生した場合のリスク分担などについても事前に話し合いができます。
情報漏洩には十分に注意する
売り手側にとって注意すべきことは、事前の情報漏洩です。
M&A実施の情報がもれると従業員に不安を抱かせてしまうことになり、買収・合併がスムーズに行われないかもしれません。
事前の情報漏洩には十分な注意してください。
適正価格で取引を行う
譲渡価格・買収価格での注意点は、売り手側と買い手側の利害が一致するように調整することです。
お互いに納得できるような話し合いが必要で、M&A仲介会社に助言をもらう必要があるでしょう。
M&A仲介会社のアドバイスによって、適正価格の具体的な根拠が示せますし、価格交渉もスムーズに進みます。
福祉用具レンタル会社のM&Aは専門家へ!
高齢化社会によって、福祉用具レンタル会社の存在意義はますます高まっています。
M&Aは、年を追うごとに件数も増加しており、M&Aの失敗は避けたいと誰もが考えるでしょう。
適正価格でスムーズな取り引きを行うためにも、専門家のアドバイスを受けるようにしましょう。
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