製造業のM&Aの動向を徹底解説!売却・買収事例や相場・メリットは?
この記事は、製造業界におけるM&Aの動向に焦点を当て、事例や市場相場、M&Aがもたらすメリット・デメリットについて解説しています。成功した事例から学ぶべきポイントなどを詳しく説明します。
目次
製造業は、国内GDPの約20%を占める産業です。
しかし、製造業の市場価値は高いものの、経営者の高齢化や事業承継問題によってM&Aを余儀なくされている事例も少なくありません。
本記事では、製造業界のM&Aの動向やM&Aのメリット・デメリットについて解説します。
今後、製造業のM&Aを考えている方は、ぜひ参考にしてください。
製造業界の実情とM&Aの動向
製造業は全体で見ると、低下しつつある業界になります。
製造業のM&Aの動向は中小企業が大企業の傘下に入ることが多い傾向にあるでしょう。
製造業界のM&Aの動向について下記の項目に分けて解説していきます。
- 製造業界とは
- 後継者問題によるM&Aの増加
- 問われる時代の流れに合わせた変化
- 非製造業とのM&Aも増加傾向にある
製造業界とは
製造業とは、材料を加工や組み立てによって、製品として販売して利益を得る業態です。
製造業は、2次産業に該当し、取り扱う製品は、医薬品や食品、自動車など多岐にわたります。
また、日本の製造業は、1998年代までは市場価値が高く、業績は好調でした。
しかし、1990年代以降安くて高品質である中国や韓国製品にとって変ってしまいました。
近年の動向では、製造業の開業率は5%にも満たない状態となり、他業種より参入障壁が高い傾向にあるでしょう。
後継者問題によるM&Aの増加
製造業の動向として、後継者不足によるM&Aの増加が挙げられます。
中小企業の多くは、事業承継や後継者不足問題といったデメリットを補うためにM&A化します。
また、継続的な事業経営のために大手企業と戦略的にM&A 化する企業も多いでしょう。
また、現在では経営者の高齢化によるM&Aのみではありません。
製造業は、技術が優れている一方、取引先との関係性が固定化されてしまい、営業で売り込みが難しいというデメリットがあります。
そのため、近年の動向として、比較的若いオーナー社長でもM&Aを通じて、新たな成長を遂げる企業も多く存在します。
問われる時代の流れに合わせた変化
製造業のM&Aでは、企業成長のため問われる時代の流れや動向に合わせた変化が必要です。
近年の動向では、自動車のEVシフトやAIの新しい技術、新たな提携戦略の展開など時代の流れによって生まれる様々な課題に対して柔軟な対応が求められます。
日々の業務をこなしているのみでは企業の成長に繋げることは難しいでしょう。
製造業において持続的な成長を求めるのであれば、時代の流れに柔軟に対応する必要があります。
非製造業とのM&Aも増加傾向にある
現在の製造業のM&Aの動向として、非製造業との連携によるM&Aも増加傾向にあります。
現在では、モノづくりの企業を継承して成長させたいという意欲を持つ製造業者が多く、商社やIT企業とM&Aを組む事例も多くなっています。
また、日本国内はもちろん、海外進出との連携の可能性も考えられるでしょう。
今後の動向として、中小企業のM&Aは、製造業の成長において重要な役割を果たしており、今後の非製造業との連携や技術力の活用が期待されます。
製造業界のM&Aによる売却・買収事例
製造業界のM&Aによる売却・買収事例は以下のような事例が挙げられます。
- 宝ホールディングス株式会社と株式会社WAKAZEのM&A
- 株式会社游洛庵と株式会社倉染匠「一乃倉」事業のM&A
- ローツェ株式会社と株式会社イアスのM&A
- 株式会社ブイ・テクノロジーとジャパンクリエイト株式会社のM&A
- 株式会社たから抜型工業と大創株式会社のM&A
- 山崎製パン株式会社と株式会社神戸屋のM&A
- エバラ食品工業株式会社とヤマキン株式会社のM&A
どのような企業が何を目的にM&Aをし、どのような結果が得られたか具体的に事例をみていきましょう。
宝ホールディングス株式会社と株式会社WAKAZEのM&A
2023年、WAKAZWが宝ホールディングス株式会社と資本業務提携を組んだ事例です。
WAKAZEは、東京やパリ郊外に酒蔵を構え日本酒や日本食レストランの運営している製造業者です。
一方、宝ホールディングス株式会社は、酒類や調味料の製造から輸出入を展開している宝グループの持株会社です。
WAKAZEは、宝ホールディングスをはじめ、数社のベンチャーキャピタルを取引先とする第三者増資し、総額10億円の資金調達しています。
今後の動向は、宝ホールディングスとの協働や資金調達を通してWAKAZEによるアメリカ・中国での事業展開を目指すでしょう。
株式会社游洛庵と株式会社倉染匠「一乃倉」事業のM&A
2022-2023年、一乃倉が游洛庵に事業を譲渡した事例です。
一乃倉は、石版染・竹墨染といった染織技法を強みとするメーカーです。
一方、游洛庵は着物のSPAやレンタルの事業を展開するまるやま・京彩グループの着物メーカーです。
今後の動向として、游洛庵は、染織技法の継承とモノづくりの拡充を目指していくでしょう。
ローツェ株式会社と株式会社イアスのM&A
株式会社イアスがローツェ株式会社の完全子会社となった事例です。
株式会社イアスは、ICP-MSと呼ばれる誘導結合プラズマ質量分析をベースにした半導体工場向け金属分析前処理装置のメーカーです。
ローツェ株式会社は、半導体製造工場向け自動搬送システムやライフサイエンス向け各種機器を製造するメーカーです。
2023年締結されたローツェとイアスのM&A契約され、イアス株式の52%を取得しました。
M&Aの目的としては以下の2つが挙げられます。
- 両者の技術を融合し、新たな製品開発を目指すため
- イアスの製品を市場規模の大きいローツェで展開する事で、グループ全体の成長を加速させるため。
株式会社ブイ・テクノロジーとジャパンクリエイト株式会社のM&A
ジャパンクリエイトが、ブイ・テクノロジーの完全子会社になった事例です。
ジャパンクリエイトは、ウェットプロセス用半導体製造装置などの製造業者です。
ブイ・テクノロジーは半導体関連の製造装置・検査装置の製造業者です。
2022年12月、ブイ・テクノロジーがジャパンクリエイトの全株式を取得しました。
今後の動向は、両社の融合による装置事業の強化を目指していくことでしょう。
株式会社たから抜型工業と大創株式会社のM&A
大創株式会社は、たから抜型工業のM&A化した事例です。
たから抜型工業と大創はどちらも抜型の会社ですか、手がけている製品が異なります。
元々、たから抜型工業は親族内承継による事業承継していましたが、今後の会社の発展を意識し、M&Aを試みました。
今後の動向は、双方の技術力によってカバーできなかった分野への進出が期待されるでしょう。
山崎製パン株式会社と株式会社神戸屋のM&A
株式会社神戸屋が、山崎製パン株式会社に事業を譲渡した事例です。
山崎製パンは、製パンメーカーです。
神戸屋は、関西を起点に包装パン・デリカ食品製造販売事業、レストラン事業までも展開する製造業者です。
2022年8月、両社の間で株式譲渡契約が締結され、山崎製パンが全株式を取得しました。
今後の動向は、事業ポートフォリオを見直し、山崎パンによる生産力や営業力の向上を目指していくでしょう。
エバラ食品工業株式会社とヤマキン株式会社のM&A
ヤマキン株式会社が、エバラ食品工業株式会社の完全子会社となった事例です。
ヤマキンは、小袋製品を中心とする液体調味料製造業者です。
一方、エバラ食品工業は、家庭用や業務用を中心とする製造業者です。
2022年5月、ヤマキンの全株式を取得しています。
今後の動向は、需要拡大が予想される小容量製品の製造や供給体制を強化していくでしょう。
製造業界のM&Aによるメリット・デメリット
製造業界のM&Aによるメリット・デメリットはどのようなものが挙げられるでしょうか?
買収側と売却側に分けて解説していきます。
買収側メリット
製造業のM&Aにおけるメリットは以下の通りです。
- スピーディな事業展開ができる
- ジナジー効果による事業拡大が見込める
- 経営資源の再編におけるコスト削減が見込める
- 事業に必要な設備や人材を確保できる
買収側は、既存事業の拡大や新規立ち上げに要する時間を大幅に削減できるでしょう。
買収側デメリット
製造業のM&Aにおけるデメリットとしては、一定程度の資金が必要であることが挙げられます。
そのため、もしM&Aを考えている企業は、はじめに資金調達するように心がけましょう。
売却側メリット
製造業のM&Aにおける売却側のメリットは、以下の通りです。
- 事業承継できる
- 廃業を回避できる
- 売却益を得られる
- 大手企業によるバックアップを受けられる
- 選択と集中による経営改善ができる
業績が悪化している製造業の中には、後継者がいないため事業承継が進まないといったデメリットがあります。
売却によって、製造業の中小企業が直面している課題の解消につながるでしょう。
売却側デメリット
製造業のM&Aにおける売却側のデメリットは、経営権がなくなることが挙げられるでしょう。
売却したものの、やはり元々自社であったことから名残惜しく感じる人も多いでしょう。
つい、経営について口出しをしたくなりますが、売却した以上、前オーナーに経営権はありません。
製造業界のM&Aが成功する人気企業の傾向
製造業界のM&Aが成功する人気企業の傾向として、以下の4つが挙げられます。
- 見込まれる将来性
- 有能な技術者在籍・製造設備が整っている
- 魅力的な財務状況
- 買い手のついやすい業種である
上記の特徴に当てはまる企業であれば、必然的に売却相場も高くなるでしょう。
それぞれの傾向について具体的にみていきましょう。
見込まれる将来性
業界が安定しており、今後も継続して高い収益が見込める会社や成長期であり、今後も収益拡大が期待できる会社であれば売却相場が高くなるでしょう。
また、高い技術や生産能力を持っている企業も買取相場が高くなります。
資本力が弱いというデメリットによって、安値で売却されるとは限りません。
資本力のある買い手とのM&Aによって、V字回復できる可能性があるので高い相場が期待できるでしょう。
有能な技術者在籍・製造設備が整っている
有能な技術者や製造設備が整っている場合、売却相場が高くなる可能性があります。
製造業において、製品を作るための設備は欠かせません。
新しい設備が導入されていたり、メンテナンスがしっかり行われているものであれば高値で買収されるでしょう。
もし、適切な設備が導入されていなければ、買収側は設備投資も必要になるというデメリットが生じます。
そのため、設備投資を低く抑えられる製造業者は高い相場で売却される可能性が高いでしょう。
魅力的な財務状況
魅力的な財務状況である場合、売却相場が高くなる可能性があります。
特に、独自の技術やノウハウ、他ではマネできないような経営資源を持っていれば、買い手が見つかりやすく、高値で売却できるでしょう。
しかし、そのような希少価値の高い経営資源を書いてがうまく活用できなければ意味がありません。
例えば、特定の人間しか使いこなせない、使いこなせる人がM&Aによって会社から離れてしまう場合、その経営資源に価値を見出すことは難しいでしょう。
買収前にノウハウを共有する、しばらく会社に残って引き継ぎするなど工夫するようにしましょう。
買い手のつきやすい業種である
一般的に以下のような業種の場合は、売却相場が高くなる可能性があります。
バイオ、同業の大手、総合商社 | 成長期であり、市場価値が高まってきている業種 |
半導体、食品 | 成熟期にあり、業界の再編が進んでいる業種 |
卸売、飲食サービス | 他業種との協働によって高いシナジー効果が見込める業種 |
成長期にある業種では、大企業による出資も盛んであり、買い手の競争率も高まるため、売却相場が上がります。
また、成熟期にある業種は、さらなる成長や生き残りをかけ業界の再編成が行われます。
M&Aによって、単独では生き残りが難しかった企業でも、双方の技術を合わせることで生き残れるでしょう。
異業種との協働によって、シナジー効果が見込める業種では、M&Aの相手企業も多く、買い手が多く集まるため、買収相場が高くなると言えます。
製造業界のM&Aの相場の算定方法
製造業のM&Aの売却価格は、買い手と売り手の交渉で決まりますが、価格交渉の目安として株式価値評価が利用されます。
製造業界のM&Aの相場の算定方法として以下の3つが挙げられます。
- コストアプローチ
- インカムアプローチ
- マーケットアプローチ
それぞれの相場の算定方法についてみていきましょう。
コストアプローチ
コストアプローチは、中小企業の売却事例でよく使われる方法であり、純資産をもとに評価します。
年買法とも呼ばれ、以下の計算式で算出します。
株式価値=時価純資産+営業利益の2~5年分
時価純資産は、賃借対照表の資産と負債を時価評価にして差し引きしたものです。
基本的には、不動産や有価証券など価格が変動しやすいものに絞って時価評価します。
営業利益の2~5年分は、のれんと言われる営業権として計上されるものです。
高く売れる企業ほど、営業利益にかける年数が大きくなり、売却価格の相場が上がります。
インカムアプローチ
インカムアプローチは、大企業や中堅、ベンチャー企業の売却や買い手が大企業の場合に使用されます。
DCF法とも呼ばれ、事業活動で生み出されたキャッシュフロー表をもとに株式価値を評価します。
予測をベースとする手法のため、主観が入る余地が大きいのがデメリットになります。
そのため、マーケットアプローチと併用されるのが一般的です。
DCFは、以下の手順に沿って評価が行われます。
- フリーキャッシュフロー予測
- 事業価値算出
- 株式価値算出
マーケットアプローチ
マーケットアプローチは、インカムアプローチ同様、大企業や中堅、ベンチャー企業の売却や買い手が大企業の場合に使用されます。
マーケットアプローチは、市場株価法や類似会社比較法が用いられるでしょう。
市場株価法は、上場企業などが買収される際に用いられる方法です。
一方、類似会社比較法は、非上場企業が買収される際に用いられる方法です。
製造業界のM&Aを成功させるためのポイント
製造業界のM&Aを成功させるポイントとして以下の4つが挙げられます。
- 自社の強みを明確にする
- 巨額の投資が必要になる場合がある
- デューデリジェンスを行う
- M&Aの実績と知識が豊富な専門家に相談する
それぞれのポイントについて詳しくみていきましょう。
自社の強みを明確にする
M&Aを成功させるには、自社の強みを明確にする必要があります。
製造業における売却価格は、買い手との交渉により成立します。
つまり、買い手が自社の企業価値を高く見積もれば、売却相場も高くなるでしょう。
自社を高く評価してもらうには、自社の強みを明確にし、買い手企業とのシナジー効果を洗い出す必要があります。
巨額の投資が必要になる場合がある
製造業のM&Aするにあたって、買い手は生産性の向上やDX化の推進にあたり、巨額の投資がデメリットになる可能性があります。
M&Aを検討している企業は、設備投資を実施していない事例もあります。
買い手は、設備の最適化に向けた設備投資が必要になることを視野に入れておきましょう。
デューデリジェンスを行う
M&Aを成功させるためには、デューデリジェンスを行いましょう。
製造業は、一般的な企業とは異なり、サプライチェーンやDX化に伴う設備投資が必要です。
デューデリジェンスが不十分な場合、M&A後に赤字販売が発覚したり、設備投資が必要になるといったデメリットが生じる事例もあるでしょう。
製造業に限ったことではありませんが、M&Aを実施する際はデューデリジェンスを行い、事前に起こりうるリスクを把握しておきましょう。
M&Aの実績と知識が豊富な専門家に相談する
製造業のM&Aを成功させるためには、専門家に相談するようにしましょう。
自社を売却する際は、強みや弱みを把握し相乗効果が生まれるように買い手に交渉します。
買い手候補とのつながりはもちろんのこと、条件のすり合わせや契約締結のためには、法律の知識も必要になるでしょう。
製造業の知識に精通している専門家であれば、スムーズに交渉を進められたり、売却相場が高くなったりする可能性もあります。
M&Aは、税務も関係してくるので、買い手に交渉する前に自社の財務の状況を把握し、税額を押さえておきましょう。
製造業界のM&Aは専門家に相談しながら慎重に行おう
希望の条件で自社を売却したい場合は、製造業のM&Aを専門とする専門家に相談しましょう。
売却相場を高くするためには、シナジー効果を見込める買い手を見つけたり、強みをバリエーションに反映することが重要です。
自力で相性の良い買い手を選定することや強みを評価するのは難しいというデメリットがあります。
専門家は、M&Aの成功に大きく左右するので、実務経験のみならず、製造業のM&Aに精通しているかも判断基準としましょう。
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