設計事務所のM&Aの現状や最新動向は?売却・買収事例から価格相場まで解説!

設計事務所のM&Aは、後継者が不足の問題があり増加しているのが現状です。設計事務所のM&Aには、売却側と買収側にそれぞれメリットやデメリットも存在します。計事務所のM&Aを行うには、事例や相場を理解することが大切です。

目次

  1. 設計事務所の現状とM&Aの動向
  2. 設計事務所のM&Aを行うメリット
  3. 設計事務所のM&Aの売却・買収事例
  4. 設計事務所のM&Aの流れ
  5. 設計事務所のM&Aの価格相場
  6. 設計事務所のM&Aで高額売却するには
  7. 設計事務所のM&Aを成功させるポイント
  8. 設計事務所のM&Aは専門家に相談して成功させよう

設計事務所の現状とM&Aの動向

設計事務所の現状とM&Aの動向について、設計事務所の概要や現状を含め解説してます。 

設計事務所とは

設計事務所とは、日本標準産業分類で建築設計業の事業を営む事業所のことです。

総務省が定める日本標準産業分類においては、建築設計業について建築設計や設計監理などの土木または建築に関わる専門のサービスを提供する事業所と定義されています。

建築設計は、建築物を建設する時に、構造や材料、および工費に対して計画し、図面やその他の方法により明示する行為のことです。

設計監理は、施工業者が図面に従った仕事を行い、手を抜いていないかといった項目を監理することです。

簡単にまとめると、建設計画を立てたり、図面を作ったり、工事監理したりする会社・事務所のことを設計事務所と呼びます。

設計事務所の現状

設計事務所の現状を、以下2点から解説します。

【新設住宅着工戸数が減っている】

少子高齢化など人口減少の影響を受け、新設住宅着工戸数が年々減少している現状です。

自宅を持つ高齢者が高齢者住宅へ転居したり、亡くなったりすることで、空き家が増加していることも現状の問題点です。

その結果、改装工事やリフォームの需要が増え、中古住宅での市場は拡大すると予測できます。

すぐに新設住宅工事がなくなる可能性は低いですが、これからの時代は競争が激しくなると予測されるため、リフォーム市場に参入したり、非住宅へ転用したりすることが現状での生き抜くポイントです。

【人材不足・後継者不足】

建設業では、全体的に離職率が高く、設計事務所で深刻な人材不足や後継者不足が発生しています。

人材不足や後継者不足が深刻化する原因には、現状として不安定な雇用条件や低賃金なこと、拘束時間が長く現場仕事のことなどが考えられます。

主軸で働いていた従業員の高齢化や退職が増えていますが、新しい人材の確保が困難な現状です。

そのため、なぜ人材が不足しているのか考え、この企業で働きたいと思ってもらえるようになることがポイントになります。

また、建設業は2024年4月1日の働き方改革により、規約違反の場合は罰則が与えられます。

そのため、雇用条件や労働状況について現状を考慮ししっかりと整えることが必要です。

設計事務所のM&Aの動向

設計事務所は、少額の資本・設備で経営する小規模経営が多く、従業員の数が少ない場合や設計者が個人で経営している場合が多い現状です。

そのため、事業を継承しようとしても後継者が不在であったり、設計者であるオーナーが退職したりすることによって、廃業しなければならない場合もあります。

一方で、設計事務所の業務では専門的なスキルが必要になり、さまざまな規模があるため、幅広い業界で需要を満たしている可能性も高く設計事務所のM&Aの動向は増加傾向の現状です。

例えば、設計事務所のM&Aの動向において、設計事務所が保持する取引先に着眼し、買収を検討する買い手もいます。

その他にも、設計事務所のM&Aの動向では、建築需要が量より質を重視する時代に変わっていき、現状ではオリジナリティのある建築士が従業員にいる設計事務所は高い評価となる可能性が高いです。

このように、設計事務所のM&Aの動向は、市場の変化や時代の流れにより、需要が変化することを考えた上で、設計事務所のM&Aに向け準備することが成功のポイントになります。

設計事務所のM&Aが近年増加している理由

近年、設計事務所のM&A・事業承継は増加する動向です。

理由は、以下2つです。

① 廃業や倒産を回避するためにM&A・事業承継を検討する

設計事務所のM&Aが増加の動向にある1つ目の理由は、廃業や倒産を回避するためです。

自分が育てた設計事務所を、可能な限り長く続けたい気持ちや、経営する設計事務所で働く従業員のことを検討し、廃業や倒産を回避したいと思うのは当然のことです。 自分の周囲に後継者としてふさわしい人物が存在しない場合、M&Aにより事業承継を選べば、廃業や倒産が回避でき、従業員を守ることができます。

このような理由で設計事務所のM&Aの動向は増えている現状です。 

② 後継者問題を解決するため

設計事務所のM&Aが増加の動向にある1つ目の理由は、後継者問題を解決するためです。

後継者がいないなどの問題がある設計事務所の場合、M&Aは後継者問題の解決策になります。

M&Aは第三者に会社を売るため、後継者が不在の場合でも事業承継が可能です。

そのため、後継者がいない会社にとっては、会社を存続させる手段として有効です。

実際に、日本におけるM&A件数が増えているのは、M&Aで事業を承継することが一般的になっていることが大きく影響し、中小企業がM&Aで事業承継する事例が増加しています。

このような理由で設計事務所のM&Aの動向は増えている現状です。 

設計事務所のM&Aを行うメリット

設計事務所のM&Aを行うメリットを、売却側と買収側で解説します。 

売却側

一般的に中小の設計事務所では資産が少ない場合が多いです。

事務所は賃貸物件であり、揃えられている機材も事務用品やパソコンのみといった事務所も多く、出版社や雑誌社と変わりません。

資格やノウハウを活用し、大手ゼネコンの下請けをしたり、民間住宅または施設の仕事を受けたりするのが中小規模の設計事務所です。

設計事務所のM&Aの動向においては、大規模の設計事務所・建築会社が運営の不調な小規模設計事務所を買収する案件が多くあります。

売手側は、M&Aの仲介会社を通じて第三者の紹介が受けられるため、選択肢が広くなり、最も適した買手側を選択し事業が継承できる確率が高いです。

M&Aが増加している動向でもあったように、後継者が不在の場合でも、M&Aで従業員の雇用を確保し、取引先が継続できることが大きなメリットです。

また、設計事務所のM&Aの動向が増加し選択肢も増えています。

買収側

買収側の大きなメリットは、人材が確保できることです。

設計事務所では人材確保が重要になる業界ですが、M&Aにより資格を持った人材が確保できます。

M&Aで新規エリアに進出することも可能です。

隣接県へ事業を展開したり、地方から都心へ進出したりなど、さまざまなパターンがあります。

地域特性や業界特性により、新天地で基盤を構築するのには多くの時間がかかることも多いです。

しかし、M&Aであれば既に取引先が存在するため、一気に進出できます。

こちらも設計事務所のM&Aが増加している動向の理由です。

また、同地域や同業種でM&Aを行う場合にも、競合企業を買収することで、地元における経営を盤石化することが可能です。

その他にも、魅力のある取引先が獲得できるメリットもあります。

売却側の企業が魅力のある取引先と契約しており、安定して仕事を受けている場合であれば、取引先をそのまま引き継ぐことが可能です。

設計事務所のM&Aの売却・買収事例

設計事務所のM&Aの売却・買収事例を4つ紹介します。  

テクノプロ・コンストラクションとトクオのM&A

1つ目の成功事例は、テクノプロ・コンストラクションとトクオのM&Aです。

テクノプロ・コンストラクションは、株式会社トクオの株式を全て取得し、子会社化した成功事例です。

テクノプロ・グループでは、新中期経営計画での成長戦略の一つに高付加価値化の推進が掲げられています。

このM&A成功事例は、テクノプロ・コンストラクションの建設領域で、メインの業務である施工管理以外の多角化を目的とし、技術者の高付加価値化の推進を狙ったものです。

トクオは愛知や三重、東京、大阪とさまざまな拠点を持ち、建築リニューアル領域における調査や耐震診断、設計・監理をメインに取り組んでいます。

15名の一級建築士が在籍し、合計22名の有資格者がおり、総勢35名にもおよぶ技術者を抱えています。

そのため、調査から設計まで全てを自社で賄うことで高収益を誇っている企業です。

今回のM&A事例では、テクノプロ・コンストラクションの強みの営業チャネルを活かしたクロスセルや、全国的に擁する技術者および採用力を活かした技術者の強化をトクオとの間でも推進させ、事業を拡大させる予定です。

また、テクノプロ・コンストラクションでも、トクオのノウハウを活用し受託開発センターを強化し、建築リニューアル領域での技術者育成や技術力向上を進めています。

テクノプロ・コンストラクション子会社による株式会社トクオの普通株式取得(完全子会社化)に関するお知らせ

日本工営子会社BDP Holdings LimitedとPattern Design LimitedのM&A

2つ目の成功事例は、日本工営子会社BDP Holdings LimitedとPattern Design LimitedのM&Aです。 

日本工営は、英国の建築設計会社であるPattern Design Limitedの全株式を取得し、子会社化した成功事例です。

Patternは大型のスポーツ施設設計や、エンジニアリング分野において高い専門性を保持し、世界的から評価される施設の設計を手がけています。

日本工営は、BDP Holdings Limitedを通じPatternを傘下に収めることで、M&Aアドバイザーとして、日本工営はスポーツ施設分野における事業拡大を目標に掲げ、専門性が高い企業の買収により戦略的な成長を目指しています。

フェイスネットワークとザ・スタイルワークスのM&A

3つ目の成功事例は、フェイスネットワークとザ・スタイルワークスのM&Aです。  

東京の目黒区、世田谷区、渋谷区をメインに、新築一棟のマンションで不動産投資事業を展開している株式会社フェイスネットワークは、実需に向けて建築設計や企画販売、コンサル業務に取り組んでいるザ・スタイルワークス株式会社を、デザイン事務所とし買収した成功事例です。

業務提携の背景や目的は、デザイン性が高い設計や企画ノウハウを所有するザ・スタイルワークスと、高い物件開発力を持つフェイスネットワークが共同で事業に取り組むことで、デザイン性を向上させ、開発力を強化およびブランド力を向上させることを狙った事例になります。

今後は、建築デザイン事業だけでなく、ライフスタイル提案型の都市開発事業やリノベーション事業などにも取り組んでいく予定です。

フェイスネットワークによるザ・スタイルワークスの買収

池下設計と蒼設備設計のM&A

4つ目の成功事例は、池下設計と蒼設備設計のM&Aです。

マイスターエンジニアリングは、連結子会社の株式会社蒼設備設計の株式すべてを、株式会社池下設計に譲渡した成功事例です。

マイスターエンジニアリンググループは、エンジニアリングおよびメンテナンスを事業領域に、コンテンツサービス事業、メカトロ関連事業、ファシリティ関連事業の3つをメインに展開している企業です。

蒼設備設計では、グループの建築設備にかかわる設計や監理を担当し、グループの関連事業分野で補完していました。

池下設計は、建築の設計やコンサルタント、および工事監理や土木設計に取り組んでいます。

今回のM&Aで、マイスターエンジニアリンググループでは、経営資源における選択と集中をする見込みです。

池下設計との、人材採用面や営業面でのシナジーにおける蒼設備設計の企業価値向上が狙えることからM&Aを行った事例です。

池下設計による株式取得(子会社化)に関するお知らせ

設計事務所のM&Aの流れ

設計事務所のM&Aの流れは、以下の通りです。 

①M&A仲介会社を探す

M&Aで事業の承継を決めたら、はじめにM&Aを支援してくれる仲介会社を探します。

インターネット上で買収相手を探せるマッチングサイトも良いでしょう。

M&Aの仲介会社やマッチングサイトでは、幅広く買収先の候補があるため、自分で買収先を探す場合と比較し効率的に買収先を見つけられます。

また、法務や税務にかかわるサポートやアドバイスも専門家から受けられるサービスも多く存在するため、仲介会社やマッチングサイトの協力のもとM&Aを実施することがおすすめです。

②M&A先の選定・交渉

次にM&Aの仲介業者を選定します。

M&Aの工程は長い期間を必要とするため、自社の状況に合わせて寄り添い検討してくれる仲介業者を選ぶことが大切です。

その後、M&Aアドバイザーに頼む場合は、「アドバイザリー契約」を締びます。

仲介会社が決まり、M&Aの準備が整ったら交渉に移ります。

交渉の主な流れは、以下の通りです。

1.ノンネームシート・企業概要書を作成する

ノンネームシートとは、企業が特定されない範囲で情報が記載されたものです。

主に売却企業を買収企業に紹介する場合に用いられ、会社概要または財務状況といったことが記載されています。

ノンネームシートから興味を持った企業に向けて、企業の概要や財務状況の詳細、強みを抽出した企業概要書を作ります。

企業概要書を利用し、買収先企業がM&Aを進めていくか判断するため、買収でのメリットをできるだけ伝えることが重要です。

2.M&Aの種類選択

M&Aには株式譲渡・合併・会社分割などの種類が存在するため、M&Aの目的に適したスキームを選ぶことが大切です。

各M&Aのスキームにより効果が変わるため、スキーム選びを間違ってしまうとM&Aした後に影響が生じてしまいます。

そのため、どれが効果的なスキームか十分に検討してから選ぶことがポイントです。

3.トップ面談を行う

M&Aの候補先が2~3社程度に絞ったタイミングで、トップ面談を実施します。

トップ面談とは、売却側と買収側の企業における経営者が直接顔合わせし、お互いのビジネス・経営ビジョン・売却後の運用方針といったことを話し合い理解を深める場です。

ビジネスにおける疑問点や、伝えきれなかった情報がある場合は、この場で伝えます。

③基本合意

お互いが合意すると、基本合意書を締結し最終合意のために動き出します。

基本合意書には、取引のスキームや譲渡価格などを記載しますが、この段階では基本的な合意のため、後に変更可能です。

利用する仲介会社次第では、基本合意のタイミングで中間金と呼ばれる報酬が生じる場合もあるため、あらかじめ確認しておきましょう。

④デューディリジェンス

事業の資産価値やリスクなどを精査する目的で、実施する事業調査のことです。

基本的に、財務や税務調査、事業リスク調査、法務調査を指し、何の調査をどこまで実施するかは、状況により異なります。

⑤最終条件交渉

買収する企業は、デューデリジェンスによる結果を含め、買収する価格およびスキームなどに対し変更するか検討します。

検討した結果を基に、売却側の企業と買収側の企業で最終条件の交渉を実施します。

⑥最終契約書の締結

最終条件を交渉した後、お互いが条件に合意した場合は、最終契約書を締結します。

最終契約書は最終合意書と呼ばれることもあり、M&Aにおける最終条件をまとめて記載した契約です。

最終契約書は、基本合意書と違い法的拘束力が強いため、違反行為があった場合には損害賠償、または訴訟になる可能性があります。

⑦クロージング

最後に、売却企業と買収企業が株式の譲渡およびその他の条件に合意し、最終契約書を締結したらクロージングを実行します。

クロージングが行われることで、M&Aの手続上は完了です。

クロージングでは、さまざまな混乱が発生する可能性が考えられるため、事前に前提条件や契約内容、M&Aスキームに対して準備しておく必要があります。

譲渡する範囲に対して、譲渡する資産や債権・債務といったことを企業の価値やリスクを考えた上で判断します。

これら事項が決まれば、最終譲渡契約のSPA・クロージングを行いM&Aの手続きが全て完了となるのです。

設計事務所のM&Aの価格相場

設計事務所のM&Aの価格相場について解説します。 

企業評価価値の計算方法

企業評価価値の相場を求める方法は、上場企業と非上場企業・非公開会社で違います。

上場企業であれば、すでに株価が市場に公開されているため、企業評価価値の相場は以下のように簡単に、求めることが可能です。

『計算式』

基準価値=時価総額(株価×発行済総株式数)

一方、非上場企業などの場合、企業評価価値の求め方は、大きく分類し「コストアプローチでの相場の求め方」「マーケットアプローチでの相場の求め方」「インカムアプローチでの相場の求め方」の3種類があります。

それぞれ解説します。

【コストアプローチでの相場の求め方】

ストック・アプローチやネットアセット・アプローチなどと呼ばれることもあり、会社の純資産を基に企業価値の相場を求める方法です。

会計上の純資産額を基準に評価する「簿価純資産法」と、評価対象の企業や事業の全ての資産や負債を時価に置き換えて純資産を評価する「時価純資産法」に分類されます。

『簿価純資産方式での相場の求め方』

企業が出す決算書により、計上されている資産から負債を差し引きして、企業価値の相場を求めます。

企業価値を発行済の株式総数で割ることにより、1株当たりの価値を求めることが可能です。

『時価純資産法での相場の求め方』

企業が保有している資産や負債に対し時価評価を行い、時価評価後の資産に対し負債を引いた金額を企業価値とします。

そこかから企業価値を発行済の株式総数で割ることにより、1株当たりの価値を求めることが可能です。

【マーケットアプローチでの相場の求め方】

市場で成立している価格を基準に企業価値の相場を求める方法です。

代表的なものには、評価対象の企業自体における株式の市場価格を基に評価する「市場株価法」と、評価対象の企業と類似する上場企業における市場株価や、類似したM&A取引での成立価格を基にする一定の倍率を評価対象の企業における経営指標に乗じることで価値を求める「マルチプル法」の2種類があります。

「市場株価法での相場の求め方」

評価対象となる企業が、上場している会社の場合に用いられます。

毎日の終値を1~3ヵ月の平均を取り、評価額と考えるのが一般的です。

「マルチプル法での相場の求め方」

『計算式』

企業価値=自社のEBITDA×類似上場企業のEBITDA倍率

EBITDAとは、金利や税、無形資産、有形資産の減価償却費が差し引かれる前の利益のことです。

EBITDAの計算方法で主に使用されるのは、以下の2通りです。

1. 減価償却費+営業利益

2. 利息(支払利息-受取利息)+減価償却費+経常利益

【インカムアプローチでの相場の求め方】

キャッシュフローや将来的な利益などの収益性をメインに企業価値を求める方法です。

代表的な方法には、評価対象の企業が将来的に生み出すキャッシュフローを、現在の価値から割り引くことで事業価値を求めるDCF法があります。

『計算式』

企業価値=企業が創出するフリーキャッシュフローによる期待値に対し加重平均資本コストを割り引いた現在価値

現在価値は、将来もらう貨幣価値を金利などを考え一定の割引率で割り引き、現在の貨幣価値に換えることです。

また、フリーキャッシュフローは、税金を政府に支払い、事業で必要な投資をした後に株主と債権者に分配できるキャッシュフローのことです。

最終的な価値は交渉により決まる

ここまでM&Aにおける企業評価価値の算出方法を解説しましたが、算出した結果がそのまま最終的な買収価格になるわけではありません。

企業価値の算出には、上記で解説した方法が利用されますが、最終的な価値は交渉により判断されます。

設計事務所のM&Aで高額売却するには

設計事務所のM&Aで高額売却するための方法は、以下5つです。  

従業員の育成

1つ目のポイントは、従業員を育成することです。

従業員の業務に関する知識や、経験が高く評価されていることは多くあります。

そのため、ただ単に従業員が何人いて、どんな業務を行っているかということに加え、各従業員が経験してきたことが、予想外な価値として評価される場合もあります。

そのような場合、例え従業員の平均年齢が高い場合であってもマイナス材料ではありません。

むしろ、高齢の従業員がこれまでに蓄積した経験や、深い知識などが会社の強みに繋がる可能性もあります。

安定した取引先(顧客)を増やす

2つ目のポイントは、安定した取引先(顧客)を増やすことです。

売却企業にどんな取引先が存在するのかも、企業の価値に影響を及ぼします。

大手企業といった取引を始めるのが困難な企業が取引先にある場合、既にある繋がりを評価される可能性が高いです。

特に買収企業が営業力を強化したいと思っている場合、既に取引先が多くあること、企業価値が高くなることもあります。

そのため、M&Aでは自社と関わりがある取引先をリスト化し、分かりやすいようにすることで、買収企業に効果的なアピールが可能です。

売上予測を立てておく

3つ目のポイントは、売上予測を立てておくことです。

設計事務所がM&Aで、より高額で売却したい場合は、収益予測値を立てておくことがおすすめです。

売却側が買収側に客観的なデータで収益予測値を立てておくことにより、買収側は将来性についてイメージしやすくなります。

例えば、これまでの取引先情報をリスト化したり、実績をまとめたりすることで、将来安定した利益が見込めることを可視化できます。

買収側に収益予測値を分かりやすいようにすることで、自社をより高額で売却できる可能性が高いです。

トラブル対処法を検討しておく

4つ目のポイントは、トラブル対処法を検討しておくことです。

設計事務所のM&Aだけでなく、希望条件がそのまま通りスムーズに会社が売却できるとは限りません。

買収企業にも希望条件はありますので、自社の希望条件を貫こうとするだけでは、交渉が長引いたり、もしくは白紙になったりする場合もあります。

また、希望条件で売却できたとしても、M&A後に買収企業とトラブルになることも考えられます。

そのため売却する際には、トラブルが起きた際の対処法を考えておくことがポイントです。

事前にトラブル対処法を検討しておくことで、交渉をスムーズに進められ、M&A後のトラブルにも柔軟に対応可能です。

有能な従業員の離脱に気を付ける

5つ目のポイントは、有能な従業員の離脱に気を付けることです。

前述しましたが、有能な従業員がいることで、企業価値が上がる可能性があります。

事業は、従業員がいなければ行えず、どんなに優れたシステムを所有していても運営する従業員がいなければ意味がありません。

そのため、買収側にとっては従業員の能力も買収する際の重要な判断材料です。

買収側は、買収した後に効率的な運営を行いたいのが一般的なため、売却側として従業員の能力に自信がある場合、そのことを伝えるだけで安心させる効果があります。

汎用性の高い能力があるような従業員であれば、買収側の事業に参画させることも可能なため、企業価値が上がる可能性が高いです。

設計事務所のM&Aを成功させるポイント

設計事務所のM&Aを成功させるポイントは、以下4つです。  

自社の魅力を磨いておく

1つ目のポイントは、自社の魅力を磨いておくことです。

M&Aの売却価格は、貸借対照表や損益計算書などに示された数値以外に、将来の収益性や成長性などを加味して決まるのが一般的です。

これらをPRできる魅力的な案内書を準備しましょう。

会社のストロングポイントを明確に記載し、数字だけでは伝わらない独自の技術がある、人材が充実している、将来性などをうまくPRする事により、相手企業もどんなシナジーがあるのか見極めやすくなります。

また、リスクについても記載することにより、より良い印象を持ってもらいやすくなります。

タイミングを見逃さない

2つ目のポイントは、タイミングを見逃さないことです。

世の中の企業は市場の中で競争をしながら存在しているので、時間の流れとともに状況が変わります。

そのため、対象企業をチェックする際には特定期間の状況だけではなく、さまざまな期間の状況を確認して理想的なタイミングで買収をするべきです。

特に中小企業に関しては、短期間で財務状況が悪化するケースも珍しくありません。

例えば、デューデリジェンスの実施後に長い期間が経過してからM&Aが成約すると、調査時に検討した対策ではうまく対応できない可能性があります。

また、特に仲介会社など第三者から情報を得る場合には、収集した情報が最新のものであるのかを確認する必要があるでしょう。

保有している情報量が多いからと言って、その情報が最新のものとは限らないため注意が必要です。

譲れる条件と譲れない条件を明確にしておく

3つ目のポイントは、譲れる条件と譲れない条件を明確にしておくことです。

譲渡人の希望される条件を十分に満たす提案が存在しない場合もあります。その場合は、譲受候補先と基本条件の交渉・調整を行うことになります。

仲介者・アドバイザーが、単に意向表明書で提示された基本条件を、このような条件に変更して欲しいと譲受候補先へ伝達するだけでは、交渉はうまく行きません。

仲介者・アドバイザーがその背景にある譲渡人の思いも含めて、なぜこの条件が譲れないのかを譲受候補先に説明することができて初めて、交渉・調整の余地が生まれます。

M&A取引は譲受候補との合意形成をもってのみ成立しますが、その合意形成プロセスの中では、譲渡人の意にそぐわない事象も発生することがあります。

そのような時にこそ、M&Aでの事業承継を目指す理由を改めて見つめ、自らの考えをしっかり整理する必要があります。

より良いM&Aを成立させるために、自身が譲れない条件は妥協することなく、自らの主張を仲介者・アドバイザーを通じて、しっかりと譲受候補先に伝えることが重要です。

M&Aの知識と経験が豊富な専門家に相談する

4つ目のポイントは、M&Aの知識と経験が豊富な専門家に相談することです。

多くの経営者にとって、M&Aが初めての場合は多いです。

実際にM&Aの方法や成功させるポイントについて調べても、具体的にどうすれば良いのか悩む経営者は多く、取り組み自体を先送りしてしまっていることも多くあります。

そのように初めてのM&Aで手順やその他諸々のことに関して不安がある場合、M&Aに関する知識と経験が豊富な専門家に相談するのがおすすめです。

M&Aを成功させるためには、売却するタイミングも重要になりますので、タイミングを逃さない様に、一度専門家に相談してみましょう。

設計事務所のM&Aは専門家に相談して成功させよう

いかがでしたでしょうか?

ここまで解説してきた様に、M&Aを成功させるためには、条件交渉を優位に進めつつ適切な手順で手続きを行う必要があり、ある程度の専門的な知識が必要になります。

しかし、普段の業務が忙しくM&Aで高く会社を売却する方法や成功させるポイントは分かったものの、具体的にどのように取り組めば良いか分からず、時間ばかり経過してしまっている経営者も多いです。

そのため、最適な売却タイミングを逃さずM&Aを成功させるためにも、M&Aを行う場合は専門家に相談し事例を参考にすることで、より成功確率が高くなりますので、少しでも不安のある方は専門家に相談するようにしましょう。

当記事が、設計事務所のM&Aを行う上で、参考になりましたら幸いです。

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訪問介護・看護業界では、需要増加の一方で人材不足や競争激化といった課題に対処しなければなりません。当記事では、過去に行われた売却・買収事例に触れながら、訪問介護・看護業界のM&A動向を解説します。メリットやデメリット、価格相場も併せてチェックしましょう。

英会話スクールのM&A事情を徹底解説!現状や業界動向・事例・価格相場は?

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英会話スクールのM&A事情を徹底解説!現状や業界動向・事例・価格相場は?

オンライン英会話の需要増加で注目される英会話スクール業界では、M&Aが活発です。当記事では、過去実施された売却・買収事例に触れながら、英会話スクール業界のM&A事情を解説します。メリットやデメリット、気になる価格相場も併せてチェックしましょう。

家具・オフィス業界のM&Aの最新動向を徹底チェック!事例や価格相場は?

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家具・オフィス業界のM&Aの最新動向を徹底チェック!事例や価格相場は?

家具・オフィス業界では、現状課題の解決や異業種からの参入、異業種への進出といったM&A動向が活発です。当記事では、過去に行われた売却・買収事例を交えながら家具・オフィス業界のM&A事情を解説します。メリットや気になる相場も併せてチェックしましょう。

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