調剤薬局におけるM&Aを徹底解説!現状や業界動向・成功事例は?

調剤薬局の数は増加しており業界の動向としても拡大していますが、医療制度の変化に伴い競争も激しくなっています。
そのため、調剤薬局業界ではM&Aが活発化しています。
今回は、調剤薬局のM&Aの現状や業界動向、成功事例について解説します。

目次

  1. 調剤薬局のM&Aの業界動向と課題
  2. 調剤薬局のM&Aの流れ
  3. 調剤薬局のM&Aのメリット・デメリット
  4. 調剤薬局のM&Aの価格相場
  5. 調剤薬局のM&A・売却・買収事例
  6. 調剤薬局でM&Aを成功させるポイント
  7. 調剤薬局でM&Aを行う際の注意点
  8. 調剤薬局のM&Aは専門家へご相談を!

調剤薬局のM&Aの業界動向と課題

最初に、調剤薬局におけるM&Aの動向と課題について解説します。

調剤薬局業界でのM&Aについて把握しておくことで、今後の動向が掴みやすくなります。

また、自社がM&Aを検討する場合も参考にすることが可能です。

調剤薬局の業界の特色

調剤薬局は、医師の処方箋に基づき薬剤師が調剤を行い販売・提供を行う薬局のことです。

そのため、調剤薬局業界は医療業界の動向に大きく左右されやすく、医療機関を利用する方が多くなるほど調剤薬局のニーズも高まります。

日本では医薬分業が進んでいるため、調剤薬局の店舗数は増加し続けています。

調剤薬局のM&Aの現状と業界動向

調剤薬局業界は現在成長し続けいますが、その反面飽和状態になりつつあります。

さらに、調剤薬局業界は他業種と比較して大手企業が占める市場占有率が低く、全体的に個人経営の調剤薬局が多くあります。

そのため、今後の調剤薬局業界の動向として大手企業の買収を目的とした個人・中小企業のM&A・競争力の強化を目的としたM&Aが増加することが予想されています。

調剤薬局の今後の課題

調剤薬局は、政府方針・制度改定に伴う利益の減少や人材不足・価値観の多様化による薬剤師不足といった課題を抱えています。

以上のような課題を解決させるためにM&Aを検討する調剤薬局は多く、今後も解決のためにさまざまな対策を取っていく必要があります。

調剤薬局のM&Aの流れ

M&Aを検討している場合、どのような流れでM&Aが実行されるのか理解しておくことが大切になります。

しっかりとM&Aの流れを理解しておくことで、自社のM&Aをスムーズに進められるようになります。

ここでは、調剤薬局のM&Aの流れについて解説します。

①M&Aの選定・交渉

最初に、M&Aの選定・交渉を行います。

M&Aには、取引を行う相手が必要なため、自社に適したM&A相手を選定しM&A取引を行なってくれるために交渉します。

M&Aの選定によってはM&Aの失敗や十分なシナジー効果が得られないなどのデメリットが発生するため、慎重に進めていくことをおすすめします。

②基本合意の締結

M&Aの選定・交渉が終われば、基本合意の締結を行います。

主な内容は、M&Aのスキーム・取引価格・デューデリジェンスについて・独占交渉権についてなどになります。

この基本合意は法的拘束力を持っていないため、今後内容が変更される場合もあります。

③デューデリジェンス

デューデリジェンスとは、買収先が売却先の企業監査を行うことです。

主に、財務・税務・法務・債務・事業内容・雇用などを調査し、M&Aを行っても問題がないかを確認するため、デューデリジェンスは弁護士や税理士、会計士などの専門家に依頼して行います。

また、デューデリジェンスを怠ってしまうと潜在債務を負うなどのデメリットがあるため、徹底して行いましょう。

④最終条件交渉

デューデリジェンスが終わると、続いて最終条件交渉を進めていきます。

基本合意書の内容をもとに、取引価格・譲渡範囲・その他条件を決めてるために交渉を行います。

買収先は、デューデリジェンスの結果をもとに交渉を進めてくるため、万が一デューデリジェンスで問題があった場合には売却側は不利になる可能性があります。

ただ、基本的にスムーズに最終契約に向けた交渉が進んでいきます。

⑤最終契約締結

最終契約書は基本合意書と異なり法的拘束力を持った契約になります。

そのため、最終契約を締結した場合はその後契約内容を変更させられないため、しっかりと内容を確認した上で締結しましょう。

万が一、契約内容に不満がある場合や自社が不利になる条件がある場合は、契約を破棄することも手段の1つです。

⑥クロージング

クロージングとは、最終契約書の内容をもとに実際に対価の支払いや設備などの移動を行うことです。

クロージングが無事に実行されれば、M&A取引が完了になります。

ただ、クロージングはスムーズに進まずに行き詰まってしまうことがあるため、計画書などを事前に作成しておくことをおすすめします。

調剤薬局のM&Aのメリット・デメリット

M&Aには、さまざまなメリット・デメリットがあるため、M&Aを検討している場合はしっかりと理解した上で進めていくことが大切です。

特に、M&Aのデメリットは大きな損失を発生させる可能性があるため、十分に注意が必要です。

ここでは、調剤薬局のM&Aのメリット・デメリットをそれぞれ解説します。

メリット

調剤薬局のM&Aでは、売り手側・買い手側それぞれに以下のようなメリットがあります。

売り手側

  • 売却益を獲得できる
  • 自社を存続させられる
  • 従業員の雇用を確保できる
  • 事業拡大・競争力獲得になる
  • 個人保証から解放される

買い手側

  • 事業拡大・競争力強化になる
  • 低コストで新規事業を獲得できる
  • 調剤薬局業界で必要な人材・資源を確保できる
  • 競合他社を吸収できる
  • 節税対策になる

調剤薬局のM&Aによって以上のようなメリットを得た事例は数多くあります。

これからM&Aを検討している調剤薬局は参考にしてみてください。

ただ、これから解説するデメリットもしっかり理解しておきましょう。

デメリット

調剤薬局のM&Aでは、売り手側・買い手側それぞれに以下のようなデメリットがあります。

売り手側

  • 希望の価格で売却できない
  • M&A相手が見つからない
  • 買収先企業が不祥事を起こす
  • 取引先との関係が悪化してしまう
  • 従業員の待遇が悪化する

買い手側

  • 買収に多額の資金が必要になる
  • 十分なシナジー効果を得られない
  • 潜在債務が発覚する
  • 従業員が大量に離職してしまう
  • 経営統合に失敗する

調剤薬局のM&Aには、以上のようなデメリットがあり十分な準備や対策を行わなければ、多くのデメリットが発生し損失を出してしまう可能性もあります。

これから調剤薬局のM&Aを検討している方は、以上のデメリットを把握しておきましょう。

調剤薬局のM&Aの価格相場

調剤薬局がM&Aを行う場合の価格相場を事前に把握しておくことで、自社のM&Aを検討する際の参考になります。

また、不利な条件下でのM&A取引を防ぐことにも繋がります。

ここでは、調剤薬局のM&Aの価格相場について解説します。

買収相場

調剤薬局のM&Aの買収相場は、その調剤薬局の規模や利益、純資産価格によって大きく異なります。

そのため、具体的な数字で表すことは難しいですが、基本的に以下のような算出方法え買収価格が決まります。

時価純資産価額+純利益の3~5年分

今後、調剤薬局のM&Aを検討している方は、参考にしてみてください。

売却相場

調剤薬局のM&Aの売却相場も、買収相場と同様に具体的な数字で表すことは難しいです。

ただ、上記で解説した価格の算出方法を用いることで、売却価格のおおよその予測を立てることができます。

そのため、M&Aを検討している調剤薬局は自社の売却価格を算出してみましょう。

調剤薬局のM&A・売却・買収事例

調剤薬局のM&Aは活発に行われており、数多くのM&A事例があります。

これからM&Aを検討している調剤薬局は、これまでに行われたM&A事例を参考にすることをおすすめします。

ここでは、調剤薬局のM&A・売却・買収事例を主に11個紹介します。

①地域ヘルスケア連携基盤×ベストシステム

1つ目のM&A事例は、2021年7月に地域ヘルスケア連携基盤がベストシステムの株式を取得して子会社化させた事例です。

地域ヘルスケア連携基盤は病院・薬局・訪問看護などを行う企業に経営支援を行う企業で、ベストシステムは静岡県 浜松市で調剤薬局を運営しています。

今後の動向として、地域ヘルスケア連携基盤はベストシステムとのM&Aで取得した調剤薬局を活用した、より効果的な医療サービスの提供を進めていきます。

株式会社ベストシステムの株式取得に関するお知らせ

②日本調剤×ハート調剤薬局

2つ目のM&A事例は、2021年8月に日本調剤の完全子会社であるハート調剤薬局を吸収合併させた事例です。

日本調剤は大手調剤薬局であり、ハート調剤薬局は日本調剤の完全子会社でしたが、調剤薬局業界の動向を考え、経営の効率化・管理力の強化を目的に吸収されました。

連結子会社の吸収合併(簡易合併・略式合併)に関するお知らせ

③日本調剤×ライム

3つ目のM&A事例は、2020年11月に日本調剤の完全子会社であるライムを吸収合併させた事例です。

調剤薬局を運営するライムもハート調剤薬局と同様に日本調剤の完全子会社でしたが、機能管理強化・経営の効率化を目的に吸収されました。

今後の動向として、日本調剤や調剤薬局業界での競争力を高め、さらなる事業拡大を目指していきます。

連結子会社の吸収合併(簡易合併・略式合併)に関するお知らせ

④クオールホールディングス×勝原薬局

4つ目のM&A事例は、2021年1月にクオールホールディングスが勝原薬局の全株式を取得し完全子会社化させた事例です。

クオールホールディングスは調剤薬局の全国展開・医薬品販売を行うクオールの持株会社であり、勝原薬局は100年以上続く調剤薬局「かつはら薬局」を運営しています。

クオールホールディングスは、M&Aを活用した調剤薬局事業の拡大を図っており、勝原薬局とのM&Aもその一環です。

このM&Aは地域医療への貢献・企業価値向上を目的に行われました。

調剤薬局 11 店舗を運営する株式会社勝原薬局の株式取得に関するお知らせ

⑤ソフィアホールディングス×ケイアンドワイ

5つ目のM&A事例は、2018年9月にソフィアホールディングスの連結子会社であるルナ調剤薬局を通じてケイアンドワイが運営する調剤薬局2店舗を取得した事例です。

ソフィアホールディングスは、調剤薬局向けシステムの開発事業から撤退し、調剤薬局事業の展開を目指していました。

そのため、調剤薬局事業を展開するルナ調剤薬局を通じてケイアンドワイが運営していた調剤薬局「オリーブ薬局」「ソレイユ薬局」を買収しました。

今後の動向として、ソフィアホールディングスは調剤薬局事業の拡大・成長を図ります。

当社連結子会社による調剤薬局事業の譲受に関するお知らせ

⑥アインホールディングス×エス・ケー・ファーマシー

6つ目のM&A事例は、2021年3月にアインホールディングスがエス・ケー・ファーマシーと資本業務提携を締結した事例です。

アインホールディングスは全国に調剤薬局やドラッグストアを展開する持株会社で、エス・ケー・ファーマシーは大分県 大分市を拠点に調剤薬局を運営しています。

このM&Aは、調剤薬局業界の動向や政府方針・薬機法改定への対応、かかりつけ薬局の強化を目的に行われました。

業務資本提携のお知らせ

⑦マツモトキヨシホールディングス×ココカラファイン

7つ目のM&A事例は、2021年2月にマツモトキヨシホールディングスとココカラファインが経営統合契約を締結した事例です。

マツモトキヨシホールディングスは全国に調剤薬局併設型のドラッグストアを展開する持株会社で、ココカラファインは調剤薬局・ドラッグストアの全国展開や訪問介護・高齢者住宅運営を行う持株会社です。

このM&Aは、顧客基盤・事業基盤を強化し、調剤薬局業界の競争激化や政府方針変更による調剤薬局業界の利益低下に対応するために行われました。

株式会社マツモトキヨシホールディングスと株式会社ココカラファインとの 経営統合に際しての吸収分割契約の締結等のお知らせ

⑧ツルハホールディングス×JR九州ドラッグイレブン

8つ目のM&A事例は、2020年5月にツルハホールディングスがJR九州ドラッグイレブンの株式を取得し子会社化させた事例です。

ツルハホールディングスは全国に調剤薬局・介護ショップを運営する持株会社で、JR九州ドラッグイレブンは九州を拠点にドラッグストア・調剤薬局を運営しています。

ツルハホールディングスは、出店地域拡大・店舗網拡充を進める目的でJP九州ドラッグイレブンとのM&Aを行いました。

また、経営資源の共有やコスト削減などのシナジー効果も期待できます。

持分法適用関連会社の異動(株式譲渡)に関するお知らせ

⑨寛一商店×ライフプランニング

9つ目のM&A事例は、2020年7月に寛一商店がライフプランニングの株式を取得し子会社化させた事例です。

寛一商店は京都府 京都市を拠点に全国各地域で調剤薬局を展開する企業で、ライフプランニングは、新潟県内で地域密着型の保険薬局を運営しています。

寛一商店は、東北エリア進出による事業拡大・地域薬局の強化を目的にライフプランニングとのM&A・買収を行いました。

有限会社ライフプランニングの株式取得(子会社化)に関するお知らせ

⑩ココカラファイン×寿

10個目のM&A事例は、2020年9月にココカラファインが寿の全株式を取得し完全子会社化させた事例です。

ココカラファインは、大阪府で調剤薬局1店舗を運営している寿をM&Aによる買収し、地域のヘルスケアネットワーク構築・事業拡大を目指しました。

このM&A事例のように、調剤薬局業界の動向として大手企業が中小企業を買収するケースが多いことがわかります。

調剤薬局を展開する有限会社寿の株式取得に関するお知らせ

⑪ウエルシアホールディングス×コクミン・フレンチ

11個目のM&A事例は、2022年6月にウエルシアホールディングスがコクミンとフレンチの株式を取得し連結子会社化させた事例です。

ウエルシアホールディングは調剤薬局併設型ドラッグストアを展開する持株会社で、コクミンとフレンチも同様に調剤薬局を運営しています。

ウエルシアホールディングスは、調剤薬局事業の強化・経営資源やノウハウの共有などを目的にM&Aを行いました。

今後の動向として、全国的に調剤薬局併設型ドラッグストアの店舗数を増加させていきます。

株式会社コクミン及び株式会社フレンチとの資本業務提携(子会社化)に関するお知らせ

調剤薬局でM&Aを成功させるポイント

活発化する調剤薬局業界でM&Aを成功させるためには、しっかりと成功させるポイントを理解しておくことが重要になります。

ここでは、調剤薬局でM&Aを成功させるポイントについて解説します。

これからM&Aを検討している調剤薬局は参考にしてみてください。

M&Aの目的を明確にする

調剤薬局でM&Aを成功させるポイントの1つ目は、M&Aの目的を明確にすることです。

調剤薬局がM&Aを行う目的として競争力の強化や事業拡大が挙げられますが、それだけでなくより具体的な目的を掲げましょう。

目的を明確化させることで、戦略やスケジュールの立案がしやすくなり成功しやすくなります。

シナジー効果が期待できる企業に売却する

M&Aでは、シナジー効果が期待できる企業でなければ、売却する意味がほとんどありません。

そのため、しっかりとM&Aを行う前に自社に最適な調剤薬局を探し、効果的にアプローチを行うことが大切です。

税金対策をしっかりと行う

M&Aは、基本的に現金によって対価を支払うため、税金が課せられます。

しっかりと節税対策を行わなければ、M&Aで得た利益の多くを税金として支払うことになるため、M&Aを行う前に方法を検討しておきましょう。

主な節税対策には、役員退職金の活用・第三者割当増資・売却益を経費で相殺するなどが挙げられます。

相場を把握する

相場を把握しておくことも大切な成功ポイントです。

相場を把握しておくことで、M&A交渉や契約で自社が不利になったり買い手が見つからない、交渉が破断するなどのデメリットを防げます。

また、相場よりも低い価格での取引してしまうデメリットも防げるため、相場は把握しておきましょう。

実績や経験が豊富なM&A仲介会社を選ぶ

M&Aには、豊富な専門知識や時間が必要です。

そのため、自社のみで進めずに実績や経験が豊富なM&A仲介会社に依頼してサポート・アドバイスを受けるようにしましょう。

優秀なM&A仲介会社に依頼することで、M&Aの成功確率も向上します。

調剤薬局でM&Aを行う際の注意点

M&Aが成功すればさまざまなメリットが得られますが、失敗するとさまざまなコストやデメリットが発生します。

そのため、M&Aはいくつかの注意点を意識した上で進めていくことをおすすめします。

ここでは、調剤薬局でM&Aを行う際の注意点について解説します。

デューデリジェンスは入念に行う

調剤薬局でM&Aを行う際の注意点1つ目は、デューデリジェンスは念入りに行うことです。

デューデリジェンスを怠ってしまうと、潜在債務や雇用問題を見過ごしたまあ買収するリスクがあるため、M&Aが失敗に終わる可能性が高いです。

そのため、徹底してデューデリジェンスは行うようにしましょう。

情報漏洩には十分に注意する

M&Aの情報漏洩にも十分な注意が必要です。

M&A検討段階、従業員・取引先などにM&Aをすることがバレてしまうと、不信感や不安感から関係性の悪化に繋がりやすいです。

さらに、離職や契約解消による企業価値の低下によってM&Aができなくなる場合もあります。

適正価格で取引を行う

M&Aは業界ごとに適正価格があり、その適正価格でM&Aをすることが大切です。

適正価格での取引でなけば、交渉が破断したり不利益が発生しかねない取引になる場合があります。

そのため、M&Aを行う際は自社の適正価格の算出してから行うことをおすすめします。

調剤薬局のM&Aは専門家へご相談を!

調剤薬局業界はM&Aを活発に進める調剤薬局が多くなっており、現在M&Aを検討している調剤薬局も増加傾向にあります。

ただ、しっかりと成功ポイントや注意点などを理解していなければ多くのデメリットを負うリスクが高くなります。

そのため、これからM&Aを検討している場合、M&Aの専門家へ相談して慎重に進めていくようにしましょう。

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