販促会社のM&A事情とは?売却事例やメリット・相場価格なども紹介!

新技術の導入や競争激化への対応が求められる販促会社では、課題を効率的に解決できるM&Aが活発です。当記事では、過去に行われた売却・買収事例を踏まえながら販促会社業界におけるM&A事情を解説します。M&Aのメリットや取引額の相場も併せて確認しましょう。

目次

  1. 販促会社の現状とM&Aの動向
  2. 販促会社のM&A・譲渡事例
  3. 販促会社のM&Aのメリットとデメリット
  4. 販促会社のM&Aの買収・売却価格相場
  5. 販促会社のM&Aの手順
  6. 販促会社のM&Aの注意点
  7. 販促会社のM&Aは事前準備をしっかりと!

販促会社の現状とM&Aの動向

ここでは、販促会社の主な業務内容と特性、業界を取り巻く現状を押さえた上でM&A動向を解説します。販促会社でM&Aが活発な理由を確認しましょう。

販促会社の特性

販促会社とは、企業の製品や提供するサービスの認知拡大サポートを行い、顧客の購買につなげる事業を行う会社です。

ウェブメディアやSNSを活用したキャンペーン、イベントの企画などさまざまな方法で販促・マーケティングを行います。

販促に特化したマーケティング企業だけでなく、大手総合広告代理店で販促事業も請け負うケースも見られるのが、この業界の特徴です。

販促会社の現状

販促会社はインターネットやSNSなどデジタル技術の普及により、新たなスタイルの販促マーケティングが求められます。

新技術を導入するには莫大なコストをかけなければならず、競争が激化しやすい販促業界では小規模事業者の多くが抱える現状課題です。

販促会社のM&Aの動向

新技術への対応をはじめとする現状課題解決を目指すため、M&Aを実施する動きが多くの企業で見られるようになりました。

販促会社業界で多く見られるM&A動向は、以下の通りです。

  • 大手傘下に入り資金力を上げるためのM&A
  • 販促事業強化で競争激化に対応するためのM&A
  • デジタル化やAIを駆使した販促における新技術導入のためのM&A
  • 後継者問題解消のためのM&A
  • 販促事業に必要な人材確保のためのM&A

販促会社のM&A・譲渡事例

ここでは、販促会社を取り巻く業界で過去に実施されたM&Aによる株式・事業譲渡事例を6つ紹介します。

企業はどのような目的を掲げて譲渡や買収を行ったのでしょうか。この点にも注目しながら事例を確認しましょう。

詳しいIR情報は、各事例の下部分に掲載のリンクから参照できます。

  • 事例①:電通グループとLiveArea
  • 事例②:ラックランドと環境装備エヌ・エス・イー
  • 事例③:共同ピーアールとネタもと
  • 事例④:丹青社とHARTi
  • 事例⑤:博報堂DYホールディングスとEAGLYS
  • 事例⑥:博報堂DYメディアパートナーズとナイル

①電通グループとLiveArea

売却企業

LiveArea

(顧客体験マネジメントとコマースのサービスを

グローバルに提供するアメリカの企業)

買収企業

電通グループ

(大手広告代理店)

M&Aの手法

買収

M&Aの目的

・データマーケティングの融合 

・より高精度で効率的な統合ソリューションの提供 

実施時期

2021年7月

譲渡価格

276億円

電通グループ、米国「ライブエリア」買収により、顧客体験マネジメントとコマースのサービス機能を強化・拡充

②ラックランドと環境装備エヌ・エス・イー

売却企業

環境装備エヌ・エス・イー

(冷暖房設備の設計施工及び管理事業等)

買収企業

ラックランド

(商空間制作会社)

M&Aの手法

株式譲渡

M&Aの目的

・関東圏の空調・給排水衛生工事の技術力コスト競争力アップ 

・更なる企業価値の向上 

・営業面や購買面におけるシナジー効果の創出

実施時期

2019年8月

譲渡価格

非開示

株式会社環境装備エヌ・エス・イーの株式取得(子会社化)に関するお知らせ

③共同ピーアールとネタもと

売却企業

ネタもと

(企業と報道関係者をつなぐ情報マッチング

プラットフォーム「ネタもと」運営事業)

買収企業

共同ピーアール

(販促プロモーション事業、広報活動支援事業)

M&Aの手法

資本業務提携

※当事例後、2019年12月に提携解消

(資本業務提携がなくても支障が無いと判断されたため)

M&Aの目的

・シナジー効果の創出

(顧客企業・サービス面で補完関係にあるため)

・共同開発

・営業力強化

実施時期

2019年5月

株式会社ネタもととの資本業務提携に関するお知らせ
株式会社ネタもととの資本提携の解消及び業務提携継続に関するお知らせ

④丹青社とHARTi

売却企業

HARTi

(現代アーティストプロダクション事業)

買収企業

丹青社

(商業施設・文化施設の空間づくり事業)

M&Aの手法

資本業務提携

M&Aの目的

・アートプロジェクトの共同企画推進

・アート分野の新たなインフラ構築

実施時期

2021年6月

丹青社、HARTi と資本業務提携し、 NFT 活用によるアート作品のリアル空間への展開を推進

⑤博報堂DYホールディングスとEAGLYS

売却企業

EAGLYS

(秘密計算技術の研究と開発・導入支援事業)

買収企業

博報堂DYホールディングス

(大手広告代理店・マーケティング事業)

M&Aの手法

株式譲渡

資本業務提携

M&Aの目的

・安全かつ有用なデータ利活用に向けた研究開発・実証実験

・企業間のデータ連携促進

・新たなマーケティングソリューションの開発 

実施時期

2019年3月

譲渡価格

非開示

博報堂DYホールディングス、EAGLYS と資本業務提携 AIx秘密計算技術を活用したデータの利活用に関する共同研究を開始

⑥博報堂DYメディアパートナーズとナイル

売却企業

ナイル

(デジタルマーケティング事業、メディアテクノロジー事業)

買収企業

博報堂DYメディアパートナーズ

(総合メディア事業会社)

M&Aの手法

資本業務提携

M&Aの目的

・両社における強みの活用と連携

・両社の事業発展

実施時期

2021年1月

博報堂DYメディアパートナーズ、 新規事業開発の推進のためナイル社と資本業務提携

販促会社のM&Aのメリットとデメリット

ここでは、販促会社のM&Aにおけるメリット・デメリットを解説します。

M&Aは多くの恩恵が受けられる点が魅力ですが、考慮すべきデメリットとなる点も同様に存在します。両方を把握した上で、売却・買収手続きに入りましょう。

メリット

まずメリットを確認しましょう。売却側と買収側の視点に分けて解説します。

売り手側

販促会社のM&Aにおける売却側のメリットは、次の通りです。

売却側のメリット

・株式や事業譲渡による売却益・譲渡益が得られる

・従業員の雇用を維持できる

・後継者問題を解決できる

・大手傘下に入れば経営が安定する

・経営者が個人債務から解放される

買い手側

販促会社のM&Aにおける買収側のメリットは、次の通りです。

買収側のメリット

・顧客や人材を獲得できる

・低コスト・低リスクで販促業界に参入できる

・効率的に事業拡大できる

・事業エリアを拡げられる

・売却側とのシナジー効果を期待できる

デメリット

次にデメリットです。こちらも同様に売却側と買収側の視点に分けて解説します。

売り手側

販促会社のM&Aにおける売却側のデメリットは、以下の通りです。

売却側のデメリット

・理想通りの条件にならない場合がある

・不安を感じた従業員が退職するおそれがある

・取引先との関係が悪化するおそれがある

・会社経営における影響力が小さくなる

・マッチングに苦戦する場合がある

買い手側

販促会社のM&Aにおける買収側のデメリットは、以下の通りです。

買収側のデメリット

・期待通りのシナジー効果が得られない場合がある

・買収にかかる資金の調達が必要

・売却側の簿外債務を引き継ぐおそれがある

・売却側従業員が待遇に不満を抱くおそれがある

・文化の融合にかなりの時間を要する場合がある

販促会社のM&Aの買収・売却価格相場

取引価格の相場は、経営者がM&Aを想定する際に特に気になる項目です。

販促会社でM&Aを実施する場合、取引額はどの程度の相場を見込めば良いのでしょうか。ここでは、販促会社のM&A相場で知っておきたい知識を解説します。

買収・売却価格相場

販促会社のM&Aにおける価格相場には、一概に言える明確な数字がありません。

ITに強い会社は売却金額が比較的高くなると言われていますが、会社の大きさや事業規模でも左右されるので、ケースバイケースです。

ただ、算出式を用いて大まかな相場を求めることはできます。その際以下のような式を用いるのが一般的です。

大まかな相場の算出方法

M&A買収・売却額相場 = 時価純資産 + 営業利益 × 2~5年分

相場算出にかかる企業価値評価は、専門知識が求められます。M&A仲介会社など専門家のサポートを得ながら算出してください。

最終的な金額は交渉で決まる

相場算出に関しての注意点です。最終的な取引価格は、当事者間の交渉で決定します。算出した相場と実際の金額とで差が生じる可能性があります。

販促会社のM&Aの手順

ここでは、販促会社におけるM&Aの手続きの手順を8つのステップに分けて解説します。戦略策定からクロージングまで、基本的なプロセスの流れを確認しましょう。

一般的に以下の手順は、他の業種と共通です。販促会社に限らず、異業種でM&Aを検討されている場合もぜひ参考にしてください。

  1. 戦略策定
  2. 委託契約
  3. 本格的な戦略策定
  4. 会社売却・買収の手続き
  5. 基本合意書の締結
  6. デューデリジェンス
  7. 最終条件交渉・契約締結
  8. クロージング

①戦略策定

M&Aの準備段階として最初に位置するプロセスが、戦略策定です。

自社状況を分析し、課題やM&Aに求める目的・狙いを設定します。M&A手法も含め、大まかな方向性を決めましょう。

目的が漠然とした状態では、マッチングに苦戦する可能性があります。

②委託契約

次に、M&Aの手続きに関する委託契約を取り交わします。

M&Aは、M&A仲介会社など専門家に委託した上で進めるのが一般的です。プロのサポートを受けることで、より円滑なM&Aが目指せるでしょう。

この際の委託契約のことを「アドバイザリー契約」と呼びます。

③本格的な戦略策定

M&A仲介会社のアドバイスを受けながら、本格的な戦略策定を行います。

併せて相手企業候補の経営者と会談を行い、今回のM&A相手にふさわしい企業を絞り込みましょう。会談の回数は候補数や状況で異なります。

経営者会談で相互理解を深められた企業と、M&Aの手続きを進めましょう。

④会社売却・買収の手続き

相手企業とのマッチングに成功したら、いよいよ売却・買収手続きです。

当事者間で今回のM&Aにおける取引内容や条件をまとめましょう。売却側・買収側双方が合意できる取引内容を目指します。

売却側は従業員の処遇など不安要素をしっかり確認し、明確にしましょう。

⑤基本合意書の締結

M&Aの条件がまとまったら、当事者間で基本合意書を取り交わします。

基本合意書には、取引スケジュール、取引する株式の種類と数量、M&A手法、譲渡価格、支払方法といった項目を記載するのが一般的です。

基本合意書はM&Aへの合意を表すもので、法的拘束力を持ちません。

⑥デューデリジェンス

次に、デューデリジェンスが執り行われます。

デューデリジェンスとは、売却側企業の経営状況や資源、設備や人材、負債やリスクなどあらゆる項目を調査する実態把握プロセスです。

主に専門家に依頼して実施され、買収側のリスク軽減に欠かせません。

⑦最終条件交渉・契約締結

デューデリジェンスが完了したら、最終条件交渉と契約締結手続きです。

基本合意書の内容とデューデリジェンス結果をもとに当事者間で細かい条件調整を行います。双方に有益と言える条件を目指しましょう。

最終契約書は法的拘束力を持つので、慎重に条件確認してから締結しましょう。

⑧クロージング

M&Aの最終段階として行われるのが、クロージングです。

最終契約書に記載された内容に従って、株式や事業の譲渡と対価の支払いが実施されます。取引内容は条件によって異なります。

クロージングが済んだら、一連のM&A手続きは完了です。

販促会社のM&Aの注意点

ここでは、販促会社のM&Aを実施する上で注意したい点を解説します。

以下、4つのポイントに留意しながらM&Aを進めましょう。

  • 早い段階から準備を開始する
  • 事前にデューデリジェンスを行う
  • 契約内容をしっかりと確認する
  • 税金対策を徹底する

早い段階から準備を開始する

1つ目の注意点は、早い段階からM&Aの準備を始めることです。

M&Aは適切なタイミングで行う必要があります。問題が起きてからでは手続きやマッチング時間がかかり、かえって損失になるかもしれません。

経営が安定している頃から準備を進め、いざという時に動けるようにしましょう。

事前にデューデリジェンスを行う

2つ目の注意点は、事前にデューデリジェンスをしっかり行うことです。

デューデリジェンスは、今回のM&Aが有益かを判断できるだけでなく売却側の簿外債務発覚リスクを軽減できる効果があります。

入念に行わないと、買収後に予期せぬ損失を被るかもしれません。

契約内容をしっかりと確認する

3つ目の注意点は、契約内容をしっかり確認することです。

繰り返しになりますが、M&Aの条件は売却側・買収側双方がしっかり合意できる内容でなければなりません。

片方に不利益な内容になっていないか、契約前に必ず確認してください。

税金対策を徹底する

4つ目の注意点は、税金対策を徹底することです。

販促会社に限らず、M&Aは所得税や住民税、法人税などの税金が発生します。業種によっては不動産取得税といった他の税金も課されるでしょう。

税務知識が豊富な専門家のアドバイスを受け、適切な対策を講じることが重要です。

販促会社のM&Aは事前準備をしっかりと!

販促会社で新技術の導入や資金力強化を効率的に目指すなら、M&Aが有効です。

ただ、多くの労力とリスクをかけて実施されるものなので、成功に繋げるためには綿密な計画と事前準備は欠かせません。

M&A仲介会社のサポートを得ながら、少しでも有益なM&Aを目指しましょう。

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