輸送用機械・部品製造業のM&A動向を調査!事例やメリット・取引相場は?
輸送用機械・部品製造業界では、先端技術における競争激化や人材不足の課題に対処するためM&A動向が活発です。当記事では、過去に行われた売却・買収事例を踏まえながら、輸送用機械・部品製造業界のM&A事情を解説します。取引価格相場や注意点も併せてチェックしましょう。
目次
輸送用機械・部品製造業界の現状とM&Aの動向
ここでは、輸送用機械・部品製造業界の主な業務内容と特性・現状課題を押さえた上で、多くの企業で見られるM&A動向・パターンを解説します。
輸送用機械・部品製造業界の特性
輸送用機械・部品製造業界とは、ヒトやモノを輸送するために利用される機械やそれに関連する部品を製造する業務を主に行う業界です。
自動車や飛行機、鉄道、船舶が主な製造品として知られています。中でも自動車関連事業が多くのシェアを占めている点が、輸送用機械・部品製造業界の特徴です。
輸送用機械・部品製造業界の現状
物資輸送や交通手段として私たちの生活に欠かせない自動車を手掛ける業界ですが、人材不足や後継者不在の課題を抱えているのが現状です。
少子化により国内需要も将来的には伸び悩む可能性が高く、海外進出も視野に入れざるを得ない状況にあると言えます。
先端技術開発における競争激化も拍車をかける状態で、各企業は生き残りを目指すべくこれらの課題に対処しなければなりません。
輸送用機械・部品製造業界のM&Aの市場規模と動向
輸送用機械・部品製造業界では、上記の課題を解決するためM&A動向が活発化しています。M&A市場規模を見ても拡大の中にある業界の1つと言えるでしょう。
輸送用機械・部品製造業界で多く見られるM&A動向は、以下の通りです。
- 動向①:海外市場への進出を目指すためのM&A
- 動向②:大手企業による事業内製化のためのM&A
- 動向③:新技術を獲得するための異業種によるM&A
- 動向④:事業拡大のための同業種によるM&A
- 動向⑤:後継者不在や人材不足問題を解消するためのM&A
輸送用機械・部品製造業界のM&A事例
ここでは、輸送用機械・部品製造業界で過去実施されたM&A事例を6つ紹介します。企業がかかげた目的・狙いに注目しながら各事例をチェックしましょう。
※詳しいIR情報は、それぞれの事例の下部分に掲載のリンクから参照できます。
- 事例①:SUBARUとスバルITクリエーションズ
- 事例②:ウーブン・プラネットホールディングスとCARMERA
- 事例③:エクセディとアスター
- 事例④:モリタホールディングスとミヤタサイクル
- 事例⑤:ヤマハ発動機とSiren Marine
- 事例⑥:日産自動車とダイムラーAG
①SUBARUとスバルITクリエーションズ
売却企業(消滅会社) | スバルITクリエーションズ (ITシステムの企画・提案・開発・保守・運用) |
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買収企業(存続会社) | SUBARU (輸送用機械・自動車部品製造・修理・販売) |
M&Aの手法 | 吸収合併(簡易・略式合併) |
M&Aの目的 | ・ITリソースの一本化 ・ITガバナンスの強化と人材育成 ・IT体制の強化 ・提供価値の向上 |
実施時期 | 2022年2月 |
②ウーブン・プラネットホールディングスとCARMERA
売却企業 | CARMERA (アメリカ企業、自動運転車両のための道路情報解析) |
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買収企業 | ウーブン・プラネットホールディングス (自動運転技術の開発・実装・市場導入・普及、システム開発) ※トヨタ子会社 |
M&Aの手法 | 買収 |
M&Aの目的 | ・高精度地図プラットフォームへの成長加速化 ・優秀なエンジニアの獲得 ・革新的なモビリティ技術の開発 |
実施時期 | 2021年7月 |
譲渡価格 | 非開示 |
③エクセディとアスター
売却企業 | アスター (モーター・コイル・自動車部品、輸送用機械・部品製造・販売) |
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買収企業 | エクセディ (クラッチやトルクコンバータなど駆動系輸送用機械・部品製造) |
M&Aの手法 | 資本業務提携 |
M&Aの目的 | ・革新的な電動プラットフォームの創出 ・製品開発の加速化 ・新たな価値の創造 ・社会問題の解決とカーボンニュートラル実現 |
実施時期 | 2022年1月 |
譲渡価格 | 非開示 |
④モリタホールディングスとミヤタサイクル
売却企業 | モリタホールディングス保有のミヤタサイクル株式 (自動車販売事業、輸送用機械・部品製造) |
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買収企業 | 美利達工業股份有限公司(Merida) (台湾の自動車メーカー、輸送用機械・部品製造) |
M&Aの手法 | 株式譲渡 |
M&Aの目的 | ・経営資源の選択と集中 |
実施時期 | 2019年6月 |
譲渡価格 | 8,277万9,105円 |
⑤ヤマハ発動機とSiren Marine
売却企業 | Siren Marine (アメリカ企業) (スマートボートテクノロジーを使った機器・センサーの販売) |
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買収企業 | ヤマハ発動機 (オートバイ・マリン製品等の輸送用機械・部品製造大手) |
M&Aの手法 | 買収 |
M&Aの目的 | ・マリン領域のIoT対応化 ・デジタルトランスフォーメーションの加速化 ・付加価値の高いサービスや製品の提供 |
実施時期 | 2021年12月 |
譲渡価格 | 非開示 |
⑥日産自動車とダイムラーAG
売却企業 | 日産自動車が保有のダイムラーAG株 (大手自動車メーカー、輸送用機械・部品製造) |
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買収企業 | 機関投資家 |
M&Aの手法 | Accelerated Book Building (公募増資実施公表と同時に証券取引所の取引を開始するもの) |
M&Aの目的 | ・取得資金を電動化の促進に向けた投資に活用 ・事業競争力の強化 |
実施時期 | 2021年5月 |
譲渡価格 | 11億4900万ユーロ(約1500億円) |
輸送用機械・部品製造業界のM&Aのメリット・デメリット
輸送用機械・部品製造業界のM&Aにおけるメリットとデメリットを確認しましょう。M&Aは多くの恩恵が受けられますが、考慮すべき点も同様に存在します。
メリット
まず輸送用機械・部品製造業界のM&Aにおけるメリットを確認しましょう。売却側・買収側の視点に分けて解説します。
売り手側
輸送用機械・部品製造業界のM&Aにおける売却側のメリットは、次の通りです。
売却側のメリット | ・株式や事業譲渡による売却益が得られる ・従業員の雇用を維持できる ・後継者問題を解決できる ・大手傘下に入れば経営が安定する ・経営者が個人債務から解放される |
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買い手側
輸送用機械・部品製造業界のM&Aにおける買収側のメリットは、次の通りです。
買収側のメリット | ・顧客や人材を獲得できる ・低コスト・低リスクで輸送用機械・部品製造業界に参入できる ・効率的に事業拡大できる ・事業エリアを拡げられる ・売却側とのシナジー効果を期待できる |
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デメリット
次に、デメリットです。上記と同様売却側・買収側それぞれの視点で解説します。
売り手側
輸送用機械・部品製造業界のM&Aにおける売却側のデメリットは、次の通りです。
売却側のデメリット | ・理想通りの条件にならない場合がある ・不安を感じた従業員が退職するおそれがある ・取引先との関係が悪化するおそれがある ・会社経営における影響力が小さくなる ・マッチングに苦戦する場合がある |
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買い手側
輸送用機械・部品製造業界のM&Aにおける買収側のデメリットは、次の通りです。
買収側のデメリット | ・期待通りのシナジー効果が得られない場合がある ・買収にかかる資金の調達が必要 ・売却側の簿外債務を引き継ぐおそれがある ・売却側従業員が待遇に不満を抱くおそれがある ・文化の融合にかなりの時間を要する場合がある |
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輸送用機械・部品製造業界のM&Aの買収・売却価格相場
輸送用機械・部品製造でM&Aを実施する場合、当事者はどの程度の相場を見込めば良いのでしょうか。経営者にとって相場は重要な項目の1つです。
ここでは、輸送用機械・部品製造業界のM&A価格相場と価値の算出方法で押さえたい知識を解説します。
価格相場
M&Aの相場を記載したいところですが、事業規模、取引実績、シナジー効果の大きさ、収益性などの要素が影響を与えるため、一概に言える数字がありません。
取引額相場を出すには、まず会社の状況を正しく分析する必要があります。
価値の算出方法
大まかなM&A取引額相場を求めることはできます。さまざまなアプローチが存在しますが、例えば以下のような式(年倍法)を用いるのが一般的です。
大まかなM&A相場の算出方法 |
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M&A取引額(価値)相場 = 時価純資産 + 営業利益 × 2〜5年分 |
取引額相場の算出には「のれん代」と呼ばれる会社の見えない資産を評価しなければなりません。詳しい専門家のサポートを受けながらの算出をおすすめします。
輸送用機械・部品製造業界のM&Aの手順
輸送用機械・部品製造業界でM&Aを実施する際の手順を8つのステップに分けて解説します。戦略策定からクロージングまで基本的なM&Aの流れを確認しましょう。
- 戦略策定
- 委託契約
- 本格的な戦略策定
- 会社売却・買収の手続き
- 基本合意書の締結
- デューデリジェンス
- 最終条件交渉・契約締結
- クロージング
①戦略策定
M&Aの準備として最初に行われるのが、戦略策定です。会社状況を分析した上で課題や目的を明確化し、M&A手法など大まかな方向性を定めましょう。
会社が抱える課題をM&Aで解決できる見込みがある場合に、手続きに進みます。
②委託契約
次に行われるのが、委託契約です。M&Aは多くの専門知識が必要なので、M&A仲介会社をはじめとする専門家に相談・依頼して進めるのが一般的です。
仲介手数料や料金体系を確認した上で、信頼できる専門家に依頼しましょう。
③本格的な戦略策定
専門家のアドバイスのもと、本格的な戦略策定と相手企業候補の絞り込みを行います。市場動向を分析し、現状に合ったM&A手法を決めましょう。
経営者会談を行い、多くの共感が得られた企業が見つかれば、マッチング成功です。
④会社売却・買収の手続き
相手企業が見つかったら、いよいよ売却・買収手続きに入ります。経営者同士で交渉を実施し、今回のM&Aにおける具体的な取引条件をまとめましょう。
売却側の場合は、従業員の処遇を含め不安要素を明確化することをおすすめします。
⑤基本合意書の締結
条件がまとまったら、基本合意書を取り交わしましょう。基本合意書には、実施日、M&A手法、取引株式の種類と数量、金額、支払い方法を記載するのが一般的です。
基本合意書は当事者によるM&Aへの合意を示す書類で、法的拘束力がありません。
⑥デューデリジェンス
次に、デューデリジェンスが実施されます。デューデリジェンスは、売却側の経営状況、設備や資源、負債やリスクなどあらゆる項目を調査する実態把握プロセスです。
デューデリジェンスは主に専門家に依頼して執り行われます。
⑦最終条件交渉・契約締結
デューデリジェンスが完了したら、最終条件交渉と契約締結手続きです。基本合意書の内容とデューデリジェンス結果をもとに、細かい条件調整を行います。
最終契約書は法的拘束力を持つので、条件を今一度確認しましょう。
⑧クロージング
M&Aの最終段階に位置する手続きが、クロージングです。最終契約書に従って、株式や事業の譲渡と対価の支払いが当事者間で執り行われます。
このクロージングまで済めば、一連のM&Aにかかる手続きは完了です。
輸送用機械・部品製造業界のM&Aを行う上での注意点
輸送用機械・部品製造業界でM&Aを行う際の注意点を解説します。M&Aは多くのリスクをかけて行うものです。以下5つのポイントに留意しながら進めましょう。
- 注意点①:事前の準備をしっかりと行う
- 注意点②:従業員のモチベーション管理を徹底する
- 注意点③:自社の強みをアピールする
- 注意点④:M&Aの目的を明確にする
- 注意点⑤:M&Aの専門家に相談する
事前の準備をしっかりと行う
1つ目の注意点は、事前の準備をしっかり行うことです。経営悪化や人材不足などの問題が起きてからでは、相手企業が見つからず廃業リスクが高まります。
経営が安定している頃から計画し、いざという時に動けるようにしましょう。
従業員のモチベーション管理を徹底する
2つ目の注意点は、従業員のモチベーション管理を徹底することです。M&Aの話を聞きつけた従業員が困惑し、離職することが無いよう情報管理を徹底しましょう。
M&A確定後、処遇を確保した上でM&Aが有益であることを理解してもらいます。
自社の強みをアピールする
3つ目の注意点は、自社の強みをアピールすることです。会社状況を客観的に分析し、得意分野や取引実績データをあらかじめ資料にまとめておくと良いでしょう。
アピールポイントが明確な企業は、M&Aの相手候補に選ばれやすくなります。
M&Aの目的を明確にする
4つ目の注意点は、M&Aの目的を明確にすることです。漠然とした状態でM&Aを行うと、シナジー効果が得られず、かえって損失になる可能性があります。
目的を明確化した上で、ニーズ・方向性が合う企業とM&Aを行いましょう。
M&Aの専門家に相談する
5つ目の注意点は、M&Aの専門家に相談することです。輸送用機械・部品製造業界に限らず、M&Aは税務や法務をはじめとする専門知識が多く求められます。
輸送用機械・部品製造業界に詳しいM&A仲介会社のサポートを受けましょう。
輸送用機械・部品製造業界のM&Aは専門家に相談して成功させよう!
輸送用機械・部品製造業界を取り巻く人材不足や後継者不在、競争激化への対処といった多くの課題に対処するには、M&Aが有効です。
ノウハウや技術・人材を効率的に確保できるため、多くの企業に有益な対処法と言えます。M&A実施の際は、仲介会社のサポートを受けながら成功を目指しましょう。
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