金属製品製造のM&A事情を徹底解説!業界動向や事例・価格相場は?
競争激化の中にある金属製品製造業界では、業務効率化を目指すべく、各企業のM&A動向が活発です。この記事では、過去に行われた売却・買収事例を交えながら金属製品製造業界のM&A事情を詳しく解説します。価格相場や注意点など、事前に知っておきたい知識も確認しましょう。
目次
金属製品製造の特色とM&Aの動向
ここでは、金属製品製造業界の業務の内容と特性、業界を取り巻く現状課題を確認した上で、多く見られるM&A動向・パターンを解説します。
金属製品製造の特色
金属製品製造とは、金属を加工して、目的の製品を作るために必要な金属部品を製造する業務を言います。
製造された金属製品が単体で商品になるというよりは、何か他の機械・製品の一部に使用されるケースが多い点が特徴です。
得意分野は会社によって異なりますが、一般的に板や棒、機械や装置、そして日用雑貨などあらゆる製品に活用されます。
金属製品製造の現状
では、金属製品製造業界を取り巻く現状を確認します。
コスト面で優位な海外製品需要に打ち勝つために、ITや新技術を導入して生産効率化を目指さなければならない状況にあると言えるでしょう。
また競争激化の中で生き残るために、きめ細かいニーズに対応できる体制を構築する必要があります。
- IT化や新たな技術で競争力が激化
- 顧客ニーズに合致した製品製造などきめ細かな対応の必要性
- 事業の効率化やコスト削減が求められる
金属製品製造のM&Aの動向
上記のような課題を解決するため、金属製品製造業界を取り巻く多くの企業でM&Aの実施動向が活発化しています。
金属製品製造業界で多く見られるM&A動向・パターンは以下の通りです。
- 動向①:ITや新しい技術を獲得するためのM&A
- 動向②:材料調達のため海外進出をはかるM&A
- 動向③:ノウハウを獲得し質の良い金属製品を作るためのM&A
- 動向④:協業による事業効率化で競争激化に対処するためのM&A
- 動向⑤:経営者高齢化に対処するためのM&A
競争が激化しやすい金属製品製造業界は、新たな技術を積極的に取り入れ事業効率化をはからなければなりません。
M&Aは既存ノウハウ・技術を活用できるので、効率よく課題解決を狙えるでしょう。
金属製品製造のM&A事例
ここでは、金属製品製造業界で過去に行われたM&A事例を6つ紹介します。
当事者企業が掲げた目的に注目しながら、各事例をチェックしましょう。詳しいIR情報は、各事例の下部分に掲載のリンクから参照ください。
- 事例①:戸上メタリックスと三協製作所
- 事例②:アルコニックスとジュピター工業
- 事例③:岡谷鋼機と旭精機工業
- 事例④:日創プロニティと綾目精機
- 事例⑤:大平洋金属とアミタHD
- 事例⑥:FUJIとファスフォードテクノロジー
①戸上メタリックスと三協製作所
売却企業 | 三協製作所 (電子機器部品の製造事業、メッキ加工事業) |
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買収企業 | 戸上メタリックス (金属材料等卸売業、電気機器の鋼板ケース製造事業) |
M&Aの手法 | 吸収合併(簡易合併・略式合併) |
M&Aの目的 | ・グループの金属加工事業における経営資源集約 ・亜鉛メッキ事業の事業環境整備のための設備投資推進 ・高付加価値化による収益力の向上 |
実施時期 | 2022年2月 |
②アルコニックスとジュピター工業
売却企業 | ジュピター工業 (精密コネクタ金属端子部品のプレス加工事業、 プレス金型の設計・ 製作事業、一体成形によるコネクタ製造事業) |
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買収企業 | アルコニックス (非鉄金属材料等卸売業) |
M&Aの手法 | 株式譲渡 |
M&Aの目的 | ・グループ内の連携 ・技術交流等の推進による新たなシナジー効果創出 ・グループレベルでのグローバルな事業展開 ・企業価値向上 |
実施時期 | 2021年12月 |
譲渡価格 | 非開示 |
③岡谷鋼機と旭精機工業
売却企業 | 旭精機工業 (機械装置・精密金属製品製造・販売業) |
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買収企業 | 岡谷鋼機 (金属製品製造業、非鉄金属・電機・電子部品販売事業) |
M&Aの手法 | 資本業務提携 |
M&Aの目的 | ・グループ内のネットワーク活用 ・機械装置・精密金属加工品の販売拡大 ・更なる連携・協力関係強化 |
実施時期 | 2021年12月 |
④日創プロニティと綾目精機
売却企業 | 綾目精機 (印刷・産業・工作部品などに関する金属精密切削加工業) |
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買収企業 | 日創プロニティ (広範囲な業界に向けた金属製品製造業) |
M&Aの手法 | 株式譲渡 |
M&Aの目的 | ・幅広い市場対応実現 ・事業基盤強化 ・相互の連携によるシナジー効果創出 ・グループの段階的な成長と企業価値の向上 |
実施時期 | 2017年3月 |
譲渡価格 | 非開示 |
⑤大平洋金属とアミタHD
売却企業 | アミタHD (資源リサイクル事業、環境CSR・自然産業コンサルティング事業) |
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買収企業 | 大平洋金属 (金属材料等卸売業、フェロニッケル製練事業、 スラグ製品製造事業) |
M&Aの手法 | 資本業務提携 |
M&Aの目的 | ・両社が有する経営資源ノウハウ共有 ・シナジー効果の創出 ・双方の企業価値最大化 |
実施時期 | 2021年4月 |
⑥FUJIとファスフォードテクノロジー
売却企業 | ファスフォードテクノロジー (半導体設計・製造・販売・修理・保守事業) |
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買収企業 | FUJI (電子部品実装ロボット・工作機械製造、販売事業) |
M&Aの手法 | 株式譲渡 |
M&Aの目的 | ・ソリューション強化 ・次世代技術の提案力強化 ・事業拡大の加速化 ・総合提案力強化 |
実施時期 | 2018年8月 |
譲渡価格 | 非開示 |
金属製品製造のM&Aのメリット・デメリット
金属製品製造業界のM&Aにおけるメリットとデメリットを確認しましょう。M&Aは多くの恩恵が受けられる点が魅力ですが、考慮したい点も存在します。
両方を正しく把握し、リスクの想定ができた段階で手続きに入りましょう。
メリット
まず、金属製品製造業界のM&Aにおけるメリットから確認しましょう。売却側・買収側の視点に分けて解説します。
売り手側
金属製品製造業界のM&Aで売却側が得られるメリットは、以下の通りです。
売却側のメリット | ・従業員の雇用を維持できる ・後継者問題を解決できる ・株式や事業譲渡による売却益が得られる ・大手傘下に入れば経営が安定する ・経営者が個人債務から解放される |
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買い手側
金属製品製造業界のM&Aで買収側が得られるメリットは、以下の通りです。
買収側のメリット | ・顧客や人材を獲得できる ・低コスト・低リスクで金属製品製造業界に参入できる ・効率的に事業拡大できる ・事業エリアを拡げられる ・売却側とのシナジー効果を期待できる |
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デメリット
では次に、金属製品製造業界のM&Aにおけるデメリットとなる点を確認しましょう。上記と同様、売却側・買収側それぞれの視点でまとめます。
売り手側
金属製品製造業界のM&Aにおける売却側のデメリットは、以下の通りです。
売却側のデメリット | ・不安を感じた従業員が退職するおそれがある ・理想通りの条件にならない場合がある ・取引先との関係が悪化するおそれがある ・会社経営における影響力が小さくなる ・マッチングに苦戦する場合がある |
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買い手側
金属製品製造業界のM&Aにおける買収側のデメリットは、以下の通りです。
買収側のデメリット | ・買収にかかる資金の調達が必要 ・売却側の簿外債務を引き継ぐおそれがある ・期待通りのシナジー効果が得られない場合がある ・売却側従業員が待遇に不満を抱くおそれがある ・文化の融合にかなりの時間を要する場合がある |
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金属製品製造のM&Aの買収・売却価格相場
金属製品製造の会社がM&Aを実施する場合、各企業経営者はどの程度の相場を見込めば良いのでしょうか。
ここでは金属製品製造業界のM&A相場で押さえたい知識と、大まかな相場の算出方法を簡単に解説します。
価格相場
早速相場を記載したいところですが、金属製品製造業界におけるM&Aの取引額相場には、一概に言える共通の数字がありません。
当事者である会社の大きさや事業規模、期待されるシナジー効果の大きさ、収益性といったあらゆる要素が相場に影響するためです。
価値の算出方法
大まかな相場を算出するには、以下のような式を活用します。
大まかな相場(企業価値)の算出方法 |
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M&A取引額相場 = 時価純資産 + 営業利益 × 2~5年分 |
ただ「のれん代」と呼ばれる見えない資産を考慮しなければなりません。専門知識が必要なので、M&A仲介会社のサポートを得ながら算出してください。
金属製品製造のM&Aの手順
ここでは、金属製品製造業界でM&Aを実施する際の手順を解説します。
以下で記載する内容は、金属製品製造以外の業界も対応可能です。戦略策定からクロージングまで、M&A手続きの基本的な流れを確認しましょう。
- 戦略策定
- 委託契約
- 本格的な戦略策定
- 会社売却・買収の手続き
- 基本合意書の締結
- デューデリジェンス
- 最終条件交渉・契約締結
- クロージング
①戦略策定
まずはM&Aの準備として、戦略策定を行います。会社状況を分析し、今回のM&Aで解決したい課題点や目標を明確にしましょう。
M&Aが会社にとって有益であることが見込めたら大まかなM&Aの方向性を定め、相手企業の選定に入ります。
②委託契約
M&Aの方向性が定まったら、このタイミングで専門家に相談・依頼します。
M&Aは多くの専門知識が必要なので、円滑なマッチング・手続きを目指すためにはプロフェッショナルの助言とサポートが欠かせません。
専門家・M&A仲介会社への委託契約は、アドバイザリー契約とも呼ばれます。
③本格的な戦略策定
委託契約を締結したら専門家のサポートのもと、本格的な戦略策定に入ります。
会社が解決したい課題や目標、ニーズに合致した相手企業候補を見つけ、経営者会談で相互理解を深めましょう。トップ会談は複数回行われる場合もあります。
多くの共感が得られた企業を絞り込めたら、マッチングは完了です。
④会社売却・買収の手続き
M&Aの相手企業が絞り込めたら当事者間で交渉を重ね、売却・買収の手続きに入りましょう。今回のM&Aにおける具体的な条件を設定します。
売却側の場合は、従業員の処遇など不安要素を明確化しておくと良いでしょう。
⑤基本合意書の締結
当事者間でM&Aの取引条件がまとめられたら、基本合意書の締結です。
取引スケジュールやM&A手法、株式の種類や数量、譲渡価格と支払方法といった項目を記載するのが一般的です。また、基本合意書は法的拘束力がありません。
⑥デューデリジェンス
基本合意書締結後、デューデリジェンスを専門家に依頼して実施します。
デューデリジェンスとは、売却側の財務状況、資源や設備、負債やリスクなどあらゆる項目を調査する実態把握プロセスです。
⑦最終条件交渉・契約締結
次は、最終条件交渉と契約締結の手続きです。基本合意書の内容とデューデリジェンス結果をもとに、当事者間で細かい条件を調整します。
最終契約書は法的拘束力を持つので、入念に条件を確認してから取り交わしましょう。
⑧クロージング
M&Aの最終段階に位置するプロセスが、クロージングです。
契約書の内容に従って、株式・事業の譲渡と対価の支払いが当事者間で実施されます。クロージングが済んだら、一連のM&A手続きは完了です。
金属製品製造のM&Aの注意点
ここでは、金属製品製造業界のM&Aで注意したいポイントを紹介します。以下5つのポイントに留意しながら、リスクの少ないM&Aを目指しましょう。
- 早い段階から準備を開始する
- 契約内容をよく確認する
- 事前にデューデリジェンスを行う
- 税金対策を入念に行う
- M&Aの専門家に相談する
早い段階から準備を開始する
1つ目の注意点は、早い段階から準備をスタートすることです。経営難や人材不足が発生してからでは、マッチングに苦戦する可能性があります。
経営状況が安定している頃から着実に準備を行い、適切なタイミングですぐに動けるようにしましょう。
契約内容をよく確認する
2つ目の注意点は、契約内容をよく確認することです。円満かつ有益なM&Aを成功させるためには、双方が合意できる契約内容でなければなりません。
片方に不利益な条件になっていないか、締結前に確認することが重要です。
事前にデューデリジェンスを行う
3つ目の注意点は、事前にデューデリジェンスを実施することです。デューデリジェンスは、簿外債務によるリスクを軽減できる効果があります。
買収側にとって非常に需要なプロセスなので、専門家に依頼し入念に確認しましょう。
税金対策を入念に行う
4つ目の注意点は、税金対策を入念に行うことです。
M&Aは、所得税や住民税、法人税といった税金が発生します。税務知識が豊富な専門家のアドバイスを受け、適切な対策を講じましょう。
M&Aの専門家に相談する
5つ目の注意点は、M&Aの専門家に相談することです。
金属製品製造業界に限らず、M&Aは税務や法務をはじめとする専門知識が求められます。金属製品製造業界の実績がある専門家に依頼しましょう。
金属製品製造のM&Aは専門家に相談しよう!
金属製品製造業界で業務の効率化を目指すには、M&Aは有効な手段の1つです。
ただ円満かつ円滑なM&Aを目指すためには、専門家のサポートは欠かせません。信頼できるM&A仲介会社に相談し、M&Aを成功に近づけましょう。
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