関東地方のM&Aを徹底チェック!動向や事例・メリット・デメリットは?
関東地方は日本の経済を支える重要エリアですが、人材不足や後継者問題を抱える企業は少なくありません。当記事では、過去実施された売却・買収事例に触れながら関東地方のM&A動向を解説します。M&A案件の相談窓口や仲介会社を選ぶポイントも併せてチェックしましょう。
目次
関東地方の産業構造とM&Aの動向
まずは、基本的な知識から押さえましょう。関東地方の産業構造と現状課題を押さえた上で、エリア内の企業で見られる主なM&A動向・パターンを解説します。
関東地方の産業構造
関東地方は首都(東京都)を含み、日本経済を支える最重要エリアでもあります。
東京・神奈川・埼玉・千葉では製造業・サービス業、茨城・栃木・群馬では第一次産業と第二次産業が盛んに行われている点が関東地方における産業の特徴です。
他の地域に比べ人材確保は容易と思われがちですが、帝国データバンクの動向調査では、東京で53.7%の企業で正社員が不足しているという結果が出ています。
日本全体では経営者高齢化による高齢者問題も深刻化している点を考慮すると、関東地方でも、各企業で何らかの対処が必要な状況にあると言えます。
関東地方のM&Aの動向
後継者問題や人材確保といった課題解決を目指すため、関東地方でも多くの業種でM&A動向が拡大しています。
M&Aは課題解決だけでなく、既存事業や従業員の雇用も維持できるため、廃業よりもメリットが多い有効な対処法の1つです。
関東地方の企業で見られるM&A動向・パターンを以下にまとめます。
- 動向①:経営者の高齢化による後継者問題を解決するためのM&A
- 動向②:売却側の人材不足解決のために買収側が資源を提供するM&A
- 動向③:関東地方で事業拡大を目指すためのエリア内同業種によるM&A
- 動向④:売却側保有の独自技術とノウハウを獲得するためのM&A
関東地方でM&Aを行うメリットとデメリット
ここでは、関東地方でM&Aを実施するメリットとデメリットを確認しましょう。M&Aは多くの恩恵が受けられますが、考慮すべきデメリットも同様に存在します。
メリット・デメリット両方を正しく把握してから、M&Aの手続きに入りましょう。
売却側
まずは関東地方のM&Aにおける売却側のメリット・デメリットを押さえましょう。
メリット
関東地方でM&Aを行う際売却側企業が得られるメリットは、次の通りです。長年培った技術や従業員の生活を守ることができるので、廃業時よりも負担を抑えることができます。
- 譲渡益として買収側から対価を獲得できる
- 経営者高齢化による後継者不在の問題を解決できる
- 大規模企業の傘下に入れば安定した経営状態で事業継続できる
- 従業員の雇用や培った技術を維持できる
- 経営者が抱える連帯保証人などの個人保証債務を解消できる
デメリット
関東地方のM&Aにおける売却側企業の主なデメリットは、以下の通りです。企業価値を維持するためにも、従業員が退職は極力避けなければなりません。
また、事前に見込んだ売却価格よりも安くなる可能性もあるので、できるだけ設備環境や人材面でマイナスな点を作らないことが重要です。
- M&Aの情報を知った従業員が困惑し退職するリスクがある
- 既存の顧客や取引先との関係が悪化し契約が打ち切られる可能性がある
- 会社の経営に対する決定権や影響力が縮小する
- 取引条件が希望通りの内容にならない場合ある
- 取引価格(企業価値)が当初見込んだ金額よりも小さくなる可能性がある
買収側
次に、関東地方のM&Aにおける買収側のメリット・デメリットを解説します。
メリット
関東地方でM&Aを行う際買収側企業が得られるメリットは、次の通りです。新規事業を始める際、売却側の設備や資源を利用すれば、費用を抑えた状態で展開できます。
また、ノウハウを持った技術者を取り込めば、新規採用や教育の労力をかける必要もありません。さまざまな面で効率的に効果が得られるでしょう。
- 円滑に事業拡大・業容拡大を目指せる
- 関東地方で拠点を獲得し事業エリアを拡げられる
- 売却側企業が保有する事業設備・技術・ノウハウ・人材を獲得できる
- コストを抑えながら事業参入できる
- 売却側企業と事業におけるシナジー効果が見込める
デメリット
関東地方のM&Aにおける買収側企業の主なデメリットは、以下の通りです。売却側の簿外債務発覚により損失が増えることが無いよう、調査を徹底する必要があります。
また売却側従業員との人間関係にも配慮しなければなりません。円滑な事業展開のためには、あらゆる箇所に気を配る必要があるでしょう。
- 状況によっては期待通りの相乗効果が得られない場合がある
- 簿外債務(貸借対照表に計上されていない負債)が見つかるおそれがある
- 売却側従業員が新しい労働環境に困惑し事業に影響を及ぼすおそれがある
- 買収のため多額の資金調達が必要になる
関東地方のM&Aの売却・買収成功事例
ここでは、関東地方で過去に行われたM&Aの売却・買収成功事例を7つ紹介します。当事者企業が掲げた目的に注目しながら各事例を確認しましょう。
※詳しい公式IR情報については、事例の下部分に掲載のリンクから参照・確認できます。
- 事例①:フルキャストホールディングスとグロービート
- 事例②:加賀電子と富士通エレクトロニクス
- 事例③:鉱研工業とクリステンセン・マイカイ
- 事例④:ジョルダンとエアーズ
- 事例⑤:ハリマビステムと関東消防機材
- 事例⑥:朝日放送グループホールディングスとゼロジーアクト
- 事例⑦:ベクトルとOwned
①フルキャストホールディングスとグロービート
売却企業 | グロービート (「らあめん花月嵐」チェーン経営・フランチャイズ事業) ※東京都都杉並区 |
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買収企業 | フルキャストホールディングス (倉庫・引越・製造・飲食業などの人材派遣サービス) ※東京都品川区 |
M&Aの手法 | 株式譲渡 |
M&Aの目的 | ・新業態への進出 ・収益基盤・EPS(1株当たりの利益)の底上げ ・売却側の採用・人事における課題の解決 (人員・経営基盤提供) ・シナジー効果の創出 |
実施時期 | 2023年6月 |
譲渡価格 | 80億1,000万円 |
②加賀電子と富士通エレクトロニクス
売却企業 | 富士通エレクトロニクス (電子デバイス製品の設計・開発・販売) ※神奈川県横浜市 |
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買収企業 | 加賀電子 (電子部品・半導体の販売、 電子機器の受託開発・製造サービス、パソコン周辺機器販売) ※東京都千代田区 |
M&Aの手法 | 株式譲渡 |
M&Aの目的 | ・電子部品における事業規模の拡大 ・取扱い商材の拡大 ・顧客基盤の共有 ・利益額の拡大と利益率の向上 ・双方の強みで弱みを補完することでシナジー効果創出 ・グローバル競争に勝ち残る世界に通用する企業を目指すため |
実施時期 | 2019年1月 |
譲渡価格 | 205億円 |
③鉱研工業とクリステンセン・マイカイ
売却企業 | クリステンセン・マイカイ (ボーリング事業、ダイヤモンドビッド製造・販売、 コアバーレル製造・販売) ※東京都品川区 |
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買収企業 | 鉱研工業 (ボーリング・グラウト機器メーカー) ※東京都豊島区 |
M&Aの手法 | 株式譲渡 |
M&Aの目的 | ・協働による企業価値向上 ・シナジー効果の創出 ・互いに得意とする分野を活かす |
実施時期 | 2022年10月 |
譲渡価格 | 非開示 |
④ジョルダンとエアーズ
売却企業 | エアーズ (ドローン事業、パイロット育成事業、機体ソフトウエア販売) ※東京都新宿区 |
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買収企業 | ジョルダン (「乗換案内」・MaaS事業) ※東京都新宿区 |
M&Aの手法 | 株式譲渡 |
M&Aの目的 | ・両社のソリューションパッケージ化によるサービス提供 ・インバウンドを含む観光関連の事業強化 ・ハードウエア関連事業への進出加速化 ・グループにおける事業領域の拡大 ・企業価値の向上 |
実施時期 | 2022年12月 |
譲渡価格 | 2億円 |
⑤ハリマビステムと関東消防機材
売却企業 | 関東消防機材 (消防設備の設計・販売) ※東京都北区 |
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買収企業 | ハリマビステム (ビルマネジメント・ビルメンテンス業務) ※神奈川県横浜市 |
M&Aの手法 | 株式譲渡 |
M&Aの目的 | ・迅速かつ高品質なサービスの提供 ・消防設備業務の2拠点体制確立 ・グループ内融合によるシナジー効果の創出 ・安定的な経営基盤の構築 |
実施時期 | 2013年3月 |
譲渡価格 | 非開示 |
⑥朝日放送グループホールディングスとゼロジーアクト
売却企業 | ゼロジーアクト (キャラクターやアニメ雑貨の企画・デザイン・製造・開発) ※東京都台東区 |
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買収企業 | 朝日放送グループホールディングス (認定放送持株会社) ※大阪市福島区 |
M&Aの手法 | 株式譲渡 資本業務提携 |
M&Aの目的 | ・更なる経営基盤の強化と成長を目指す ・売却側のノウハウと買収側の事業の連携 ・シナジー効果の創出 ・豊かなコンテンツや消費者へのリーチ力・商品開発力創出 ・事業価値の向上 |
実施時期 | 2022年8月 |
譲渡価格 | 非開示 |
⑦ベクトルとOwned
売却企業 | Owned (デジタルマーケティング支援事業) ※東京都品川区 |
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買収企業 | ベクトル (デジタルマーケティング事業、戦略PR事業) ※東京都港区 |
M&Aの手法 | 株式譲渡 |
M&Aの目的 | ・売却側のノウハウと買収側のPR・顧客基盤の融合 ・マーケティング効果の最大化 ・クライアントの事業成長に貢献する基盤の強化 |
実施時期 | 2023年7月 |
譲渡価格 | 4億5,200万円 |
関東地方のM&A案件の探し方
M&Aは専門知識が多くの場面で求められるので、円滑に進めるためには知識が豊富な専門家からサポート・アドバイスを受けるのが理想です。
ここでは、関東地方でM&A案件を探す際に有益な情報が得られる相談窓口を紹介します。公的機関を含め、5か所の支援機関をチェックしましょう。
- M&Aの仲介会社や専門家
- 金融機関
- 中小企業基盤整備機構 関東本部
- 関東各所の事業承継・引継ぎ支援センター
- 関東経済産業局
M&Aの仲介会社や専門家に相談する
M&A全般に関する相談をするなら、M&A仲介会社の利用がおすすめです。プロフェッショナルが市場動向や自社状況を分析し、最適なM&A手法や案件を提案してくれます。
M&A仲介会社に依頼の際は、多くの場合料金が発生するので注意が必要です。事前に仲介手数料やサービス・料金体系を確認してから契約しましょう。
金融機関に相談する
地方銀行などの金融機関にM&A案件の相談をするのも良いでしょう。そのエリアの企業と多くの金融取引があるので、地元の経営事情に則した情報が得られます。
金融機関なので資金調達に関しても有益なアドバイスが得られるでしょう。ただし、M&Aの具体的な手続きのは別途専門家に依頼する必要があります。
公的支援機関に相談する
上記の他にも、国が設置した公的支援機関にM&A案件の相談をするのも良いでしょう。公的機関なので、多くのサービスを無料で受けられる点が強みです。
経営事情を熟知したプロフェッショナルからの助言は、一度受けて損はありません。以下、M&Aや事業承継の相談に対応してくれる主要な公的機関を3つチェックしましょう。
中小企業基盤整備機構 関東本部
中傷基盤整備機構関東支部は、関東地区の1都9県で事業を行う中小企業の経営に関する助言や支援を提供する機関です。M&Aや事業承継案件の相談もできます。
地域の支援機関や大学、金融機関と幅広いネットワークがあるので、関東地域に根付いたノウハウと共に心強いサポートが得られるでしょう。
関東各所の事業承継・引継ぎ支援センター
事業承継・引継ぎセンターでは、主に中小企業の事業承継に関する相談を受け付けています。47都道府県に置かれているので、最寄りの窓口を利用してください。
親族内・外に関わらずあらゆる事業承継案件で有益な助言が得られます。新後継者と企業のマッチングを支援する独自サービス「後継者人材バンク」があるのも特徴です。
関東経済産業局
関東経済産業局では、経済産業省のブロック(出先)機関として関東地域の中小企業の経営に関する施策提供や、事業承継の相談を受け付けています。
あらゆる機関と連携し、M&A・事業承継案件だけでなく経営相談や下請け相談など幅広いカテゴリで相談に対応してもらえる点が魅力です。
関東地方のM&A仲介会社の選び方
ここでは、M&A仲介会社を選ぶ際に確認したいポイントを解説します。以下、4つの項目に留意しながら、最終的に自社と相性が良いM&A仲介会社に依頼しましょう。
- 取り扱っている案件の規模
- 手数料・報酬体系
- 相手企業へのアプローチ方法
- 地域や専門性・業種の強み
①取り扱っている案件の規模
1つ目は、取り扱う案件の規模を確認することです。中小規模のM&A案件を専門に扱う仲介会社や、海外を含めた幅広い案件を抱える仲介会社もあります。
気になる仲介会社が担当した過去事例をチェックし、自社が求めるM&A規模と似た案件を多く扱う会社にサポートを依頼しましょう。
②手数料・報酬体系
2つ目は手数料や報酬体系を確認することです。一般的にM&A仲介会社に手続きを依頼する場合、着手金や中間金といった仲介手数料が発生します。
料金体系が明確でわかりやすい仲介会社に依頼しましょう。着手金や中間金が原則かからない「完全成功報酬型」のM&A仲介会社の利用もおすすめです。
多くの場合、報酬体系やWebサイトに掲載されています。まずはこちらを確認し、不明な場合はと合わせてみるのも良いでしょう。
③相手企業へのアプローチ方法
3つ目は、相手企業へのアプローチ方法を確認することです。仲介には、1社ごとにアプローチする方法と複数社に同時アプローチをかける方法があります。
一般的に後者の方法が効率的だと言われますが、自社が求めるアプローチ方法に対応できるM&A仲介会社を選びましょう。迷った場合は、両方のアプローチに対応できるM&A仲介会社がおすすめです。
④地域や専門性・業種の強み
4つ目は、地域や専門性・業種に強みがあるか確認することです。仲介会社によって得意分野は異なるので、自社の業種と相性が良い会社を選ぶ必要があります。
M&A仲介会社に問い合わせるかWebサイトにアクセスし、強みとする分野・領域を確認しましょう。できれば複数社を比較しながら、絞り込むことをおすすめします。
関東地方でM&Aを成功させるためのポイント
M&Aは手続きや交渉を進める中で、場合によってはトラブルやリスクが発生するかもしれません。ただし、事前に対処することでこれらの負担を軽減させることができます。
ここでは、関東地方でM&A・事業承継を成功させるためのポイント・注意点を解説します。売却側・買収側それぞれの視点でチェックしましょう。
売却側
関東地方におけるM&Aを成功させるために、売却側企業が押さえておきたい主な注意点・ポイントは、以下の6つです。
売却側は特に企業価値が下落しないように配慮しなければなりません。労働環境の設備や設備の老朽化など対処できる範囲のことには事前に投資し、整備しましょう。
- 会社売却に不安を感じた従業員が離職しないようにする
- 譲渡益に発生する所得税や法人税などの税金を正しく申告・納税する
- 不利益な項目やリスクも交渉相手にしっかり公表する
- 事前に設備投資や労働環境の整備を行い企業価値を高めておく
- 途中でM&Aの情報が流出しないように情報管理を徹底する
- 手続きや相手企業の選定には専門家のサポート・アドバイスを得る
買収側
関東地方におけるM&Aを成功させるために、買収側企業が押さえておきたい主な注意点・ポイントは、次の6つです。
M&A後の事業展開をスムーズに進めるためには、両社の事業が効率的に統合されなければなりません。
売却側従業員とのトラブルも考えられるので、最終的に効果が得られるまで時間がかかる可能性もあります。この点を想定した上でM&Aを実施しましょう。
- 専門家に依頼した上でデューデリジェンスを実施する
- 売却側の過去の取引や契約内容に問題やリスクが無いか確認する
- 相乗効果が得られるまで多くの時間がかかることを理解して事業展開する
- 双方の文化や事業の融合プロセスを効率的に行う
- M&Aにおける目的や課題を明確にしてからマッチングを行う
- 円滑な手続きを目指すため専門家に依頼して実施する
関東地方でM&Aを行うときは専門家に相談しよう!
日本の首都圏として経済を支える関東地方でも、多くの企業が人材不足や後継者問題を抱えており、対処を迫られる状況にあるのが現状です。
M&Aは効率的に課題解決を目指せるので、有益な対処法の1つと言えます。ただ、多くのリスクが伴うものなので専門家のサポートは欠かせません。
知識豊富なM&A仲介会社に相談しながら、円満な売却・買収成功を目指しましょう。
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