飲食店のM&Aの市場規模や動向を徹底解説!事例やメリット・デメリットは?
コロナ禍により飲食店の市場規模が縮小したものの、市場規模が回復中の今こそM&Aの最適なタイミングといえるでしょう。この記事ではM&Aの相場や動向、メリット・デメリットなど事例を踏まえたうえで、M&Aの成功するポイントを解説します。
目次
飲食店の市場規模やM&Aの動向
はじめに、飲食店の定義と市場規模、M&Aの動向を見てみましょう。
飲食店とは
総務省の「大分類M-飲食店,宿泊業 総説」によると、飲食店は以下のように定義されています。
飲食店とは、主として注文により直ちにその場所で料理,その他の食料品又は飲料を飲食させる事業所をいう。
また、百貨店、遊園地などの一区画を占めて飲食店が営まれている場合、それが独立の事業所であれば本分類に含まれる。
なお飲食店は、一般飲食店と遊興飲食店に分類されています。具体例は以下のとおりです。
一般飲食店の種類 | 具体例(対象外を含む) |
---|---|
食堂、レストラン | ・一般食堂(定食屋やファミリーレストラン) ・日本料理店 ・西洋料理店 ・中華料理店 ・その他食堂、レストラン(焼肉店、インド料理店) |
そば・うどん店 | 中華そば店は含まない |
すし店 | 宅配やテイクアウトは含まない |
喫茶店 | スナックバーは含まない |
その他一般飲食店 | ハンバーガー、お好み焼きなど |
遊興飲食店の種類 | 具体例(対象外を含む) |
---|---|
料亭 | 割烹店 |
バー、キャバレー、ナイトクラブ | |
酒場、ビヤホール | 焼き鳥屋、おでん屋 |
本記事では、飲食店の経営をする企業を含むM&Aも紹介します。
飲食店の市場規模
飲食店は外食産業に分類されます。
株式会社リクルートの外食市場や相場を調査・研究する『ホットペッパーグルメ外食総研』によると、2023年6月の市場規模は2659億円でした。
これは前年の2022年6月よりも伸びており、動向として1年以上も増加中です。
一方でコロナウィルスが流行する2020年より前と比較すると、市場規模は縮小したままです。
飲食店のM&Aの動向
飲食店のM&Aの動向は増加が予想されます。
なぜなら、飲食店の倒産件数が増加しているからです。
東京商工会議所の調査では、2023年1月〜6月の飲食店の倒産が過去最高だったと公表しています。
背景には休業や時短営業の飲食店に対し、給付された支援金が終了したことが考えられます。
その結果、2014年と同等の飲食店が倒産しました。
したがってコロナ禍が終わったとはいえ、M&Aを検討する飲食店の動向は今後も増加が見込まれます。
飲食店のM&Aの成功事例
では、実際に行われた飲食店のM&Aの成功事例を見ましょう。
JR九州とロイヤルフーズのM&A
九州旅客鉄道株式会社と有限会社ロイヤルフーズの事例です。
JR九州は旅客鉄道業以外に、旅館業や飲食業など多くの事業を展開しています。
一方で福岡県福岡市にあるロイヤルフーズは、精肉・食材卸販売や不動産賃貸の事業を展開しています。
このM&Aで、JR九州は飲食店事業を展開する株式会社綱屋も子会社化しました。
そしてロイヤルフーズを仕入れ先に、綱屋のブランド「焼肉ヌルボン」やJR九州グループの外食事業の強化に成功しています。
C-UnitedとポッカクリエイトのM&A
C-United株式会社と株式会社ポッカクリエイトの事例です。
C-Unitedは、フルサービス型とセルフサービス型のカフェを約400店舗も経営しています。
■フルサービス型
従業員が座席に注文を取って、飲食を提供する形式
■セルフサービス型
カウンター越しで注文を聞き、飲食を提供形式
一方でポッカクリエイトも、カフェチェーンを展開して約200店舗を運営していました。
このM&Aで、C-Unitedは共同メニューの開発やキャンペーン・商品フェアの展開を加速し、C-Unitedグループのブランド強化に繋がりました。
スシローグローバルホールディングスと京樽(吉野家ホールディングス)のM&A
株式会社スシローグローバルホールディングスと株式会社京樽の事例です。
スシローグローバルホールディングスは、回転寿司チェーンの大手で今回が初めてのM&Aでした。
一方で京樽は、牛丼チェーン店を運営する吉野家ホールディングスの子会社です。
同じく回転寿司の事業で、持ち帰りすし「京樽」や回転ずし「海鮮三崎港」を展開しています。
このM&Aでスシローホールディングスは、京樽のテイクアウトを強化できて、時代に合ったニーズに広く対応できるようになりました。
WDIとちんやのM&A
株式会社WDIと老舗すき焼き店「ちんや」の事例です。
WDIは、外食事業でカプリチョーザやステーキハウスなど20以上の国内ブランドを運営しています。
一方でちんやは明治13年に創業した、浅草で古いすき焼き店です。
2021年に新型コロナウィルスの影響で休業していましたが、このM&Aで営業を再開して新店舗をオープンしました。
アークランドサービスホールディングスとコスミックダイニングのM&A
アークランドサービスホールディングス株式会社とコスミックダイニング株式会社の事例です。
アークランドサービスは、とんかつ専門店チェーン「かつや」を運営しています。
一方でコミックダイニングはスーパーや飲食店向けのとんかつやハンバーグなど、冷凍食品の製造や販売を行っていました。
このM&Aで、アークランドサービスは冷凍食品の事業を新規で拡大できました。
AFC-HDアムスライフサイエンスとなすびのM&A
株式会社AFC-HDアムスライフサイエンスと株式会社なすびの事例です。
AFC-HDアムスライフサイエンスは、健康食品の大手企業で化粧品や医薬部外品(スキンケ製造を行っています。
一方でなすびは、静岡県を中心に和食店を運営していました。
このM&AでAFC-HDアムスライフサイエンスは、なすびの事業ノウハウを活かして、焼肉店や回転寿司店をオープンしました。
飲食店のM&Aを行うメリット・デメリット
次に、飲食店のM&Aを行うメリットとデメリットを見ましょう。具体的には以下の表のとおりです。
〇メリット | ×デメリット | |
---|---|---|
売却側 | ・撤退金額を節約できる ・売却金を得られる | ・労働環境が変わる ・スムーズに売却できない |
買収側 | ・ノウハウを獲得できる ・人材の確保が不要 | テキスト |
売却側と買収側に分けて説明します。
売却側のメリット
撤退金額を節約できるのは、売却側のメリットです。
もしM&Aで買い手が見つからなければ、売り手側が物件や土地を原状回復する必要があります。
原状回復の工事は多くの費用がかかるため、売却先が見つかって撤退金額を節約できるのは安心するポイントです。
また、売却金を得られることもメリットです。
売却金は事業のノウハウやブランドといった、目に見えない価値も含みます。
したがって、予想を上回る売却金を得ることも可能です。
借入金で経営をしていた場合、売却金を返済に当てることができます。
売却側のデメリット
一方で労働環境が変化するのは、売却側のデメリットです。
例えば、買収先がメニューや調理方法を変えるケースが考えられます。
同じやり方で長く働いた従業員ほど、新しい対応を求められたとき苦労するでしょう。
中には労働環境の変化に対応できず、退職する従業員もいます。
また、スムーズに売却できるとは限らないのもデメリットです。
売却先に希望の価格を提示しても、M&Aはすぐに成立するわけではありません。
買い手側は安い金額で買収し、M&Aが経営のプラスになるか考えています。
したがって値下げ交渉をしてくる、または保留になるケースも多いです。
買収側のメリット
買収側のメリットは、飲食店の経営ノウハウを獲得できることです。
例えばコロナ禍の動向として、テイクアウトをする消費者が増えました。
そこでテイクアウトを事業戦略としている企業を買収すれば、自社にテイクアウトのノウハウを取り入れることができます。
また、人材を確保した状態で飲食店を経営できるのもメリットでしょう。
帝国データバンクの調査では、7割前後の飲食店が人手不足と感じています。
したがって人材不足の飲食店が多いなか、人材を確保した状態で経営できるのは自社の強みと言えます。
買収側のデメリット
一方で買収しても利益が増えるとは限らないのが、買収側のデメリットです。
系列店が多ければ収益が上がるビジネスモデルのため、飲食店はスケールメリットを得やすい業界です。
しかしコロナ禍による外食離れや食品の管理維持費の負担が上がったことで、利益が上がらないのも想定されます。
また、運営のコンセプトを変えにくいのもデメリットでしょう。
売却側のデメリットで紹介したように。運営のコンセプトを変えると従業員の労働環境が変化します。
職場の雰囲気や仕事のやり方を変えないで働きたい従業員にとって、労働環境の変化は大きな負担です。
他にもコンセプトの変化は、店の雰囲気も変化させます。
したがって、常連客だった人には店に来なくなる人もいるでしょう。
飲食店のM&Aの相場
飲食店のM&Aの相場は、飲食店を経営する企業の規模で異なります。
この章では、M&Aの価格計算の方法や相場を決定する実態に関して紹介します。
M&Aの価格計算方法
M&Aの価格を決める計算方法は、以下の3つです。
コストアプローチ | 資産や負債の時価で計算。簿価純資産法、時価純資産法を使用。 |
---|---|
マーケットアプローチ | 株式市場相場の価値や株価で計算。EV/EBITDA倍率を求める。 |
インカムアプローチ | 事業の収益力を基準に計算。DCF法を使用。 |
次に、それぞれの算出方法のメリット・デメリットを見ましょう。
コストアプローチ | |
---|---|
〇メリット | 簡単に企業の価値を算出できる |
×デメリット | 計算式の簿価資産法と時価純資産法で、将来の収益が考慮されない |
マーケットアプローチ | |
---|---|
〇メリット | 最新の市場動向や株価を反映できる |
×デメリット | 類似する上場企業の存在が必要 |
インカムアプローチ | |
---|---|
〇メリット | 企業の将来性が考慮されている |
×デメリット | 将来的な予測ができる、規模の大きい企業に限られる |
取引が安価なためM&Aが頻繁に行われている
飲食店同士のM&Aの相場は、データで公表されていません。
しかし飲食店を開業する場合、500万〜600万前後の資金が必要です。
そのため、M&Aをした方が費用を抑えられる場合があります。
一方で、飲食店を経営する会社のM&Aは金額が高いです。
チェーン店を経営している場合、M&Aの相場が数億円に達することもあります。
価格は交渉次第
飲食店のM&Aの価格の相場は、交渉で変化します。交渉で注目される点は以下の3つです。
- 店舗の立地や敷地面積
- 過去にあった飲食店のM&Aの事例
- 予想されるM&Aの効果
売り手と買い手企業の間には、M&A仲介会社が入って価格交渉が行われます。
M&A仲介会社の指示があったら、店舗の立地や敷地面積などの必要な情報を公開できるようにしましょう。
飲食店のM&Aを成功させるポイントと注意点
最後に、飲食店のM&Aを成功させるポイントと注意点を解説します。具体的には以下の7つです。
- 時間に余裕をもって準備を始める
- 自社の魅力と価値を正確に把握する
- 譲れない条件を明確にする
- 相手企業を慎重に選ぶ
- タイミングを見逃さない
- デューデリジェンスを行う
- M&Aの知識と経験が豊富な専門家に相談する
それぞれ確認してみましょう。
時間に余裕をもって準備を始める
飲食店のM&Aを成功させるには、時間に余裕をもって準備しましょう。
なぜなら、早めに行動できるとM&Aが成功しやすいからです。
売り手側はM&A仲介会社を見つけて、相談することから始めます。
一方で買い手側は、M&A仲介会社に希望条件を登録して売り手側のオファーを待ちます。
時間に余裕がない状態で準備をすすめると、相手を選ぶ余裕がありません。
その結果、良い条件でM&Aができないことに繋がるでしょう。
自社の魅力と価値を正確に把握する
自社の魅力や価値を明確にしてみましょう。
なぜなら、魅力的に見られやすいからです。
自社の魅力や価値を説明できると印象に残りやすく、知名度や資金力によるM&Aを避けることができます。
客観的に魅力や価値を把握したい場合、M&A仲介会社に相談するのもおすすめです。
譲れない条件を明確にする
スムーズにM&Aを進められるように、譲れない条件を明確にしましょう。
条件が少ないほどM&Aは成立しやすいですが、「成立=成功」ではありません。
本当の成功とは、M&Aの後に売り手も買い手もプラスになることです。
したがって妥協できるところと譲れない条件を明確にして、M&Aの成立を目的にしないようにしましょう。
相手企業を慎重に選ぶ
飲食店のM&Aは、曖昧な理由で相手企業を選んではいけません。
立地条件やノウハウ、人材などの気になる点はすべて確認することが重要です。
中には、オーナーの人間性や店の雰囲気を重視する相手企業もいます。
企業の規模や事業だけでなく、数字ではわからない価値を考慮するのも大切です。
タイミングを見逃さない
M&Aはいつでもできるわけではありません。M&Aが行いやすいタイミングは以下の通りです。
- 好景気のとき
- 業界再編の動きがあるとき
- 経営者が健康なとき
- 会社の業績が良いとき
共通しているのは、飲食店にとってプラスな状況であることです。
例えばコロナ禍の後は飲食店の売上が回復しているため、プラスな状況といえます。
会社の業績は、M&Aの価格相場にも影響を与えます。
状況が悪くなる前にM&Aを実施しましょう。
デューデリジェンスを行う
デューデリジェンスとは、買い手が売り手に問題点がないか調査することです。
調査項目の例として、以下の4つがあります。
- 法務
- 財務
- 税務
- 労務
専門的な内容も含むため、税理士や公認会計士などの専門家が調査します。
その後、デューデリジェンスに問題なければ最終交渉でM&Aの成立です。
M&Aの知識と経験が豊富な専門家に相談する
最後に、M&Aを検討するときは専門家に相談しましょう。
M&Aの候補の相手企業や条件交渉、契約書の作成など専門家を頼ればスムーズに取引できます。
多くのM&Aに携わった経験からも、トラブルを未然に防ぐことも可能です。
気になったことがあれば、ぜひ専門家に相談してみてください。
飲食店のM&Aは専門家に相談しながら成功させよう
この記事では飲食店のM&Aに関して、価格相場や動向、メリット・デメリットなどを事例を踏まえて紹介してきました。
コロナ禍で縮小したものの、飲食店の市場規模は回復しています。
M&Aは、企業にとって状況や価格相場の動向が良いときに行うのが最適です。
したがって飲食店からすれば、今が最適のタイミングでしょう。
M&Aを成功させるポイントは、売り手への調査でマイナスの要素がないことと、条件にマッチする企業を見つけることです。
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