黒字倒産についてわかりやすく解説!原因や発生させないための対策とは?
資金繰りなどがうまくいかず、売上は出せていても黒字倒産に追い込まれてしまう企業が多いです。健全な事業運営を進めるためにも、黒字倒産において把握しておきましょう。今回は黒字倒産が不安な企業に向けて、黒字倒産の原因や発生させないための対策などについて解説します。
黒字倒産とは
企業が倒産する原因に業績悪化などによる赤字倒産をイメージする方が多いです。
しかし、赤字倒産以外にも業績がよいにも関わらず黒字倒産が実施される事例も見られています。
まずは黒字倒産の動向などについて解説します。
黒字倒産が発生する背景
黒字倒産が発生する主な背景として、現金の入金と出金のタイミングのズレがあげられます。
利益が出せていない状況が続くことで資金繰りがうまくいかないために、赤字倒産が発生します。
しかし、黒字倒産の場合、純資産の状況はよくても会社の現金が不足し、現金不足の対策がすぐに取れないことでピンチに陥りやすいです。
他にもいくつかの原因がありますが、黒字倒産を避けるためにキャッシュフローをチェックしておきましょう。
黒字倒産と赤字倒産の違い
黒字倒産と赤字倒産の違いは、先ほど触れたように純資産の状況があげられます。
純資産の良し悪しで黒字倒産か赤字倒産か判断されますが、どちらも現金不足で支払いができない状況に変わりはありません。
また、現金での支払いが難しくなる原因にはいくつかの理由が複雑に絡んでいることが多いです。
そのため、黒字倒産か赤字倒産か判断しづらい注意点があることを押さえておきましょう。
黒字倒産する企業の割合
東京商工リサーチの調べによると、倒産企業の半数近くが黒字倒産を記録しています。
2019年のデータで545社が倒産しており、そのうち233社が売上が増加しているにも関わらず倒産しています。
赤字倒産とさほど変わらない件数の黒字倒産が起きていることを知っておくことが大事です。
売上が上がっている企業でもキャッシュの状況が安定していないと黒字倒産のリスクがあると考えておいてください。
黒字倒産の確認方法
黒字倒産かどうか判断する方法として以下のものがあげられます。
- 損益計算書から収支バランスを確認する
- 貸借対照表から純資産と負債のバランスを確認する
- 自由資金比率と当座比率を計算する
損益計算書から収支バランスを確認する方法があります。
損益計算書に記載されている損益の大きさは、本来のキャッシュフローとは異なります。
そのため、収支のバランスが取れているかどうかを確認してください。
また、貸借対照表から純資産と負債のバランスを確認する方法もあります。
「純資産÷(純資産+負債)×100」で自己資本比率が計算できます。
その計算で15%以上記録していれば十分です。
他にも、自由資金比率と当座比率を計算する方法もあります。
自由資金比率からキャッシュフローの余裕の度合いがわかり、「フリーキャッシュフロー÷自己資本増加額×100」で計算可能です。
当座比率からはすぐに現金が生み出せる流動資産の割合がわかり、「当座資産÷流動負債×100」で算定できます。
企業が黒字倒産する原因
赤字倒産が発生する原因とはやや違いがあるため、黒字倒産する原因にどういったものがあるかチェックしておくべきです。
企業が黒字倒産する原因として以下のものがあげられます。
- 収支バランスの崩れ
- 多数の不良在庫
- 過剰な設備投資
- 負債の増加
- 取引先企業の倒産
以下で詳細を解説します。
①収支バランスの崩れ
企業が黒字倒産する原因として、収支バランスの崩れがあげられます。
売上が出ているとしても、発生主義の観点から先に売上を計上して後で代金の支払いを受けるケースがあります。
その仕組みから利益は出せていても収支バランスが崩れてしまい、キャッシュ不足で黒字倒産に追い込まれる事例が少なくありません。
利益が出せているから赤字倒産は起きないだろうと安心しないようにしましょう。
②多数の不良在庫
企業が黒字倒産する原因として、多数の不良在庫があげられます。
在庫管理がいい加減で必要以上の在庫を抱えてしまうと、在庫分を吐き出して現金化するまでに時間がかかってしまいます。
特にすぐに傷みやすい食品関係などであれば現金化できなくなった在庫を抱えてしまうケースも多いです。
③過剰な設備投資
企業が黒字倒産する原因として、過剰な設備投資があげられます。
事業成長のために設備投資を進め、必要な生産体制を整えるのは大事なことです。
ただ、無理な資金調達をして設備投資に回そうとすると、投資した金額を回収するまでに時間がかかってしまいます。
④負債の増加
企業が黒字倒産する原因として、負債の増加があげられます。
投資の部分でも触れましたが、過剰な資金調達は返済までに時間がかかってしまう注意点があります。
無理な資金調達を進めると負債が増加し、場合によっては自転車操業になってしまう注意点があることも押さえておきましょう。
自転車操業は資金調達した金額を返済するために追加借入する状況のことです。
⑤取引先企業の倒産
企業が黒字倒産する原因として、取引先企業の倒産があげられます。
取引先企業が倒産すると、売掛金が踏み倒されてしまう注意点があります。
踏み倒された売掛金は法的な手続きで回収することもできますが、手元に現金として入ってくるまでに時間がかかりやすいです。
取引先企業が倒産してしまうことは、当該企業以外にはどうすることもできないため、多少は仕方ないことと割り切るしかないです。
企業が黒字倒産する流れ
企業が黒字倒産する場合の流れを知っておきましょう。
黒字倒産する場合の流れは以下の通りです。
- 資金不足
- 仕入れ・従業員の給与支払い遅延
- 資金調達の不可
- 黒字倒産
以下で詳細を解説します。
①資金不足
財務状況が悪化していると、資金不足に陥ります。
先ほど紹介した計算方法などを用いて資金不足を認識します。
決算が赤字だともう少し早い段階で認識できますが、黒字倒産だと資金不足の認識が遅れがちです。
②仕入れ・従業員の給与支払い遅延
資金不足を認識したとしても、仕入・従業員の給与支払い遅延は発生しやすいです。
資金不足が分かってからすぐに状況を打開できるわけではないです。
無理に支払いを続けるわけにはいかないため、仕入や従業員の給与支払いに遅れが生じます。
③資金調達の不可
状況を改善するために資金調達を申請しますが、借入審査が通過できずに資金調達に失敗してしまいます。
資金調達に失敗したら状況を立て直すことは難しいです。
資金調達に失敗すると、仕入や従業員の給与支払いはできなくなる可能性がある点を押さえておきましょう。
④黒字倒産
必要な支払い義務が果たせなくなったら、黒字倒産を選択するしかなくなります。
仮に赤字であっても企業のブランド力や信用力が高い状態であれば、ある程度は資金調達できます。
企業の信用力が欠けている場合は黒字でも資金調達が難しく、倒産は避けられないことを押さえておきましょう。
黒字倒産した企業の事例
黒字倒産した企業の事例を把握しておきましょう。
黒字倒産した企業の事例からどのような行動を避けるべきか判断することが大事です。
黒字倒産した企業の事例として以下のものがあげられます。
- 江守HD
- アーバンコーポレーション
- 日本綜合地所
以下で詳細を解説します。
①江守HD
黒字倒産した企業の事例として、江守HDの事例があげられます。
江守HDは化学品・合成樹脂などを扱っていた企業です。
日本だけでなく、アジア各国にサービス展開を行っていた大手企業として知られていました。
しかし、中国の大企業との取引の中で掛け金の代金がなかなか手元に入ってこなかったことで資金繰りが悪化していきました。
業績自体は好調でしたが、経営破綻に陥っています。
黒字倒産した時期 | 2015年4月 |
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黒字倒産した原因 | 中国の大企業からの掛け金の未回収 |
②アーバンコーポレーション
黒字倒産した企業の事例として、アーバンコーポレーションの事例があげられます。
アーバンコーポレーションは大手の不動産会社で1963年から40年以上の歴史を持っていた企業です。
2000年になって東証一部に上場しており、売上なども好調でしたが、2008年に倒産しています。
主な原因は異常な棚卸資産の金額にありました。
2006年までは730億円程度だった棚卸資産額がわずか2年で4370億円程度まで上昇しています。
ちょうど2006年あたりは空き家問題が悪化している頃で、動向に合った不動産の仕入ができなかったために売れ残りの不動産を多数抱えることになりました。
黒字倒産した時期 | 2008年8月 |
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黒字倒産した原因 | 不動産の過剰な在庫を抱えたこと |
③日本綜合地所
黒字倒産した企業の事例として、日本綜合地所の事例があげられます。
日本綜合地所もマンション事業で業績を伸ばした企業で、1999年から上場しています。
上場してから高い業績を記録し続けていましたが、状況が傾いていることに気付けないほどの早さで2008年頃から急激に業績が悪化しました。
加えて、第7回無担保社債で2回目の追加担保が受けられず、資金調達が難しくなっていました。
そこで、2009年2月に会社更生法を申請して倒産手続きを行っています。
黒字倒産した時期 | 2009年2月 |
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黒字倒産した原因 | 急激な業績の悪化・資金調達の不可 |
黒字倒産を発生させないための対策と注意点
黒字倒産の原因や過去の事例などについて解説しました。
その内容を踏まえて、黒字倒産を発生させないための対策と注意点について解説します。
黒字倒産を発生させないための対策と注意点として以下のものがあげられます。
- 過剰な仕入れや在庫を減らす
- 税金面は専門家へ依頼する
- キャッシュフローを正確に把握する
- 資金管理を徹底する
- 売掛金の比率を下げる
以下で詳細を解説します。
過剰な仕入れや在庫を減らす
黒字倒産を発生させないための対策と注意点として、過剰な仕入れや在庫を減らす点があげられます。
業績がよいとしても、いつまでもその状況が続くとは限りません。
業界の動向を常に把握し、仕入れや在庫の量を変えることが大事です。
特に不動産などの1つあたりの単価が大きなものを扱う業界・業種は、仕入・在庫の量に敏感になっておきましょう。
税金面は専門家へ依頼する
黒字倒産を発生させないための対策と注意点として、税金面は専門家へ依頼する点があげられます。
節税対策のために節税商品にお金を投資する企業も多いです。
しかし、過剰に節税商品に投資すると資金不足が発生してしまいます。
どこまで節税商品の投資を行うのが適切か判断するためにも、税理士などの税金面に強みを持つ専門家に相談してみてください。
キャッシュフローを正確に把握する
黒字倒産を発生させないための対策と注意点として、キャッシュフローを正確に把握する点があげられます。
利益を出すことばかりに注視せず、資金繰りを意識した判断を行うことが大事です。
少なくとも1、2カ月ほどの間のキャッシュフローの動きを把握しておいてください。
貸借対照表・損益計算書だけでなくキャッシュフロー計算書も活用することをおすすめします。
資金管理を徹底する
黒字倒産を発生させないための対策と注意点として、資金管理を徹底する点があげられます。
貸借対照表・損益計算書以外の書類を活用することはもちろん、取引条件を見直したり、信用管理を見通した資金運用を心掛けたりして対策を講じます。
資金管理において不安を感じている場合は、公認会計士などの専門家に相談してみてください。
資金管理は赤字倒産だけでなく、黒字倒産のときにも注意しましょう。
売掛金の比率を下げる
黒字倒産を発生させないための対策と注意点として、売掛金の比率を下げる点があげられます。
売掛金を用いた取引はビジネスの現場でよく使われがちです。
しかし、現金化されるまでに時間のかかる資産であるため、売掛金を保有しすぎると資金不足が起きやすい注意点があります。
売掛金の未回収リスクを抑えるためにも、売掛金を保有しすぎないように気を付けてください。
黒字倒産を回避するにはM&Aも検討しよう!
発生主義が一般的な会計方法となっており、かつ売掛金などの入金まで時間がかかる取引があるために、黒字倒産を起こす企業が見られています。
黒字倒産を防ぐために、売掛金の保有率を下げたり、キャッシュフローの管理を徹底したりする方法があります。
他にも、M&Aを活用して事業譲渡することで黒字倒産を回避する事例も多いです。
M&Aなら赤字倒産でも対応可能です。
事業基盤が安定しているところに事業を譲り渡せば、資金繰りの問題で事業の継続ができなくなる問題は回避できます。
加えて、M&Aなら廃業よりも売却側に利益が残りやすく、買収側にとってもシナジー効果でさらなる企業成長が狙えます。
M&Aは双方にとってメリットの多い選択肢であるため、黒字倒産を回避するためにM&Aで事業譲渡する選択も視野に入れてみてください。
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