「EBITDA」とは?計算式から評価方法・M&Aでの使い方まで徹底解説!

M&Aを行う上でEBITDAという考えが重要になってきます。
正しく企業価値を計算し、比較検討するためにもEBITDAを使いこなせるようになっておくべきです。
今回はM&Aを検討している企業に向けて、EBITDAの計算式や評価方法などについて解説します。

目次

  1. 「EBITDA」の意味について
  2. 「EBITDA」の計算方法
  3. 「EBITDA」の評価方法
  4. 「EBITDA」を割り出すことのメリット
  5. 「EBITDA」のM&Aでの使い方
  6. 「EBITDA」を用いる上での注意点
  7. 「EBITDA」をM&Aに活用しよう

「EBITDA」の意味について

EBITDAは企業価値を算出する際に必要となるものの1つです。

M&Aを実施する際に、どのくらいの価値になるのか計算して検討した上で取引相手を決めることが大事になってきます。

そのために使う1つの計算方法であるEDITDAの意味や他の用語との違いなどについて解説します。

営業利益に減価償却費をプラスしたもの

まずはEBITDAの意味について解説します。

EBITDAは償却前営業利益のことを意味しています。

こちらは営業利益とは別物です。

まず売上高から売上原価を差し引いて売上総利益が計算できます。

それから販売費及び一般管理費を差し引くと、営業利益が計算できます。

さらに、営業利益に減価償却費を加えるとEBITDAの値が計算可能です。

営業利益・経常利益との違い

EBITDAは営業利益と経常利益と何が異なるのか解説します。

営業利益との違いは計算式を見れば明らかで、減価償却費を含んでいるかどうかという違いがあげられます。

EBITDAは企業の現金に基づく稼ぐ力の大きさを意味した指標です。

一方で、営業利益は企業の事業に基づく稼ぐ力の大きさを意味した指標です。

こうした役割の違いも押さえておきましょう。

また、経常利益は営業利益に支払利息と受取利息の差額を加えて計算できるものです。

EBITDAと経常利益の違いとして、利息も加えた企業としての正確な価値の高さが計算できる点があげられます。

比較的新しい企業だと借入金の割合が多く、利息を差し引くと企業価値が低く計算されます。

しかし、EBITDAなら利息を考慮しないため、新しい企業でも本来の収益力に見合った企業価値が計算可能です。

「EBITDA」がよくM&Aに利用される理由

EBITDAがよくM&Aで利用される理由として、企業の事業の利益状況・収益性の良し悪しが比較しやすい点があげられます。

減価償却費が差し引かれる前の利益の状況がわかれば、キャッシュの状況まで含めた企業価値が計算しやすいです。

そのため、M&Aの際にはEBITDAが必要と言われています。

「EBITDA」の計算方法

EBITDAの計算方法について触れましたが、実際は以下の4つの計算方法があります。

  1. 営業利益+減価償却費
  2. 経常利益+支払利息+減価償却費
  3. 税引前当期純利益+特別損益+支払利息+減価償却費
  4. 当期純利益+法人税等+特別損益+支払利息+減価償却費

1つずつ以下で詳細を解説します。

①営業利益+減価償却費

EBITDAがどの程度か調べる際に、営業利益に減価償却費を加える方法があります。

こちらは先ほど解説した方法で、キャッシュフローベースの金額がわかる計算方法となっています。

キャッシュフローは現金の出入りの状況を意味したものです。

単純な方法でEBITDAの良し悪しがわかるため、帳簿を見て上記の2つの項目がわかるならこのやり方を採用してみてください。

とはいえ、簡単に算出できないことも多いため、以降で紹介する方法も理解しておきましょう。

②経常利益+支払利息+減価償却費

EBITDAがどの程度か調べる際に、経常利益に支払利息と減価償却費を加える方法があります

利息を差し引いた利益額を使うだけだとキャッシュフローのずれが生じる可能性があります。

そのため、本当にその価値が正しい数字になっているか断定することが難しいです。

その点を考慮して、利息を加える必要があります。

利息を加えた場合に、現金の流れも考慮して企業価値がどの程度か調べることが可能です。

③税引前当期純利益+特別損益+支払利息+減価償却費

EBITDAがどの程度か調べる際に、税引前当期純利益に特別損益と支払利息、減価償却費を加える方法があります。

②の計算を基準に考えると、経常利益は税引き前当期純利益から特別損益を差し引くことで計算可能です。

ただ、この方法を用いることはそう多くありません。

あくまでも②の計算を紐解くとこうなるという認識だけ持っておきましょう。

④当期純利益+法人税等+特別損益+支払利息+減価償却費

EBITDAがどの程度か調べる際に 、当期純利益と法人税等、特別損益、支払利息、減価償却費を加える方法があります

③の計算を基準に考えると、税引前当期純利益は当期純利益に法人税等を加えることで計算可能です。

③同様に、それまでの計算を紐解くとこの形になるという知識だけ押さえておいてください。

「EBITDA」の評価方法

先ほど紹介した方法でEBITDAの計算ができたら、その数値を評価する段階に移ります。

EBITDAを評価する際にも別途計算が必要です。

EBITDAを評価する際に使うものとして以下のものがあげられます。

  • EBITDAマージン
  • EV/EBITDA倍率

以下で詳細を解説します。

EBITDAマージン

EBITDAを用いて企業の良し悪しを比べるときに、EBITDAマージンがあげられます。

これは売上に対してどの程度のキャッシュフローが生み出せるかを意味したものです。

EBITDAマージンはEBITDAから売上高を割ると算出されます。

EBITDAマージンは減価償却費の変動が大きい企業で用いられることの多い企業を評価する際のやり方です。

EBITDAマージンの数値が高いと収益性が高いことを意味しています。

ちなみに、全業種の平均値は10%前後と言われており、これより低いと本業による収益力は低いとみなされてしまいます。

EV/EBITDA倍率

EBITDAを用いて企業の良し悪しを比べるときに 、EV/EBITDA倍率があげられます。

EV/EBITDA倍率は企業価値がEBITDAの何倍かを意味している数値です。

値が低いと短い期間で買収コストが回収できることを意味しています。

EV/EBITDA倍率はEVをEBITDAで割ると計算可能です。

EV/EBITDA倍率の平均は8から10倍程度と言われており、それより低いと株式評価額が低く見られてしまいます。

「EBITDA」を割り出すことのメリット

EBITDAを利用する前に、EBITDAを割り出すことのメリットを知ることが大事です。

そのため、この章ではEBITDAを割り出すことのメリットを解説します。

EBITDAを割り出すことのメリットとして、主に以下のものがあげられます。

  • グローバル企業の収益力が比較可能になる
  • 設備投資の影響を受けず企業価値評価が算出できる

以下で詳細を解説します。

グローバル企業の収益力が比較可能になる

EBITDAを割り出すことのメリットとして、グローバル企業の収益力が比較可能になる点があげられます。

国によって金利や税金、減価償却に対する対応が異なるため、当期純利益ではグローバルな企業比較ができません。

しかし、EBITDAであればその点を気にすることなく簡単に企業比較しやすいです。

特にグローバル展開を考えている企業にとって、これは大きなメリットと言えます。

設備投資の影響を受けず企業価値評価が算出できる

EBITDAを割り出すことのメリットとして、設備投資の影響を受けず企業価値評価が算出できる点があげられます。

減価償却費には設備投資分の費用が含まれており、EBITDAなら設備投資の影響を除いた利益がわかるメリットがあります。

実際、設備投資額が大きい企業だと減価償却費の負担が大きくなり、赤字となるケースが多いです。

営業利益のブレの要因を減らす意味でも、EBITDAを利用しましょう。

「EBITDA」のM&Aでの使い方

EBITDAの計算方法やそのメリットを踏まえて、EBITDAを効果的にM&Aで活用することが大事です。

この章ではEBITDAを効果的にM&Aで活用する方法を解説します。

EBITDAのM&Aでの使い方として以下のものがあげられます。

  • 投資判断基準に用いる
  • 企業価値の算出に用いる

以下で詳細を解説します。

投資判断基準に用いる

EBITDAのM&Aでの使い方として、投資判断基準に用いる方法があげられます。

投資判断基準の1つとして、事前に定めている投資回収年数を満たしているかという点があげられます。

EBITDA倍率が何倍、つまり投資回収何年までのM&Aを行うか決めておきましょう。

EBITDAを計算し、そこを基準に投資判断を行うことが可能です。

買収側はメリットだと感じる安さで買収したいと思い、売却側はメリットだと感じる金額の高さで売却したいと思うものです。

そのバランスを意識し、投資判断をしてみてください。

企業価値の算出に用いる

EBITDAのM&Aでの使い方として、企業価値の算出に用いる方法があげられます。

まず比較対象とする企業のEBITDA倍率を計算し、比較対象企業の平均値を出します。

その平均値を対象企業のEBITDAでかけると、対象の事業価値が計算可能です。

マルチプル法による比較を検討している場合は、EBITDAの利用がおすすめできます。

マルチプル法は類似会社比準法と呼ばれ、類似企業を比較するのに適した方法を意味しています。

「EBITDA」を用いる上での注意点

EBITDAを用いる際には、その注意点を押さえておく必要があります。

EBITDAの注意点を知っておくと、正確な企業価値が計算しやすいです。

EBITDAを用いる上での注意点として以下のものがあげられます。

  • あくまでも企業の業績・収益力の目安となる数字である
  • のれんの損失は反映されない
  • 知識と経験が豊富なM&A仲介会社にアドバイスを受ける

以下で詳細を解説します。

あくまでも企業の業績・収益力の目安となる数字である

EBITDAを用いる上での注意点として、あくまでも企業の業績・収益力の目安となる数字である点があげられます。

EBITDAはいくつかの計算方法があり、企業ごとに計算方法が異なる場合があります。

また、EBITDAには営業以外の資金などのキャッシュフローの要因が含まれていません。

営業以外のキャッシュフローを考慮した企業価値を用いてM&Aを判断することが難しいです。

そのため、企業価値の正確性はそこまで高いと言い切れない点に注意が必要です。

のれんの損失は反映されない

EBITDAを用いる上での注意点として、のれんの損失は反映されない点があげられます。

のれんは買収企業の資産と実際の買収額の差額のことです。

のれんも償却が必要で、この費用を上回る利益がないと投資が失敗したという扱いになります。

しかし、EBIDTAだとこの失敗が数字の中から分析できません。

のれんはEBITDAにおいて減価償却と同様の扱いになると覚えておきましょう。

知識と経験が豊富なM&A仲介会社にアドバイスを受ける

EBITDAを用いる上での注意点として、知識と経験が豊富なM&A仲介会社にアドバイスを受ける点があげられます。

企業に所属する経営陣なら企業価値の計算を誰しもできるとは限りません。

企業間だけで取引すれば、余計なコストをかける必要はないです。

しかし、適正な企業価値でM&Aを行えない可能性があります。

M&A仲介会社を頼ると適正価格でM&Aが可能というメリットがあります。

そのため、知識と経験が豊富なM&A仲介会社に頼ると、正しく企業価値を計算してもらいやすいです。

M&Aの仲介会社を選ぶ場合は、以下のポイントを押さえておきましょう。

  • 自社のM&Aの規模の実績が豊富かどうか
  • 担当者とコミュニケーションが取りやすいかどうか
  • 企業へのアプローチ方法がどうなっているか
  • 情報収集力が高いかどうか

M&A仲介会社を選ぶ際には、自社のM&Aの規模の実績が豊富かどうかチェックしてみてください。

規模感によってM&Aにおける動き方が異なるため、自社のケースでの実績が豊富な会社に依頼すると失敗のリスクが減らせます。

また、担当者とのコミュニケーションが取りやすいかどうかも大事です。

担当者に必要なことが伝えられず、サポート時や企業のマッチング時にミスがあり、M&Aで失敗してしまうこともあります。

それを防ぐためにも、遠慮なく情報が伝えられる担当者を見極める必要があります。

他にも、1社ずつあるいは複数社並行してアプローチするのか、情報収集力が高いのかについても確認してください。

「EBITDA」をM&Aに活用しよう

M&Aを行う場合に、企業価値の計算が必要になります。

その際に用いられる指標の1つがEBITDAと呼ばれる償却前営業利益を意味する指標です。

EBITDAには減価償却やのれんの償却などに左右されず、企業価値が計算できるなどのメリットがあります。

グローバル企業や新規の企業の計算もしやすい点で、M&Aの現場で使われることが多い計算方法です。

M&Aを行う際には、M&A仲介会社などの専門家に頼り、EBITDAを用いて企業価値を計算してもらいましょう。

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