M&Aでのファンドの役割・種類まとめ!買収後のメリット・デメリットは?

M&Aではファンドを活用して投資資金を集めることが多くありますが、具体的にファンドはどのような役割を果たしているのか知らない方も多くいます。
今回は、M&Aでのファンドの役割・種類、買収後のメリット・デメリットについて解説します。

目次

  1. 投資ファンドとは?
  2. M&Aにおける投資ファンドの種類
  3. 投資ファンドとM&A・買収後のメリット
  4. 投資ファンドとM&A・買収後のデメリット
  5. 投資ファンドとM&Aの事例
  6. 投資ファンドの役割を理解して投資ファンドへのM&Aも考えよう

投資ファンドとは?

投資ファンドという言葉を聞いたことのある方は多いと思いますが、投資ファンドの目的や投資対象、運転資金について知らない方は少なくありません。

また、投資ファンドがM&Aを行う事例もあります。

ここでは、投資ファンドがどのようなものなのか解説します。

投資ファンドの目的

投資ファンドは、複数の投資家から資金を集めて対象の投資先で運用して、利益を投資家に還元することが目的です。

投資ファンドがM&Aを行う理由もこの目的を達成するためです。

投資によって得られた利益は、投資家の投資ファンドへ出資した比率に応じて投資家に還元されるようになっています。

そのため、投資ファンドではいかに高いリターンを得られる投資先を見つけるかが重要です。

投資ファンドの運用資金

投資ファンドの運用資金は、主に投資家から集めた資金になります。

投資家から集めた資金を使って、不動産・公開株式・債券・為替などの投資対象に投資を行い利益を狙います。

そして得られた利益を投資家に還元することで、投資ファンドと投資家にリターンが得られるようになっています。

投資ファンドの資金調達手段

投資ファンドの資金調達方法は、主に個人投資家や機関投資家から集めます。

上場企業への投資を行う場合、投資ファンドは個人投資家から資金を集めて、投資信託なをに投資を行います。

また、資金調達を行う際は資金調達期間を設けた上で、投資家に資金調達を募り目標金額を集めます。

投資ファンドの投資対象

投資ファンドの投資対象は、主に株式・不動産・商品・債券などがあります。

投資対象に応じて株式ファンド・不動産ファンドなどの種類があり、それぞれのファンドが特定の投資対象を専門的に投資します。

また、未公開株式に投資を行う「PEファンド」という種類の投資ファンドも存在しており、M&Aを行うこともあります。

また、現在でも投資ファンドの投資対象・種類は多様化し続けている状況です。

M&Aにおける投資ファンドのビジネスモデル

M&Aにおける投資ファンドはのビジネスモデルは、主にPEファンドです。

PEファンドとは、未公開株式の株式を投資するファンドのことで、非上場企業の上場支援や資金調達、後継者確保などを行います。

実際に、M&Aを検討している非上場企業の株式を買収し、事業や企業を引き継ぐケースは多くあります。

そして買収した企業の企業価値を向上させて高額で売却することで、PEファンドは高い利益を獲得します。

M&Aにおける投資ファンドの種類

M&Aにおける投資ファンドには、さまざまな種類が存在しており、それぞれのファンドごとに目的や投資対象が異なります。

ここでは、M&Aにおける投資ファンドの種類を主に5つ解説します。

ベンチャーキャピタル

ベンチャーキャピタルとは、ベンチャー企業が投資対象の種類の投資ファンドです。

主に、成長が見込めるベンチャー企業に対して投資を行うことが役割で、投資ファンドは経営に関わることはありません。

そしてベンチャー企業が上場して事業が拡大したタイミングで売却して利益を得ます。

MBOファンド

MBOファンドとは、MBOを目指す経営者に投資を行う種類の投資ファンドです。

MBOとは、「Management Buy-out(マネジメント・バイアウト)」の略称で、経営陣による企業買収という意味になります。

そして最終的に第三者への株式売却を行うことで利益を得えます。

バイアウトファンド

バイアウトファンドとは、安定して収益を出している成熟した未公開企業に投資・M&Aを行う種類の投資ファンドです。

最初に企業の株式を買収して経営権を取得し、その後企業価値が上がったタイミングで売却し利益を獲得します。

企業再生ファンド

企業再生ファンドとは、主に経営不振や経営破綻によって倒産寸前の企業が投資・M&A対象の種類の投資ファンドです。

投資家から集めた資金を使い、債権の買取や事業への出資を行います。

そして、企業再生によって企業価値が向上したら、株式公開や株式譲渡によって利益を獲得する仕組みです

ディストレスファンド

ディストレスファンドとは、破綻状態の企業が投資・M&A対象の種類の投資ファンドです。

ディストレスとは、「差し押さえ」という意味の言葉であり、事業の分離売却などによっって企業価値を向上させた後に株式を売却し利益を得ます。

ただ、企業価値の向上に失敗してしまったら、大きな損失が出てしまうハイリスクなものでもあります。

投資ファンドとM&A・買収後のメリット

投資ファンドを活用してM&Aを行うことで、買収後にどのようなメリットがあるのか気になります。

しっかりとメリットを理解しておくことで、M&Aで効果的に投資ファンドを活用できます。

ここでは、投資ファンドとM&A・買収後のメリットについて解説します。

資金調達が可能になる

投資ファンドを活用することで、多額の資金調達が可能になります。

M&Aでは、さまざまな手段で資金調達を行う必要で多くの手間がかかりますが、投資ファンドの役割として出資してくれることで大幅に手間を減らすことが可能です。

そのため、効果的に資金調達をしたい企業には、投資ファンドとのM&Aが効果的になります。

別視点で見た経営ノウハウの獲得

投資ファンドの役割としてM&Aや出資だけでなく、多くの役員をM&A先に派遣するため、別視点で見た経営ノウハウを獲得することができます。

そのため、経営陣はこれまでとは違った方法で経営を行うことができるようになったり、企業価値を向上させることが可能です。

また、M&Aによって事業再生や事業編成を専門としている役員が派遣されることもあります。

急速な企業の成長が見込める

投資ファンドは、投資・M&Aをした企業の企業価値を向上させて、多くの利益を得ることが目的です。

そのため、投資ファンドから投資を受けた企業は、さまざまな経営改善策を講じて企業価値の向上を期待できます。

さらに、経営ノウハウやスキルを獲得して、長期的に成長させ続けることも可能です。

事業承継問題の解決

企業がM&Aを行う主な理由に後継者不在があります。

投資ファンドは、企業に最適な後継者を派遣してくれるので、事業承継問題の解決にもなります。

自社の業種に詳しい最適な人材が後継者として派遣されることで、効果的に事業を引き継ぐことができるだけでなく、その後の事業拡大や企業価値向上も期待できます。

そのため、後継者不在によって倒産の危機にある企業にも投資ファンドとのM&Aは効果的です。

成長への時間を短縮できる

自社の資金のみでは厳しいような状態でも、投資ファンドによる出資・M&Aよって自社の資金を充実させて効果的に成長させることが可能です。

そのため、これまでよりもハイペースで事業拡大や新規事業立ち上げなどを進められるようになり、成長への時間を大幅短縮になります。

個人保証を外せる

投資ファンドを活用したM&Aでは、個人保証を外すことができます。

投資ファンドは、M&A実施後に経営者が引退する場合は、その経営者の個人保証を外すようにします。

そのため、多額の個人保証を抱えている場合などでは、大きなメリットになります。

投資ファンドとM&A・買収後のデメリット

投資ファンドを活用することでさまざまなメリットがありますが、反対にデメリットもあります。

これから投資ファンドとのM&Aを検討している企業は、デメリットも理解しておくことが大切です。

ここでは、投資ファンドとM&A・買収後のデメリットについて解説します。

リストラや事業縮小を行う可能性がある

1つ目のデメリットは、投資ファンドによってM&A後にリストラや事業縮小が行われる可能性があるということです。

投資ファンドは、コスト削減や経営改善のための施策として実施することで、経営改善や企業価値向上を目指すことはあります。

また、利益率の少ない事業などは縮小されることが十分にあることを理解しておきましょう。

不満を抱いた従業員の大量離職につながる可能性がある

投資ファンドによってM&Aを行った場合、従業員の大量離職につながる可能性があるというデメリットもあります。

投資ファンドは、最終的に別の企業に売却して利益を得ることを目的として役割を果たすため、そのことに対して不満や不安を抱いた従業員が多くいると大量離職につながります。

特に、専門性の高い業種や長いキャリアのある従業員が多い企業では、このようなデメリットが起きやすいです。

これまでの企業文化が残るとは限らない

投資ファンドとのM&Aによって、これまでの企業文化が残るとは限らないというデメリットもあります。

投資ファンドから派遣された役員が、企業の年功序列を実力主義に変更したり経営方針を大きく変更することも多くあります。

そのため、最終的に元々の企業文化がほとんどなくなってしまい、全く別の企業のようになってしまうことも少なくありません。

投資ファンドとM&Aの事例

実際にこれまでに投資ファンドが行ったM&Aは数多く存在しています。

ここでは、これまで行われてきた投資ファンドとM&Aの事例の中から主なM&Aの事例を6つ紹介します。

J-STARの「paiza」への投資

2006年に東京都で設立されたPEファンド「J -STAR」は、ITエンジニアの求人や学習を支援するプラットフォームである「paiza」への投資を行いました。

主に、中小企業に対して投資をする役割のある投資ファンドであり、これまでにも多く企業への投資を行っています。

今回、投資を行った「paiza」も、ギノが運営している事業の1つであり、投資による成長や今後の投資先の選定に注目が集まります。

ベインキャピタルのすかいらーくの買収

ベインキャピタルが2010年10月にすかいらーくの株式を買収しました。

ベインキャピタルは、世界的なPEファンドの1つであり、これまでに多くの企業のM&Aを支援してきました。

今回の買収では、すかいらーくを廃止させてガストの展開を主導し、2014年10月に再上場させました。

企業再生支援機構の日本航空の買収

1つ目のM&A事例は、企業再生支援機構が2010年1月に日本航空を買収した事例です。

企業再生支援機構は、2010年10月に破産状態だった日本航空を買収し、コスト削減や経営改善によって2012年9月に再上場させました。

そして、企業再生支援機構は再上場させた後に全株式を売却し多額の利益を獲得しました。

ベインキャピタルの雪国まいたけの買収

2つ目のM&A事例は、ベインキャピタルが2015年2月に雪国まいたけにTOBを実施した事例です。

ベインキャピタルは、雪国まいたけの事業基盤拡大やグローバル展開を目指すためにM&Aを実施して、2020年9月に再上場させました。

そのため、ベインキャピタルは雪国まいたけの経営改善に大きな役割を果たしました。

産業革新機構によるジャパンディスプレイの買収

3つ目のM&A事例は、産業革新機構が2012年3月にジャパンディスプレイを買収した事例です。

産業革新機構は、政府の財政投融資を民間の企業に投資するファンドであり、政府が定めた投資基準を考慮した上で、投資判断は民間の専門家が行います。

ジャパンディスプレイは、ソニー・東芝・日立のディスプレイ事業を統合し、2012年4月に誕生した企業で、2014年3月には上場しました。

アイ・シグマ・キャピタルの昭光通商の買収

4つ目のM&A事例は、丸紅が出資している投資ファンドである「アイ・シグマ・キャピタル」が2021年3月に昭光通商にTOBを実施した事例です。

昭光通商は、主に樹脂や化学品、金属セラミックスなどを取り扱う総合商社で、新たに事業パートナーを探していました。

そして、このM&Aによってアイ・シグマ・キャピタルは昭光通商を買収したことで経営改善や企業価値向上を進めました。

投資ファンドの役割を理解して投資ファンドへのM&Aも考えよう

投資ファンドは、投資に対して高い利益を得るために、M&A相手の企業価値を向上させたり役員を派遣するなどを役割を担います。

そのため、投資ファンドとのM&Aには多くのメリットもありますが、経営方針や企業文化が変更されるなどのデメリットも少なくありません。

また、投資ファンドの種類多様化しており担う役割も多様化しています。

これから投資ファンドとのM&Aを検討している企業は、しっかりと投資ファンドの役割やメリット・デメリットを理解しておくことが大切です。

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