ドラッグストアのM&Aを徹底解説!業界動向から事例・価格相場は?

ドラッグストア業界では、ドミナント強化を図る目的を中心にM&Aが盛んにおこなわれています。ドラッグストア大手によるM&Aのケースが大半です。

M&Aを取り入れて、事業成長を図る動向を確立させましょう。

今回は、M&Aの概要やメリットについて解説します。

目次

  1. ドラッグストア業界の現状
  2. ドラッグストア業界のM&Aの動向
  3. ドラッグストア業界のM&Aスキーム(手法)
  4. ドラッグストア業界の価格相場
  5. ドラッグストア業界でM&Aを実施するメリット・デメリット
  6. ドラッグストア業界のM&A・買収・売却事例
  7. ドラッグストア業界のM&Aを成功させるポイント
  8. ドラッグストア業界のM&Aは専門家に相談しよう

ドラッグストア業界の現状

まずはドラッグストア業界の概要について解説します。

ドラッグストア業界の市場規模

ドラッグストアの市場価値は、年々増加傾向にあります。

販売額の観点で見ると、2000年は約2兆6000億円で、2018年は6兆3000億円と、18年の間で約2.4倍販売額が増加していることがわかります。

市場価値の増加の要因は、飲食・化粧品・健康食品の需要増加にあります。また、地域密着型のドラッグストアが増加したことも要因として挙げられます。

ドラッグストア業界の事業特性

ドラッグストア業界の事業特性を、以下にまとめました。

  • ナショナルブランドの販売:格安ブランドで集客を図る
  • 政策の影響を受けやすい:薬事法の改正で収益構造が変化する
  • 立地・商圏の違いによる売上高の差:立地・商圏で事業の立ち回りや売上高が異なる
  • 多店舗展開(ドミナント戦略)を行う:特定の地域で多店舗展開を行い競合店の参入を防ぐ
  • 店舗規模による力の有無:規模が大きい店舗は仕入れ先から有利な条件で仕入れる

ドラッグストア業界の課題

ドラッグストア業界の課題として大きいのは、薬剤師不足問題です。

そのため、今後のドラッグストア業界では人材獲得を図ったM&Aが活発化すると予想されます。

ドラッグストア業界のM&Aの動向

ドラッグストア業界のM&A動向について解説します。

大手グループによる規模拡大を目的としたM&A

大手グループ会社による規模拡大を目的としたM&A動向が目立っています。

事業特性の項目で先述したように、規模が大きいドラッグストアは有利な条件で仕入れを行えます。そのため、M&Aで規模拡大を図ることで仕入れの観点で収益向上が期待できます。

また、未進出エリアのドラッグストアを買収すれば、自社の事業エリアの拡大にもつながり、新たな顧客の獲得による収益拡大も図れます。

大手同士の業務提携・資本提携の増加

大手同士の業務提携や資本提携などの連携を目的とした、M&A動向も見られています。また、大手が中小ドラッグストアを買収する動向・事例も同様に見られています。

他社同士の連携により、格安プライベートブランドの開発や共同仕入れを行うことで関係会社と関係を築きながら事業規模を高めていくことが目的です。

健康促進を目的とした事業の拡大

近年の健康ブームのニーズ対応を目的としたM&A動向も目立っています。

そのため、健康関連会社を買収することで健康事業の規模拡大を図るといった動向が散見されています。また、ドラッグストア事業以外に独自のサービスを展開する中小企業は、買収側のよい交渉相手として重宝されるケースがあります。

ドラッグストア業界のM&Aスキーム(手法)

ドラッグストア業界のM&Aスキームについて解説します。

スキームとはM&Aを実施する際の具体的な手法を指し、それぞれメリットが異なります。ドラッグストア業界でM&A実施動向が散見される3つのスキームについて、それぞれ紹介します。

株式譲渡

株式譲渡とは、売却側の企業が発行する株式を買収側の企業に、現金を対価として売却する方法です。

株式譲渡で対象会社の株式を取得することで、その会社の経営権を掌握したり子会社化したりするといった目的が達成できます。

株式譲渡はあくまで株主構成が変化するだけなので、買収されても会社の運営に支障がほとんどないことが特徴です。そのため、多くの企業では株式譲渡のスキームが利用されています。

事業譲渡

事業譲渡とは、売却側の企業の事業のすべてまたは一部を、買収側の会社に売却するスキームです。対価は現金もしくは株式で支払います。

事業譲渡は、特定の事業・資産・負債・権利などを選択して承継できるため、リスクを抑えながらM&Aができる魅力的なスキームです。

株式総会で全株主からの同意が必要な株式譲渡と異なり、株主総会の特別決議で3分の2以上の決議を得られれば実施できるといった、実施が簡便であることが特徴です。

合併

合併とは、複数の会社が1つの会社にまとまる手法をいいます。

合併には、新設合併(対象会社をすべて消滅させて1つの会社を設立する方法)と、吸収合併(吸収元の会社を残し、ほかの会社をすべて消滅させて統合する方法)の2種類があります。

合併は、主に業界再編の目的で実施される動向・傾向があります。

ドラッグストア業界の価格相場

ドラッグストア業界の売却・買収相場について解説します。

価格相場

ドラッグストア業界の買収・売却相場は、おおよそ数億円から数十億円に及ぶケースが散見されています。

ドラッグストア業界に限らず、すべての業界において売却・買収相場を一概に算出することは困難です。理由は、対象会社の規模感・事業内容・エリア・資本などといった要素が会社ごとに異なるためです。

ドラッグストア業界でのM&A業界の相場をある程度把握するには、自社と規模感や事業内容が類似した過去のM&A売却・買収事例を参考にすることが有効です。

売却価格の元となる企業価値の算出方法

売却価格のもととなる企業価値の算出を行う際は、以下の3つの手法を使用します。

企業価値算出は通常M&A専門家に行ってもらいますが、自社でも計算の概要について理解をしておきましょう。

コストアプローチ

コストアプローチは、企業の純資産ベースで企業価値を算出する方法で、簿価純資産法と時価純資産法の2種類が存在します。

簿価純資産法は簿価の純資産額を企業価値とし、時価純資産法は時価の純資産額を企業価値とみなす方法です。

インカムアプローチ

インカムアプローチは、将来の会社の収益性ベースに企業価値を算出する方法で、主にDCF法が使用されます。

DCF法は、事業計画・収益予想・リスク評価をベースに企業価値を算出するといった方法です。

マーケットアプローチ

マーケットアプローチは、市場取引価格ベースに企業価値を算出する方法で、市場価額法と類似会社比準法の2種類が存在します。

市場価額法とは、株式の時価総額で企業価値を算出する方法で、類似会社比準法は、類似する上場企業株価を参考に企業価値を算出する方法です。

ドラッグストア業界でM&Aを実施するメリット・デメリット

ドラッグストア業界でM&Aを実施する際メリット・デメリットについて解説します。

M&Aを踏まえた会社動向を検討する際は、M&Aのメリットを理解したうえで行うことが重要です。

メリット

売り手側

  • 後継者問題の解決
  • 事業存続できる
  • 経営者の債務の解消
  • 大手のブランド力を活かした売上拡大・人材確保
  • 創業者利益・売却利益の獲得
  • 従業員の雇用確保
  • 事業の再興・回復
  • 人材の獲得

ドラッグストア業界における売り手のM&Aメリットは上記のとおりです。

M&Aはさまざまなメリットが存在するため、目的に適したスキームを選択することで自社が希望する経営を進めていけるようになります。

買い手側

  • 既存店舗を承継した上でのドミナント戦略展開
  • 立地・エリアのよい店舗の獲得
  • 事業規模拡大による仕入れをはじめとしたローコスト化
  • 新エリアでの顧客獲得
  • 異業種を買収することによる新事業展開や既存事業とのシナジー
  • 技術・ノウハウの獲得
  • ブランド力強化
  • プライベートブランド開発による利益獲得

ドラッグストア業界における買い手のM&Aメリットは、上記のように多数の魅力的な内容が存在します。

すべてもしくは一部のメリットを活かせれば、おのずと事業成長が見込まれますが、後述するデメリットを把握したうえでM&Aを実施しないと失敗するリスクがあります。

デメリット

売り手側

  • 必ずM&Aできるわけではない
  • 従業員や仕入れ先との関係悪化のリスク
  • 風評被害のリスク

M&Aの売り手のデメリットは上記のとおりです。

タイミングを逃したり、M&Aの準備・動向が確立していなかったりすることで、M&Aの実施時期を逃す可能性があります。また、M&Aは従業員の雇用や取引先との契約に変化をもたらします。そのため、M&Aによるメリットをしっかりと伝えたり、調整を行うことが重要となります。

雇用・取引先との契約が従来よりも悪化すれば、関係が途絶えリスクもあるため、M&Aはそのようなリスク管理を踏まえたうえで実施すべきです。

また、売却先の企業の実態・評価に応じて風評被害を受けるリスクも把握しておきましょう。

買い手側

  • リスクを承継する可能性
  • 統合失敗のリスク
  • 買収企業の人材退職のリスク

M&Aの買い手のデメリットとして挙げられるのは、上記のリスクに関するものです。

M&A交渉でデューデリジェンスを入念に実施しなかった場合、給与未払いをはじめとした簿外債務や、社内トラブルを承継してしまう可能性があります。

また、シナジー効果が得られない企業を買収した場合、その事業の維持管理費が負担となるリスクも把握しておきましょう。

買収した人材の雇用が従来よりも悪化したりよくない場合、貴重な人材が退職するリスクもあります。

これらのリスクに共通して言えることは、買収企業の選定は慎重・入念に行うべきという点です。どのような買収企業を買収すれば成功するのか、買収後の動向はどうするか、買収企業のリスクはどのようなものがあるかなど、M&A成功のための動向を確立させたうえで買収決定を行いましょう。

ドラッグストア業界のM&A・買収・売却事例

ドラッグストア業界のM&A事例について解説します。

M&Aでの企業価値を算出する際には、事例を参考に行うケースがあります。そのため、自社と規模感や事業内容が似たM&A事例を理解し、自社のM&A動向のヒントにしましょう。

ウェルシアホールディングスによるふく薬品のM&A

最初に紹介する事例は、ウェルシアホールディングスとふく薬品のM&A事例です。

買い手のウェルシアホールディングスは、「お客様の豊かな社会生活と健康な暮らしを提供します」をモットーに、ドラッグストア事業や介護事業、海外事業を営む会社です。

売り手のふく薬品は、沖縄県で地域密着型の薬品事業を営む会社です。

本M&Aは、ウェルシアグループの沖縄での事業展開や、経営拡大の目的で実施されました。

株式会社ふく薬品の株式取得(子会社化)についてのお知らせ

ウェルシアホールディングスによるコクミンのM&A

続いて紹介する事例は、ウェルシアホールディングスとコクミンのM&A事例です。

買い手のウェルシアホールディングスは、先述した通り「お客様の豊かな社会生活と健康な暮らしを提供します」をモットーに、ドラッグストア事業や介護事業、海外事業を営む会社です。

売り手のコクミンは、「国民の美と健康に奉仕する」をモットーに、健康サービスを提供するドラッグストア事業です。

本事例は、都市型店舗、全国への出店網拡大を図ったり、ノウハウ・人材を獲得したりする目的で実施されました。

株式会社コクミン及び株式会社フレンチとの資本業務提携(子会社化)に関するお知らせ

ココカラファインとマツモトキヨシの経営統合

3つ目に紹介する事例は、ココカラファインとマツモトキヨシの経営統合事例です。

ココカラファインは、ヘルスケア・ドラッグストア事業を全国的に展開する会社です。マツモトキヨシは、ココカラファインと同様にドラッグストア・調剤薬局 · オンラインストア事業を展開する会社です。

今回の経営統合事例は、新型コロナウイルスの感染拡大による市場の変化や、双方の企業強化、サービスの向上を目的で実施されました。

株式会社マツモトキヨシホールディングス との経営統合に関するご案内

ツルハホールディングスによるドラッグイレブンのM&A

4つ目に紹介する事例は、ツルハホールディングスとドラッグイレブンのM&A事例です。

買い手のツルハホールディングスは、 ドラッグストア· 調剤事·介護·通信販売などの事業を展開する企業です。売り手のドラッグイレブンは、JR九州グループとしてドラッグストア・調剤薬局事業を展開しています。

本事例は、日本一のドラッグストアチェーンを目指したツルハHDが、ドラッグイレブンを買収することでドラッグストア事業・調剤事業におけるシナジー効果を期待されるとして実施しました。

JR九州ドラッグイレブン株式会社の株式取得に伴う連結子会社化のお知らせ

クスリのアオキホールディングスによるフクヤのM&A

5つ目に紹介する事例は、クスリのアオキホールディングスとフクヤのM&A事例です。

買い手のクスリのアオキホールディングスは、「健康と美と衛生」をモットーにドラッグストア事業を展開している会社です。売り手のフクヤは、京都府を中心に食品スーパーを展開する地元に根付いた企業です。

本事例は、京都北部地区におけるドミナントを強化する目的で実施されました。

株式会社フクヤの株式の取得(子会社化)に関するお知らせ

BCJ-48によるキリン堂ホールディングスのM&A

6つ目に紹介する事例は、BCJ-48とキリン堂ホールディングスのM&A事例です。

買い手のBCJ-48は、株式会社BCJ-47の完全子会社である投資ファンドです。売り手のキリン堂ホールディングスは、ドラッグストア事業を展開する会社です。

本事例は、株式会社BCJ-48の企業価値向上を図る目的で実施されました。

BCJ-48、ドラッグストア等を運営するキリン堂HDの株式を公開買付により取得へ

ウエルシアホールディングスによる上新電機のM&A

最後に紹介する事例は、ウエルシアホールディングスと上新電機のM&A事例です。

買い手のウェルシアホールディングスは、「お客様の豊かな社会生活と健康な暮らしを提供します」をモットーに、ドラッグストア事業や介護事業、海外事業を営む会社です。

売り手の上新電機は、家電製品・情報通信機器・住宅設備機器の専門販売を営む会社です。

本事例は、近畿地区におけるドミナント強化を目的として実施されました。

ドラッグストア店舗の譲渡に関するお知らせ

ドラッグストア業界のM&Aを成功させるポイント

ドラッグストア業界のM&A成功のポイントを解説します。

ポイントを押さえたM&A動向を確立させることで、より成功に近づきます。

地域性

地域性はM&A成功のポイントの1つです。

ドラッグストアは立地やエリアの所在が重要なため、それが良ければよいほど買収されやすい・売却しやすいといえます。また、その地域における独自のネットワークを持っていれば、買収側としては企業規模拡大のためのうれしい要素であるためさらに企業価値を高めることができるでしょう。

有資格者の人材を多く確保している

ドラッグストア業界では、人材不足問題が深刻化しています。

その中でも薬剤師や登録販売業の資格を保有する人材が足りていません。

そのため、自社に上記の資格保持者がいればいるほど売却しやすくなるといっても過言ではありません。

サービス面の充実

ドラッグストア業界では、近年の健康ブームをはじめとした多種多様なニーズ対応が求められています。

そのため、独自のサービスや事業を展開していれば買収側に重宝されやすく、売却されやすいといった特徴があります。これからM&A実施を検討する場合は、今からでもニーズ対応に向けたサービスを展開することで今後企業価値が高まっていくでしょう。

M&Aに向けた動向を確立することは、M&A成功のために非常には重要です。

専門家への相談

ドラッグストア業界でのM&A成功には、M&A専門家への相談が欠かせません。

専門家は、M&Aの目的・動向の確立や売却先の選定、交渉中のサポートなどM&Aに関して全面的なサポートをしてくれます。

また、M&Aには税務・財務・法務といった専門知識が問われますが、そのような場合でも専門家に介入してもらうことでスムーズ交渉を進めることができます。

ドラッグストア業界に強い専門家を探し、M&Aを成功させましょう。

ドラッグストア業界のM&Aは専門家に相談しよう

ドラッグストア業界のM&Aは専門家に相談しましょう。

専門家の中にはM&Aの無料相談を実施しているケースがあるため、迷わずに利用することがベストです。担当者の中にも相性の良し悪しがあるため、複数の無料相談を利用し、信頼できる担当者を見つけるるようにしましょう。

M&A専門家とともに、ぜひM&A成功を目指しましょう。

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