ビルメンテナンス会社のM&Aの動向は?事例や売却・買収相場も紹介!

ビルメンテナンス会社では人材不足の課題に対処すべく、各企業でM&Aを実施する動向が多く見られます。当記事では、これまで実施された売却・買収事例を交えながらビルメンテナンス会社のM&A事情を解説します。気になる相場や、成功へのポイントも併せてチェックしましょう。

目次

  1. ビルメンテナンス会社の現状とM&Aの動向
  2. ビルメンテナンス会社のM&A活用事例
  3. ビルメンテナンス会社のM&Aのメリット・デメリット
  4. ビルメンテナンス会社のM&Aの売却・買収相場
  5. ビルメンテナンス会社のM&Aを行う手順
  6. ビルメンテナンス会社のM&Aを成功させるポイント
  7. ビルメンテナンス会社のM&Aで事業の継続を図ろう!

ビルメンテナンス会社の現状とM&Aの動向

まずは、ビルメンテナンス会社における基本知識を押さえましょう。

ビルメンテナンス会社の主な業務内容と特性・業界を取り巻く現状を踏まえた上で、M&A動向を解説します。

ビルメンテナンス会社の特性

ビルメンテナンス会社は、主に建物の維持管理(メンテナンス)を行います。

ビルメンテナンスにはさまざまな種類の業務がありますが、主に行われるのは以下の通りです。

ビルメンテナンス会社の主な業務

・維持管理業務(建物)

・清掃業務(廃棄物処理等)

・設備管理業務(電気や通信・空調設備)

・警備業務(防災・防犯)

規模が大きなビルメンテナンス会社は上記の業務を包括して担当するケースが多く、小規模な会社は各業務に特化して担当します。

ビルメンテナンス会社の現状

ビルメンテナンスは市場動向が比較的安定した業界と言われています。

しかし人材不足問題を抱える上で、業務内容も限られているため差別化をはかりにくく、価格競争が起こりやすい業界です。

ビルメンテナンスは各企業から注目される業界ではありますが、人材確保と収益性向上の両面で対処しなければなりません。

ビルメンテナンス会社のM&Aの動向

ビルメンテナンス業界では、課題をM&Aで解決しようとする動向が見られます。

各会社で実施されることが多いM&A動向は、以下の通りです。

  • 動向①:人材確保のためのM&A
  • 動向②:後継者問題解消のためのM&A
  • 動向③:業界再編のためのM&A
  • 動向④:業界参入のためのM&A

ビルメンテナンス会社のM&A活用事例

ここでは、ビルメンテナンス会社が過去に行ったM&A事例を8つ紹介します。

企業が掲げた目的に注目しながら各事例をチェックしましょう。より詳しいIR情報は、各事例の下部分に掲載のリンクから参照できます。

  • 事例①:安川ビルサービスとスピナ
  • 事例②:都市ビルサービスと穴吹ハウジングサービス
  • 事例③:ジャパンエレベーターサービスHDと関東エレベーターシステム
  • 事例④:中央建物とレ・コネクション
  • 事例⑤:穴吹ハウジングサービスと建衛工業
  • 事例⑥:東急コミュニティーとユナイテッドコミュニティーズ
  • 事例⑦:ビーエムサービスと京成電鉄
  • 事例⑧:AICと綿半HD

①安川ビルサービスとスピナ

売却企業

安川ビルサービス

(ビルメンテナンス事業)

買収企業

スピナ

(不動産賃貸事業、総合ビル管理事業)

M&Aの手法

株式譲渡

M&Aの目的

グループの資本効率化

総合ビル管理業のノウハウ活用によるサービス向上

実施時期

2022年6月

譲渡価格

非開示

当社孫会社(株式会社安川ビルサービス)の株式譲渡に関するお知らせ

②都市ビルサービスと穴吹ハウジングサービス

売却企業

都市ビルサービス

(マンション・一般ビルの保守・管理事業)

買収企業

穴吹ハウジングサービス

(分譲・賃貸マンション管理事業、不動産賃貸仲介事業)

M&Aの手法

株式譲渡

M&Aの目的

大規模修繕工事におけるグループとしての成長

スケールメリットを活かしたサービス提供

実施時期

2022年3月

譲渡価格

非開示

都市ビルサービスの株式取得に関するお知らせ

③ジャパンエレベーターサービスHDと関東エレベーターシステム

売却企業

関東エレベーターシステム

(エレベーター等メンテナンス事業)

買収企業

ジャパンエレベーターサービスHD

(エレベーター等メンテナンス事業)

M&Aの手法

株式譲渡

M&Aの目的

人的資源の相互活用による事業効率化

技術ノウハウ提供によるサービス品質向上 

実施時期

2022年1月

譲渡価格

非開示

株式会社関東エレベーターシステムの株式取得(子会社化)に関するお知らせ

④中央建物とレ・コネクション

売却企業

中央建物

(京都におけるマンション・戸建て売買・仲介事業、賃貸管理事業)

買収企業

レ・コネクション

(不動産総合コンサルティング事業、

宿泊施設の企画・販売・運営事業飲食事業、M&Aコンサルティング事業)

M&Aの手法

事業譲渡

M&Aの目的

後継者問題の解決

業務の内製化による効率化・コスト削減

実施時期

2021年4月

譲渡価格

非開示

京都の魅力存続に貢献し6周年 地域経済の活性化に寄与、事業の拡大を躍進 M&A により京都市内に本社を置く2事業者の事業を譲受

⑤穴吹ハウジングサービスと建衛工業

売却企業

建衛工業

(北海道のビルメンテナンス事業、マンション・ビル賃貸事業)

買収企業

穴吹ハウジングサービス

(マンション管理事業、不動産賃貸仲介事業、パーキング事業)

M&Aの手法

株式譲渡

M&Aの目的

後継者問題の解決

北海道への事業エリア拡大

グループのさらなる成長

サービス提供力の向上

実施時期

2020年11月

譲渡価格

非開示

建衛工業株式会社 の 株式取得(子会社化) 契約締結 に 関するお知らせ

⑥東急コミュニティーとユナイテッドコミュニティーズ

売却企業

ユナイテッドコミュニティーズ

(不動産管理業会社の保有・コンサルティング事業)

買収企業

東急コミュニティー

(マンション管理大手)

M&Aの手法

株式譲渡

M&Aの目的

管理会社の新たなプラットフォーム形成

提供サービスの強化

業界におけるトップポジションの獲得

(M&A後マンション総合管理戸数で業界トップに)

実施時期

2013年2月

譲渡価格

361億6,000万円

⑦ビーエムサービスと京成電鉄

売却企業

ビーエムサービス

(都内 事務所・店舗・マンション等のビルメンテナンス事業)

 ※後に「京成ビルサービス株式会社」と合併 

買収企業

京成電鉄

(運輸事業・流通事業・レジャーサービス事業・建設事業)

M&Aの手法

株式譲渡

M&Aの目的

事業領域の拡大

収益拡大

実施時期

2021年3月 

譲渡価格

非開示

株式会社ビーエムサービスが 京成グループに加わりました

⑧AICと綿半HD

売却企業

AIC

(テナントビル・マンション・アパート管理事業・不動産売買事業)

買収企業

綿半HD

(ホームセンター経営事業・建設事業・貿易事業)

M&Aの手法

株式譲渡

M&Aの目的

資源・強みの相互活用による企業価値の向上

不動産情報の集約

物件管理機能の強化

実施時期

2022年4月

譲渡価格

非開示

株式会社 AIC が綿半グループ入り

ビルメンテナンス会社のM&Aのメリット・デメリット

ビルメンテナンス会社におけるM&Aのメリットとデメリットを紹介します。

一見良い側面に注目されがちなM&Aですが、実は隠されたデメリットも数々存在します。

大きな責任やリスクも伴うことなので、事前に入念な確認した上での検討をおすすめします。

メリット

まずはメリットを確認します。売却側・買収側それぞれの視点で紹介します。

売り手側

ビルメンテナンス会社のM&Aにおける売却側企業のメリットは、次の通りです。

売却側企業のメリット

・後継者問題を解決できる

・従業員の雇用を維持できる

・売却益を得られる

・大手傘下に入れば経営が安定化する

・経営者が個人債務から解放される

買い手側

ビルメンテナンス会社のM&Aにおける買収側企業のメリットは、次の通りです。 

買収側企業のメリット

・シナジー効果を期待できる

・効率よく事業拡大できる

・優秀な人材や新しい顧客を獲得できる

・低コスト・低リスクで参入できる

・事業エリアを拡げられる

デメリット

次にデメリットを紹介します。こちらも売却側・買収側それぞれの視点で解説します。

売り手側

ビルメンテナンス会社のM&Aにおける売却側企業のデメリットは、以下の通りです。

売却側企業のデメリット

・必ずしも理想通りの条件になるとは限らない

・経営における影響力が縮小する

・従業員が困惑し退職するおそれがある

・マッチングにかなりの時間を要する場合がある

・取引先との関係が悪化するおそれがある

デメリットは多くの場合、事前に対処すれば回避できます。

例えば従業員の退職を防ぐために買収側と処遇を話し合い、不利益が無いことを説明しましょう。

買い手側

ビルメンテナンス会社のM&Aにおける買収側企業のデメリットは、以下の通りです。 

買収側企業のデメリット

・期待通りのシナジー効果が得られない場合がある

・簿外債務を引き継ぐおそれがある

・売却側従業員が待遇で不満を抱くおそれがある

・買収資金の調達が必要

・手続きが計画的に進まない場合がある

簿外債務の発覚を防ぐためには、デューデリジェンスを徹底して行うことが重要です。専門家に依頼し、偶発債務を最小限に抑えましょう。

ビルメンテナンス会社のM&Aの売却・買収相場

ビルメンテナンス会社でM&Aを行うと場合、相場はどの程度を想定するのが良いのでしょうか。経営者としては、相場は特に気になる項目です。

ここでは、ビルメンテナンス会社における売却・買収相場について解説します。

売却・買収相場

気になる相場ですが、実はビルメンテナンス会社におけるM&Aの売却・買収額相場に明確な数字がありません。

取引金額は、会社規模や期待できるシナジー効果の大きさ、資源や設備、人材といったさまざまな項目が考慮されるためです。

ただし、以下の式から大まかな相場を算出することはできます。

大まかな相場算出式

M&A売却・買収価格相場 = 時価純資産 + 営業利益 × 2~5年分

時価純資産にかかる価値評価は専門知識が求められるので、専門家への依頼がおすすめです。

最終的な金額は交渉で決定

また、M&Aにおける最終的な売却・買収価格は当事者間の交渉で決まります。

事前に算出した相場と実際の取引金額で差が生じる場合があるため、注意をしてください。

ビルメンテナンス会社のM&Aを行う手順

ビルメンテナンス会社のM&Aでは、どういった手続きが必要なのでしょうか。

ここでは一般的なM&Aの手順を6つのステップに分けて解説します。以下の手順は、ビルメンテナンス会社に限らず他の業種も同様です。

  1. M&Aの選定・交渉
  2. 基本合意の締結
  3. デューデリジェンス
  4. 最終条件交渉
  5. 最終契約締結
  6. クロージング

①M&Aの選定・交渉

最初のステップは、M&A相手の選定と交渉です。

売却・買収の相手企業とのマッチングに成功したら、候補企業の経営者同士で会談を行います。

マッチングにはかなりの時間を要する場合が多いため、この時点からM&A仲介会社への依頼がおすすめです。

②基本合意の締結

経営者会談を重ね双方がM&Aに合意できたら、基本合意書を取り交わします。

M&Aの方式、スケジュール、取引する株式の数量や値段といった条件を記載するのが一般的です。

基本合意書は法的拘束力を持ちません。

③デューデリジェンス

基本合意書を締結したら、デューデリジェンスに入ります。

デューデリジェンスとは、売却側企業の財務状況や資源、負債などあらゆる項目を調査するプロセスです。

デューデリジェンスは、専門家に依頼して行われる場合が多いです。

④最終条件交渉

デューデリジェンスが済んだら、最終条件交渉に進みます。

基本合意書の内容とデューデリジェンス結果をもとに、より詳細な条件を調整しましょう。当事者双方が合意できる取引内容を目指します。

契約前に従業員の処遇といった不安要素をクリアしておくことをおすすめします。

⑤最終契約締結

ここまで来たら、いよいよ最終契約の締結です。

最終契約書を作成し当事者間で取り交わします。トラブルを抑えるためにも今一度契約内容をしっかり確認することが重要です。

最終契約書は法的拘束力を持つので、契約違反の場合は損害賠償責任が生じます。

⑥クロージング

最終段階に位置するプロセスが、クロージングです。

最終契約書に基づき、株式や事業の譲渡と対価の支払いが行われます。問題なく完了すれば一連のM&A手続きは終了です。

クロージングまでの段階は非常に労力や時間を要します。M&A仲介会社に相談しながら念入りに準備を行い、計画的に手続きを進めましょう。

ビルメンテナンス会社のM&Aを成功させるポイント

ここでは、ビルメンテナンス会社でM&Aを成功させるポイントを解説します。

より成功確率を上げるために、以下の5項目に留意しながら手続きを進めましょう。

  • 事前の準備をしっかりと行う
  • 契約内容をしっかりと確認する
  • 自社の強みをアピールする
  • M&Aの目的を明確にする
  • M&Aの専門家に相談する

事前の準備をしっかりと行う

1つ目のポイントは、事前の準備をしっかり行うことです。

焦った状態で相手企業とマッチングしても、その後シナジー効果が期待できずにかえって損失になる可能性があります。

ビルメンテナンス会社の経営状態が比較的安定しているタイミングから着々と準備を始めましょう。

契約内容をしっかりと確認する

2つ目のポイントは、契約内容をしっかり確認することです。

ビルメンテナンス会社で円満な売却・買収を実現させるためには、当事者双方が合意できる契約内容でなければなりません。

ただ、交渉では必ずしも理想通りの条件で進むとは限らないので、譲歩できる点と譲れない点をあらかじめ決めておくと良いでしょう。

自社の強みをアピールする

3つ目のポイントは、自社の強みをアピールすることです。

アピールポイントが分かりやすい企業は、マッチング候補に挙げられやすくなります。逆に買収のデメリットが多い状態ではマッチングは困難です。

売却側は、得意分野や実績を客観的に分析し資料にまとめると良いでしょう。

M&Aの目的を明確にする

4つ目のポイントは、M&Aの目的を明確にすることです。

一般的にM&Aは、後継者問題や人材不足の解消、業界再編や事業参入といった目的で実施されます。

自社が今どのような状況なのかを把握し、ニーズに合致したマッチングを実現させることが重要です。

M&Aの専門家に相談する

5つ目のポイントは、M&Aの専門家に相談することです。

ビルメンテナンス会社に限らず、M&Aは非常に多くの専門知識を必要とします。個人の場合労力や時間を要するので、デメリットは多くおすすめできません。

ビルメンテナンス会社の仲介実績を持つ、経験豊富な仲介会社に依頼しましょう。

ビルメンテナンス会社のM&Aで事業の継続を図ろう!

ビルメンテナンス会社は比較的需要が安定している反面、人材不足問題があります。

M&Aは課題を解決できるだけでなく、効率的に事業拡大・業界再編を目指せるので有効な手段です。

廃業はコストがかかる上、貴重な人材が失われるなど多くのデメリットがあります。ぜひM&A仲介会社のサポートを受けながら事業継続を目指しましょう。

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