マンション管理会社のM&A事情を徹底解説!動向や事例・相場・メリットは?

マンション管理会社は事業規模を拡大すると収益が増加するメリットがあり、今後も市場が伸びていくと予想されています。この記事では、マンション管理の動向や相場、M&Aの成功事例やメリット、注意点などを解説していきます。

目次

  1. マンション管理会社の現状とM&Aの動向
  2. マンション管理会社のM&Aの事例
  3. マンション管理会社のM&Aが行われる主な理由
  4. マンション管理会社のM&Aのメリット
  5. マンション管理会社のM&Aの費用の相場
  6. マンション管理会社のM&Aを成功させるポイント・注意点
  7. マンション管理会社のM&Aは専門家に相談しながらすすめよう

マンション管理会社の現状とM&Aの動向

国土交通省の「不動産管理業の未来」にみると、令和3年度のマンション管理業者数は1,934業社で減少しているのが現状です。

マンション管理会社の相場の動向は、規模のメリットを受けやすい業種でもあるため、M&Aの動向とともに今後増えていくでしょう。

以下、マンション管理会社の現状とM&Aの動向を詳しく解説します。

マンション管理会社とは

マンション管理会社とは、主な業務がマンション管理の会社です。

国土交通省に会社の登録が必要で、管理費や修繕積立金の会計といった管理業務を行います。

その他、業務内容は以下のとおりです。

  • 管理業務(管理費、修繕積立金、出納、会計)
  • 設備点検
  • セキュリティ管理
  • 防災対策と対応
  • 清掃

管理費や修繕積立金の未納を防ぐため、管理業務は他の会社に委託できません。

また、マンション管理会社は不動産の開発業者であるデベロッパーのグループ会社と、マンション管理を専門とする独立系の会社で成り立っています。 

マンション管理会社の現状

矢野経済研究所のマンション管理市場に関する調査では、2020年のマンション管理会社の市場規模は7831億円で、2027年までの動向が9000億円を超えると予想しています。

大手企業がシェアを拡大しつつ、中小企業が残りの市場をシェアしている状態です。

したがって中小企業が市場のシェアを拡大できないため、大手企業のM&Aで買収されるケースが見られます。

マンション管理会社のM&Aが増加している理由

以下の2つが理由です。

  • M&Aによる規模のメリットが大きい
  • マンション管理会社の経営者の高齢化

マンション管理は、契約すれば継続して収入を得られるストックビジネスです。

マンションに契約する人が多いと利益が増えるため、市場を拡大させるためのM&Aが増加しています。

一方、マンション管理会社の経営者が高齢化しているのもM&Aが増加している要因の1つです。

事業の継続だけでなく従業員の雇用維持のためにも、M&Aの成功で後継者問題や事業承継問題の解決を図っています。

マンション管理会社のM&Aの事例

 では、過去に行われた事例を見ていきましょう。

中央日土地レジデンシャルサービスによる神鋼不動産ジークレフサービスとのM&A

 中央日土地レジデンシャルサービスは分譲マンションや戸建て、賃貸住宅の建設事業を行っています。

一方で神鋼不動産ジークレフサービスは、神戸・阪神エリアにマンションの管理やリフォームの事業を行っていました。

このM&Aの事例で、中央日土地レジデンシャルサービスはマンション管理の事業も開始して、分譲マンションの開発から販売、管理まで一体化したシステムを構築しました。

綿半ホールディングスによるAICとのM&A

 綿半ホールディングスは小売や建設、貿易など多くの事業を展開しています。

一方で、AICは賃貸管理や資産活用の事業を行っていました。

このM&Aの事例で、綿半ホールディングスは不動産管理部門の体制を強化できました。

三幸による都市総合サービスとのM&A

 三幸は都市総合サービスの株式を持っていたため、清掃や設備管理の事業で協力をしてきました。

2019年のM&Aの目的は協力関係を強くすることです。

このM&Aの事例で、業務内容の効率化や拡大して両者の企業価値が上がりました。

穴吹ハウジングサービスによる建衛工業とのM&A

 穴吹ハウジングサービスの事業はマンション管理で、全国で分譲や賃貸マンション、企業社宅の管理を行っています。

一方で建衛工業の事業は、北海道での分譲マンションの管理やビルメンテナンスです。

このM&Aの事例で、売り手の建衛工業は後継者問題の解決だけでなくサービスの提供力の強化に成功しています。

三井不動産レジデンシャルサービスによる三井物産フォーサイトとのM&A

 このM&Aの事例で、マンション管理事業のエム・エフ・リビングサポート株式会社を設立しました。

管理戸数も首都圏では22万戸、全国で約27万戸に増加して多様な顧客ニーズに対応できるようにしています。

ジェイ・エス・ビーによる東京学生ライフ・湘南学生ライフ・ケイエルディとのM&A

 4社とも、学生を対象とする賃貸マンションの管理と運営を事業にしています。

このM&Aの事例でジェイ・エス・ビーは募集力や運営力が身につきました。

東洋テックによる新栄ビルサービスとのM&A

 東洋テックはビル管理事業や警備事業を展開して、新栄ビルサービスはビルやマンション管理・清掃、住宅の清掃事業を行っていました。

このM&Aの事例で東洋テックは警備業務やビル管理の運営に活かせています。

日本社宅サービスによる全日総管理とのM&A

日本社宅サービスはマンションを含めた集合住宅の管理を行っていて、全日総管理は不動産の原状回復やリフォームを事業にしていました。

このM&Aの事例で、日本社宅サービスは孫会社のクラシテリノベーション株式会社のマンション管理や修繕事業の強化に繋げています。

あなぶきクリーンサービスによるテクノ防災サービスとのM&A

 あなぶきクリーンサービスは西日本でマンションの清掃や消防設備の点検をしていて、テクノ防災サービスは東日本で消防設備の点検や建築設計をしていました。

このM&Aの事例で、あなぶきクリーンサービスは関東にも事業展開できて、テクノ防災サービスのノウハウを活かしたサービスを提供できるようになりました。

大和ライフネクストによるリストコンストラクションとのM&A

 大和ライフネクストは全国でマンションだけでなく商業施設やホテルの管理をして、リストコンストラクションは神奈川県でマンションやビルの管理をしていました。

このM&Aの事例で大和ライフネクストは、神奈川県でマンション管理の事業を強めています。

GA technologiesによるリーガル賃貸保証とのM&A

 GA technologiesはオンラインで不動産投資ができる「RENOSY」の運営と開発をして、賃貸管理サービスを提供しています。

一方でリーガル賃貸保証は、賃貸の家賃を滞納している方の立替を一時的に行う家賃保証サービスをしていました。

このM&Aの事例でGA technologiesはリーガル賃貸保証の家賃保証サービスを導入でき、家賃保証付きの賃貸管理サービスを提供できるようになりました。

長谷工コーポレーションと不二建設による総合地所とのM&A

 長谷工コーポレーションと不二建設は総合建設業や宅地建物取引の事業をしていて、総合地所はマンション分譲や賃貸管理の事業をしています。

長谷工コーポレーションと不二建設は、総合地所の顧客だった経験とノウハウがあるため、このM&Aの事例で分譲マンションの管理数が350千戸を超えるプラスの効果を発揮しています。

マンション管理会社のM&Aが行われる主な理由

マンション管理会社のM&Aの事例を見たところで、M&Aが行われる理由を見ていきましょう。マンション管理のM&Aを行う理由は4つです。

  • 後継者問題
  • 人材不足解消
  • シェア拡大
  • 少子高齢化に伴う需要の減少

以下、解説します。

後継者問題

穴吹ハウジングサービスと建衛工業、あなぶきクリーンサービスとテクノ防災サービスの事例のように後継者問題を解決するためにM&Aを行います。

後継者がいなければ、マンション管理の事業は撤退せざるを得ません。

その場合、従業員だけでなく住民にも生活への影響を及ぼします。

そのため後継者問題に直面する前に、M&Aを実施して経営権を早めに託すことが大切です。

人材不足解消

人材不足の解消を目的に、M&Aを実施するのも理由の一つです。

マンション管理業協会「マンション管理トレンド調査2020」によると、69%の企業が従業員の過不足を感じています。

したがって同じマンション管理事業の会社でM&Aを実施すれば、即戦力の人材を確保することも可能です。

人材を採用するコストだけでなく、人材を育成するコストも抑えられるため人材不足を解消する目的のM&Aは有効な手段でしょう。

シェア拡大

大手のマンション管理会社がシェアを拡大するために、M&Aを実施するケースも多いです。

例えば中小のマンション管理会社とM&Aをすれば、顧客を確保できて市場の拡大につながります。

一方で中小のマンション管理会社が大手の子会社になると、顧客が増えて運営資金の心配をする必要がありません。

シェアの拡大が上手くいっていない場合、M&Aをするのがおすすめです。

少子高齢化に伴う需要の減少

日本の人口の動向が減少であるの同じく、マンションの需要の動向も減小しています。

そのため、マンション管理会社のシェアの奪い合いが活発になるでしょう。

冒頭で紹介したとおり、2027年までマンション管理市場の動向は伸びると予想されています。

それでもマンションの需要が減少したコロナ禍のように、マンション管理は景気の影響を受けやすい業界です。

動向として将来の市場が縮小するものの、市場が伸びているうちにM&Aを検討するのは賢明な判断といえるでしょう。

マンション管理会社のM&Aのメリット

M&Aは買収側だけでなく、売却側にもメリットがなければやる意味がありません。

マンション管理会社のM&Aにはどのようなメリットがあるのか、売り手側と買い手側の企業に分けて見ていきましょう。

売却側企業のメリット

売却側企業のM&Aのメリットは、以下のとおりです。

  • 顧客のニーズに応えられる
  • 利益率の低下を防げる

時代の変化に合わせて、マンションへのニーズが多様化しています。

例えばコロナ禍では在宅勤務の顧客が増えた結果、「オンラインミーティングで生活感が背景画面で見えてしまう」「オンとオフが切り替えできない」などの課題が生じました。

このようなニーズに応えるにはノウハウや資金力のある企業とM&Aを行うことも選択肢です。

またマンション管理会社の規模が小さいほど、人件費の負担が大きくなります。

人件費の負担が大きいほど利益率が低くなるため、経営の維持が困難になるでしょう。

そこでM&Aを実施すれば経営基盤を強化でき、人件費の負担を軽減して利益率の低下を防ぐことができます。

買収側企業のメリット

一方、買収側企業のM&Aのメリットは以下のとおりです。

  • 事業の規模を拡大できる
  • 即戦力の人材を確保できる

マンション管理のノウハウがあれば、事業を拡大すると規模のメリットが生じます。

例えばM&Aで中小のマンション管理会社の顧客を獲得して、大手のマンション管理のノウハウを活かして収益をあげることです。

他にもマンション管理に使う製品をまとめ買いすると、単価が安くなることもあります。

一方で、マンション管理は人材不足の業種とも言えます。

理由は、企業が定年退職の延長や定年退職後も再雇用するようになったからです。

マンション管理は定年退職をした後、再就職するのに人気の職業でした。

しかし現在は応募する人が減っているため、M&Aを実施して経験のある即戦力の人材を確保しています。

マンション管理会社のM&Aの費用の相場

実際にマンション管理会社がM&Aを行う場合、費用の相場がどうなるのか見ていきましょう。

売り手側と買い手側で行われる交渉次第

M&Aの費用の相場を具体的な数値にするのは難しいでしょう。

なぜなら、売却価格の相場は多くの点を考慮して決められるからです。

過去には2億円以上も売り上げていた不動産管理会社が、1億円で売却されたケースがあります。

このように、マンション管理のM&Aの相場を決定することができません。売り手側と買い手側の交渉で費用の相場は変わってくるのが実情です。

M&A仲介会社に相談する

また費用の相場はいくらが妥当か、M&Aの仲介会社に相談するのがいいでしょう。

重要なのは、仲介会社に相談する前にM&Aに関して調べておくことです。

具体的には以下の項目を調べておきましょう。

  • M&Aの目的
  • M&Aを行った会社の規模
  • 事業内容
  • 業績
  • 従業員の数
  • M&Aの手法

M&A仲介会社によってはマンション管理のM&Aの相場がどれくらいか、過去のデータから算出してくれるところもあります。

ぜひ相談するようにしましょう。

マンション管理会社のM&Aを成功させるポイント・注意点

マンション管理会社のM&Aを成功させるポイント・注意点に関して、買い手側と売り手側に分けて見ていきましょう。

買い手側

買い手側がM&Aを成功させるポイント・注意点は以下の3つです。

  • 所有している物件の質
  • 買収候補企業の財務状況
  • M&A専門の仲介業者に依頼する

それぞれ解説していきます。

所有している物件の質

売り手側の企業が、どのような物件を所有しているか確認しておきましょう。

マンション管理は、質の高い物件の多さが重要だからです。

売り手側が所有している物件で、M&Aを実施したあとの対応が変わります。

物件に損壊がないか、住民とトラブルを抱えていないかなど調べておきましょう。

買収候補企業の財務状況

買収したい企業を見つけたら、財務状況を確認しましょう。

理由はマンション管理事業で成功するには、長期間の経営が可能な財務状況が必須だからです。

買収した企業が多くの負債を抱えていた場合、買い手企業の財務状況も悪化してマンション管理の事業がうまくいかないこともあります。

買収候補の企業に財務面で懸念がないか、調査するようにしましょう。

M&A専門の仲介業者に依頼する

先ほど紹介したように買い手企業がM&Aで成功するために、売り手企業の物件や財務状況を調べることが大切です。

しかしM&Aではやるべきことが多く、自社だけですべてを行うのは大変でしょう。

M&A専門の仲介業者に依頼すれば、売り手側がどのような状況の企業なのかなど調査してくれます。

過去のM&Aの事例から成功するM&Aのポイントやノウハウを把握しているので、ぜひM&A専門の仲介業者に依頼してみましょう。

売り手側

一方で、売り手側がM&Aを成功させるポイント・注意点は以下の4つです。

  • 企業価値を分析しておく
  • 譲れない条件を定める
  • 従業員の安定した雇用につながるか確認する
  • M&A専門の仲介業者に依頼する

それぞれ解説していきます。

企業価値を分析しておく

M&Aを行うにあたり、自社の企業価値を分析しておくことが大切です。

企業価値とは、株式価値(時価総額)と負債価値(有利子負債)の合計で求められます。

企業価値を知るためには、自社の資産や負債、株式など財務状況を把握していなければいけません。

企業価値は以下の方法で算出します。

  • コストアプローチ
  • マーケットアプローチ
  • インカムアプローチ

算出方法に関しては「企業価値とは?計算方法やメリットから時価総額との違いも詳しく解説!」を参考にしてみてください。

もし、自社で企業価値の算出が難しい場合はM&A総研に相談してみましょう。

譲れない条件を定める

売り手側はM&Aで譲れない条件を定めておきましょう。譲れない条件の一例は以下のとおりです。

  • 従業員の雇用体系は維持したい
  • 顧客との関係はそのまま維持したい
  • 勤務する場所は変えないでほしい

条件次第では、買い手側からみると制約条件にも見えてしまいます。

一方、築いてきた顧客との関係や従業員の雇用がプラスになると判断される場合もあるため、買い手側と条件を相談していきましょう。

従業員の安定した雇用につながるか確認する

M&Aを実施しても、従業員の雇用が安定のままか把握しておきましょう。

従業員がM&Aにマイナスな気持ちがあると働くモチベーションが低下します。

また、M&Aで職場環境が悪くなったら離職する人も出てきます。

従業員には、経営だけでなく職場環境も変わることを伝るのも重要です。

M&A専門の仲介業者に依頼する

M&Aを成功するには買い手側のメリットだけでなく、売り手側のメリットも考えている企業を見つけるのがポイントです。

しかし売り手側だけで買い手側の企業を見つけるのは大変で、良さそうな買い手側が見つかっても、内部で問題を抱えていることもあります。

そこで大切なのはM&A専門の仲介業者に依頼して、客観的に判断したうえでM&Aを実施することです。

買い手側の企業を見つけるだけでなく、交渉への同行や必要な資料も作成してくれます。

したがって売り手側からすれば、M&A専門の仲介業者は心強い存在になるでしょう。

マンション管理会社のM&Aは専門家に相談しながらすすめよう

マンション管理会社の数は減少傾向である一方、市場規模の動向は拡大が予想されています。

そのためM&Aを行う企業は増えていくでしょう。

またM&Aの市場相場は数値化していないため、専門家に相談することをおすすめします。

M&Aで重要なのは、買い手側・売り手側の両方がM&Aでプラスになることです。

買い手側は売り手側の事業内容や顧客、財務状況を確認すること、売り手側は譲れない条件を定めて、企業価値をあげるのが重要です。

中にはM&Aを行うには準備するものが多く、中には自社で作成できない資料もあるでしょう。

M&Aを成功させるためには、専門家に相談して準備することをおすすめします。

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