中小企業の会社売却について分かりやすく解説!相場やメリット・デメリットは?

会社売却と聞けばすぐに連想するのが大企業ですが、現在は多くの中小企業が会社売却を行って事業の立て直しを行っています。本記事では中小企業の会社売却を詳しく解説を行い、会社売却の相場やメリット・デメリットも紹介していきましょう。

目次

  1. 中小企業の会社売却とは?
  2. 中小企業の会社売却の流れ・手続き方法
  3. 中小企業の会社売却のメリット
  4. 中小企業の会社売却のデメリット
  5. 中小企業の会社売却を成功させるポイント
  6. 中小企業で会社売却を検討する際はメリット・デメリットを参考にしよう

中小企業の会社売却とは?

近年では多くの中小企業が会社売却を手掛けていますが、中小企業では実際どのような目的で会社売却が進んでいくのでしょうか。

では中小企業の会社売却を詳しく解説します。

中小企業の会社売却の目的

近年は少子高齢化に伴う労働力不足や、継承者不足の問題に起因して中小企業の会社売却件数が増加しています。会社売却の主な目的は、事業継承者不在や労働力不足による廃業を予防することです。特に近年では後継者不在を理由とした会社売却件数が増加しており、2020年に東京商工リサーチが公開した「2020年度後継者不在率調査」によれば、2002年度に後継者が決まっていない企業は全体の57.5%にも上りました。

このような結果からも伺えるように、近年多くの中小企業が後継者不足による廃業を防止する目的として会社売却を進めているのです。

中小企業の会社売却の種類

中小企業の会社売却はいくつかの種類に分類され、実際に行う種類によって今後の事業形式も変動していくでしょう。

では中小企業の会社売却の種類を詳しく解説します。

株式譲渡

売り手企業の株式の全てを買い手企業が買収し、経営権を取得する目的の会社売却が株式譲渡です。この方法は会社売却で最も利用されている方法であり、多くの中小企業が株式譲渡による会社売却を行っています。一般的な中小企業では、経営者やその親族などが会社のほとんどの株式を保有しているケースが多くあります。

そのような場合においては、買い手企業側に全株式を譲渡すれば会社を丸ごと売却することができます。会社売却は他のM&Aと比べると簡単な手続きでできるのも注意点です。

事業譲渡

売り手企業の一部の事業や、それに関連する権利や資産を買収するのが事業譲渡です。事業譲渡は株式譲渡のように会社全体を買収するのではなく、必要な事業のみが譲渡される取引です。

したがって売り手企業側の従業員と個別に新たに労働契約を結び、個別に従業員の同意を得なければM&Aを進めることができないのも注意点といえます。

株式交換

売り手企業側が完全に買い手企業側の完全子会社になることを目的として行われる会社売却が株式交換です。この取引では買い手企業は新たに株式を交付することで、売り手企業側への対価を支払います。

この取引では現金が不要で、成立条件として売り手企業の株主は株式交換後に買い手企業側の株主になることが義務付けられているのも注意点です。

合併

複数の企業が1つの会社に統合される形の会社売却のことを合併といいます。この取引では法人格を有していない存属企業以外は解散登記を行って事実上消滅し、存続会社は消滅した企業の人員・事業権利・資産などを継承します。

また合併の対価は株式で支払うことも可能なので、場合によっては現金の支払い義務がなくなるのも注意点です。

会社分割

売り手企業の事業をすべて切り離し、買い手企業が継承する会社売却を会社分割といいます。一見すると事業譲渡と似たような意味に感じますが、事業譲渡のように買収する事業の選択をすることはできない点が注意点です。また会社分割でも買収における対価を株式で支払うことができ、場合によっては現金の支払い義務は発生しません。

会社分割には新設会社が買い手になる新設分割、既存会社が買い手になる吸収分割がありますが、新設分割では対価は株式の支払いのみになるのも注意点です。

中小企業の会社売却の相場

中小企業の会社売却では、一部の事業のみを売却する事業譲渡よりも会社全体を売却する株式譲渡の方が価格相場は高い傾向にあります。事業譲渡は1つの事業のみを取り扱う契約で、一方の会社売却は企業全体の事業すべてを買収する契約になることから価格相場も異なっているのも注意点です。

このように中小企業の会社売却は、株式譲渡の方が高い価格相場であることも認識しておきましょう。

中小企業の会社売却の流れ・手続き方法

中小企業の会社売却にはいくつかの方法があり、自社に適した方法を選ぶのも重要ですが実際にどのように手続きを進めればいいのでしょうか。そこでここからは、中小企業の会社売却の流れや手続き方法を詳しく解説します。

①会社売却の相談・検討

会社売却の手続きには専門的な知識が欠かせないので、最初に会社売却の専門家に相談して方法を検討する必要があります。

相談相手としてはM&A仲介会社や会社売却の専門家がおすすめです。

②秘密保持契約締結

会社売却においては、会社売却を行おうとしている情報を第三者に漏洩しないことを約束する目的で秘密保持契約を締結します。会社売却は売り手企業側、買い手企業側の双方にとって今後の経営に関わる重大事項であり、外部に漏れて大変な事態になることもあります。

したがって秘密保持契約は当事者間や仲介会社のみで行うようにするのも注意点です。

③対象企業の選定・打診

次に会社売却相手の企業を選定・打診します。企業の選定や打診は仲介会社を通して行えばスムーズに行うことができるでしょう。

その後に対象企業が取引に同意すれば、お互いに秘密保持契約を締結して交渉が開始します。会社売却の仲介会社に依頼している場合には、仲介会社が交渉を手掛けていきます。

④トップ会談・交渉

取引対象企業への打診が完了し、交渉が開始した後に売り手企業・買い手企業双方のトップによる会談・交渉を行います。会談時にはお互いの経営ビジョンや会社売却の理由、今後の経営方針や目的などについて時間をかけて対談していくのです。

⑤基本合意書締結

会社売却交渉がほとんど成立した時点で締結するのが、基本合意書です。基本合意書は現状の取引合意という目的のもので、基本的に法的な拘束はなく基本合意書締結後も破談になる可能性があるのも注意点といえます。

⑥デューデリジェンスの実施

デュ―デリジェンスとは買い手企業が税務や財務の専門家に依頼し、売り手企業の財務状況を監査する目的のことを指します。デュ―デリジェンスを行うことで、買収後の簿外財務の発生を未然に防ぐことができるのです。

またデュ―デリジェンスを行えば、最終的に明確な企業売却金額も算出され、公正な取引が行われるのもメリットといえます。

⑦最終契約締結

企業間におけるデュ―デリジェンスが完了すれば、会社売却の最終契約を締結します。最終契約は基本合意書とは異なり、法的な拘束力が発生するので締結後の条件変更などはできません。

⑧クロージング

会社売却取引で締結した最終契約書の内容を、実際に履行することをクロージングといいます。具体的なクロージングには買い手企業であれば買収金の支払い、売り手企業側では株式や資産などの譲渡が挙げられます。

中小企業の会社売却のメリット

近年は後継者問題をはじめとした、さまざまな理由・目的から会社売却を手掛ける中小企業が多いようです。

では中小企業が会社売却をするメリットにはどのような点があるのでしょうか。では中小企業が会社売却を行うメリットを詳しく解説します。

会社を後継者に引き継ぐことができる

前述でも解説したように、近年は多くの中小企業が後継者問題に頭を抱えています。そのような状況下でも会社売却を行えば、外部から後継者を擁立して事業継承できるのもメリットの1つです。また株式譲渡では会社を第三者に継がせることもできます。

さらに株式譲渡では既存の従業員の雇用や、雇用条件を守ることができるのもメリットです。

創業者利益を獲得できる

会社売却の手続きにおいて、売り手企業の価値が買い手企業から高い評価を得ることができれば、対価として創業者利益を獲得できるのもメリットです。できるだけ高額な創業者利益を確保するためにも社内の財務状況を整え、買い手企業によるデュ―デリジェンスに備えましょう。

倒産を回避できる

会社売却時に株式譲渡を行えば、会社に負債があっても負債ごと譲渡して倒産を回避できるのもメリットの1つです

一方で事業譲渡では現金化できる事業のみを売却して返済に充てたり、会社の財務が向上した際に新規事業へ投資したりこともできます。

個人保証から解放される

経営者は自社が倒産し、負債を抱えてしまった場合に負債を支払う義務である個人保証が義務付けられています。しかし会社売却を行えば、会社が抱えている負債は買い手企業に譲渡されるのです。

このように会社売却を行えば、負債を抱えていても個人保証から解放されるのもメリットの1つといえます。

中小企業の会社売却のデメリット

中小企業で会社売却を行えば、さまざまなメリットを得ることができますが一方でデメリットも発生してしまいます。

では中小企業の会社売却のデメリットを詳しく解説します。

競合避止義務を負う可能性がある

会社売却を行えば、売り手企業は取引から20年間は一定区間内で同様の事業を行えない規則である、競業避止義務を負う可能性があります。

この義務が課せられてしまえば会社売却で資金を得ても、今までのような事業に取り組むことができないのもデメリットです。

事業に拘束される

中小企業の会社売却においては、取引完了後も事業に拘束されるのもデメリットの1つです。会社売却では従業員や取引先に関する契約を新しい会社に引き継がなければいけません。このような手続きは、買い手企業・売り手企業の双方で進めなければいけないので数年間かかってしまうのもデメリットといえます。

さらに中小企業の株式譲渡の場合には売却後の手続きをスムーズに進めるために、会社に売り手企業の責任者が一定期間在籍する場合もあるのです。

会社を売却した後の寂しさ

会社を売却してしまえば売り手企業側の経営者は完全に自社と無関係になるので、寂しさを感じてしまうのもデメリットです。特に企業を売却した経営者が、買い手企業に残らない場合などにこの現象が多く見受けられます。そして人生の次のステップに進めなくなる経営者も多いので、事前に売却後の人生設計を立てておきましょう。

中小企業の会社売却を成功させるポイント

中小企業の売却にはメリットやデメリットがありますが、いくつかのポイントに注意して行うことで会社売却を成功させることができます。では中小企業の会社売却を成功させるポイントにはどのようなものが挙げられるのでしょうか。

自社が好調のタイミングで売却する

中小企業の会社売却における売価は、売却時の企業価値によって相場が大きく変動していきます。例えば事業が好調で売り上げの高い企業は、買収後の収益が十分期待できるので高額の相場で買収されます。一方事業が不調で業績不振に陥っている企業は、買収後の事業立て直しから始めなければいけないので買収相場も低くなってしまうのも注意点です。

このような観点からも、自社が好調のタイミングで売却するのも中小企業の会社売却を成功させるポイントといえます。

自社の強みを明確にする

自社の強みを明確にするのも、中小企業の会社売却を成功させる注意点の1つです。売却する事業が他社にない独自のオリジナリティを持っていれば、買収後の競合も少ないことから十分な収益が期待できます。そして独自の強みがある企業であれば、買い手企業側も今後の収益を見越して高値の相場金額で買収してくれるのです。

このように独自の強みがある売り手企業は、会社売却時にその強みを明確にしてアピールすることで契約を成功へと導くことができます。

シナジー効果が期待できる交渉対象を探す

複数の企業を統合することにより、それぞれの企業が事業を行っていた時の合計よりも大きな効果が生み出されることをシナジー効果といいます。売り手企業は買い手企業に自社を買収することにより生まれるシナジー効果を理解してもらうことで、一般的な相場よりも高額相場で買収される可能性が高くなります。さらにシナジー効果をアピールできれば、買収後の事業成長も高まる可能性があるので高額で買収されるケースも発生するのです。

自社と相性が良いM&A・会社売却の専門家や仲介会社を見つける

会社売却は専門家でなければ進めることができない手続きも多いので、取引時には会社売却に特化した専門家や仲介会社への依頼が必要です。また依頼後も綿密な連携を取りながら取引を進めなければいけないので、相性が悪い専門家や仲介会社に依頼しても手続きがスムーズに進みません。一方で自社と相性が良い会社売却の専門家や仲介会社に依頼すれば、綿密な連携が実現されて取引もスムーズに進んでいくのです。

このように中小企業の会社売却においては、自社と相性が良いM&Aの専門家や仲介会社を選択するのも重要な注意点といえます。

中小企業で会社売却を検討する際はメリット・デメリットを参考にしよう

会社売却は今後の自社の命運を分ける重要な取引なので、慎重に手続きを進めなければいけません。そして会社売却を成功させるためにはメリットやデメリットを参考にして、最終的に損しないような取引を進めていきましょう。現在会社売却を検討している中小企業の経営者の方などは、本記事を参考にしながら自社に最適な会社売却を行ってください。

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