中小企業のM&Aのフローや注意点を分かりやすく解説!目的や成功のポイントは?
中小企業でM&Aを検討している企業は多くなりつつあります。しかし、「どのようにM&Aを進めればいいのか」「注意点が分からない」など課題点は多くあるもの。そこで本記事では中小企業のM&Aのフローや注意点を分かりやすく解説します。
目次
中小企業のM&Aとは?
まず、中小企業とは以下の定義に基づいた企業をいいます。
- ・製造業その他…資本金もしくは出資金3億円以上又は従業員300人以下
- ・卸売業…資本金もしくは出資金1億円以下又は従業員100人以下
- ・小売業…資本金もしくは出資金5千万円以下又は従業員50人以下
- ・サービス業…資本金もしくは出資金5千万円以下又は従業員50人以下
- あくまでこちらは原則に過ぎず、中小企業の定義は法令・制度により大きく変化することがあります。この中小企業が行う買収・売却をまとめて中小企業のM&Aといいます。
中小企業のM&Aの目的
多くの中小企業がM&Aに勤しむのには様々な目的があります。
例えば、後継者を見つけるためです。
多くの中小企業が課題として挙げている「後継者不足」。代々経営してきた会社を後継者不足により倒産させてしまう事案が数多く発生しています。この後継者不足を解消するために、第三者へのM&Aを検討する企業が増えています。倒産させることなく事業を第三者に継承させることができるだけでなく、オーナーは売却益を得ることができるメリットもあります。
さらに、事業成長戦略の一環としてM&Aに取り組む中小企業もあります。
例えば、成長率が鈍化してしまっている事業を一部切り離し、M&Aという形で別会社に売却をします。事業の売却益を得ることで既存事業へのさらなる投資が可能になりますし、鈍化してしまっている事業へリソースを割く必要がなくなります。新しい事業を立ち上げるための資金調達の施策としても使えます。
中小企業のM&Aの現状
中小企業のM&Aは、2018年時点で市場規模20兆円を超えています。
2019年には過去最高となる4,088件のM&Aが行われており、2019年にはコロナウイルスの影響でM&Aの件数が鈍化したものの、高水準をキープし続けている現状があります。今後は市場規模30兆円まで成長していくと想定されており、2030年以降も中小企業のM&Aは数多く行われていく事は確かでしょう。
2015年から見れば現在の中小企業のM&A件数は約6倍まで増加しているデータもあります。
中小企業のM&Aの手法
中小企業が行うM&Aには以下の5つの手法があります。
- 株式譲渡
- 事業譲渡
- 会社分割
- 株式交換
- 株式移転
それぞれどういったM&Aの手法なのかを解説します。
株式譲渡
中小企業のM&Aでよく用いられる手法の1つが、株式譲渡です。
譲渡企業の株主が保有株式の対価と引き換えに株式を譲渡し、会社の経営権を移転させる方法です。保有株式の割合により会社の経営権が移転する仕組みを活用したM&A手法で、株式譲渡には以下の3つの手法があります。
・相対取引
・市場買付
・公開買付(TOB)
事業譲渡
事業譲渡はその名の通り、譲渡企業の事業を譲渡する手法です。
一部の事業だけを譲渡する場合は、会社の経営権自体は移転することはなく譲渡した事業のみの経営権が移転します。特定の事業だけを切り離してM&Aを行いたい場合に事業譲渡はおすすめです。
ただ、事業譲渡には以下のデメリットがあることを知っておく必要があります。
・移転手続きに時間・費用が多くかかる
・税務上の優遇措置がないため税負担が重くなる
会社分割
会社分割は、譲渡企業が経営している事業を包括的に別の会社に継承させるM&A手法です。
既にいくつかの法人を持っている場合、「吸収分割」という形で既存の会社に継承させる方法があります。また、法人を持っていない場合は新たに法人を設立しそちらに継承させる「新設分割」の2つの方法があります。それぞれにメリット・デメリットがありますので、事前に把握しておきましょう。
株式交換
株式交換は、譲受企業が上場企業の場合によく用いられるM&Aの手法です。
譲渡企業の株式を譲受企業が取得し、対価として譲渡企業の株主は譲受企業の株式などを受け取れるような仕組みです。100%の株式を保有することにより、親会社・子会社の関係性になります。
株式移転
株式移転は、既存会社が新しく会社を設立し、発行済み株式をすべて取得させるM&A手法をいいます。
こちらは別の経営権を保有している会社が介入してくるようなM&A手法ではなく、すべて同一経営者が行うことができる手法です。こちらも株式交換と同じように親会社・子会社の関係性を築くことが可能です。
売り手から見た中小企業のM&Aの流れ
では実際に中小企業がどのようにしてM&Aを実施しているのか、その流れを以下のステップで解説します。
- M&Aの相談・検討
- 自社の経営情報の把握
- M&A仲介業者の選定・アドバイザリー契約
- M&A対象企業の選定・打診
- スキームの選択
- トップ会談・交渉
- 基本合意書締結
- デューデリジェンスの実施
- 最終契約締結
- クロージング
- 経営統合(PMI)の実施
ではそれぞれの流れを解説します。
①M&Aの相談・検討
まずは、「そもそもM&Aを実施する必要があるのか」という部分を明確にします。
例えば、事業を一部切り離して手放したいというニーズであればM&A以外にもいくつか手法は考えられます。しかし、その中でもM&Aという手法を採択する必要があるのかどうかをしっかり確認する必要があります。もし1人で抱えきれない場合は専門家に相談しつつ進めることをおすすめします。
②自社の経営情報の把握
続いて、M&Aを行うにあたり自社がどういった経営リソースを保有しているのかを明確にします。
一般的に中小企業のM&Aで重視されるのは「独自ノウハウ・特許」です。その中小企業でないと保有していない・交渉することができないなど特有のノウハウ・特許を持っているとM&Aで有利に働きます。逆に、トラブルの要因となる「簿外債務」などを隠したままM&Aを進めてしまうのはNGです。
③M&A仲介業者の選定・アドバイザリー契約
ある程度M&Aの意向が固まれば、M&A仲介会社の選定とアドバイザリー契約を締結します。
M&Aは多くの専門家を必要としますので、トップ同士が進めていく事はおすすめできません。例えば、M&A仲介会社などがありますのでそういった専門機関に依頼をすることをおすすめします。もちろん、FA(ファイナンシャルプランナー)や銀行、士業事務所にサポートを依頼することも可能です。
M&A仲介業者に依頼することが決定すれば、アドバイザリー契約を締結します。M&Aは数ヶ月かかるケースもあるため実務を滞りなく進められるのか、自社に寄り添ってくれるのかなどを吟味した上で契約を締結するようにしてください。
④M&A対象企業の選定・打診
続いての流れとしては、M&A対象企業を選定し打診をします。
例えば、ノンネームシートを使用してM&A対象企業を絞り込んでいく作業などがあります。秘密保持契約を締結した上で、企業情報・財務情報などをまとめた企業概要書を開示し、M&Aを進めるかどうかを判断してもらいます。このノンネームシートがなければM&Aはうまく進みません。
⑤スキームの選択
先ほどもご紹介した通り、M&Aの手法は多岐にわたっており中小企業によってどのスキームが適しているのかはバラバラです。
そのため、M&A仲介業者と相談した上でどのスキームが適しているのかを判断します。スキーム次第ではM&Aにより得られる効果・財務会計面での違いなどが発生するため、自社にマッチしたスキームを採択できるようにしましょう。
⑥トップ会談・交渉
M&Aを進めたいと意向を示してくれた企業のトップと会談・交渉をします。
一般的には候補先企業が2~3社に絞り込めた段階で会談・交渉を行います。経営の将来性やビジョンの共有・運営方針などを話し合い、M&Aを行うに適した相手企業なのかをここで見極めることになります。
⑦基本合意書締結
トップ会談・交渉が終わり、M&Aを実際に進める相手企業が確定したら基本合意書を締結します。
基本合意書にはこれまで話し合いで進めてきた条件や暫定的な譲渡価格・スケジュールが記載されています。後ほど解説しますが、基本合意書を締結した後はデューデリジェンスを行います。このデューデリジェンスがないとM&A後のトラブルに繋がりかねません。
⑧デュー・デリジェンスの実施
基本合意書を締結した後は、デューデリジェンスを行います。
デューデリジェンスは企業が健全な経営をしているのかを確かめるための作業フェーズで、第三者の専門家が法務・税務・財務などを調査します。デューデリジェンスで問題があった場合はM&A自体が破談になってしまうことも少なくありません。
⑨最終契約締結
最後に、最終契約を締結します。
デューデリジェンスを行い特の企業に問題がないと判断されれば、最終契約を締結します。取引金額は表明保証をはじめ、解除条件などを記載します。最終契約にはいろいろな事項が記載されているため、必ず最終チェックは自分の目でしておく必要があります。
⑩クロージング
続いて、実際にクロージングを行います。
クロージングとは、最終契約に基づいた実行をいいM&Aを進めるにあたり最後のフェーズになります。このクロージングを行うことでM&Aは本格的に終了・成約です。
⑪経営統合(PMI)の実施
M&Aはクロージングをして終わりではありません。
新体制を発足するに伴い経営統合(PMI)を行います、新しい役員を招き入れるときなどは臨時株主総会を開催したり、取締役会を開催したりする必要があります。そういった手続きに参加し、問題なく企業が継続運営できるように動きます。
中小企業のM&Aの成功へのポイント
多くの中小企業が検討しているM&Aですが、成功している事例を見てみると以下のポイントが重要だとわかります。
- M&Aを行う目的が明確である
- M&Aに強い相談先を見つける
- 従業員への告知のタイミング
M&Aを行う目的が明確である
当然ですが、M&Aを実施する際にはその目的を明確にしておかなくてはなりません。
目的もなしにM&Aを実施する事はおすすめできませんし、最終的に失敗に終わるのは目に見えています。M&Aを成功に導いている中小企業は事前に「なぜM&Aを行うのか」を明確にしています。
M&Aに強い相談先を見つける
M&Aは多くの専門的知識を必要とし、多くの専門家の力を借りる必要があります。
そのため、M&Aに強い相談先を見つけることは非常に大事です。M&Aに特化していない専門家に依頼をしてしまうと、要領良くM&Aを進めてくれる可能性がぐんっと下がってしまいます。専門家はM&Aに特化している人とそうでない人がいますので、リサーチの際には慎重になりましょう。
従業員への告知のタイミング
M&Aは会社にとって一大イベントであり、従業員にとっても大きな出来事になります。
M&Aを成功させている中小企業は従業員への説明が明瞭かつ端的です。また、「M&Aは価値のある会社が行うもの」だとしっかり説明ができており、反発されることもほとんどありません。逆に、M&Aを下手な伝え方で従業員に伝えてしまうと反発・モチベーションの低下・人材の流出など企業にとってよくない方向に進んでしまうことも。
中小企業のM&Aの注意点
M&Aを最後まで遂行させるためには以下の注意点を把握しておく必要があります。
- 情報漏洩
- 根拠のある譲渡金額の算出
- 人事制度やシステム統合後の混乱
情報漏洩
M&Aを行う際に秘密保持契約を締結することからご理解いただけると思いますが、情報漏洩は禁物です。
例えば、「この会社はM&Aを検討している」ということが外部に知れ渡ると、その会社との取引をやめてしまう会社が現れるかもしれません。M&Aの検討段階で外部に情報が漏洩してしまうのはマイナスでしかないので、情報管理は徹底しましょう。
根拠のある譲渡金額の算出
M&Aは数値なしでは進みませんから、根拠のある譲渡金額を算出しましょう。
例えば、「市場の動きがこうなっているから~~円」「社内リソースの客観的な価値は~~円」といった具合です。将来性も加味して根拠のある譲渡金額を算出し、M&A対象企業に伝えていくことが重要になります。
人事制度やシステム統合後の混乱
M&Aを行った後にも気を配る必要があります。
例えば、人事制度。今まで使ってきた人事評価制度をそのまま使い続けるのか、それとも新しい評価制度を導入するのかにより従業員の評価が大きく変わります。また、システムを統合した後にどちらのシステムを使い続けるのかも検討しておく必要があります。
中小企業のM&Aの成功事例
では最後に参考になる中小企業のM&Aの成功事例を2つご紹介します。
金属加工プレスメーカー同士のM&A
千葉県で金属加工メーカーを営んでいる有限会社新栄工業。
有限会社新栄工業は今後の事業拡大のためにM&A対象企業を探していたところ、同業のアポロ工業株式会社に出会うことができました。もともとアポロ工業株式会社は代表が引退を検討していたということもあり、M&Aに踏み切ったと言います。結果、M&Aは成功しています。
運輸会社の総合物流グループへのM&A
東京で運送業を営んでいる日伸運輸株式会社。
日伸運輸株式会社は東京事業引き継ぎ支援センターを通じて東亜物流株式会社へM&Aを打診しました。結果、無借金経営が決めてとなりM&Aが成立・成功しています。
中小企業でM&Aを検討する際はM&Aに強い相談先を見つけよう
中小企業でM&Aを検討している企業は少なくありません。
後継者不足であったり新規事業の投資資金を回収するためだったりと目的は様々です。そういった目的ごとでM&Aを達成させるためにはM&Aに強い相談先を見つけることが先決です。
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