事業承継が増加する理由や目的とは?事例からメリット・注意点を解説!

事業承継が増加する背景や目的、メリット、また進める上での注意点、具体的な事例を基にこれらの疑問を解説します。経営者の高齢化や後継者不在の問題、企業の持続的な成長を目的とした戦略としての事業承継の重要性を理解し、成功への道筋を探るための情報を提供します。

目次

  1. 事業承継とは
  2. 事業承継が増加する理由
  3. 事業承継が行われる目的・メリット
  4. 事業承継の種類
  5. 事業承継の成功事例
  6. 事業承継を行う上での注意点
  7. 事業承継はM&A専門家のサポートを受けながら成功させよう

事業承継とは

事業承継とは、企業の経営やオーナーシップを次の世代や新しい経営者へと移行させるプロセスです。

経営の継続性を保ち、企業の価値を維持・拡大することを目的とした重要なステップであり、多くの中小企業や家族経営の企業において、その将来を左右する決定的な局面となることが多くあります。

このプロセスは、経営戦略や企業文化の継承、資産の移転、後継者の選定と育成など、多岐にわたる要素を含んでいます。

事業承継の定義

事業承継とは、その文字通り「事業」を「承継」することです。

単純に事業そのものを引き継ぐだけではなく、それに伴う株式、事業用資産、特許権、商標権、借入金、取引先や仕入れ先との関係、従業員、経営理念、技術力、ノウハウなど、多岐にわたる要素を含んだものが「事業」とされ、これら全てを円滑に次の世代や後継者に引き継ぐことが「事業承継」です。

事業承継の国内の動向

近年、経営者の高齢化や後継者不足の問題が深刻化しており、中小企業の事業承継が円滑に進まないケースが増加しています。

特に「後継者が見つからない」「相続トラブルで事業承継が進まない」といった理由から、多くの企業が廃業を余儀なくされています。これにより、雇用の機会が失われるだけでなく、取引先にも大きな影響が及ぶことが懸念されている現状です。

事業承継の問題は、単に経営者が交代するだけの問題ではありません。経営に必要な資源(ヒト、モノ、カネ)を一体として後継者に引き継ぐ必要があります。後継者の不在や相続トラブルは、会社の存続の危機に直結する可能性があります。

また、経営者の高齢化に伴い、廃業が増加している背景として、後継者不在が大きな理由といえるでしょう。

中小企業白書(2021)によれば、経営者の年齢のピークは60~70代であり、このうち後継者不在率は70代経営者でも約40%となっており、多くの中小企業が後継者不足を理由に廃業しているとのデータが示されています。

事業承継の対策としては、早期の計画と実行が求められます。経営者が健康であり、影響力を持っている間に、事業承継の計画を立て、実行に移すことが重要です。

事業承継が増加する理由

事業承継は、企業の継続的な成長と発展のための重要なプロセスです。近年、多くの企業が事業承継を検討するようになった背景には、さまざまな理由が影響しています。以下に、事業承継が増加する主な理由を詳しく解説します。

経営者の高齢化

経営者の高齢化は、事業承継の最も一般的な理由の1つです。多くの中小企業では、創業者や経営者が高齢になると、後継者を見つける必要が生じます。高齢の経営者が健康上の問題や引退を考えるようになると、企業の将来を安定させるための承継が必要です。

事業を存続させるため

事業の継続は、企業のブランド価値や市場での地位を保持するために不可欠です。事業承継を通じて、新しい経営者や後継者がリーダーシップを取ることで、企業のビジョンや価値を次世代に伝えられます。

倒産・廃業を避けるため

事業承継は、企業の経営基盤を強化し、倒産や廃業のリスクを低減するための手段としても考えられます。適切な承継計画を持つことで、企業の資産やリソースを有効に活用し、経営の安定を図ることができます。

後継者が決まっているため

一部の企業では、家族経営や後継者が既に明確に決まっている場合があります。このような場合、スムーズな事業承継を進められ、企業の将来性や継続性を高めることが期待されます。

相続のトラブルを避けるため

事業承継は、相続に関するトラブルや紛争を避けるための重要な手段です。適切な承継計画を持つことで、資産の分配や後継者の選定など、相続に関する問題を事前に解決できます。

事業承継が行われる目的・メリット

事業承継は、企業の持続的な成長や存続を目的とした上での重要なプロセスです。

これには、経営者の後継者不在や経営資源の有効活用、企業価値の継続的な向上など、多岐にわたる目的が存在します。以下に、事業承継が行われる理由や主な目的とメリットについて詳しく解説します。

技術や経験の存続

1つ目のメリットとして、事業承継を通じて、企業が長年にわたって蓄積してきた技術や経験を次世代に引き継ぐことができます。これにより、企業の核となる技術やノウハウが失われることなく、持続的な競争力を維持することが可能です。

特に、独自の技術や製品を持つ企業の場合、これらの技術や経験を継承することで、市場での優位性を保持し続けられます。

従業員の雇用の継続

2つ目のメリットとして、経営者が変わることで企業が解散するリスクを回避し、従業員の安定した雇用を保障できます。

事業承継は、従業員の雇用の継続を実現する上でも大きなメリットがあり、従業員のモチベーションの維持や、企業の社会的な信頼性の向上にも寄与します。

経営者の利益確保

3つ目のメリットとして、事業承継を行うことで、経営者自身の利益も確保されます。経営者は、事業承継を通じて企業の価値を高め、その価値を現金化することが可能です。

また、後継者や新しい経営陣との連携を通じて、経営の安定化や企業価値のさらなる向上を目指せます。

事業承継の種類

事業承継とは、会社の経営を後継者に引き継ぐことです。これには、株式の引き継ぎだけでなく、経営資源や事業そのものの引き継ぎも含まれます。また、種類によってメリット・デメリットも存在するため、自社に最適な事業承継を把握しておくべきです。

ここでは、事業承継の主な種類を3つ紹介します。

親族内事業承継

親族内承継とは、経営者の親族に事業を承継する方法です。特に中小企業では、親族内承継は従業員や取引先などの関係者から受け入れられやすいとされています。後継者となる親族を数年間、経営者と一緒に働かせることで、後継者教育の環境を整えやすい点も大きなメリットです。

また、生前贈与や相続を通じて、経営者の資産を移転することで、事業承継の手続きがスムーズに進行可能です。ただし、親族内で適切な後継者を見つけることが難しい場合や、後継者教育に時間がかかることなどの注意点もあります。

親族外事業承継

親族外承継とは、親族以外の役員や従業員に事業を承継する方法です。中小企業では、会社の役員や従業員から後継者を選ぶケースもあります。この方法の特徴としては、経営者としての資質を持った人材を選定できるため、承継後の経営が安定する可能性が高まります。

しかし、後継者が資金力を持っていない場合や、経営者と他の従業員との間で信頼関係が異なる場合には注意が必要です。

M&A(第三者事業承継)

M&A(第三者承継)とは、第三者(他の会社や個人)に会社を売却する方法です。この方法の特徴としては、幅広い範囲から後継者を探せる点が挙げられます。また、株主に売却益が残る場合もあります。

近年、中小企業のM&Aの件数は増加しており、親族内承継の割合は減少傾向です。しかし、M&Aには売却価格や従業員の雇用条件などの交渉が必要であり、注意が必要です。

事業承継の成功事例

事業承継は、企業の持続的な成長や後継者不在の問題解決のための重要な手段となっています。しかし、その過程は複雑であり、多くの課題や障壁が存在します。成功するためには、適切な計画や戦略が不可欠です。

ここでは、事業承継の成功事例を取り上げ、その背景や成功の理由、メリット、そして学び取るべきポイントについて詳しく解説します。これらの事例を通じて、事業承継の意義や成功のポイントを理解しましょう。

サオサスとセキュリティ九州のM&A

1つ目の成功事例として、サオサス株式会社とセキュリティ九州株式会社のM&Aは、両社の事業拡大を目的としたものでした。セキュリティ九州は、福岡県を中心に警備業を展開しており、その実績とノウハウは業界内で高く評価されています。

一方、サオサス株式会社も同業界での経験を持つ企業であり、セキュリティ九州との統合により、警備業務の質や範囲をさらに拡大することが期待されています。

このM&Aが行われた理由として、共同で新たなサービスの提供や地域での事業展開を加速させる目的で行われました。

当社の事業承継が取り上げられました | サオサス株式会社

フジホールディングスと日向商運のM&A

2つ目の成功事例として、フジホールディングス株式会社と日向商運株式会社のM&Aは、物流業界での競争力を高める目的で戦略的な取り組みとして行われました。

日向商運は、宮崎県を中心に物流業を展開しており、地域に密着したサービスで多くの顧客からの信頼を得ています。

フジホールディングスは、このM&Aを通じて日向商運のネットワークやリソースを活用し、物流サービスの品質向上や新たなサービスの開発を進められると考えています。

また、日向商運もフジホールディングスの経営資源やノウハウを取り入れることで、事業のさらなる拡大を目指せるでしょう。

九州トランスポート

カネバンと澤村製作所のM&A

3つ目の成功事例として、株式会社カネバンは澤村製作所を子会社化しました。株式会社カネバンは、奥多摩町に拠点を構える、グッズ製造をメイン事業としたサイバーフィジカル企業です。

一方、株式会社澤村製作所は、茨城県に拠点を構え、プラスチック成型を得意とする製造業企業として知られています。このM&Aは、カネバンが澤村製作所の技術やノウハウを取り入れることで、新たなビジネスチャンスを追求することを目的として行われました。

また、澤村製作所もカネバンのリソースやネットワークを活用して、事業のさらなる拡大を目指せるでしょう。

カネバンの名称変更と本社移動について | 株式会社カネバン

大和精工と石川総研のM&A

4つ目の成功事例として、大和精工株式会社と石川総研株式会社のM&Aは、両社の強みを活かした新たな事業展開の一環として行われました。石川総研は、研究開発を中心とした事業を展開しており、その技術力は業界内で高く評価されています。

一方、大和精工は製造技術においての実績を持つ企業であり、このM&Aを通じて、石川総研の研究開発能力と大和精工の製造技術が組み合わさることで、新たな製品やサービスの開発が進められることが期待されています。

業務用低温調理器 – 事例紹介 – 大和精工

SAKAEホールディングスと西商店のM&A

5つ目の成功事例として、SAKAEホールディングス株式会社は、石油製品販売事業を中心に多角経営を展開しています。一方、後継者不在で黒字廃業の可能性があった有限会社西商店は、石油製品販売事業を手掛けていました。

このM&Aにより、西商店は「住民拠点SS」を引き継ぎ、社員の雇用を守るとともに、SAKAEホールディングスは新たな拠点を開拓し、事業成長を実現しました。この成功事例は、M&Aマッチングサービスを活用して成立した事例です。

有限会社西商店、SAKAEホールディングス間で株式譲渡契約を締結 – SAKAEホールディングス株式会社

事業承継を行う上での注意点

事業承継は、中小企業経営者にとって、会社を存続させる上で避けて通れない課題です。特に中小企業における経営者の高齢化を理由に、事業承継のニーズは増大しています。しかし、事業承継には多くの課題や注意点が存在します。

以下に、事業承継を行う上での主要な注意点を詳細に解説します。

早い段階から準備を始める

事業承継には、後継者の選定や育成、業務の引継ぎなど、実際の実行までに10年程度を要すると言われています。経営者としては、事業承継の準備の重要性を十分に認識し、60歳頃には事業承継に向けた準備を始めることが推奨されています。

具体的な方針を早めに決定し、後継者の確保を含む準備を進めることで、円滑な事業承継が可能です。

資金不足に注意する

事業承継には資金が必要です。特に、自社の役員や社員への承継を考える場合、資金の調達が難しいケースが多くあります。黒字企業であれば譲渡価格が高額となり、後継者にとって購入代金の調達が難しくなる可能性があります。

後継者の育成に努める

中小企業においては、オーナー経営者の人柄や手腕が会社の魅力となっていることが多いため、後継者の選定は極めて重要です。後継者の育成や教育に十分な時間をかけ、経営の理念や会社の文化をしっかりと引き継ぐことが必要です。

魅力的な会社作りを行う

事業承継を成功させるためには、会社自体の魅力を高めることも重要です。魅力的な会社を選ぶことで、後継者やM&Aの際のパートナー企業からの評価が高まり、事業承継がスムーズに進むメリットにつながります。

事業承継に詳しいM&A専門家に相談する

事業承継のプロセスは複雑であり、多くの経営者にとっては初めての経験となるため、豊富な知識や実際に対応した事例を持つ専門家のアドバイスやサポートが必要です。M&A仲介会社や公的支援機関など、信頼の置ける相手に早めに相談することで、円滑な事業承継の実現が期待できます。

事業承継はM&A専門家のサポートを受けながら成功させよう

事業承継は、経営者の高齢化や後継者不在、企業の持続的成長を目的とした重要な手段として注目されています。その成功のためには、早期の準備や適切な後継者の選定、資金計画、成功事例の把握など多岐にわたる課題をクリアする必要があります。

特に、M&Aを活用する場合は、そのプロセスの複雑さから専門家のサポートが不可欠です。M&A専門家は、事業承継のプロセスをスムーズに進めるためのアドバイスやサポートを提供し、企業の価値を最大化するための戦略的な提案を行います。

事業承継を成功させるためには、M&A専門家との連携を深め、その知識や経験を活用することが重要です。

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