事業承継における5ヶ年計画とは?目的や概要・策定理由などを徹底チェック!
中小企業庁は2017年、中小企業の事業承継を支援するための施策「5ヶ年計画」を策定しました。当記事では、目的や概要、具体的な施策を交えながら、5ヶ年計画の策定内容を詳しく解説します。事業承継の相談先や、専門家を選ぶ際のポイントも紹介します。
目次
事業承継とは
事業承継は、経営者から後継者に会社事業を引き継ぐことです。事業承継には、親族内承継・親族外承継・M&A(第三者承継)が存在し、目的や状況に応じて適切な承継方法を選択します。ここでは、3つの承継方法の概要と目的を詳しく解説します。
事業承継の種類
事業承継には、親族内承継、親族外承継、そしてM&Aという3つの手法が存在します。いずれも、新しい後継者に会社事業を引き継いでもらうという点では共通ですが、承継先によって活用される手法が異なるのが特徴です。ここでは、事業承継の3種類はどのような承継方法なのか解説します。
- 親族内承継
- 親族外承継
- M&A
親族内承継
親族内承継は、会社事業を経営者の家族や親族に引き継いでもらう方法です。現経営者の子や孫、兄弟など、後継者候補になる方がいる場合に活用されます。経営者の家族なので、従業員からの合意を得やすいという点が、大きなメリットです。
ただ経営者に家族がいる場合でも、必ずしも全員に後継者としての素質があるとは限りません。経営者が引退する前に後継者育成のための期間を設け、会社経営を学ぶ必要があります。
親族外承継
親族外承継は、会社を役員や従業員などに引き継いでもらう方法です。主に、経営者と血縁関係のある親族に後継者候補が存在しない場合に活用されます。経営者に親族がいても後継者になる意志がない場合、親族外承継が用いられるケースもあります。
また、親族外承継は必ずしも社内人材のみで実施されるわけではありません。取引先など社外の人材を後継者にすることもあります。
M&A
M&Aは、会社株式や事業を別の会社が買収することによって、経営権を取得するという手法です。事業承継では「第三者承継」と呼ばれることもあります。親族外承継と似た部分もありますが、M&A(第三者承継)は、社外に事業を引き継ぐという点で異なります。
M&Aで多く活用されるのが、株式譲渡や事業譲渡といった手法です。身近に後継者候補が見つからない場合でも、M&Aなら見つかる可能性があります。成功すれば廃業を阻止できますが、反対する従業員が出てくる場合もあるという点には、留意が必要です。
事業承継の目的
親族内承継、親族外承継、そしてM&A(第三者承継)という3種類の手法を紹介しました。ここでは、事業承継の主な目的を3つ解説します。
事業継続
経営者の多くは、事業を立ち上げてから軌道に乗せるまで、多大な労力をかけています。しかし、人材不足や経営悪化が深刻化した場合、廃業せざるを得ません。廃業では、事業が喪失するだけでなく従業員も失業します。事業承継なら、長年培った事業を絶やすことなく、雇用も維持できるため、有益な対処法の1つです。
経営者の引退
経営者が高齢の場合、経営維持にリスクがあります。現段階で事業が順調であっても、いずれは引退を考えることになるため、事業承継を検討するのが一般的です。早めに計画を立て、後継者育成を進めることでスムーズに会社を引き継げます。
経営者利益の獲得
事業承継を実施することで、経営者は株式の売却益を受け取ります。売却益は、引退後の生活資金に充当できるため、安心して引退生活が送れるでしょう。別事業の立ち上げを検討している場合も、事業資金に充当可能です。
事業承継における5ヶ年計画とは
5ヶ年計画とは、後継者問題に悩む中小企業が、後継者に会社事業を引き継ぎ、気持ちよく事業を続けてもらうために中小企業庁によって策定された、2017年から2022年までの施策のことです。ここでは、5ヶ年計画が策定された目的と背景を説明します。
5ヶ年計画が策定された目的
中書企業庁が5ヶ年計画を策定した主な目的は、後継者が事業承継をきっかけに、新たな事業に挑戦しやすい環境をつくり上げることです。ただ会社を引き継いで終わらせるのではなく、承継後の経営発展まで見守ることを狙いとしています。
5ヶ年計画が策定された背景
なぜ5ヶ年計画が策定されたのかというと、中小企業の多くが経営者高齢化や後継者不在の問題を抱えているためです。70代以上の高齢経営者がいる場合でも、後継者が見つからなければ、会社事業を続けざるを得ません。
しかし、この状態が続くと業績停滞や廃業のリスクが高まります。そこで中小企業庁は、新たな人材が会社を引き継いだ後、さまざまな事業に挑戦できる環境を構築する必要があると判断しました。
事業承継における5ヶ年計画の概要
上記では、5ヶ年計画が策定された目的と背景を解説しました。ここでは、事業承継における5ヶ年計画の概要を5つ紹介します。
- 5ヶ年計画の概要①:経営者の「気付き」の提供
- 5ヶ年計画の概要②:後継者が継ぎたくなるような環境の整備
- 5ヶ年計画の概要③:後継者のマッチングの強化
- 5ヶ年計画の概要④:事業の統合がしやすい環境の整備
- 5ヶ年計画の概要⑤:経営者が活躍できる環境の整備
経営者の「気付き」の提供
多くの経営者は、普段の事業への忙しさなどから、事業承継について考えることを先延ばしにします。しかし、今必要が無い場合でも、将来は経営者高齢化を迎えることになるため、どの企業においてもいずれは対処が必要です。
5ヶ年計画の策定は、少しでも多くの中小企業に事業承継の重要性を知ってもらうきっかけ作りとして機能します。
後継者が継ぎたくなるような環境の整備
事業承継を望んでいる場合でも経営状態が悪いと、後継者を見つけるのはさらに難しくなるでしょう。5ヶ年計画では、事業転換や経営再建の支援を提供することで、事業承継を前向きに考えられる環境の創出を目指します。
後継者のマッチングの強化
経営者に後継者候補となる親族や従業員がいない場合、M&A(第三者承継)を実施しなければなりません。ただ、承継先を探すためにはかなりの労力と時間を要します。そこで5ヶ年計画では、後継者候補とのマッチングをより円滑にするための取り組みを実施し、事業承継の支援を提供することとしました。
事業の統合がしやすい環境の整備
業績悪化で廃業せざるを得ない中小企業は、少なくありません。廃業では、熟練技術を持った職人が失われるなど、地域や業界全体に大きなダメージを与える場合もあります。5ヶ年計画では、事業統合など会社事業の存続を目指すための体制構築が必要と判断しました。
経営者が活躍できる環境の整備
経営者から後継者に会社事業が引き継がれたとしても、新たな経営課題に直面する可能性は大いにあります。そこで5ヶ年計画では、経営に詳しい人材の派遣や、専門家からのアドバイスを提供できる環境の創出が有益であると判断しました。
事業承継における5ヶ年計画の内容
事業承継における5ヶ年計画の策定概要として5つのポイントを解説しましたが、中小企業庁は具体的にどのような施策を講じたのでしょうか。ここでは、5ヶ年計画で策定された施策を5つ紹介します。
- 5ヶ年計画の内容①:事業承継支援のプラットフォームの構築
- 5ヶ年計画の内容②:小規模M&Aのマーケット形成
- 5ヶ年計画の内容③:早期承継へのインセンティブ強化
- 5ヶ年計画の内容④:サプライチェーン・地域における事業再編・統合・共同化の支援
- 5ヶ年計画の内容⑤:経営スキルの高い人材を事業承継支援へ活用
事業承継支援のプラットフォームの構築
国内では「事業承継・引継ぎ支援センター」や「よろず支援拠点」といった公的支援機関が存在します。いずれも中小企業の事業承継に関するサポートを提供していますが、より積極的に支援できるよう、地域の支援者との連携を強化しています。
小規模M&Aのマーケット形成
上で紹介した公的支援機関の1つである「事業承継・引き継ぎ支援センター」では、経営者と後継者候補のマッチングサービス「後継者人材バンク」を提供しています。これを活用することで、承継先を円滑に見つけられるようになります。
早期承継へのインセンティブ強化
事業承継は、できるだけ早い段階から準備することが重要とされています。経営悪化や後継者不在が深刻化してからでは、承継先が見つからず、廃業のリスクが高まるためです。
そこで中小企業庁は、早期の事業承継に関心を持ってもらうための動機作りとして、事業承継補助金を創設しました。そのほかにも税制面での優遇措置などさまざまな施策を講じています。
サプライチェーン・地域における事業再編・統合・共同化の支援
支援を受け事業を引き継いだ後継者が自社事業を拡大させ、その地域で経営難に頭を抱える企業を、M&A等で買収するといった成功事例も確認されています。こうした企業間における助け合いの観点からも、積極的な支援が重要であると判断しました。
経営スキルの高い人材を事業承継支援へ活用
事業承継の支援により説得力を持たせるため、経営の知識を豊富に持った経営者OBと連携し、支援にあたるとしています。実際に経営に携わった人材によるサポートなら、事業承継を検討中の経営者にとって、心強い存在となるでしょう。
事業承継における5ヶ年計画について相談ができる場所
事業承継には税務や法務の専門知識が求められるため、実施を検討される際は専門家からアドバイスを受けることが大切です。ここでは、事業承継における5ヶ年計画の相談ができる窓口や専門家を紹介します。
- 5ヶ年計画の相談先①:事業承継・引継ぎ支援センター
- 5ヶ年計画の相談先②:商工会議所
- 5ヶ年計画の相談先③:公認会計士・税理士
- 5ヶ年計画の相談先④:弁護士・行政書士
- 5ヶ年計画の相談先⑤:M&A仲介会社
事業承継・引継ぎ支援センター
事業承継・引き継ぎ支援センターは、中小企業における事業承継の相談を受け付ける公的支援機関です。窓口は全国各地に置かれているため、相談のために労力をかけて移動する必要がありません。また、公的機関なので無料でサービスが受けられるという点も大きなメリットです。
会社で後継者が見つからない場合でも、現経営者と後継者候補とのマッチングを支援する「後継者人材バンク」と呼ばれるサービスがあるので、うまく活用すれば効率的に承継先を見つけられるでしょう。
商工会議所
商工会議所は、中小企業の発展・成長をサポートするために各地に設置された経済団体です。5ヶ年計画の相談を含め、具体的な支援を受けるためには、商工会議所に入会する必要があります。会費の支払いも必要になりますが、商工会議所に所属している中小企業の経営者間で、人脈が築けるといったメリットもあります。事業承継だけでなく、普段の会社経営に関する相談も可能です。
公認会計士・税理士
公認会計士や税理士も、事業承継に関する相談を受け付けるケースが多くあります。事業承継では、株式や事業の売却益を受け取る側に所得税が発生します。状況によっては、相続税や贈与税が発生する場合もあるので、税金対策も必要です。税務処理には高度な知識が問われるので、公認会計士・税理士からアドバイスを受けることをおすすめします。
弁護士・行政書士
弁護士や行政書士にも、事業承継の相談ができます。事業承継の手続きには、多くの契約書類が必要です。記載漏れや作成ミスがあると、契約トラブルの発生リスクが高まります。法務の専門知識が求められるので、法務のプロフェッショナルから助言を受けるのが良いでしょう。ただし、事業承継に特化した専門家ではないため、サポート範囲は限定されます。
M&A仲介会社
5ヶ年計画を含む、事業承継の全般的な相談なら、M&A仲介会社がおすすめです。事業承継やM&Aの仲介に特化した専門家なので、ワンストップで助言が得られます。戦略策定から後継者の選定まで、有益なアドバイスが受けられるでしょう。M&A仲介会社によって得意分野が異なるため、自社と相性が良いM&A仲介会社を見つけることがポイントです。
事業承継の相談相手の探し方
事業承継を成功させるためには、会社状況に適した手法の策定と、ニーズが合致した承継先の選定が必要です。いずれも専門知識が求められるため、経営者個人の力だけで進めるのは、おすすめできません。ここでは、事業承継の相談相手の探し方を4つ紹介します。
- 金融機関や取引先から紹介してもらう
- 公的機関を利用する
- インターネットで探す
- M&A仲介会社に相談する
金融機関や取引先から紹介してもらう
1つ目の方法は、金融機関や取引先から紹介してもらうことです。例えば、普段から会社と取引がある銀行なら、気軽に事業承継の相談ができます。銀行は、取引先企業の経営事情を熟知しているため、承継先候補を提案してもらえる可能性があります。金融機関なので、事業承継にかかる資金面でも、心強い相談相手になるでしょう。
公的機関を利用する
2つ目の方法は、公的機関を利用することです。中小企業の事業承継支援を目的とし、全国各地に設置されています。例えば「事業承継・引継ぎ支援センター」や「よろず支援拠点」では、事業承継の相談を無料で受け付けています。公的機関なら、相談費用を抑えられるという点もメリットです。
インターネットで探す
3つ目の方法は、インターネットで探すことです。インターネット検索なら、事業承継やM&Aに詳しい専門家をオンライン上で見つけられます。PCがあれば気軽に探せるので、確かに効率的な手段と言えますが、過去の実績やサポート内容を入念に確認する必要があります。
M&A仲介会社に相談する
4つ目の方法は、M&A仲介会社に相談することです。事業承継やM&Aを専門に扱うため、幅広い内容の相談を受け付けます。M&A仲介会社によってサービス内容や特性が異なるので、自社と相性が良い仲介会社を見つけることがポイントです。
事業承継の相談相手の選び方
前述の通り、事業承継には専門知識が求められるため、専門家に相談することが大切ですが、専門家であれば誰でも良いというわけではありません。自社と相性が良い専門家が見つかれば、より有益な事業承継に繋がるでしょう。ここでは、事業承継の相談先を選ぶポイントを5つ解説します。
- ポイント①:事業承継やM&Aの実績が豊富
- ポイント②:相談したい内容が得意分野か
- ポイント③:業界内でのパイプがあるか
- ポイント④:料金体系がわかりやすい
- ポイント⑤:担当者と気軽にコミュニケーションが取れる
事業承継やM&Aの実績が豊富
1つ目のポイントは、事業承継やM&Aの実績が豊富な専門家に相談することです。知名度がある場合でも支援実績が少なければ、事業承継やM&Aが失敗するリスクが高まります。やはり、成功実績の多い専門家の方が信頼性も高いため、説得力のある助言が得られるでしょう。相談前にウェブサイトや問い合わせ等で、あらかじめ実績を把握することをおすすめします。
相談したい内容が得意分野か
2つ目のポイントは、相談したい内容が得意分野である専門家に相談することです。専門家によって扱う内容や得意分野が異なるため、相談内容を得意とする専門家を選ぶ必要があります。また、サポート範囲が限定される場合もあるので、上記と同じく、あらかじめ相談先の強みやサポート内容を把握しておくことが重要です。
また士業を営む専門家は、それぞれ得意分野が顕著に分かれています。例えば、契約書の作成など法務の相談なら弁護士、税金対策など税務の相談なら税理士といったように、相談内容に合わせて専門家を選ぶのがポイントです。
業界内でのパイプがあるか
3つ目のポイントは、業界内でのパイプがある専門家に相談することです。サポート実績が多ければそれだけ企業とのつながりがあるわけですから、知見は広く、信頼性も高いと言えます。業界特有のM&A事情を熟知している専門家なら、より中身の濃い情報が得られるでしょう。
料金体系がわかりやすい
4つ目のポイントは、料金体系がわかりやすい専門家に相談することです。専門家にサポートを依頼する場合、手数料や成功報酬が発生します。例えば、M&A仲介会社の場合、着手金や中間金、成功報酬が発生するのが一般的です。費用が明確な専門家なら、予期せぬ出費に心配する必要がありません。
サポート範囲が限られますが、無料で相談できる公的支援機関を利用するのも良いでしょう。また、売却側に着手金や中間金が原則発生しない「完全成功報酬型」のM&A仲介会社に依頼するのもおすすめです。
担当者と気軽にコミュニケーションが取れる
5つ目のポイントは、担当者と気軽にコミュニケーションが取れる専門家に相談することです。相談や仲介は、人間と人間のコミュニケーションで進められるものなので、連絡頻度・連絡回数に問題がないかを確認する必要があります。経営者自身が相談しやすい専門家を見つけることが大切です。
事業承継を検討の際は専門家に相談しよう
事業承継には、親族内承継・親族外承継・M&A(第三者承継)の3通りが存在し、承継先に応じて適切な手法を活用します。経営者引退後も会社事業を存続させられるため、廃業よりも多くのメリットが得られるでしょう。
中小企業庁も「5ヶ年計画」を策定し、後継者不在に悩む中小企業に対して積極的な事業承継支援を提供してきました。早い段階で準備できれば、余裕を持った後継者育成ができるため、承継後の事業展開を円滑に進められるでしょう。実施を検討される際は、M&A仲介会社など専門家に相談することをおすすめします。
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