事業承継のメリットとデメリットとは？種類から手続きの流れも徹底解説！

事業承継は多くの企業で導入されている事業継続のための有効なスキームですが、具体的にどのような意味があるのでしょうか。

では事業承継の定義や類似したスキームである事業譲渡や事業承継との違いを紹介します。

事業を次世代の後継者に引き継ぐことを事業承継といいます。

事業承継を行わなければ事業そのものが引き継がれることがなく、現経営者の引退と同時に廃業・倒産しなければいけないので事業継続に必須のスキームです。

事業承継では企業の運営方針や権利、資産や負債など企業のあらゆるものを引き継ぎます。

事業承継では後継者は会社の事業や資産、権利を引き継ぐだけでなく、負債や責任なども背負わなければいけないのでその責任は重大です。

事業承継と事業譲渡の違いとして挙げられるのが、引き継ぐ相手の違いです。

事業承継は親族や社内の役員や従業員に会社をそのまま引き継ぐスキームであるのに対し、事業譲渡は会社の一部か全てを他社に売却します。

したがって事業承継では権利や資産などは現状の企業が所有しますが、事業譲渡で他社に売却した事業に関する権利や資産は全て他社に引き継がれます。

事業承継と事業継承はほとんど同じ意味を表す言葉ですが、引き継ぐ内容に微妙な違いがあります。

事業承継は事業における抽象的なものを引き継ぐ意味合いが強く、事業における業務や地位、精神などを引き継ぐ言葉です。

一方の継承とは具体化されたものを引き継ぐイメージが強く、事業における身分や義務、財産や権利などを引き継ぐ意味を持つ言葉として使用されています。

双方の間に大きな違いはありませんが、一般的には事業承継の方が頻繁に利用されているのが現状です。

事業承継に成功すれば効率的な事業引継ぎが可能ですが、具体的にどのようなスキームで行われているのでしょうか。

ここからは事業承継の種類を紹介します。

経営者の親族である配偶者や子供、親戚などを後継者として擁立して事業承継する方法を親族内事業承継といいます。

親族内承継は経営者の親族にそのまま事業を引き継ぐので、相続や贈与で株式や事業資産などの引継ぎが簡単にできる点がメリットです。

しかし引継ぎ後に効率的な運営を行うため、事前に後継者に対してしっかりとした教育を行わなければいけません。

また後継者教育の段階で後継者とこまめなヒアリングや意見交換を行い、後継者としての適正を見極めるのも重要です。

親族外事業承継とは、経営者の親族以外の役員や従業員を後継者として擁立するスキームです。

親族外承継では会社の業務内容や状況に詳しい人材が後継者になる点がメリットといえます。

また擁立された後継者も会社に関する知識が深いだけでなく、長年在籍しているので後継者としての適正が判断されやすいです。

しかし後継者は経営者の親族ではないので、経営権を掌握するためには株式買い取りのための資金が必要な点も把握しなければいけません。

親族外承継においては株式買い取りのための資金を調達できず、承継を断念するケースも多いです。

事業承継にはM&Aにより、事業を引き継ぐ方法もあります。

以前は親族内承継や親族外承継ができなかった場合に廃業・倒産するケースがほとんどでした。

しかし現在は大企業だけでなく中小企業も事業継続のためのM&Aを積極的に行っています。

M&Aは基本的に他社に事業を引き継ぐスキームですが、買収された会社は廃業・倒産を回避してそのまま事業を継続できる点がメリットです。

事業承継には親族内承継や親族外承継、M&Aなど多様な方法があります。

ではそれぞれのスキームにおけるメリットとデメリットを紹介します。

親族内事業承継は経営者の子息、配偶者などの親族が事業を引き継ぐスキームですが、実際にどのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか。

後継者の育成がしやすい点が、親族内承継を行う際のメリットです。

特に早期段階から自分の子供に事業引継ぎを決めていれば、早い段階からの後継者としての教育を実践できます。

また親族内事業承継では株式の引き渡しがないので、生前贈与や相続などの比較的簡単な方法を活用できる点もメリットです。

親族内承継のデメリットとして、適格者に引き継げない可能性がある点が挙げられます。

親族内に後継者候補がいたとしても、その全ての人材が後継者としての適正を持っているとは限りません。

適性を有していない人材を無理矢理後継者にすれば、後々に会社全体の大きな問題に発展する点もデメリットです。

経営者の子息や配偶者、親類などの親族以外の役員や従業員に事業を引き継ぐスキームが親族外事業承継です。

では親族外事業承継のメリットとデメリットを紹介します。

親族外承継では今まで働いてきた信用できる役員や従業員を後継者に擁立すればいいので、比較的簡単に選定できる点がメリットです。

後継者に擁立された役員や従業員も企業に慣れ親しんでいるので、ストレスが比較的少ない状況で事業を承継できます。

親族外承継を行えば、自社株の買い取りが大変な点がデメリットです。

親族外承継では経営者の親族以外の役員や従業員が事業を引き継ぐので、事業を引き継ぐには後継者は会社の株式を買い取らなければいけません。

そこで社員や役員は事業を引き継がれても、今までに1社員として勤務してきたので株式を買い取るだけの資金を有していないケースも多く見受けられます。

このように後継者として擁立されても、親族外の後継者では自社株取得に多額の資金がかかる点もデメリットです。

M&Aは親族や自社内の人物ではなく、他社に事業を引き継ぐスキームです。

ここからはM&Aの事業承継における、メリットとデメリットを紹介します。

M&Aで事業承継を行えば親族や社内に有力な後継者を擁立できなくても、効率的に事業を引き継げる点がメリットです。

経営者が引退を考慮した際に後継者が不在でM&Aもできなければ、そのまま倒産や廃業するしか手段がありません。

一方で後継者を擁立できなくてもM&Aで他社に事業を引き継げば、そのまま事業が継続されるうえに経営者は多額の売却益を取得できます。

従業員の退職の可能性が高くなる点が、M&Aで事業承継を行うデメリットです。

M&Aでは他社の経営者が事業を引き継ぐので、今までの企業風土や就業規則、賃金なども変更する可能性があります。

そのような変化に耐え切れず、結果的に退職する従業員も多く見受けられます。

このような事態を防いで従業員の退職を防ぐためにも、M&A後にPMI（Post Merger Integration）を採用して効率的な統合を図るのも重要です。

事業承継を行えば効率的な事業引継ぎが可能ですが、実際にどのような手順で取引が行われるのでしょうか。

ここからは事業承継の手続きと流れを詳しく解説します。

事業承継を行う際には、最初に経営改善を行って企業価値を高めます。

自社の経営改善を行うためにも帳簿などを細かくチェックし、余分な経費削減などに努めましょう。

経営改善を行って企業価値を高めれば、自社を他社に引き継ぐ際の企業価値評価での売却価格も高めに算出されます。

経営改善を行って企業価値が向上したら、次に事業承継手続きの準備を開始します。

手続きには法務や税務、財務に関する煩雑な書類が多く、取得までにある程度に時間がかかるので事前に準備を進めましょう。

また今後の手続きをスムーズに進めるためにも、税理士や公認会計士などの士業や仲介会社なの専門家への相談を検討するのもおすすめです。

次にM&A仲介会社選択と実質的な契約へと進みます。

M&A仲介会社を選択する際には自社の業種に強みを持つ会社を選択すれば、スムーズな手続きの進行が期待できます。

仲介会社は業種だけでなく、得意とする地域も会社によって異なるので自社の地域に強みを持つ仲介会社を選択しましょう。

また実績・経験豊富なM&A仲介会社を選択すれば、他社と事業承継を行う際に豊富なネットワークを活かして最適なマッチングが期待できるのもメリットです。

M&A仲介会社を選択すれば、次に事業承継の相手企業や後継者候補を選択します。

相手企業を選択する前に仲介会社との綿密なヒアリングを実施して自社の現状や問題点を把握し、その問題点の解決に繋がる取引相手企業を選択しましょう。

親族内承継や親族外承継で事業を引き継ぐ際にはこの段階で後継者候補を選択し、親族内や社内での同意を得てから手続きを進めなければいけません。

事業承継における相手企業や後継者の選択が完了したら、次に事業計画書の作成を行います。

念入りに事業計画書を作成しなければ、事業承継に失敗する可能性が高くなるので慎重に作成しましょう。

事業計画書内には後継者候補や会社の現状などを細かく記載しなければいけません。

事業計画書内に会社の現状や後継者候補に関する事項を記載すれば、後継者候補への教育実施機関や引継ぎに関する期間選定にも繋がります。

事業計画書作成が完了すれば、次に親族や従業員への説明を行います。

親族や従業員への説明が遅れれば社内全体が混乱し、離職や取引先からの契約解除なども発生するので早めの説明が重要です。

また報告が遅くなって社内が混乱すれば、後継者自身も承継に前向きな気持ちに慣れずに辞退する可能性も出てくるので注意しましょう。

最後に計画書の内容に基づき、実際に事業承継を実施します。

この段階で実質的な経営権を後継者に譲渡し、事業の引継ぎを行いましょう。

その際に親族外事業承継であれば、後継者は会社の株式を買い取らなければいけない点も事前に把握しなければいけません。

また事業承継が完了した後には、その後の混乱を防ぐためにPMI（Post Merger Integration）も実施しなければいけません。

事業承継は優れたM&Aのスキームの1つで、事業継続に関するいくつかの問題を解消するためにも行われます。

では事業承継することで避けられる問題を詳しく解説します。

事業承継を行えば、後継者不在による廃業を避けることができます。

経営者の高齢化により事業継続が難しくなり、その際に後継者不在により廃業・倒産するケースも多いです。

そこで事業承継により他社に効率的に事業を引き継げば、後継者不在の事態が発生しても他社に事業を引き継いで廃業・倒産の危機から免れます。

事業承継を行うことにより、業績の悪化を避けることもできます。

一度悪化が始まれば回復のための措置を講じるのは大変で、具体的な解決策など見つけるのは困難です。

そこで事業承継を行って他社に事業を引き継げば、他社業務との連結によりシナジー効果が生み出されて、業績が回復するケースも少なくありません。

また事業承継を行って他社に事業を売却すれば多額の売却金を取得できるので、その資金を今後の事業資金にあてることもできます。

事業承継を行えば、従業員の失業も回避できます。

事業の業績が悪化して倒産・廃業すれば当然ながら従業員も職を失うのが現状です。

そこで業績が悪化する前に事業承継を行って他社に事業を売却すれば、事業もそのまま引き継がれるうえに従業員もそのまま買い手側に雇用されて失業する心配もありません。

事業承継を行えば、売り手側企業は債務の支払いを回避できます。

事業運営では運営に必要な設備投資費用などが必要で、継続的な運営のためにも負債を抱えなければいけない点がデメリットです。

また設備や土地、建物などに関連したさまざまな税金を支払わなければいけません。

そこで事業承継を行って他社に事業を引き継げば、事業に関連するさまざまな負債や税金の支払い義務がなくなる点がメリットです。

事業承継には専門的な知識が必要なので専門的なサポートが必要ですが、実際にどのような機関に相談して手続きを進めればいいのでしょうか。

そこでここからは、事業承継を行う際のおすすめの相談先を紹介します。

事業承継を行う際には、M&Aの動向に詳しい知識と経験豊富なM&A仲介会社に相談しましょう。

事業承継には法務や税務、財務などの専門的な知識が必要で、そのような手続きを経験の浅い仲介会社に依頼すれば不備などによりスムーズに手続きが進行しない点がデメリットです。

その反面M&Aに関する知識と経験が豊富な仲介会社に相談すれば、豊富な実績と経験を活かしてスムーズに手続きを進めてくれます。

また他社に事業を引き継ぐ際のマッチングに関しても、経験豊富な仲介会社に相談すれば自社の現状を把握し、最適なマッチングをしてくれるのもメリットです。

銀行や信用金庫などの金融機関も、事業承継を行う際の有効な相談先の1つです。

金融機関は財務関連のスペシャリストなので、事業承継に関する財務関連の相談に対する的確なアドバイスが期待できる点がメリットといえます。

特に自社を担当している銀行や信用機関であれば、自社の財務状況を考慮した最善のサポートも可能です。

事業承継時には、商工会議所や事業承継・引継ぎ支援センターなどの公的機関にも相談しましょう。

商工会議所は全国各地に設置されている公的機関で、主に中小企業のM&Aや事業承継に関する相談を積極的に受け付けており、気軽に利用できるのもメリットです。

一方の事業承継・引継ぎ支援センターも全国各地に設置され、事業承継に関する相談を積極的に受け付けています。

事業承継・引継ぎ支援センターには、元税理士や元公認会計士のスタッフも在籍しているので財務や税務に関する詳しいサポートが期待できるのもメリットです。

仲介会社への相談は事業承継を成功させるための有効な手段ですが、M&A仲介会社を選ぶ際にはどのようなポイントに注意して選べばいいのでしょうか。

そこでここからは、事業承継の相談をするためのM&A仲介会社の選び方を紹介します。

M&A仲介会社を選ぶ際には、M&Aの知識と経験が豊富かどうかで選択するのも重要なポイントです。

事業承継には法務や税務、財務などの複雑な手続きが多く、経験や知識に乏しいM&A仲介会社に相談すればスムーズに手続きが進行しない可能性が高くなります。

他社への事業承継を進めていても、スムーズな取引が妨げられれば契約破棄の可能性が高くなるのが現状です。

一方で経験と知識が豊富な仲介会社に相談すれば、スムーズに取引が進行して取引成功の可能性も高くなります。

また経験豊富な仲介会社であれば他社との事業承継の際に豊富なネットワークを活用し、自社と最適なマッチングも可能です。

自分の会社の業種に精通しているかどうかも、M&A仲介会社を選ぶ際の重要なポイントの1つです。

M&A仲介会社によって得意・不得意としている業種が異なり、自社の業種を得意とした仲介会社に相談すればスムーズに手続きが進行します。

一方で自社の業種を得意としないM&A仲介会社に相談すれば、手続き完了までに時間がかかるので事前のリサーチが重要です。

M&A仲介会社を選ぶ際には、担当者との相性にも注意して選択しましょう。

事業承継にはさまざまな手続きがあるので、スムーズに手続きを進めるためにも担当者との綿密な連携が必要です。

そこで担当者との相性が悪ければ、円滑なコミュニケーションが阻害されて取引もスムーズに進行しません。

一方で担当者との相性が良いM&A仲介会社を選択すれば、円滑なコミュニケーションが促進されて事業承継の手続きがスムーズに進行します。

成功報酬や手数料が明確な仲介会社を選ぶのも、事業承継の際にM&A仲介会社を選ぶ際の重要なポイントです。

仲介会社の報酬体系には着手金や中間金などを徴収する会社もあれば、成功した時のみ報酬を徴収する完全成功報酬型などさまざまな方法があります。

仲介会社の中には取引開始前に報酬や手数料の内訳を明確にせず、事業承継完了後に法外な報酬を徴収する悪徳業者も多いです。

このような業者からの被害を防いで公正な取引を行うためにも、成功報酬や手数料を明確にしているM&A仲介会社を選択しましょう。

本記事では事業承継のメリットとデメリットとを紹介し、種類から手続きの流れも解説しました。

事業承継を行えば効率的な事業引継ぎが可能ですが、手続きを進めるためには法務や税務、財務などに関する専門的な知識が必要です。

そこで仲介会社をはじめとした専門家に相談してサポートを依頼すれば、スムーズ且つ確実に取引が完了するのでぜひご利用ください。

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