事業承継における手続き方法を徹底解説!必要書類から税金も要チェック!
事業承継を検討している企業が多々見られています。しかし、事業承継でどの方法を選択するのかによって手続きの中身などが異なります。今回は事業承継を検討している企業に向けて、手続き方法や必要書類、税金の仕組みなどについて解説します。
目次
事業承継とは
事業承継を検討している企業が増えつつあります。
事業承継は親族や従業員、第三者に新しい後継者になってもらうための方法です。
事業承継を実施する前に、まずは事業承継の全体像を知ることが大事です。
ここでは事業承継の概要について解説します。
事業承継の目的
事業承継を実施する主な目的として以下のものがあげられます。
- 後継者不在問題の解消
- さまざまな経営資源の存続
- 経営者の利益確保
- 個人保証の解除
事業承継を実施することで、後継者不在問題が解消できます。
中小企業の半数以上が後継者不在問題を抱えており、事業承継によって新しい後継者を決めれば今後の経営が任せられます。
また、事業承継によってさまざまな経営資源の損失が防止可能です。
廃業などを選択するとそれまで積み上げてきた経営資源が失われてしまいますが、事業承継を選択すると相手企業が経営資源を活用してくれます。
ちなみに、経営資源には技術やノウハウだけでなく、従業員の雇用なども含まれています。
他にもさまざまなメリットがあるため、経営状況が悪化している場合には明確な目的を定めた上で事業承継を選択してみてください。
事業承継で後継者に引き継ぐ経営資源
事業承継で後継者に引き継ぐ経営資源として主に以下のものがあげられます。
- 人
- 資産
- 知的財産
以下で詳細を解説します。
人
事業承継で人に関わる部分が後継者に引き継がれます。
従業員や役員の雇用契約は買収側企業で再度結ぶこととなり、基本的に従業員などの報酬・待遇はそれまでよりもよくなります。
また、売却側企業が抱えていた顧客も一定数は買収側企業に流れていくと考えておいて問題ありません。
資産
事業承継で資産に関わる部分が後継者に引き継がれます。
現金預金などの流動性のある資産だけでなく、建物などの固定資産も引き継がれます。
承継方法によっては受け継ぐ資産の範囲が選択できるため、必ずしも固定資産をすべて受け継がなければならないとは限りません。
ちなみに、資産と同時に負債なども引き継ぐことになることを押さえておきましょう。
知的財産
事業承継で知的財産に関わる部分が後継者に引き継がれます。
知的財産は事業運営の中で生まれたアイデアやノウハウなどがあげられます。
また、売却側企業で提供していた商品・サービスの特許や著作権なども引き継がれ、権利関係の問題で事業運営に支障が出ることはありません。
事業承継の種類
事業承継には主に以下の3つの方法があります。
- 親族内承継
- 親族外承継
- M&A
以下で詳細を解説します。
親族内承継
親族内承継は親族の誰かに後継者となってもらう方法です。
主に相続や贈与などの形で株式・事業を親族に譲渡します。
親族なら身元がはっきりわかっている相手であるため、リスクを減らして事業運営が実現できます。
ただ、生前贈与できるならともかく、相続になった場合に相続相手が複数いると権利が分散して支配権が獲得できないケースも少なくありません。
親族外承継
親族外承継は会社の従業員に後継者となってもらう方法です。
親族外承継で社内の従業員に譲渡するとなると、贈与の形で後継者となってもらい、周りの従業員からも納得してもらいやすいです。
また、会社のことをよく知っていて経営者教育の手間暇も最低限まで減らせます。
しかし、親族外承継は親族内承継同様に利益が生み出せる取引ではありません。
M&A
M&Aは第三者に対して合併・買収によって後継者に経営権を譲渡する方法です。
合併は複数の会社を1つの会社に吸収させる方法で、買収は株式あるいは事業を譲渡して経営権を取得する方法です。
親族外承継・親族内承継とは異なり、売買取引が伴う手続きとなります。
そのため、M&Aでは売却側企業は利益が獲得できます。
また、親族内承継・親族外承継だと後継者となる人材が見つからないために、第三者に会社・事業ごと譲渡してしまうM&Aが主流となってきているのが現状です。
事業承継の手続き方法
事業承継の手続きを進める場合、親族・従業員内での承継と第三者への承継とで手続きの方法が異なります。
それぞれの事業承継方法に分けて手続きの流れを解説します。
親族内承継・親族外承継での手続き方法
親族内承継・親族外承継での手続き方法は以下の通りです。
- 経営状況の把握
- 後継者の育成
- 親族・従業員など関係者への周知
- 事業承継計画の策定
- 事業承継の実施
以下で詳細を解説します。
経営状況の把握
まずは社内の経営状況を把握して整理します。
社内の経営状況がわかっていると、どのような手続きで事業承継を進めていくか判断しやすいです。
また、ここで後継者の育成の方針を固めておきます。
後継者の育成
社内の状況が整理できたら、後継者の育成を始めます。
後継者の育成については、経営陣としての立ち振る舞いを学びつつも現場の従業員たちの状況を把握することを意識して教育メニューを組んでください。
後継者の育成が足りていないと、事業承継後に経営がどう動くか変わってきます。
後継者育成にはできる限り時間をかけましょう。
親族・従業員など関係者への周知
親族・従業員などの関係者に事業承継を実施することを伝えてください。
少なくとも関係者には早めに伝えておかないと、新しい体制での経営がスムーズに進められなくなります。
ただ、取引中の金融機関に対しては消費者と同じプレスのタイミングで伝えます。
金融機関には早めに伝えすぎるとかえって資金調達が難しくなってしまうため、時期を見計らってください。
事業承継計画の策定
事業承継の事実を伝えたら、事業承継計画を立てます。
事業承継計画に不備があるとトラブルに発展する可能性があります。
事業承継計画に穴がないように専門家と相談して作成しましょう。
事業承継の実施
事業承継計画を作成したら、その計画に基づいて事業承継を実施します。
事業承継を実施し始めると後に引けなくなってしまいます。
それまでに不安に感じる部分があれば、遠慮なく相談して心残りがないようにしてから事業承継を実施してください。
M&Aでの手続き方法
M&Aでの手続き方法は以下の通りです。
- M&A仲介会社へ相談・提携仲介契約の締結
- 事業承継先の選定・交渉
- 基本合意契約の締結
- デューデリジェンスの実施
- 最終交渉・契約の締結
- クロージング・統合作業手続き
以下で詳細を解説します。
M&A仲介会社へ相談・提携仲介契約の締結
まずは相談するM&A仲介会社を選んで仲介契約を締結します。
M&A仲介会社はもちろん、他にもさまざまな専門家があります。
事業承継の目的などに合わせて自社に適した専門家に相談してください。
事業承継先の選定・交渉
相談する専門家が決まったら、事業承継先の選定・交渉を進めます。
M&A仲介会社などの専門家ではマッチング支援も行っているため、事業承継先として希望する条件を伝え、条件に適した相手を紹介してもらいます。
紹介してもらった案件の中で気になるものがなかったら他の案件がないか紹介してもらいましょう。
基本合意契約の締結
事業承継先が決まって交渉して合意が得られたら、基本合意契約を締結します。
基本合意契約を結んだら、秘密保持契約を結んだ上で取引に必要となる基礎情報を開示します。
秘密保持契約を結んでおくことで情報漏洩が防止しやすくなるため、先に秘密保持契約を締結することを忘れないでください。
デューデリジェンスの実施
基礎情報だけで交渉相手の良し悪しを判断するのはリスクがあるため、デューデリジェンスを実施します。
デューデリジェンスで内部情報を調べることで、隠れたリスクの有無もわかった上で事業承継が進められます。
内部情報を調べる際には手数料を払って専門家に任せましょう。
最終交渉・契約の締結
内部情報を踏まえて問題ない取引相手だと判断できたら、最終交渉を進めて事業承継契約を締結します。
最終交渉では具体的な事業承継の中身を固め、問題なければ事業承継契約を結んでください。
クロージング・統合作業手続き
事業承継契約が締結されたら、クロージング・統合作業手続きを進めます。
契約を結んだだけでは社内体制は変わらないままです。
交渉ですり合わせた社内体制を構築するための経営資源の移転や従業員の雇用契約の整理などを済ませます。
事前に準備を少しずつ進めておくと、統合作業までがスムーズに進めやすくなります。
事業承継に必要な書類
事業承継を実施する際にはいくつか書類を作成する必要があります。
事業承継の方法ごとの必要書類について解説します。
親族内承継
親族内承継で必要となる書類として以下のものがあげられます。
- 遺言書(相続時)
- 生前贈与契約書(贈与時)
- 事業譲渡契約書(事業譲渡時)
- 株式譲渡契約書(株式譲渡時)
- 遺産分割協議書(相続時)
親族内承継だと、相続と贈与のどちらを実施するか、株式譲渡と事業譲渡のどちらを実施するかによって必要書類が異なります。
それぞれの具体的な書類の書き方について不明点がある場合は、専門家に相談して書類の作成方法を教えてもらってください。
親族外承継
親族外承継で必要となる書類として以下のものがあげられます。
- 株式譲渡承認請求書(株式譲渡制限がかけられている場合)
- 株式譲渡契約書
- 株式名義書換請求書
- 株主名簿
会社の従業員に経営権を譲渡する場合、株式を用いた取引が多くなります。
他社からの敵対的買収を避けるために自社の持つ株式に譲渡制限をかけている場合があります。
譲渡制限がかかっている場合は譲渡承認の手続きが必要です。
また、従業員が株式を取得することで株主構成が変わるため、名義書換の書類や名義変更の手続きも求められます。
M&A
親族外承継で必要となる書類として以下のものがあげられます。
- ロングリスト・ショートリスト
- 秘密保持契約書
- 基本合意書
- 最終合意書
交渉相手の候補先をリストアップしたものがロングリストで、最終的に絞り込んだものがショートリストです。
マッチング相手を探すまでの過程でリストを作成します。
また、情報を安全に提供するために秘密保持契約を結びます。
加えて、事業承継の意思について合意が得られたら基本合意書、事業承継の具体的な内容に合意が得られたら最終合意書を結んでください。
事業承継にかかる費用・税金
事業承継を実施する際には一定の費用・税金がかかります。
事業承継の方法ごとの費用・税金について解説します。
親族内承継
親族内承継では相続税・贈与税が発生します。
株式を譲渡した経営者側において、譲渡所得に対する税金がかかります。
売却益から手数料を差し引いた金額にあらかじめ決められた割合をかけることで、税金額が算出可能です。
相続税・贈与税の割合については、譲渡所得の金額が大きくなるにつれて割合が高くなる仕組みになっています。
具体的な税率は以下の通りです。
取得金額 | 税率(相続税) | 控除額(相続税) | 税率(贈与税) | 控除額(贈与税) |
---|---|---|---|---|
~200万円 | 10% | ー | 10% | ー |
200万円~300万円 | 10% | ー | 15% | 10万円 |
300万円~400万円 | 10% | ー | 20% | 25万円 |
400万円~600万円 | 10% | ー | 30% | 65万円 |
600万円~1,000万円 | 10% | ー | 40% | 125万円 |
1,000万円~1,500万円 | 15% | 50万円 | 45% | 175万円 |
1,500万円~3,000万円 | 15% | 50万円 | 50% | 250万円 |
3,000万円~5,000万円 | 20% | 200万円 | 55% | 440万円 |
5,000万円~1億円 | 30% | 700万円 | 55% | 440万円 |
1億円~2億円 | 40% | 1,700万円 | 55% | 440万円 |
2億円~3億円 | 45% | 2,700万円 | 55% | 440万円 |
3億円~6億円 | 50% | 4,200万円 | 55% | 440万円 |
6億円~ | 55% | 7,200万円 | 55% | 440万円 |
親族外承継
親族外承継では税金のかかり方などは親族内承継と変わりません。
税金面では問題ありませんが、負債などの負担を後継者となる従業員が負うことになります。
そこで事業承継を拒否される場合がある点に注意してください。
M&A
M&Aでも譲渡所得を基準とした税金計算になることは変わりません。
しかし、以下の形で税金がかかります。
- 所得税:譲渡所得の15%(個人)
- 住民税:譲渡所得の5%(個人)
- 復興特別所得税:譲渡所得の0.315%(個人)
- 法人税:譲渡所得×実効税率(法人)
個人と法人で発生する税金の中身が異なりますが、税率は一定に定められています。
上記の税率で計算してください。
事業承継の手続きを相談できる場所
事業承継の手続きについて相談できる場所として以下のものがあげられます。
- 金融機関
- 商工会議所
- 事業承継・引継ぎ支援センター
- 税理士・公認会計士
- 弁護士
- M&A仲介会社
以下で詳細を解説します。
金融機関
金融機関でも事業承継の手続きを支援してくれるところがあります。
全体的な手続きの流れや書類作成をサポートしてくれ、同時に取引に必要となる資金調達も可能です。
ただ、金融機関だとコストがかかりやすく、大手の案件が優先されやすい点に注意してください。
商工会議所
商工会議所でも中小企業・小規模事業者の事業再生を目的として事業承継の手続きを支援してもらえます。
それぞれの地域に設置されており、財務的な悩みだけでなく書類手続きなどの悩みにも乗ってもらえます。
ただ、商工会議所を利用する場合は年会費3,000円を払う必要があり、完全無料では相談に乗ってもらえません。
事業承継・引継ぎ支援センター
事業承継・引継ぎ支援センターは事業承継の手続きの支援に特化した公的支援機関です。
事業承継先の相談や事業承継計画の立案・書類手続きなどを支援してもらえます。
各分野のエキスパートが在籍しているため、事業承継について悩みがあればなんでも相談してみてください。
税理士・公認会計士
税理士・公認会計士は事業承継における税務や財務などの専門知識に基づいて手続きをサポートしてもらえる組織です。
特に相続税や贈与税は複雑な仕組みになっており、会計処理も複雑になりやすいです。
複雑化した税務・財務などの処理で困っている場合は、税理士・公認会計士などに支援してもらいましょう。
ちなみに、事業承継支援に慣れているところであれば、全体的な手続きの流れなどについてもサポートしてもらえます。
弁護士
弁護士は事業承継における法務などの専門知識に基づいて手続きをサポートしてもらえる組織です。
事業承継の専門家としての立ち位置は税理士・公認会計士と同じです。
ただ、事業承継において法律違反があれば取引が成立しません。
さまざまな書類を確認してもらい、法律に抵触している部分がないか見てもらいましょう。
M&A仲介会社
M&A仲介会社は事業承継の全体的な手続きをサポートしてくれる機関です。
売却側企業と買収側企業を仲介し、双方の利益になるようなアドバイスがもらえます。
片方に偏った意見だと交渉の際に修正が必要となり、交渉で時間がかかってしまいます。
M&A仲介会社に相談すると、スムーズに手続きが進めやすいです。
事業承継を成功させるポイント
事業承継を成功させるポイントとして以下のものがあげられます。
- 早めに準備を始める
- 後継者選びを慎重に行う
- 専門家への相談
以下で詳細を解説します。
早めに準備を始める
事業承継を成功させるために、早めに準備を始めましょう。
手続きを進めるのに時間がかかっていると、業界の動向を踏まえた適切な取引タイミングを逃してしまう可能性があります。
書類作成や手続きなどで準備がかかる場合もあるため、早い段階から準備を始めることをおすすめします。
後継者選びを慎重に行う
事業承継を成功させるために、後継者選びを慎重に行うことを忘れないでください。
適切な後継者を選ばないと、シナジー効果が発揮できず、かえってトラブルが発生する可能性もあります。
多少時間がかかっても十分な効果が発揮できる交渉相手か判断しましょう。
専門家への相談
事業承継を成功させるために、専門家に相談すべきです。
事業承継は取引相手同士で連携して手続きを進めることは可能です。
事業承継を実施する際に専門家が介入しなければならないといった法的な決まりはありません。
ただ、さまざまな形で専門的知識が求められ、単に経営知識がある経営者だけで失敗なく手続きが進められるものではないです。
それぞれの悩みに合わせて相談する専門家を決めましょう。
事業承継の手続きは専門家への相談がおすすめ
事業承継を進める場合に、複雑な手続きを済ませる必要があります。
加えて、どの事業承継の手法を取るのかによって手続きや必要書類などが異なります。
経営者間で手続きを進めるのは容易ではないため、専門家に相談するべきです。
専門家に相談すれば、業界の動向や過去の事例に基づいた的確なアドバイスを受けて事業承継が進めやすくなります。
それぞれ抱えている悩みは異なるため、悩みに適した特徴や専門分野を持っている専門家に相談して手続きを進めてみてください。
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