事業譲渡・事業売却の仲介会社はどこがいい？選び方や注意点をチェック！

企業の事業全体、または一部のみを他社に譲渡するM&A手法が事業譲渡です。現状で自社が保有している事業の中から売却したい範囲を選択し、買い手企業に譲渡を進めていきます。事業譲渡では譲渡範囲を選択できるので、継続したい事業などは残せるのもメリットです。

一方の事業売却も事業譲渡とほぼ同一の手法ですが、場合によって事業売却では「会社の保有する全ての事業を譲渡する」と定義することもあります。このように事業売却では取引相手によってとらえ方が異なる場合があるので、手続き開始前に事前に確認しておきましょう。

事業譲渡や事業売却にはいくつかの目的がありますが、最初に挙げられるのが後継者不足による廃業の回避です。現在、日本国内では少子高齢化が進んでおり、深刻な人手不足や後継者不足により廃業に追い込まれる企業が後を絶ちません。一方で事業譲渡や事業売却で他社に事業を譲渡することで、事業を存続させて廃業を回避できます。

採算性の低い事業を売却し、企業全体の業績を向上させるのも目的として挙げられます。事業譲渡・事業売却では自社に不要な事業のみを売却し、継続したい事業などの措置をとることが可能です。従って、業績が上がりにくい事業を売却し、今後の経営資金に充てることで企業全体の収益向上化が見込めます。

近年多くの企業が事業譲渡・事業売却に取り組んでいますが、売り手企業側・買い手企業側の双方が普段から取引している金融機関に相談する傾向が高くなっています。特に事業を売却したい企業は、商工会議所や商工会、事業承継・引継ぎ支援センターに相談する割合が高い傾向にあります。

参考文献：東京商工リサーチ「中小企業の財務・経営及び事業承継に関するアンケート」

出典URL: https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2021/chusho/b2_3_2.html

専門家に事業譲渡や事業売却に関する相談をすれば、手続きや交渉がスムーズに進んでいきます。そこでここからは、事業譲渡・事業売却に関する有効的な相談先やアドバイス先を紹介します。

税務の専門家で、税務署類の作成から申請、相談・アドバイスなど一連の流れを担当してくれるのが税理士・公認会計士です。事業譲渡や事業売却の手続きは税務上の手続きが多く、その際に税に詳しい税理士の知識が役に立ちます。

事業譲渡時には買い手企業側が売り手企業側を監査するデューデリジェンスを行うため、その際に会計監査に特化した公認会計士の知識が欠かせません。

会社の内情を十分理解している役員や従業員も、事業譲渡や事業売却の初期段階の相談やアドバイスの相手として有効です。しかし、役員や従業員を信用するあまりに事業譲渡や事業売却に関して多くの情報を漏らしてしまえば、社内に情報が拡散してしまう恐れもあります。その結果として、従業員にも情報がまん延して不安をあおってしまうのも注意点です。

このような事態が発生すれば、円滑な事業譲渡・事業売却が阻害されてしまうため、信頼できる役員・従業員のみに限定して相談するように徹底するのも注意点といえるでしょう。

事業譲渡や事業売却を行う際には事前に配偶者や家族、親族などに相談しておくのもおすすめです。その理由として、事業譲渡や事業売却を行えば場合によって収入が減少してしまうこともあります。それによって、配偶者や家族・親族の生活に影響を与えてしまうからです。特に譲渡による変化が大きい場合は、事前に相談することで変化に備えられます。

しかし、その際にも事業譲渡・事業売却を正式に公表するまでは他言しないように注意し、情報漏えいによる混乱を予防するのも注意点です。

自社の現状を理解してくれる同業者に相談するのもおすすめです。同業者に相談すれば自社の事業内容や状況を十分に把握したうえで適切なアドバイスをくれるので、実践的な改善策が見つかる可能性も高くなります。

特に事業譲渡や事業売却の経験がある同業者であれば、手続きや進行に関する細かな相談やアドバイスにも対応してくれるでしょう。

事業の資金計画に関する相談やアドバイスを専門的に手掛けているのがファイナンシャルプランナーです。ファイナンシャルプランナーは資金運用の専門家で、税金・節約・投資など資金運用に関するさまざまなジャンルの相談やアドバイスを手掛けています。

近年の急速的なM&Aの需要の高まりに伴って、事業譲渡・事業売却に特化したファイナンシャルプランナーも増えているので、相談するのもおすすめです。

法律に関する知識に特化した専門家が顧問弁護士で、相談することで事業譲渡・事業売却に関する法務的な手続きをサポートしてくれます。特に大企業は、顧問弁護士と契約して日常的に法的なサポートを受けているので、事業譲渡・事業売却時にも手厚いサポートを受けることが可能です。

自社と直接的な契約を結んでいる銀行に相談するのもおすすめの方法です。事業譲渡や事業売却がスムーズに進んでさらなる事業展開へと発展すれば、銀行への融資依頼も増えていくので親身になってアドバイスをしてくれるでしょう。

経営コンサルタントとして、国内で唯一認定されている中小企業の経営スキルに特化した国家資格が中小企業診断士です。中小企業診断士に相談すれば、事業の経営状況の改善を図るための最善策を検討したうえで事業譲渡・事業売却に取り組んでくれます。事業価値を高めつつ、最善の事業の買い手を見つけてくれるのもメリットです。

地域経済の発展を主な運営目的とし、事業譲渡・事業売却、M&Aの相談やアドバイスに積極的に取り組んでいる地域の総合経済団体が商工会議所です。全国各都道府県に設立されているので、日本全国のあらゆる場所の企業が利用できます。商工会議所では、主に事業譲渡・事業売却の全体の流れや、各種専門家を紹介してくれるのもメリットです。

企業の不動産をはじめとした財務状況を考慮したうえで、効率的な資金戦略や資金調達を手掛けるのが金融コンサルタントです。事業譲渡・事業売却時に関する相談をすれば、資金運用に特化した知識を活用して売却額に関する的確なアドバイスをしてくれるでしょう。

株券の売買取次や引き受けを行い、投資家と企業をつなぐ役割を果たしている金融機関が証券会社です。近年は事業譲渡・事業売却に積極的に取り組み、大企業同士や海外M&Aも多数手掛けているので相談すれば最適なアドバイスをくれるでしょう。

政府と各地方自治体の連携により、中小企業の事業承継サポートを主な目的として設立された機関が公的機関です。主に事業承継ネットワークや事業承継・引継ぎ支援センターなどが挙げられ、事業承継に関するサポートを展開しています。これらの機関では事業譲渡や事業売却に関する相談も受け付けているので、手続きに関する基本的な流れを把握するのにおすすめです。

しかし専門家ではないので、実際のサポートがない点も理解しておきましょう。

M&Aに関する手法に特化し、M&A仲介業務を専門的に行っているのがM&A仲介会社です。M&Aに関する豊富なスキル・実績を持っているので、事業譲渡や事業売却においても効果的なサポートが期待できます。他の相談相手とは違い、M&Aの専門家なので手続き完了まで一貫したサービスを提供しているのもメリットです。

M&Aの仲介会社はアドバイザリーと仲介会社に分類されますが、依頼時には双方ともにファイナンシャル・アドバイザリー契約を結びます。

売り手企業か買い手企業のどちらか一方の会社と契約を結び、M&Aをサポートする会社がM&Aアドバイザリー会社です。この形態では、アドバイザリー契約をした企業の利益を重視して交渉を進めていきます。一方でアドバイザリー会社は、交渉相手先を見つけてくれない点も事前に把握しておきましょう。

近年の事業譲渡・事業売却の増加に伴いM&Aを専門的に取り扱う会社も増加しているので、仲介会社選びも慎重に行わなければいけません。そこでここからは、事業譲渡・事業売却の仲介会社の選び方を詳しく解説をします。

全てのM&A仲介会社が全ての業界のM&Aに特化しているわけではなく、各仲介会社により得意分野が異なります。従って、仲介会社に事業譲渡や事業売却を依頼する際には、自社の業種・業界に特化した選び方をするのも重要な注意点の1つです。仲介会社は地域によって強みを持っているエリアも異なるので、自社地域の事業譲渡・事業売却に特化した仲介会社の選び方に取り組みましょう。

一般的な仲介会社は中小企業をはじめとした、数億円程度のM&Aに取り組んでいます。最近は数百万円～数千万円程度の小規模のM&Aに取り組む仲介会社も増加しています。そして、規模によって仲介会社のスキルや着手費用も異なっているので、自社の規模に適した仲介会社の選び方をしましょう。

事業譲渡・事業売却では法務・税務・財務の専門的な知識を欠かせません。従って、弁護士や税理士、司法書士などと綿密なネットワークを持っている仲介会社を選択しましょう。そのような仲介会社の選び方をすれば、面倒な法務・税務・財務などの手続きがスムーズに進んでいきます。

M&A仲介会社には完全成功報酬型を採用している場合が多いですが、中には高額な料金のイニシャルフィーを請求する業者もあります。そして、イニシャルフィーを徴収後に活動しなくなる仲介会社も存在するでしょう。このような観点からも、報酬料金が適正かを見極めながら仲介会社の選び方をするのも注意点といえます。

英語のPost Merger Integrationの略称で、M&A成立後に会社間の整理・統合を行う作業がPMIです。事業譲渡や事業売却を行うことは2つの企業が合体することになるので、人的要因に起因したさまざまなトラブルが発生します。その際にもPMIに取り組んだ経験がある仲介会社に依頼しておけば、予想されるトラブルに対して先回り対応してくれるので安心です。

現在は多くの仲介会社がM&Aに取り組んでいるので、効率的に事業譲渡・事業売却を成功させるためにも優秀な仲介会社を選択したいものです。では、事業譲渡・事業売却の仲介会社の選び方の注意点を詳しく解説をします。

事業譲渡や事業売却では、宅地建物取引業法に沿った事業用地や建屋資産などの譲渡も必ず発生します。しかし仲介会社の中にはこれらの契約内容を説明しないうえに、読み合わせも行わない会社も存在するでしょう。そのような会社の選び方をすれば不動産譲渡において、さまざまなトラブルが発生する可能性が高くなります。

このような観点からも、契約書の読み合わせをきちんと行う仲介会社を選択するのも注意点の1つです。

M&Aの検討中に情報が外部に漏れることで従業員の混乱を招いたり、取引先の信用を失ったりして、事業譲渡や事業売却が停滞してしまうこともあります。このような事態を予防するためにも、情報漏えい対策を徹底して守秘義務を守る仲介会社の選び方に取り組むのも重要な注意点です。

仲介会社の中には契約成立させて報酬料金を得るために、相手の問題点を隠す悪質な会社も少なからず存在します。このような会社に依頼して契約が成立すれば、M&A成立後に良好な運営ができなくなるので注意しましょう。

仲介会社の中には、売り手企業と買い手企業の双方の代理に着手している会社もあります。そのような会社に依頼すれば買い手企業に対して買収しやすい料金に調整したり、売り手企業の情報を隠したりするなど契約成立重視のM&Aが行われてしまうでしょう。このような事態を予防するためにも、双方代理ではない仲介会社を選択するのも注意点といえます。

事業譲渡・事業売却を仲介会社に依頼する際には、実際にどのような料金がかかるのでしょうか。そこでここからは、事業譲渡・事業売却を仲介会社に依頼する際の料金を詳しく解説をします。

正式に事業譲渡・事業売却を手掛ける前の相談手数料金が相談料です。近年ではほとんどの仲介会社が、初期相談を無料で受け付けているので気軽に利用できます。一方で1回の相談にかかる料金を5千円～1万円程度徴収する仲介会社もあるので、利用前に事前に確認しておきましょう。

実際に仲介会社に依頼し、業務を行ってもらうための料金を着手金といいます。一般的な相場は50万～200万円程度ですが、近年は着手金が不要な仲介会社も増えているので、以前よりも利用しやすくなりました。M&Aに初期にかかる料金を安く設定することで、多くの相談を受け付けたい観点からこのような料金設定が考慮されています。

仲介会社に支払う月額の手数料金のことをリテイナフィーといいます。一般的な相場は30万～200万円程度ですが、徴収しない会社もあるので事前に確認しておきましょう。リテイナフィーは一度契約すれば譲渡・売却契約成立まで支払わなければいけないので、事前にリテイナフィーの有無を確認して仲介会社を選択するのも重要です。

事業譲渡・事業売却の基本合意契約が締結された時点で、仲介会社に支払う費用のことを中間報酬といいます。基本合意契約が締結され中間報酬を支払っても、最終的な譲渡・売却にまで至らないケースもあります。そのような場合でも中間報酬は返金されないので、事前に把握しておきましょう。

事業譲渡・事業売却の最終契約が締結された際に、仲介会社に支払う費用が成功報酬です。従って、最終契約まで至らなかった場合には成功報酬は徴収されることはありません。一般的に成功報酬はレーマン方式という計算式で決定されていきます。

事業譲渡や事業売却では税務・法務・財務などに関するさまざまな知識・スキルが必要になります。従って、M&A経験が豊富で、多くの実績を持つ仲介会社に依頼すれば、安心して手続きに臨めるでしょう。手続き期間中は、綿密なコミュニケーションもとる必要があるので、自社と相性の良い仲介会社を選ぶのも重要なポイントです。

今後自社事業の譲渡や売却を検討しているのであれば、本記事を参考にして最適な手続きを進めてください。

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