会計事務所のM&Aの動向は?相場やメリット・注意点まで徹底解説!
近年会計事務所のM&A取引は増加しています。経営者の高齢化や後継者不足、税理士数の増加による競争の熾烈化が主な要因ですが、適切に事業承継や買収を行うことで同業界内での優位性を発揮できるようになります。本記事では、会計事務所のM&A取引について解説します。
目次
会計事務所の現状とM&Aの動向
ここからは、会計事務所経営の現状や会計事務所間のM&A取引(売却・買収)が増加している理由とそれらの動向について解説します。
会計事務所とは
会計事務所は、税理士事務所の俗称です。
会計事務所には、以下の業務を担当する税理士が在籍します。
- 各種税務申告業務
- 記帳代行
- 個人・法人の税務相談
類似する言葉に税理士法人・会計法人があります。
いずれも組織形態で経営していることが特徴で、個人で経営を手掛ける事務所で対応していない分野の業務も取り扱う事例があります。
会計事務所の現状
全産業の動向で共通する課題としては、人手不足が挙げられます。
例に漏れず税理士・会計事務所も人手不足が深刻ですが、中でも「若手」や「即戦力人材」の不足が大きな問題となっています。
AIの台頭により、記帳代行や給与計算等の基礎業務は置き換わる可能性が見込まれますが、経営関連の知識やノウハウを承継可能なベテラン人材のニーズは依然として高いです。
また動向として、ITの発達や多様性を重視する文化により、若手の企業家や経営者は近年増加傾向にあります。
市場動向を考慮しM&A取引を活用後、双方の企業のノウハウを統合することで、他社と比べて大きく差別化できるでしょう。
会計事務所のM&Aが増加している理由
所長の高齢化や後継者不足・競争激化等の理由から、会計事務所のM&Aは近年増加しています。
2022年8月時点の税理士登録者数は80,238人と、20年前と比べると約20%増加しました。税理士が増加する一方で、多くの会計事務所では売上が減少しています。
加えて、都市部と地域の税理士数格差も顕著です。税理士業界は都市部一極集中が顕著であり、顧客獲得のための差別化や価格競争が熾烈です。
都市部の経営者が今後の事務所存続の問題に悩まされている他、地方においても、住民に必要な税理士や会計事務所が不足しているため、M&A取引をきっかけにして双方のニーズを満たせるケースもあります。
特に2〜30人規模の小規模の税理士法人や、100〜300人規模の中規模の税理士法人は、M&A取引のニーズが高い傾向が見られます。
会計事務所のM&Aの事例
ここからは会計事務所(税理士法人)のM&A事例をご紹介します。
事例①
事例の1件目は、経営から離れて業務のみを続けて行かれたい先生のご希望です。
約30年に渡り事務所経営を続けられた70代A先生の事務所年間売上は約6000万円。
顧問先件数は50件を超え、6名の従業員を抱えていますが、経営が右肩下がりである動向や年齢・健康上の理由から、税理業務は継続しながら経営から離れることを決断しました。
譲受希望のH先生の依頼により、売却譲渡した事務所経営へ携わってもらい、職員の雇用を守ることができました。
顧問先件数は300件を超え、経営が安定していることから、A先生が安心して事業売却できた他、売却企業・買収企業両方に在籍する職員のモチベーションも向上しています。
事例②
2件目の事例は、M&A取引により売上減少を克服し、相続や事業承継に関する問題も解決したK先生です。
60代のK先生は、30年の間会計事務所に勤められ、4名の職員と共に経営を続けてこられました。
税理士数の増加等の昨今の状況があり、顧客離れが顕著になったため、事業譲渡(売却)による業務の引継ぎを検討しました。
最近では、記帳代行以外の業務依頼も多くなり、自社社員のノウハウでは対応しきれなくなった事例も多く耳にします。
M&A取引の一つである事業譲渡(売却)を活用することで、後継者へ事業の適切な引継ぎに成功し、職員研修が盛んに行われるようになったため、双方の事務所が活気付きました。
会計事務所のM&Aの費用の相場
会計事務所のM&A取引額は、売り手や買い手同士の交渉の場で決定し、相場は営業利益の3〜6割であるケースが多いです。
基本合意書の取り交し等の具体的な手続き内容について把握し、安全な取引進行をご検討される場合は、M&A仲介会社のご利用がおすすめです。
売り手側と買い手側で行われる交渉次第
会計事務所の規模は様々のため、M&A取引の明確な相場は存在しません。
実際に価格を算定する場合は売り手側と買い手側の双方で交渉を行い、一般的な相場基準に見合った価格が決定します。
営業利益の3から6割とする場合が多い
会計事務所におけるM&A取引の具体的な相場としては、営業利益の3〜6割で設定される事例が多いです。
M&A仲介会社に相談する
会計事務所の規模は様々であり、明確な相場は存在しません。
また取引される金額も、交渉や企業価値評価により異なっているため多種多様です。
M&A取引を専門に扱う仲介機関を利用すれば、自社の企業価値についてより詳しく把握することができます。
特に「完全成功報酬型」を採用している仲介会社では、M&A取引が未実行の場合の損失を最小限にできます。
会計事務所のM&Aのメリット
ここからは、会計事務所をM&Aにより売却・買収するメリットについて解説します。
売却側企業のメリット
会計事業を売却する企業のメリットは、以下の通りです。
- 株主に大量の売却益が入る
- 従業員の雇用やキャリアを守れる
- 事業承継による相手企業とのシナジー効果が発生する
- 売却した事業の価値が上がる
- 連帯保証が外れる
事業承継や譲渡等のM&A取引を活用すれば、大量の譲渡益が獲得できる他、会計事業を後継者へ引き継ぎ、守りたい従業員の雇用を継続できます。
研修等を積極的に開催し、双方の社員のコミュニケーションを活性化させることで、M&A取引後も安定して経営を続けることが出来るでしょう。
買収側企業のメリット
会計事業を買収する企業のメリットは、以下の通りです。
- 人材やノウハウを獲得できる
- 収益源が多角化する
- 「繰越欠損金」により節税できる
動向を考慮した上で他所を買収することで、在籍する人材やノウハウを効果的に獲得できます。ローリスクな収益源の多角化も見込むことができ、様々な業務を効率良く行えるようになるでしょう。
これらに加え、譲渡企業から引き継がれた負債を「繰越欠損金」として自社の経理情報に組み込み、黒字と帳消し納税額を減らすことも可能です。
会計事務所のM&Aの流れ
会計事務所間のM&A取引の流れは、以下の通りです。
- M&Aの検討・準備
- M&A仲介業者の選定・相談
- マッチング・交渉
- 秘密保持契約の締結
- トップ面談
- 基本合意書締結
- デューデリジェンス
- 最終条件交渉
- M&A契約確定の最終契約
- クロージング
上記のM&A取引の流れについて、以下より解説します。
M&Aの検討・準備
M&A取引では「顧客離れが進んでおり売上が伸び悩んでいるが、事業承継を行うことで事業そのものや従業員の雇用は守っていきたい」「事業を手放したいが、会計業務には社員として引き続き携わりたい」等のさまざまな要望を叶えられます。
M&Aスキームには、売却や譲渡等の取引が挙げられますが、いずれも双方の企業が連携して業務を行うという共通点があります。
M&A仲介業者の選定・相談
M&Aスキームが決定若しくは決定しかねる際は、M&A取引を専門に扱う仲介会社の選定を行いましょう。
M&Aを専門に取り扱う会社には、事業譲渡や会社売却など様々なM&A取引のデータが蓄積されています。
適切な企業価値評価や相手企業へのデューテリジェンスが可能で、買収事例や動向分析を得意とする専門家と共に計画立案を行うことで、安心して取引を進行できます。
マッチング・交渉
M&A仲介のプラットフォームを活用して売却もしくは買収する企業とのマッチング・交渉を行います。
M&Aマッチングプラットフォームには、対象業種特化型のものやマッチングのみを行う一般的なプラットフォーム等がありますが、特に推奨されるのは専門家や仲介会社を介したサービスです。
買収事例等の実績が豊富で、動向分析に長けたM&A仲介会社や付随するプラットフォームを採択することで、会社売却もしくは買収による想定外のメリットやシナジー効果を得られるでしょう。
秘密保持契約の締結
相手企業との交渉が成立したら、秘密保守契約の締結を行います。
秘密保持契約は、基本合意書を取り交わし前に行われる手続きであり、M&Aに関する情報の取り扱いについて議論します。
関連する情報を包括的にカバーするには秘密保持契約の対象を明確化したり、取引の期間や終了条件を設定したりすることが重要です。
トップ面談
トップ面談では双方の所長が直接対面し、取引によって得られるメリットや戦略的側面について話し合います。
次項の基本合意書締結がスムーズに進むよう、事務所の将来のビジョンや経営理念について詳細に議論します。
基本的な財務情報等の双方の会社概要がわかるデータを提示することで、どのような項目で基本合意を決定すれば良いかがわかるでしょう。
基本合意書締結
トップ面談により経営者双方の意思が計画が合意したら、基本合意書(Memorandum of Understanding, MOU)を締結します。
基本合意を交わす時点では、契約にかかる全ての項目を決定する必要はなく、今後のM&A取引を円滑に行うことや双方の意図の明確にすることを目的として行われます。
また法的拘束力がかかる項目は、一部のみとなります。
基本合意で買わされた契約金額等の項目は、最終合意の段階までに変更するなどの柔軟な対応が可能です。
デューデリジェンス
基本合意書の取り交しにより大まかな契約内容が決定したら、相手事務所の詳細を把握するためのデューデリジェンス(事前調査)を実施します。
相手企業に対するデューデリジェンスでは、以下の項目に焦点を絞り全容を把握します。
これにより、リスクの高い買収の未然防止が可能です。
財務 | 実質的収益力(売上高水準やEBITDAなど) |
---|---|
法務 | 規則や株式の発行内容COC条項や事業に影響する条項、許認可・知的財産権等 |
人事 | 労務管理や人材マネジメントルール、人員構成や報酬水準など |
事業 | 競合状況、顧客基盤や市場地位 |
上記項目に焦点を絞り、段階別に調査を行います。
デューデリジェンスの段階は、以下の通りです。
- 基本方針決定
- 事前情報整理
- 開示資料の確認・追加資料請求
- マネジメントインタビュー
- 収集資料の分析
- 中間・最終報告書作成
最終条件交渉
相手企業のデューデリジェンスが全て完了し、提示すべき条件を整理したら、最終条件の決定交渉へ入ります。
具体的な項目には、以下の内容が含まれます。
- 譲渡価額(株価+退職金)
- 従業員の処遇について
- 譲渡対価の支払い方法
- 連帯保証・担保提供の解除方法
併せて、社長や役員の所有物の取り扱い等を決める「細目事項の決定」も重要です。
M&A取引完了後にトラブルへ発展することの無いよう、最終合意の段階で取り交しておきましょう。
M&A契約確定の最終契約
最終条件交渉の完了後は、取引全体の最終契約に入ります。
以下の構成を遵守し、最終契約書(DA)の作成を行います。
- 全文・定義
- 株式譲渡の合意・価格
- 表明保証
- 誓約事項(譲渡日までの義務)
- 誓約事項(譲渡日後の義務)・付帯合意
- 損害賠償・補償解除
- 一般条項
表明保証内容や誓約事項の遵守が、クロージングの条件となります。
クロージング
クロージングとは、M&A取引が完了し、対価の支払いが完了した状態のことを指します。
前項の最終契約で解説したクロージング条件を満たすため、DA締結日とクロージング日程は一定の期間を空けるケースが多いです。
会計事務所のM&Aを成功させるポイント・注意点
会計事務所のM&Aを成功させるポイントは、以下の通りです。
- M&Aの相場を把握しておく
- 買い手のつく会社作りを行う
- 経験豊富なM&A仲介業者に依頼する
- 適切なスキームを選択する
- 従業員や取引先へのケアを行う
- 税金対策を行う
上記のポイントについて、以下より解説します。
M&Aの相場を把握しておく
周辺にある事務所や類似企業のM&A相場と動向について把握しておきましょう。
会計事務所全体のM&A相場は明確ではありませんが、類似する企業や市場を調査することで自社に適切な相場や企業価値を算出できます。
買い手のつく会社作りを行う
買い手のつきやすい会社作りを行うことで、M&A取引を迅速に尚かつ安全に進められます。
具体的には、以下の項目が挙げられます。
- 築いた市場地位が強固である
- 将来における成長性とポテンシャルが高い
- M&A取引対象の企業とシナジー効果が発生する確率が高い
経験豊富なM&A仲介会社に依頼する
M&A取引を成功へ導くには、取引実績や交渉経験の豊富なM&A仲介会社の選定が重要です。
特に「完全成功報酬制度」を採用している会社では、失敗により発生する損失を最小限に抑えて検討できます。
適正なスキームを選択する
M&Aとは、合併(Merger)と買収(Acquisition)を指し、関連する取引を総じてM&A取引と呼びます。
事業承継や会社売却など、様々な形が存在しますが、いずれも双方の企業が連携して取引する点で共通しています。
M&Aのスキーム(取引方法)や動向の分析方法によっては、従業員の雇用や譲渡益、節税などの項目で致命的な問題が発生する事例もあるため、注意が必要です。
従業員・取引先へのケア
M&A取引は基本合意、デューデリジェンス、最終条件交渉等の段階を踏んで行われます。
従業員や取引先への情報公開のタイミングを謝ると、離職や訴訟などの想定外のトラブルに巻き込まれることがあります。
M&A取引によって得られるメリットを十分に理解してもらえる環境を設けておきましょう。
税金対策をする
採択するM&Aスキームによっては、自社黒字と合算することで、納税額を大幅に抑えられる事例もあります。
どれくらいの節税効果を見込めるかを査定したい場合は、是非当社までご連絡ください。
会計事務所のM&Aは前もって準備を行い丁寧に進めよう
ここまで、会計事務所間でのM&A取引の概要を解説しました。
企業間のM&Aは、一般的な取引と比べて踏むべき段階や意識すべき相手が多くなります。
小さなミスが訴訟や離職等の想定外の損失を生むこともあり、取引実績の豊富なM&A仲介会社の選定が重要となります。
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