化学製品卸のM&Aの業界動向や事例を徹底チェック!相場や成功のポイントは?

化学製品卸売業界には多くの企業が参入しており、近年は事業シェア拡大のために積極的にM&Aに取り組む動向が増加しているのが現状です。本記事では化学製品卸のM&Aの業界動向や事例をチェックし、相場や成功のポイントも解説します。

目次

  1. 化学製品卸売業の業界状況とM&Aの動向
  2. 化学製品卸売業のM&Aを行うメリット
  3. 化学製品卸売業のM&Aの成功事例
  4. 化学製品卸売業のM&Aの相場
  5. 化学製品卸売業のM&Aを成功させるポイント
  6. 化学製品卸売業のM&Aは専門家に相談しよう

化学製品卸売業の業界状況とM&Aの動向

前述のように近年は事業シェアや販売シェア拡大のために積極的にM&Aを行う動向の化学製品卸売事業者が増えています。

では実際の業界全体の情勢やM&Aはどのように行われているのでしょうか。

ここからは化学製品卸売業の業界情勢やM&Aの動向を詳しく解説します。

化学製品卸売業とは

合成繊維や樹脂、塗料や医薬品をはじめとした化学工業製品や、それらの製品を製造するための原料を取り扱う卸売業のことを化学製品卸売業といいます。

近年はほとんどの化学製品卸売業を化学メーカーが手掛けており、このような企業の中には化学製品に関する研究・開発を行っている動向の企業も多く見受けられます。

一方でメーカーから原料を仕入れて小売業者などへの販売をメインにしている企業も多く見受けられます。

化学製品には多くの商品が分類されますが、一般的には石油を原材料として生産される石油化学製品が多くのシェアを占めているのが現状です。

化学製品卸業界の現状

現在の化学製品卸業界においては、石油化学製品だけで出荷額が8兆円を超えるなど今後も市場規模拡大の動向が強く見受けられます。

一方で1990年以降は国内における需要は減少の動向が強く、中国をはじめとしたアジア諸国の企業の進出に伴って収益率が大幅に減少しました。

そこで国内企業の多くが積極的なM&Aによる資本提携や工場の統廃合など、生き残りをかけた動向のM&Aが加速しました。

今後もこのような動向が高まっていくことが予測され、各企業の収益性を高めるためのM&Aは増加していく見込みです。

環境問題への配慮の観点から、都市部での化学工場を建設・運営は困難で大手企業が好立地条件の企業を買収する動向も多く見受けられます。

さらに近年は石油などの原料価格の高騰に伴い、バイオ原料などを研究開発している企業の買収ニーズも高まっているのが現状です。

化学製品卸業界ではM&Aを行う企業が増えている

前述のように、化学製品卸業界自社収益性の向上や海外企業への対抗策としてM&Aを行う企業の事例が増えています。

特に大手企業は自社と同様の分野に関する強みや先進性を持つ中小企業を買収し、事業における専門性を高めているのが現状です。

また大手企業の中には自社と完全に同業でなく、関連性の高い企業を買収してさらなるシナジー効果を計るケースも多く見受けられます。

売り手企業の立場からしてもM&Aを行うことにより、安定した事業基盤を持つ企業との連携が可能になり、引き続き事業を継続することも可能です。

また化学製品卸業界においては、今後の収益性や成長性を加味して今後の収益が見込めない事業を売却するためにM&Aを行うケースも多く見受けられます。

化学製品卸売業のM&Aを行うメリット

化学製品卸売業でM&Aを行えば、事業シェアの拡大や収益性を高めることができますが、他にどのような具体的なメリットがあるのでしょうか。

では化学製品卸売業のM&Aを行うメリットを売り手側・買い手側双方の立場から解説します。

売り手側のメリット

化学製品卸売業のメリットとして挙げられるのが、従業員の雇用をそのまま継続できる点です。

業績不振で廃業や倒産に追い込まれれば従業員はそのまま職を失い、収入がなくなってしまいます。

そこで廃業や倒産前の好業績の内にM&Aを行えば、売り手企業側の従業員は買い手企業にそのまま引き継がれるので、職を失う心配もありません。

また後継者問題を解決し、効率的な事業引継ぎができるのもM&Aにおける売り手側のメリットです。

近年の少子高齢化により、化学製品卸業界においても中小企業においては慢性的な後継者不足が問題視されています。

そこでM&Aを行えば他社への効率的な事業引継ぎが可能になり、後継者問題に悩まされることもありません。

買い手側のメリット

化学製品卸売業界でM&Aを行えば、業務になれた優秀な人材を確保できる点が買い手側のメリットです。

事業買収でなく新規事業立ち上げでは、従業員の教育や研修に多くの時間や費用がかかってしまいます。

一方でM&Aを行えば、売り手企業側の事業と一緒に従業員もそのまま引き継ぐので教育や研修の必要がなく、業務開始までの費用や手間がかかりません。

また製品製造や運営に関するノウハウをそのまま継承できるのも買い手側のメリットです。

化学製品卸業における製品の製造に関しては科学的な知識やノウハウなども必要で、それらがなければ優れた製品を作ることは不可能です。

しかしM&Aを行えば売り手企業の事業と共に事業に関するノウハウや知識もそのまま引き継ぐことができます。

化学製品卸売業のM&Aの成功事例

現在は多くの化学製品卸売業者がそれぞれの目的に沿ったM&Aを行い、自社運営の効率化に成功しています。

ここからは化学製品卸売業のM&Aの成功事例を紹介します。

大阪有機化学工業と三菱ケミカルのM&A

2020年には有機化学工業品や石油化学製品の製造・販売を手掛ける大阪有機工業が、機能商品や素材などの製造・販売事業を手掛ける三菱ケミカルの頭髪化粧品用アクリル樹脂の製造・販売事業を譲受しました。

このM&Aは大阪有機化学工業が事業・販売シェアの拡大を計った事例です

大阪有機工業による三菱ケミカルの一部事業譲受に関するお知らせ

日本材料技研とレアメタルメーカー・エムアンドシーのM&A

2021年12月には東京都中央区に本社を構える日本材料技研が、レアメタル加工製品の製造・販売を手掛けるエムアンドシーの全株式を取得して完全子会社化しました。

このM&Aは、日本材料技研が自社の経営資源とエムアンドシーの技術を融合させてシナジー効果を得た事例です。

日本材料技研ホームページ

住友化学とボタニカル・リソーシーズ・オーストラリア・グループのM&A

2017年にはライフサイエンス事業を手掛けていた住友化学が、有効な殺虫成分であるピレトリンの主要製造メーカーである、ボタニカル・リソーシーズ・オーストラリア社と関連会社の株式の82.9%を取得して子会社化しました。

このM&Aは、住友化学が事業分野の拡大のために行った事例です。

住友化学ホームページ

黒田化学と中井製作所のM&A

2021年3月には株式会社タカギセイコーが連結子会社で自動車関連機器や情報機器などの製造している黒田化学の全株式を、精密金型や3D設計などの事業を手掛ける中井製作所に譲渡しました。

このM&Aはタカギセイコーが不要事業から撤退し、事業全体の採算性を高めるために行った事例です。

株式会社タカギセイコーの黒田化学の事業譲渡に関するお知らせ

三菱ガス化学とJケミカルのM&A

2021年5月にはJオイルミルズが自社の子会社で接着剤などの製造・販売を手掛けるJケミカルが、三菱ガス化学に譲渡されました。

このM&AはJオイルミルズが事業の採算性を高め、事業効率化のために行った事例です。

Jオイルミルズプレスリリース

OATアグリオとオランダのクリザール社のM&A

2018年には農薬メーカーであるOATアグリオが、花や植物の鮮度保持薬品の開発・販売を手掛けるオランダのクリザール社の全株式を取得して子会社化しました。

このM&Aは、OATアグリオがさらなる事業拡大や販売シェア拡大のために行った事例です。

OATアグリオによるクリザール社の株式取得に関するお知らせ

蝶理と小桜商会のM&A

2018年には主に化学品や有機化学品関連商品の販売を手掛ける蝶理が、1949年の操業開始以来、潤滑添加剤の国内有数の販売シェアを確保している小桜商会の全株式を取得して子会社化しました。

このM&Aは、蝶理が事業規模拡大のために行った事例です。

蝶理による株式会社小桜紹介の株式取得に関するお知らせ

化学製品卸売業のM&Aの相場

化学製品卸売業でM&Aを行い、理想的な価格で売却を進めるためにも市場における大まかな相場を把握しなければいけません。

そこでここからは、化学製品卸売業のM&Aの相場や、相場の計算方法を紹介します。

企業価値評価の計算方法

化学製品卸売業のM&Aにおいて、自社の価格相場を把握するためにも明確な企業価値評価を行わなければいけません。

では企業価値評価を計算する3つの方法を詳しく解説します。

・マーケットアプローチ

M&Aを行う際の売り手企業と同業種の一部上場企業のデータをもとに企業価値評価を行う方法がマーケットアプローチです。

この方法では一部上場企業などの明確に公開されている相場の情報を参考に、比較的簡単に企業価値評価できる点もメリットといえます。

・インカムアプローチ

M&A成立後のシナジー効果により今後見込める収益性やキャッシュフロー、取引が完了して創業開始後に発生するかもしれないリスクによる出費などを加味したうえで企業価値評価を行う方法をインカムアプローチといいます。

この方法は主に収益還元法とDCFという2つの手法に分類され、M&Aを行う企業の状況次第での使い分けが必要です。

・コストアプローチ

企業価値評価を企業の純資産をもとに算出する方法をコストアプローチといいます。

この方法は企業の支出や収入などが細かく記載された帳簿や明細など、明確なデータを参考に企業価値を算出する方法です。

実際に算出された明確なデータを基準にするので、事実に基づいた確かな相場を算出ができる点がメリットといえます。

最終的な価値は交渉により決まる

化学製品卸売業の価格相場や企業価値評価は、最終的には売り手と買い手の交渉によって決まります。

M&A開始時には売り手側は自社の強みを把握し、交渉時に積極的にアピールしましょう。

そのような交渉を行えば、買い手側はM&A後の売り手企業を買収することで得られるシナジー効果を予想して高値の相場を付けてくれる可能性も高くなります。

また買い手企業は取引が完了する前にデュ―デリジェンスで監査を行い、その結果次第で適切な金額を提示するのも重要なポイントです。

化学製品卸売業のM&Aを成功させるポイント

化学製品卸売業界でM&Aを成功させれば、事業・販売シェア拡大などさまざまなメリットを得ることができます。

一方でいくつかの重要なポイントを押さえなければ化学製品卸売業でのM&Aを成功させることはできません。

そこでここからは、化学製品卸売業のM&Aを成功させるポイントを紹介します。

売り手企業側

下記に化学製品卸売業の売り手側が、M&Aを成功させるポイントを表記します。

・入念な準備を行う

M&Aには法務や財務、税務に関する手続きが多く、取引完了までには多くの時間を費やしてしまいます。

さらにデュ―デリジェンスなどの期間なども含めれば多くの時間や手間がかかるのはいうまでもありません。

その結果として交渉が決裂してしまうケースも多く見受けられます。

このような事態を予防し、取引をスムーズに進めるためにも売り手企業側は事前に入念な準備を行いましょう。

・最適なタイミングで売却する

化学製品卸売業のM&Aにおいて、売り手側は最適なタイミングで売却するのも重要なポイントの1つです。

M&Aにおいて買い手企業は買収後の明確なシナジー効果が見込めなければ、高額で買収してくれることはありません。

一方で売り手企業側が事業の業績が好調な間に売却すれば、買い手企業側は買収後の明確なシナジー効果を見越して高額の相場で買収してくれます。

買い手企業側

 下記に化学製品卸売業の買い手側が、M&Aを成功させるポイントを表記します。

・デュ―デリジェンスを徹底する

化学製品卸売業において買い手側がM&Aを成功させるためにも、買い手側がデュ―デリジェンスを徹底するのも重要なポイントです。

デュ―デリジェンスを行わなければ、M&A完了後に想定外の簿外債務や突発債務なども発生し、余計な経費が掛かってしまうケースも多く見受けられます。

このような事態を防ぎ、公正な取引を成功させるためにも買い手企業側はデュ―デリジェンスを徹底しましょう。

・M&A専門の仲介会社に依頼する

化学製品卸売業のM&Aにおいては、買い手側はM&A専門の仲介会社に依頼しましょう。

M&Aにはさまざまな手続きや関係書類作成の他に、税務や財務、法務に関する専門的な知識が必要です。

このような手続きや書類作成、交渉などを自社で行うこともできますが、取引成立までに多くの時間がかかってしまうことは間違いありません。

そこでM&A専門の仲介会社に依頼すれば迅速なマッチングを行ってくれるうえに、複雑な取引や手続きもスムーズに行ってくれるでしょう。

化学製品卸売業のM&Aは専門家に相談しよう

化学製品卸売業でM&Aを成功させれば効率的な事業引継ぎができるうえに、事業・販売シェアを効率的に高めることもできます。

しかし手続きにはさまざまな関連書類の作成やデュ―デリジェンスも必要で法務や税務、財務などに関する知識が欠かせません。

そこでM&Aの専門家に相談すればスムーズ且つ正確に取引を進めてくれるので、ぜひ一度依頼を検討してみてはいかがでしょうか。

またM&Aでも効率的な化学製品卸売業の事業引継ぎを行うことができますが、さらにスムーズな引継ぎを行うのであれば事業承継がおすすめです。

事業承継を活用すれば、自社親族内の後継者を擁立できれば簡単に手続きが完了します。さらに親族や従業員内に後継者がいなくても、第三者企業から最適な後継者の擁立ができるのも事業承継のメリットです。

特に近年は事業承継に特化している仲介会社も多いので、一度利用を検討してみてはいかがでしょうか。

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