合併とは?種類から手続き方法・メリット・成功事例まで徹底解説!

本記事では、M&Aにおける企業合併の基本から、吸収合併と新設合併の違い、手続きの流れや方法、メリットとデメリット、さらに成功事例までを詳細に解説。M&Aや合併を検討している関係者にとって、買収・売却の意思決定をサポートするための貴重な情報や事例が満載です。

目次

  1. 会社の合併とは
  2. 合併の種類
  3. 合併のメリット・デメリット
  4. 合併の手続き方法
  5. 合併で必要な登記
  6. 合併の成功事例
  7. 合併の注意点
  8. 企業の合併を成功させるには専門家に相談しよう

会社の合併とは

会社の合併は、ビジネスの世界において重要なM&Aの方法の1つです。多くの企業が成長、拡大、または市場での競争力を強化するために合併を選択しています。

しかし、合併の概念はしばしば誤解されがちであり、そのプロセス、買収との違い、そしてM&A全体の枠組みとの関係は、多くのビジネス関係者にとって複雑に映ることがあります。

ここでは、合併の基本的な意味、買収との違い、M&Aとの関連性について、具体的な事例とともに詳細に解説します。

合併の意味

合併とは、2つ以上の企業が1つの法人格に統合されるビジネスプロセスを指します。このプロセスでは、参加する企業がそれぞれの資産、負債、契約、従業員、および顧客基盤を新しい単一の企業体に移転します。

合併の主な目的は、企業の規模を拡大し、新しい市場に進出することや、既存市場における競争力を強化することにあります。

合併は、企業の戦略的な成長や効率性の向上、コスト削減、技術やリソースの統合など、多くのメリットをもたらすことが期待されます。主に「吸収合併」と「新設合併」の2つの方法があり、それぞれ異なる特徴と手続きを有しています。

合併と買収との違い

合併と買収は、企業再編の方法としてしばしば言及されますが、その本質は大きく異なっています。合併は、2つ以上の企業が1つの新しい法人格に統合されるプロセスであり、結果として新しい単一の企業が誕生します。

これに対して、買収は一方の企業が別の企業の株式や資産を取得し、その経営権を掌握するプロセスです。買収の場合、買収された企業は法的に存続することが一般的で、経営権の移転が主な変化です。

合併は両社が完全に一体化するのに対し、買収では両社が法的には別々の存在として残ることが多い点が特徴です。

合併とM&Aとの違い

M&A(Mergers and Acquisitions、合併と買収)は、企業が他の企業を統合したり、株式や事業を買収したりする一連のプロセスを総称します。合併はM&Aの一部であり、複数の企業が1つの法人格に統合されるプロセスを指します。

一方で、M&Aは合併だけでなく、企業の買収や事業部門の統合など、より広範な活動を含む概念です。M&Aは企業の成長戦略、市場拡大、競争力の強化、技術やリソースの獲得など、多様な目的で行われます。

合併は特に企業統合に焦点を当てた活動であり、M&Aの中でも特定の戦略的目的を達成するための方法として位置づけられます。

合併の種類

企業合併は、ビジネスの成長や市場拡大のための重要なM&A戦略です。合併には主に2つのタイプがあり、それぞれに独自の特徴と方法が存在します。

これらの合併方法は、企業の目的や戦略に応じて選択され、それぞれ異なる影響と結果をもたらします。以下では、吸収合併と新設合併の概要と、これら2つの方法の違いについて詳しく解説します。

吸収合併

吸収合併は、複数の既存企業のうち1つが他の企業を統合し、存続する形式の合併です。この方法では、存続会社が消滅会社の資産、権利義務、人員、取引先、顧客、ノウハウ、ブランド力、許認可などを全て包括的に承継します。

吸収合併の特徴は、消滅会社の法人格が終了し、その全てが存続会社に移行する点にあります。対価としては、株式の交換の他に現金や社債、新株予約権を使用することも可能です。

手続きの簡便さと、許認可や契約のスムーズな移行が可能であるため、多くの合併案件で吸収合併が選ばれる傾向にあります。

新設合併

新設合併は、合併のために新たに設立された企業が存続会社となり、既存の企業を統合する形式の合併です。この方法では、全ての合併参加企業が法人格を失い、新設された企業がそれらの資産、権利義務を引き継ぎます。

新設合併の主な特徴は、新しい企業がゼロから始まる点にあり、これにより許認可の再取得や契約の再締結など、手続きがより複雑かつ煩雑になる傾向があります。

また、新設合併では対価として現金を使用することが難しく、登録免許税が吸収合併に比べて高くなることが一般的です。これらの理由から、新設合併は実際のビジネスシーンではあまり採用されていません。

吸収合併と新設合併との違い

吸収合併と新設合併の主な違いは、手続きの複雑さと対価の扱いにあります。新設合併では、新しい企業を設立する手間が加わり、許認可や契約の再締結などの追加的な手続きが必要です。

これに対して、吸収合併では、存続会社が既存の企業であるため、許認可や契約の移行が比較的スムーズに行われます。また、新設合併では対価として現金を使用することが難しいのに対し、吸収合併では現金や株式など多様な対価の支払いが可能です。

登録免許税に関しても、新設合併は吸収合併に比べて高額になる傾向があります。これらの理由から、実務上では吸収合併がより一般的に選ばれる傾向にあります。

合併のメリット・デメリット

企業合併は、ビジネスの成長や市場拡大のために頻繁に採用されるM&Aの戦略ですが、その決定には慎重な検討が必要です。合併には多くのメリットがありますが、同時に無視できないデメリットも存在します。

これらのメリットと欠点を理解することは、合併を検討する際の重要な要素です。以下では、合併の主なメリットとデメリットについて詳しく解説します。

メリット

合併のメリットは多岐にわたります。まず、合併は統合の効果をスピーディーに発揮しやすい点が挙げられます。買収の場合、被買収会社と新たな雇用契約を結ぶ必要がありますが、吸収合併では消滅会社の権利義務が存続会社に引き継がれるため、迅速な統合が可能です。

また、合併は大規模な資金調達を行わずにM&Aを実施できるメリットがあります。自社株式を対価として使用できるため、資金調達にかかる労力や手間を省けます。

さらに、合併は対等な立場のM&Aという印象を与えやすく、対外的にポジティブなイメージを発信できます。これにより、自社のイメージアップや得意先、仕入先への安心と信頼の付与につながります。

デメリット

一方で、合併にはいくつかのデメリットも存在します。合併は他のM&Aスキームに比べて手続きが多く、多大な時間や労力、コストがかかる点が挙げられます。

また、合併の対価として新株が発行される場合、発行株式数によっては既存の株式の価値が希薄化し、株価が下落するリスクがあります。さらに、合併は投資家から注目される反面、合併後の業績によっては厳しい判断が下される可能性があるため、株価の動向には注意が必要です。

合併の手続き方法

企業合併は、戦略的なビジネス決定であり、その過程は複雑で多岐にわたります。合併を成功させるためには、一連の手続きを正確に行うことが不可欠です。

これらの手続き方法は、合併契約の締結から始まり、事前開示書類の備置、株主総会の招集、合併契約の承認、債権者保護手続き、反対株主の株式買取請求手続き、そして合併の効力発生に至るまで、多くの段階を含みます。

各ステップは、合併が法的に正当で、すべての関係者の利益を考慮したものであることを保証するために重要です。以下では、合併の手続き方法について詳細に解説します。

①吸収合併契約書の締結

合併方法の初期段階では、関与する企業間で吸収合併契約書を締結します。この契約書は、合併に関する全ての基本的な条件や詳細を定めた文書であり、合併の枠組み、財務的な取り決め、各社の責任範囲などを明確にします。契約書の締結は、各企業の取締役会での承認を経た後に行われ、合併の法的基盤を形成します。

②事前開示書類の備置

合併に関する重要な情報を含む事前開示書類を、合併の効力発生日より前の一定期間、企業の本店に備え置く必要があります。これらの書類には、合併契約の詳細、財務報告、経営計画などが含まれ、株主や債権者、その他の利害関係者に対して、合併に関する透明性を確保するために重要です。

③株式買取請求に係る株主への通知または公告

合併に反対する株主がいる場合、合併の効力発生日の20日前までに株主に通知するか、公告を行う必要があります。この手続きは、合併に反対する株主が自己の保有する株式を公正な価格で買収することを要求できるようにするための手続きです。これにより、合併によって不利益を被る可能性のある株主の権利が保護され、合併の公正性が確保されます。

④株主総会招集手続

合併に関する株主総会を招集する手続きは、合併の正式な承認に向けた重要なステップです。この総会では、合併契約の内容が株主に提示され、討議されます。株主は合併のメリットとリスクを理解し、企業の将来に対する重要な決定を下す機会を持ちます。

⑤合併契約承認

合併契約の承認は、株主総会での特別決議によって行われます。この承認は、合併が正式に進行するための法的要件を満たすものであり、株主による合併計画への同意を意味します。この段階で、合併に関する全ての重要な側面が株主によって検討され、承認されます。

⑥債権者保護手続

合併により影響を受ける債権者を保護するための手続きは、合併の公正性と透明性を確保するために重要です。この手続きには、官報による公告や債権者への個別通知が含まれ、債権者が合併による影響を理解し、必要に応じて対応できるようにすることを目的としています。

⑦反対株主の株式買取請求手続

合併に反対する株主の権利を保護するため、彼らの株式を公正な価格で買収するための手続きが行われます。この手続は、合併によって不利益を被る可能性のある株主の権利を保護し、合併の公正性を確保するために重要です。

⑧合併の効力発生

合併契約に記載された効力発生日に、合併は法的に効力を発生します。この日から、合併により生じるすべての法的変更が適用され、企業は新たな法人格としての活動を開始します。この日は、合併の最終的なマイルストーンとして重要です。

⑨事後開示書類の備置

合併後も、特定の期間、合併に関する事後開示書類を企業の本店に備え置く必要があります。これには合併の詳細や影響に関する情報が含まれ、合併の透明性を維持し、関係者が必要な情報にアクセスできるようにするために重要です。

⑩登記申請

合併の完了後、必要な登記申請を行います。これには、存続会社の変更登記や消滅会社の解散登記が含まれます。登記は合併の法的手続きを完了させるために不可欠であり、新たな法人格の正式な確立を意味します。

合併で必要な登記

企業合併は、単にM&A戦略の一環として行われるだけでなく、法的な手続きも伴います。合併方法の最終段階として、特に重要なものが登記手続きです。この登記には、特定の書類の準備と登録免許税の支払いが必要です。

これらの手続きは、合併が正式に完了し、新しい企業体が法的に認められるために不可欠です。以下では、合併における登記の流れや方法、必要な書類、および登録免許税について、詳しく解説します。

登記に必要な書類

合併において必要な登記には、いくつかの重要な書類が必要です。これには、合併契約書、合併計画書、株主総会の議事録、取締役会の議事録、財務諸表、合併に関する公告文書などが含まれます。

これらの書類は、合併の法的根拠を示し、合併後の新しい企業構造や財務状況を明確にするために不可欠です。また、合併によって生じる法人格の変更や資産の移転を正式に記録するためにも、これらの書類の提出が求められます。

登録免許税額

合併に伴う登記には登録免許税が必要です。この税額は、合併する企業の資本金の額や合併の種類(吸収合併または新設合併)によって異なっています。一般的に、新設合併の場合は吸収合併よりも登録免許税が高くなる傾向があります。

これは、新設合併では新しい法人を設立するため、その資本金に基づいて税額が計算されるためです。合併による登記の際には、これらの税金の支払いを考慮に入れる必要があります。

合併の成功事例

企業合併は、戦略的なビジネスの再編成として多くの企業によって採用されています。成功した合併は、企業の市場での地位を強化し、効率性を高め、新たな成長機会を生み出せます。

ここでは、実際の吸収合併を事例に、合併がもたらした具体的な成果とM&Aの戦略的意義について詳しく解説します。これらの事例は、合併がどのように企業の成長と変革を促進するかを示す良い事例となっています。

ソフトバンクモバイルによるワイモバイルの吸収合併

1つ目の事例として、ソフトバンクモバイルによるワイモバイルの吸収合併は、2015年4月1日に効力を発生させました。この合併では、ソフトバンクモバイルが存続会社となり、ワイモバイルを含む他の3社(ソフトバンクBB、ソフトバンクテレコム)が吸収されました。

本事例の結果、ソフトバンクは「ソフトバンク」と「Y!mobile」の2つのブランドを維持し、移動通信サービスを提供することになりました。この合併事例は、サービスの継続性を保ちつつ、企業の効率化と市場での競争力を高めることを目的としています。

合併に関する報道発表について / 2015/01/23 | ワイモバイル(Y!mobile)

三菱UFJリースによる日立キャピタルの吸収合併

2つ目の事例として、三菱UFJリースと日立キャピタルの合併は、2021年4月1日に効力を発生させました。この経営統合は、両社のビジネス領域の相互補完と経営基盤の強化を目的としています。

本事例により、両社は業界屈指のグローバルプレイヤーとなり、リース会社の枠を超えた先進的なアセットビジネスを展開することを目指しました。この経営統合事例は、外部環境の変化に迅速に適応し、新たな価値を創造することを目標としていました。

経営統合後の主要株主に関するお知らせ

オリンパスによる子会社2社の吸収合併

3つ目の事例として、オリンパスは、2015年4月1日に子会社であるオリンパスメディカルシステムズ株式会社(OMSC)とオリンパスイメージング株式会社(OIMC)を吸収合併しました。

本事例の目的は、医療および映像事業の分社体制の見直しを通じて、グループ経営資源の最適配置と最大活用を実現することでした。この合併事例により、オリンパスは医療用内視鏡等の製造販売機能を強化し、グループ全体の競争力を高めることを目指しました。

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合併の注意点

企業合併は、戦略的なビジネスの再編成として多くの企業によって採用されていますが、この方法にはいくつかの重要な注意点があります。

合併には、簿外債務の引き継ぎ、従業員への配慮、および特定の合併形態における株主総会の決議の必要性など、様々なリスクと課題が伴います。

これらの点を適切に管理し、対処することが、合併を成功に導くために不可欠です。以下では、合併におけるこれらの重要な注意点について詳しく解説します。

簿外債務を引き継ぐリスクがある

合併では、消滅会社の権利義務を包括承継するため、簿外債務(デリバティブ取引の債務、債務保証、訴訟による賠償義務など)を引き継ぐリスクが存在します。

合併の手続きが終了した後にこれらの問題が発覚すると、統合に大きなマイナスの影響を与える可能性があります。事前協議で早期に問題点を明らかにし、トラブルを回避するための対策を講じることが重要です。

従業員への配慮

合併では異なる企業文化やビジョンを持つ複数の企業が1つに統合されるため、従業員の離脱、混乱、衝突が生じる可能性があります。特に、吸収合併で消滅する企業の従業員や、新設合併における合併比率が少ない企業の従業員は、精神的ストレスが大きくなる可能性があります。

合併によるシナジー効果を急ぐあまり、従業員の不安を増長させないよう、統合化や融合化をうまく図ることが合併の成功につながります。

簡易合併や略式合併でも株主総会の決議を省略できない可能性がある

簡易合併や略式合併では、特定の条件下で株主総会の決議を省略することが可能です。しかし、これらの要件を満たさない場合、株主総会の特別決議による承認が必要です。

簡易合併は、消滅会社の資産の帳簿価額が存続会社の総資産の5分の1以下である場合に適用され、略式合併は、存続会社が消滅会社の90%以上の議決権を保有している場合に適用されます。ただし、略式合併は吸収合併にのみ認められており、新設合併には適用されないため注意が必要です。

企業の合併を成功させるには専門家に相談しよう

企業合併は、その複雑さと多様な課題を考慮すると、専門家の助言とサポートが不可欠です。合併は、単に法的な手続きや財務的な調整にとどまらず、組織文化の統合、従業員のモチベーション管理、そして長期的な経営戦略の策定に至るまで、多岐にわたります。

専門家は、これらの複雑な側面を理解し、企業の特定のニーズに合わせたカスタマイズされたソリューションを提供できます。彼らは、合併に伴うリスクの評価、適切な戦略の策定、そして合併後の統合の管理において、重要な役割を果たします。

そのため、合併を検討する企業は、経験豊富なM&Aアドバイザー、法律顧問、財務コンサルタントといった専門家と協力することで、合併を円滑に進め、最大の成果を得られるでしょう。

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