株式交換による株価への影響とは?価格が変動する理由や注意点もあわせて解説!
近年、M&Aの手法としての1つである株式交換。
株式交換をすることで親会社と子会社の関係が生まれ事業の拡大を図ることができます。
今回は、株式交換による株価の影響、価格変動する理由や気をつける点を紹介していきます。
ぜひ、参考にしてください。
目次
株式交換とは
株式交換とは、親会社が子会社となる企業の株式を取得して、完全子会社にする仕組みを作り出すM&Aの手法です。
子会社の株式を保有していた株主は、代わりに親会社の株式を取得できます。
株式交換は株価に影響を与えることがあり、上昇する場合と下落する場合があるので、注意しましょう。
株式交換の定義
株式交換の定義は、完全子会社となる会社の発行済株式のすべてを完全親会社となる会社に取得させることです。
株式交換後には、対象会社に対して100%の完全支配関係が生じるのです。
株式交換は、平成11年(1999年)に商法改正時に解禁されたことにより、企業再編の手法として利用されるようになりました。
その後、「対価の柔軟化」が導入され、親会社の発行する社債や新株予約権、現金などを株式交換の対価として認められるようになったのです。
株式交換の目的
株式交換の場合、買取時のキャッシュなしで、対象会社を100%子会社にできます。
通常のM&Aでは、買手は買取費用をキャッシュで用意しないといけません。
そのため、キャッシュが不足していると、増資や銀行などから借り入れを行わなければならないのです。
株式交換は、手元資金がなくとも自社株式と交換することで、対象会社を完全子会社化できるというメリットがあります。
上場企業で高い時価総額が付いている企業であれば、株式交換の際に新株発行したとしても既存株主の増資による新株の発行を抑えられます。
株式交換と株式移転の違い
株式交換は、完全子会社となる会社の発行済株式を、完全親会社となる会社に取得させる方法です。
経営統合や子会社の完全子会社化による経営効率の向上など、グループ再編において効果を発揮する目的で用いられます。
一方で、株式移転とは、子会社となる会社の株主が保有するすべての発行済株式を新設する会社に取得させ、自社を完全子会社化することです。
一般的には、ホールディングスなどの持株会社を設立する際の組織再編で用いられます。
株式交換と株式移転の大きな違いは、既存の会社に株式を取得させるか、新設する会社に株式を取得させるかということです。
株式交換により株価の価格が変動する理由
株式交換で株価の価格が変動する理由は、以下のとおりです。
- 子会社の上場の廃止
- 投資家の心理と期待値
- 親会社となる買収企業の業績
- プレミアム支払いの影響
それぞれについて詳しくみていきましょう。
子会社の上場の廃止
完全子会社となる企業が上場企業である場合、株式交換を行うと、上場できません。
上場維持基準を満たせなくなりますが、株主には完全親会社の株式が交付されるため、株主の利益は守られるます。
株式市場への影響を考慮せずに株式の交換比率を定めて公表してしまうと、株式交換が実施される前に完全親会社・完全子会社の株価が上下してしまうでしょう。
投資家の心理と期待値
親会社である企業が、停滞している子会社を株式交換することにより、投資家たちは業績の低下が起こるのではないかと考えます。
このように株式交換することで、今後の業績が上がるのか下がるのかは投資家たちの期待値によって株価が上下に変動します。
親会社となる買収企業の業績
企業買収後は株主や代表取締役など株を保有している者に影響があり、企業や従業員には一切影響は受けません。
株主は、子会社化されることで、リスクを覆う可能性もあります。
親会社の不祥事により子会社化された企業も、親会社と一体に扱われてしまうため、ビジネスに影響を与える恐れがあります。
プレミアム支払いの影響
公開買付けにより上場企業を非公開化する際に、対価として交付する株式数は市場価格より高い基準価格によって決まります。
市場価格より高い部分を「プレミアム」といい、既存株主へシナジー効果の果実を共有し譲渡を促す効果があるのです。
プレミアム支払いが承認されると、株式市場よりも高い値段で株式交換を行うため株価が上がりやすい傾向になってしまいます。
市場での買いが増加するなど、株価が上昇する恐れがあるため、気をつけなければいけません。
株式交換による株価により株式交換比率も変動する
株価による株式交換比率がどのように変動するのか「株式交換比率と株価との関連性」「株式交換比率を算出する方法」の観点から解説していきます。
株式交換比率と株価との関連性
株式交換比率とは、株式交換する際に子会社となる企業の株式に対して、持ち株数に合わせて振り分ける親会社の株式比率のことを指します。
例えば、株式交換比率が5:1の場合、子会社の株式を5株未満しか保有していない場合、親会社の株式を受け取ることができません。
株価次第で大きく変動してしまう恐れがあるため、株式交換比率を決める際は親会社と子会社の株価を明確にしておきましょう。
株式交換比率を算出する方法
完全親会社となる会社と完全子会社となる会社の時価純資産額を各会社の発行済株式総数で割って1株当り時価純資産額を算定し、各社の時価純資産額を比較して株式交換比率とする方法があります。
具体的には時価純資産額を株式評価日現在の貸借対照表に基づいて算定するところから、企業の一定時期の資産価値で株式交換比率を示そうとするものです。
株式交換比率は基本的に両者の株価によって決められるため、親会社が上場企業でない場合を除き、一概に株価の比較ができません。
また、親会社・子会社ともに上場企業であったとしても株価のみではなく、当時会社の企業価値を算定した上で、比率を決めることもあります。
株式交換による株価に影響する株式交換比率と計算方法
株式交換による株価に影響する株式交換比率と計算方法は、以下の通りです。
- 企業価値算定の方法
- コストアプローチ
- マーケットアプローチ
- インカムアプローチ
- 企業価値算定は複雑なためM&A専門家に相談するのがおすすめ
それぞれについて、詳しくみていきましょう。
企業価値算定の方法
未上場企業または株式非公開の会社では株式の市場価値がありません。
そのため、株式の価値を算出する必要があります。
以下では、3つの手法について紹介していきます。
コストアプローチ
コストアプローチとは、企業の純資産時価評価額の株主資本価値を算出する評価手法です。
コストアプローチは、簿価純資産法や時価純資産法の2つが挙げられます。
簿価純資産法 | 貸借対照表上の純資産額を示す方法 |
時価純資産法 | 評価対象となる企業または事業の資産・負債の全てを時価に置き換えて純資産を評価する手法 |
これらを行うことにより、企業が保有する資産や負債の価値を算出するため客観的な評価が期待できるでしょう。
企業買収においては、買収価格が問題になることがあります。
しかし、コストアプローチによる企業価値評価は、売却側と買収側の交渉において、買収価格の目安として利用できます。
コストアプローチのデメリットとして、評価に時間と費用がかかります。
企業が保有する資産・負債の価値全てを把握し調べる必要があるためです。
情報が不足してしまうとさらに多くの時間と費用がかかってしまうため、できる限り時間と費用を確保しておきましょう。
また、業種や市場の変化に柔軟に対応できない可能性があります。
企業が保有する資産・負債の価値を算出しないといけないため、業種や市場の変化に対応する難しくなるのです。
マーケットアプローチ
マーケットアプローチとは、対象企業と同業他社の時価総額を比較し、類似の買収事例を参考に企業の価値を測る手法です。
マーケットアプローチを行うメリットとして、比較的容易に評価ができるところです。
比較的容易に実施可能であるため、評価のスピードが他のアプローチ方法よりも速く、比較的低コストで済むことも少なくありません。
同業他社の株価や業界全体の売買価格などは、市場に公開されている情報が多く、それらを収集・分析することで相対的に容易に評価額を算出できます。
評価の速度が速く、低コストで済むでしょう。
客観性による評価が可能で、市場における同業他社の価格動向を参考にし、企業の評価額を算出できます。
専門家の評価に頼ることなく、容易に評価できるところがメリットです。
しかし、業界全体の平均値で評価されてしまうかもしれません。
マーケットアプローチでは、同業他社の株価や業界全体の売買価値を参考に企業の評価額、業界全体値の評価でされるため、自社の特徴や強みが評価されず実際の価値と異なるものになってしまう恐れがあります。
また、市場の変化に影響を受けやすく、市場が不安定な場合や、業界全体が停滞している場合には、評価額が低下してしまうでしょう。
インカムアプローチ
インカムアプローチとは、対象会社における将来期待・予測される収益(キャッシュフロー、配当など)を元に事業価値を算出する手法です。
主に非事業価値を加算することで企業価値を算出でき、企業価値から債権者価値を減算し、株式価値を算出できます。
インカムアプローチを行うメリットとして、業種や地域に関係なく比較が可能になるということです。
異なる業種や地域に存在する企業や資産を比較することで、市場変動に強い評価できます。
企業や資産の将来が変化しないと見込まれる場合、評価結果は大きく変化しません。
デメリットとしては、将来の予測が難しいということです。
今後のキャッシュ・フローを予測しないといけないため、市場の変化や経済の不確実性に伴い多くの外的要因が起こる可能性があるため将来の予想が不可能になるのです。
取引価格の評価に対して、基礎となる将来の収益と割引率と多くの主観的要素を含むことがあるため、客観的な評価が難しくなってしまうでしょう。
企業価値算定は複雑なためM&A専門家に相談するのがおすすめ
企業価値算定は、さまざまな要因が組み合わさって評価されます。
かなり複雑な作業のため、M&A専門家に相談することをおすすめします。
より正確に作業を進めたい方は、M&A専門家に相談しましょう。
株式交換時に適用する株式交換比率はどのタイミングで決定するか
株式交換比率は、親会社と子会社それぞれの1株当たりの株式価値を算定し、その評価額に基づき比率を決定することです。
親会社の1株当たり株式価値が100円、子会社の1株当たり株式価値が500円と算定された場合、交換比率は、1:5 となり、完全子会社1株に対して完全親会社株式5株を交付します。
株式交換比率の2パターンについて解説します。
固定性株式交換比率
株式交換契約終結時点で株式交換比率を決定することを「固定性株式交換比率」と言います。
タイミングとメリット
買収企業は交換比率と交換する株式の数をあらかじめ設定しておくことで、株価変動による株式の希薄化を図れます。
完全子会社となる企業にとって、株式交換契約の締結を発表することは、買収企業の株価が上昇し、その値上がり益を享受できる可能性があるということです。
変動性株式交換比率
株式交換比率自体を設定しないやり方を「変動性株式交換比率」と言います。
タイミングとメリット
買収企業は契約終結時ののれん計上額が確定できるといったメリットがあります。
完全子会社化される企業にとっては、変動性株式交換比率を用いることで、効力発生日までの間に生じる株価の変動リスクを回避できます。
株式交換をするメリットとデメリット
株式交換のメリット、デメリットについて解説します。
メリット
株式交換のメリットとして、以下の3つが挙げられます。
- 買収資金が不要
- 100%子会社できる
- 早急な経営統合を行わなくて済む
買い手企業は買収の対価として新株を発行すれば、取引する会社の株を買わずに済むます。
株主総会の特別決議で、議決権を持つ株主の過半数が出席し、買収対象企業の株主の3分の2以上の賛成を得ることができれば、株式の交換が行えます。
株式交換は会社合併とは違い、子会社は独立した法人のままで入れるため傘下にする必要がありません。
デメリット
株式交換するデメリットは、以下の2つです。
- 株価が下落してしまうリスクがある
- 株式の現金化が難しい
親会社である上場企業が、赤字続きの企業を子会社にすることで、株価が下落してしまう可能性があります。
しかし、親会社のブランド力が高い場合など、赤字企業と株式交換しても株価が上がるケースもあるため、一概には判断でききません。
また、対価として現金の報酬を望む場合、株式交換は不向きです。
株式交換では、ほとんどのケースでM&Aの対価として株式を受け取ります
そのため、上場企業の株式を対価として受け取った場合は、現金化するのは難しいでしょう。
株式交換による株価の変動を意識しながら行うべき注意点
株価交換する際に注意すべきポイントは、以下の通りです。
- ①税務の扱い
- ②株価の変動が大きくなる可能性がある
- ③新しい株式に交換される日付を確認する
それぞれの注意点に関して詳しく解説していきます。
①税務の扱い
株式交換による資産評価損益への課税に注意しましょう。
株式交換では、被買収会社の株式が移動するが、被買収会社の資産は移動しません。
吸収合併の場合と整合性を図るために、資産を時価で評価する場合、「時価-簿価」を税務上の評価損益として計上することが決まっています。
時価が簿価を上回れば評価益が生じ、下回れば評価損が生じたことになるため、課税所得が変わります。
次に株式譲渡損益への課税です。
株式交換では、原則として被買収会社の株主は時価により当該株式を譲渡したものとして扱われます。
「時価-簿価」を譲渡損益と見なされるため、課税対象です。
株式交換の対価が被買収会社の株式であるときは、当該株式の株式交換にかかる譲渡損益は繰延べ税金を払う必要がありません。
②株価の変動が大きくなる可能性がある
株式交換時にみられる株価の変動として取引の発表・株取引の中止に合わせて株価の変動が大きくなる可能性があります。
③新しい株式に交換される日付を確認する
新しい株式に交換される日付を確認するようにしましょう。
株式の譲渡は、正確には当事者間の売買で完了した日が取得日です。
株主名簿に記載すべき日付は、譲渡が行われたあと会社に対して株主名簿の名義書換請求がなされ、会社がそれを受理した日です。
譲渡日と書換請求を受理した日が同日であれば問題ありませんが、異なる場合は注意してください。
株式交換による株価への影響は専門家に相談するのがおすすめ
株式交換は複雑な作業が多いため、専門家に相談することをおすすめします。
相談できる機関は、以下の通りです。
- 金融機関
- 公的機関
- 弁護士・税理士
- M&A仲介会社
各機関の特徴について詳しくみていきましょう。
金融機関
証券会社や銀行といった金融機関での相談が可能です。
投資銀行・商業銀行・証券会社などの金融機関がファイナンシャル・アドバイザーとしての役割を担います。
外資系投資銀行や日系の証券会社は、金額の大きいM&Aを得意としており、M&A成立時における成功報酬の目安は、外資系投資銀行の場合は2億円以上、日系の証券会社の場合は2千万円以上必要であることを認識しておきましょう。
公的機関
二つ目に公的機関での相談です。
商工会議所などの公的機関は主に中小企業に対してM&A業務を提供しています。
政府等が中心となって取りまとめた「事業承継ガイドライン」においても、M&Aが中心的手法として取り上げられているほど、近年注目を浴びている機関です。
弁護士・税理士
三つ目は弁護士・税務士での相談です。
M&Aにおいてデューデリジェンスは、欠かせません。
デューデリジェンスはM&Aを行なう際、売り手企業の価値やリスクなどを調査します。
デューデリジェンスの内、公認会計士は財務デューデリジェンスを、税理士は税務デューデリジェンスを担当します。
M&Aを実行するかどうかや企業売買の目安となる金額をいくらに設定するかを決定するには、財務情報に関する詳細な調査を行なう必要があります。
この財務情報に関する詳細な調査が、公認会計士が担当する財務デューデリジェンスです。
M&A仲介会社
最後に、M&A仲介会社での相談です。
M&Aの仲介会社はM&Aに関する業務を専門的に扱っています。
M&Aの仲介会社ごとに能力・経験・得意分野はさまざまなので、自社に合ったM&Aの仲介会社を選ぶようにしましょう。
株式交換による株価への影響を専門家に相談しながら取引をすすめよう
今回は株式交換による株価の影響、価格変動する理由や気をつける点について紹介しました。
株式交換により、株価は上下してしまう恐れがあるため、予想が難しいのが現状です。
また、株式交換による株価は、複数の要因が相まって変動します。
現在はより専門的に取り扱っている専門機関が多く存在します。
おすすめの金融機関は、以下の通りです。
- 金融機関
- 公的機関
- 弁護士・税理士
- M&A仲介会社
株式交換の変動による影響を詳しく調査したい方は、自分に合った専門機関へ相談しましょう。
M&A・事業承継のご相談ならM&Aエグゼクティブパートナーズ
M&A・事業承継については専門性の高いM&AアドバイザーがいるM&Aエグゼクティブパートナーズにご相談ください。
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