消防設備工事のM&Aを徹底解説！動向や売却・買収事例・注意点は？

 現在は消防設備工事の業務発注先である、ビル管理会社が経費削減などの観点から業者の選別を強化しています。

その動向により案件の受注が困難になっている消防設備工事会社も多く、事業存続のためにM&Aにて事業拡大を行う動向も増加しています。

今後も大手・中堅の消防設備工事会社による買収や、ビルメンテナンス会社の業務内製化によるM&Aが増加する見込みが強いです。

さらに消防設備工事業界でも慢性的な高齢化が進んでおり、後継者問題や労働力不足を解消する動向のM&Aが増える見込みが記されています。

マンションや住宅、オフィスビルなどで消防設備の工事・メンテナンスを手掛ける業者であることが消防設備工事業界の特色として挙げられます。

近年多発している地震・水害などの被害を受け、防災意識の高まりの動向に伴って注目される業界の1つになりました。

前述のように、消防設備工事業界は慢性的な高齢化や受注案件の減少から、M&Aにより事業継続を図る企業が増えているのが現状です。

特に中小企業が案件受注のために事業規模の動向や、大手・中堅企業に売却して生き残りを図るM&Aが増えています。

また案件発注先である、ビルメンテナンス会社による業務内製化の動向によるM&Aにより、買収されるケースも増加しているのが現状です。

少子高齢化の動向により、中小の消防設備工事会社の中には労働力不足により廃業するケースも多く見受けられ、人材の確保が業界全体の今後の大きな課題として挙げられます。

このような事態を回避して円滑に事業を継続するため、強い採用力を持つ大手消防設備工事会社の傘下に入るM&Aを検討する業者が増加しています。

多くの消防設備工事会社が事業継続のためのM&Aを積極的に行っていますが、取引における価格相場はどのように推移しているのでしょうか。

では消防設備工事業界のM&Aの価格相場を紹介します。

消防設備工事業界におけるM&Aの買収相場は、過去の事例における買収価格の公開例が少ないので相場を算出するのは困難です。

しかし近年行われている消防設備工事業界のM&A事例から検証すると、数億円～数十億円で買収されているケースも多く見受けられます。

また大まかな買収相場を算出する方法として、買収によるリスクなどを考慮して買収額を算出するDCF法を活用するのも有効です。

消防設備工事会社のM&Aの売却相場も、過去の事例における金額の掲示が少ないため明確な相場を算出するのは困難です。

そこで企業の営業利益に時価純資産を加算し、その数値を3～5倍して売却相場を算出する時価純資産法を活用すれば大まかな相場を把握できます。

下記に時価純資産法で売却相場を算出する方法と事例を表記します。

・売却相場（企業価値評価）＝時価純資産×営業利益×3～5

例：時価純資産7,000万円、営業利益3,000万円の場合

・売却相場＝7,000万円＋3,000万円×3～5＝3億円～5憶円

消防設備工事でM&Aを行えば、どのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか。

では消防設備工事業界におけるM&Aのメリット・デメリットを買い手・売り手双方の立場から検証します。

前述のように消防設備工事業界では、労働力確保のためにM&Aを行う企業が増えていますが、他にM&Aによるどのようなメリットがあるのでしょうか。

ここからは消防設備工事のM&Aにおけるメリットを、買い手・売り手側双方の立場から紹介します。

下記に消防設備工事のM&Aにおける、売り手側のメリットを表記するので参考にして下さい。

・従業員の雇用を確保できる

消防設備工事でM&Aを行えば、従業員の雇用を確保できるのも売り手側のメリットです。

近年は業務発注先であるビルメンテナンス会社の企業選定が厳しくなり、案件を受注できずに廃業・倒産する企業も増加しています。

廃業・倒産すれば従業員も職を失いますが、業績不振に陥る前にM&Aで他社に事業を売却すれば、従業員もそのまま引き継がれて雇用を確保できます。

・顧客にサービス提供を継続できる

顧客にサービス提供を継続できるのも、消防設備でM&Aを行うメリットです。

従来からの取引が長く、お互いの信頼関係が強い顧客との付き合いがあっても、廃業・倒産すればそれ以降はサービスを提供することはできません。

そこでM&Aで他社に事業を売却すれば、顧客に対して継続的にサービスを提供できます。

消防設備工事のM&Aでは、売り手側同様に買い手側にも数点のメリットが発生します。

では下記に消防設備工事のM&Aにおける、売り手側のメリットを表記するので参考にして下さい。

・優秀な人材を確保できる

消防設備工事でM&Aを行えば、業務になれた優秀な人材を確保できるのも買い手側のメリットです。新規事業の立ち上げでは、従業員を1から指導・教育しなければいけません。

一方M&Aにより既存の事業を買収すれば、事業と一緒に業務になれた優秀な従業員もそのまま引き継ぐので、指導・教育の手間がかかりません。

・事業ノウハウやマニュアルを継承できる

事業ノウハウを継承できるのも、消防設備工事でM&Aを行うメリットの1つです。

新規事業の立ち上げであれば、事業運営に関するノウハウやマニュアルの作成が必要になります。

そこでM&Aにより既存の事業を買収すれば、現状のノウハウやマニュアルをそのまま利用できるので、効率的な運営が促進されます。

消防設備工事でM&Aを行えば、メリット同様にデメリットも発生します。

では消防設備工事のM&Aを行う際のデメリットを、売り手・買い手側双方の立場から解説します。

消防設備工事でM&Aを行えば、売り手側は経営権を失う点がデメリットです。

事業売却により、一部の事業のみを売却するのであれば特定の事業のみ経営権を失いますが、事業そのものを売却すれば経営権を完全に失います。

このような観点からも、M&Aを行う前に売却する事業の範囲を十分検討して取引を進めましょう。

想定内のシナジー効果を得られない可能性がある点が、消防設備工事でM&Aを行う際の買い手側のデメリットです。

消防設備工事業界においても、その時の情勢により市場の動向も変化します。

そして取引前にある程度のシナジー効果を見込んで買収しても、市場の動向の変化に伴って思うような成果を得られないケースも多いです。

したがってM&Aを行う際には、業界の市場動向もチェックして慎重に取引を進めましょう。

近年は多くの消防設備工事会社が自社存続のためのM&Aを積極的に展開していますが、実際にどのような手法で行われているのでしょうか。

では消防設備工事のM&Aの手法を詳しく解説します。

売り手側が経営権と株式を買い手側に売却・譲渡する方法が株式譲渡です。

株式譲渡は他のM&Aのスキームと比べて比較的簡単な手法で、基本的に取締役会の決議のみで決定されます。

株式譲渡を行えば、買い手側は売り手企業の資産や負債も全て引き継ぎ、事業と関係のない資産まで引き継ぐ可能性がある点も把握しておきましょう。

合併は複数の企業を1つに統合するスキームで、会社法により吸収合併と新設合併に分類されます。

吸収合併では売り手企業の経営権や法人格は完全になくなり、買い手企業に全ての権利が移動します。

新設合併は新規事業を立ち上げる形式で売り手企業が存続しますが、実質的な経営権は買い手側に移動するスキームです。

全ての事業を買収するのではなく、一部の事業のみを買収するスキームを事業譲渡といいます。

事業譲渡の対象はスキルやノウハウなどの無形資産、商品などの有形資産が挙げられるのが一般的です。

事業譲渡は基本的に一部の事業のみを買収したい場合や、売り手に簿外債務が発生した際に利用されます。

買い手企業に売り手企業の経営権をそのまま引き継ぐスキームを事業承継といいます。

事業承継では売り手企業の資産や事業だけでなく、理念や文化もそのまま引き継ぎます。

したがって今後の発展を促進するためにも、慎重に取引を進めましょう。

会社分割は会社の組織や人材、権利や資産などの各分野を切り離し、それぞれの分野を買い手企業が承継するスキームです。

会社分割は売り手企業が事業権を分割して買い手側が承継する吸収分割と、分割した事業権を新設会社に承継させる新設分割に分類されます。

現在は多くの消防設備工事会社が、事業シェア拡大や労働力確保のために積極的なM&Aを展開しています。

では実際に行われた消防設備工事のM&Aや売却、買収事例を紹介します。

2021年1月には消火器や消火システム、各種防災機器の製造・販売を手掛ける初田製作所が、消防設備機器の製造販売を手掛けるくおんの株式を取得して子会社化しました。

このM&Aは、初田製作所が経営基盤を強化するために手掛けた成功事例です。

2015年4月には分譲マンションを中心に、賃貸マンションやオフィスビルの建物管理事業を行う日本ハウズイングが、各種建物の工事・点検を手掛ける亜細亜総合防災の株式を取得しました。

このM&Aは、日本ハウズイングが事業における技術力向上のために行った成功事例です。

2021年9月には福岡市を中心に電気設備工事・空調給排水衛生工事業を手掛ける九電工が、消防・防災システム業を手掛ける中央理化学工業の株式を取得しました。

このM&Aは、九電工が新たな技術ノウハウを取得するために行った成功事例です。

2022年5月には電気通信や防災施設などの設備工事業を営む稲葉電気興業は、同業他社のライクスの子会社になりました。

このM&Aは、ライクスが事業シェア拡大のために行った成功事例です。

2021年6月には主に設備工事業や電気設備業を手掛けるきんでんが、電力・通信エンジニアリング事業を手掛けるフジクラエンジニアリングの株式を取得して子会社化しました。

このM&Aは、きんでんが事業範囲の拡大のために行った成功事例です。

2022年4月には消火設備をはじめとした各種防災システムの運営事業を手掛ける能美防災システムが、消防施設工事業を営む日昭設備工業の全株式を取得して子会社化しました。

このM&Aは、能美防災システムが大分県への事業進出のために手掛けた成功事例です。

2023年6月には、環境・エネルギー分野に特化したベンチャーキャピタルである環境エネルギー投資が、建物の消防設備点検業務に特化したプラットフォームを運営しているスマテンに1億3,000万円の資金提供を行いました。

このM&Aは、両社が消防設備事業強化のために行った成功事例です。

2019年8月には、アサヒホールディングスは消防設備点検や工事を手掛ける子会社の紘永工業の株式を、同業他社である永和ファシリティーズに譲渡しました。

このM&Aは、アサヒホールディングスが不採算事業を手放すために行った成功事例です。

2017年10月には各種防災設備の設計・施工・保守点検の他に、消防自動車や火災報知機などの製造・販売・仕入れを手掛ける日本ドライケミカルが、韓国でアルミニウム製消火用部材の製造を手掛ける始興金属の全株式を取得しました。

このM&Aは、日本ドライケミカルが事業における技術・ノウハウ取得のために行った成功事例です。

2020年2月には、投資ファンドの運営や経営アドバイザリー事業などを手掛けるニュー―ホライズンキャピタルが、主に消防設備事業を手掛けるウッドテックの全株式を取得して子会社化しました。

このM&Aは、ニューホライズンキャピタルが、経営基盤の強化を図るために行った成功事例です。

2019年6月には主にビル清掃や設備点検事業を手掛けるあなぶきクリーンサービスが、設備点検や建物管理事業を手掛けるテクノ防災サービスの株式を取得して子会社化しました。

このM&Aは、あなぶきクリーンサービスが東京進出のための足掛かりを作った成功事例です。

消防設備工事業界でM&Aを成功させれば、事業基盤やシェア拡大などのメリットを得ることができます。

では消防設備工事業界でM&Aを行う際の注意点を紹介します。

M&Aの目的を明確にするのも、消防設備工事のM&Aを成功させるポイントの1つです。

M&Aの目的を明確にしなければ、M&Aで改善しなければいけないポイントも抽出できないので最適な取引相手を選ぶことができません。

そして目的を明確にしないままM&Aを行い、取引完了後にも改善によるシナジー効果を得られないケースも多く見受けられます。

消防設備工事のM&Aを成功させるためにも、シナジー効果が期待できる企業に売却しましょう。

事業継続のためにM&Aを行っても、シナジー効果が期待できない企業に売却すればその後に業績不振によって倒産する可能性もあります。

M&Aでは従業員もそのまま買い手側に雇用されるので、従業員の今後の動向も考えて事前にシナジー効果が見込める企業に売却しましょう。

税金対策をしっかりと行うのも、消防設備工事でM&Aを成功させるためのポイントの1つです。

M&Aで事業を売却すれば、売り手企業には売却による所得に対して法人税や消費税、買い手企業には資産取得に対しての登録免許税や不動産取得税が課せられます。

これらの税金の支払いに関しては税務に関する専門的な知識が必要なので、税理士やM&A仲介会社に相談するのもおすすめです。

M&Aにおける相場を把握するのも、消防設備工事のM&Aを成功させるポイントとして挙げられます。

市場における相場を明確にしないまま取引を行えば、市場相場よりも低価で買収されるかもしれません。

適正な価格で売却するためにも、自社の企業価値評価を徹底して行いましょう。

また相場を把握するためにM&A仲介会社に依頼して複数社とのマッチングを行い、相見積もりで価格を比較・検討するのもおすすめです。

消防設備工事のM&Aを成功させるためにも、実績や経験が豊富なM&A仲介会社を選びましょう。

M&Aは重要な情報が交換されるうえに、多額の資金が流動する企業間取引なので手続き・交渉には法務や税務、財務に関する専門的な知識が必要です。

そのような手続き・交渉を自社で進めれば大変な時間と労力がかかってしまいます。

そこで実績や経験が豊富なM&A仲介会社に手続きや交渉を依頼すれば、豊富な知識と実績を活かしてスムーズに取引を進めてくれます。

消防設備工事でM&Aを行う際には、いくつかの点に注意しなければ取引を成功させることはできません。

では消防設備工事でM&Aを行う際の注意点を解説します。

デュ―デリジェンスを入念に行うのも、消防設備工事でM&Aを行う際の注意点の1つです。

入念なデュ―デリジェンスを行わなければ、取引完了後に売り手企業の帳簿に記載されていない簿外債務や突発債務などが発生し、想定外の負債を抱える可能性があります。

このような事態を防いで余計な支払いを防止するためにも、事前のデュ―デリジェンスを徹底しましょう。

消防設備工事のM&Aを行う際には、情報漏洩に十分注意するのも注意点の1つです。

M&Aでは売り手・買い手企業双方の重要な情報が交換され、その情報が競合他社に漏れれば収益にも関わる大変な事態に陥る可能性もあります。

そのような事態を事前に予防し、健全な取引を行うためにも売り手・買い手双方の間で機密保持契約を締結して情報漏洩を防ぎましょう。

消防設備工事のM&Aを成功させるためにも、適正価格で取引を行いましょう。

前述のように適正価格を把握するためにも、M&A仲介会社に仲介を依頼し、複数社から相見積もりをとって価格を比較・検討するのもおすすめです。

またWebサイト内には同業種のM&A事例などが掲載されている場合もあるので、それらを参考に価格設定するのも有効な手段です。

近年は少子高齢化による労働力不足や、事業シェア拡大のため多くの消防設備工事会社が積極的なM&Aを展開しています。

しかしM&Aには財務や税務、法務などに関する専門的な知識が必要なので、自社のみで取り組むのは大変な時間と労力がかかるのが現状です。

そこでM&A仲介会社などの専門家に相談すれば、専門的な知識を活かしてスムーズに取引を進めてくれるので早めの相談をご検討ください。

またM＆Aでも効率的な消防設備工事会社の売却が可能ですが、さらにスムーズな引継ぎや買収や売却を行うのであれば事業承継がおすすめです。

事業承継を活用すれば、自社親族内の後継者を擁立できれば簡単に手続きが完了します。

さらに親族や従業員内に後継者がいなくても、第三者企業から最適な後継者の擁立ができるのも事業承継のメリットです。

特に近年は事業承継に特化している仲介会社も多いので、一度利用を検討してみてはいかがでしょうか。

M&A・事業承継については専門性の高いM&AアドバイザーがいるM&Aエグゼクティブパートナーズにご相談ください。

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