訪問介護・看護業界のM&Aの最新動向は?事例から価格相場・メリットまで解説!
訪問介護・看護業界では、需要増加の一方で人材不足や競争激化といった課題に対処しなければなりません。当記事では、過去に行われた売却・買収事例に触れながら、訪問介護・看護業界のM&A動向を解説します。メリットやデメリット、価格相場も併せてチェックしましょう。
目次
訪問介護・看護業界の特色とM&Aの動向
訪問介護・看護業界は、高い需要の反面で人材不足や競争激化といった多くの課題に頭を抱えています。
ここでは業界における業務の特徴を押さえた上で、取り巻く現状課題と、多く見られるM&A動向をチェックしましょう。
訪問介護・看護業界の特色
訪問介護・看護業界では、主に 介護福祉士の国家資格を持つ職員が訪問し、利用者が必要とするさまざまな介護・看護サービスを提供する業務を担います。
具体的には、以下のようなサービスを提供するのが特徴です。
生活援助 | 掃除や洗濯、食事や買い物といった日常生活の介護 |
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身体介護 | 食事や更衣、入浴や排せつ、服薬介助といった介助サービス |
通院等乗降介助 | 乗車・降車の介助・病院での受診手続き・移動介助などのサービス |
訪問介護・看護業界の現状
訪問介護・看護業界における需要は増加しています。これは介助が必要な高齢者の増加が大きな要因です。日本の現状である少子高齢化も影響しているでしょう。
今後の需要拡大も予想される中、市場動向も注目される業界ではありますが、現状としては、深刻な人材不足や競争激化といった課題に直面しています。
課題に対処できずに廃業や休止を迫られる事例もあるのが、業界の現状です。
- 現状①:介助を必要とする利用者が増加
- 現状②:介護給費が増大している
- 現状③:競争が激化
- 現状④:有資格者の人材不足
- 現状⑤:労働賃金を上げることが難しい
訪問介護・看護業界のM&Aの最新動向
需要増の一方で多くの課題を抱える訪問介護・看護業界では、M&Aの実施動向が活発化しています。業界で多く見られる動向パターンは、以下の通りです。
- 動向①:有資格者・人材確保のためのM&A
- 動向②:AI・ロボットなど新技術導入のためのM&A
- 動向③:ドミナント戦略(地域占有率)強化のためのM&A
- 動向④:業務の効率化のためのM&A
- 動向⑤:資本力や人材に優れた大手の傘下に入るためのM&A
- 動向⑥:異業種からの訪問介護業界参入のためのM&A
訪問介護・看護業界のM&A事例
ここでは、訪問介護・看護業界で過去に行われたM&A事例を6事例紹介します。
各企業はどのような狙いから売却・買収を検討したのでしょうか。この点に注目しながら事例をチェックしましょう。
より詳しいIR情報は、各事例下部分に掲載のリンクから確認できます。
- 事例①:ケア21とmacaron
- 事例②:スカイハートとフレアス
- 事例③:アサヒサンクリーンとツクイ
- 事例④:カンケイ舎と合の家
- 事例⑤:ニチイ学館とプラティア
- 事例⑥:日本エルダリーケアサービスとソラスト
①ケア21とmacaron
売却企業 | macaron (訪問介護事業) |
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買収企業 | ケア21 (介護付有料老人ホーム・グループホーム運営事業) |
M&Aの手法 | 事業譲渡 (訪問介護事業所 1拠点の譲渡) ※対象エリア(兵庫県神戸市北区)は重点強化エリアの1つ |
M&Aの目的 | ・実績とノウハウを活かしたサービスの充実化 ・企業価値向上 ・営業規模や人員面の基盤強化 ・事業拠点の拡大 |
実施時期 | 2022年10月 |
譲渡価格 | 非開示 |
②スカイハートとフレアス
売却企業 | スカイハート (千葉県千葉市エリアの居宅介護支援事業、訪問介護事業) |
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買収企業 | フレアス (在宅マッサージサービス事業、訪問看護・介護事業) |
M&Aの手法 | 株式譲渡 |
M&Aの目的 | ・在宅マッサージとの複合サービス提供 ・千葉市における居宅介護支援・訪問介護事業参入 ・社会福祉サービスを総合的に提供できる企業を目指す |
実施時期 | 2021年3月 |
譲渡価格 | 550万円 |
③アサヒサンクリーンとツクイ
売却企業 | ツクイ (デイサービス事業、在宅事業、人材事業、リース事業) |
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買収企業 | アサヒサンクリーン (訪問入浴介護事業、居宅介護支援事業、 デイサービス・グループホーム運営事業、 福祉用具貸与事業、特定福祉用具販売事業、住宅改修事業) |
M&Aの手法 | 事業譲渡 (譲渡対象は訪問介護事業) |
M&Aの目的 | ・在宅事業の拡大 ・地域戦略の推進 |
実施時期 | 2019年12月 |
譲渡価格 | 非開示 |
④カンケイ舎と合の家
売却企業 | 合の家 (有料老人ホーム事業、訪問介護事業、 介護予防訪問介護事業、 居宅介護支援事業、 通所介護事業、障碍者自立支援事業) |
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買収企業 | カンケイ舎 (居宅介護支援事業、訪問介護事業、 通所介護事業、 福祉用具貸与・販売事業) ※インターネットインフィニティーの完全子会社 |
M&Aの手法 | 事業譲渡 (譲渡対象は住宅型有料老人ホーム運営事業) |
M&Aの目的 | ・既存ノウハウの相互作用による収益拡大 ・グループ企業価値の向上 |
実施時期 | 2022年10 月 |
譲渡価格 | 2億8,200万円 |
⑤ニチイ学館とプラティア
売却企業 | プラティア (介護付有料老人ホーム・グループホーム デイサービス事業、訪問介護・居宅介護支援サービス事業) |
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買収企業 | ニチイ学館 (医療関連事業、介護事業、保育事業、ヘルスケア事業、 教育事業、セラピー事業、グローバル事業) |
M&Aの手法 | 株式譲渡 |
M&Aの目的 | ・介護ネットワークの融合 ・地域に根差したトータル介護サービスの提供 ・地域包括ケアの提供 |
実施時期 | 2022年3月 |
譲渡価格 | 非開示 |
⑥日本エルダリーケアサービスとソラスト
売却企業 | 日本エルダリーケアサービス (首都圏を中心とした訪問介護・居宅介護支援事業、 通所介護施設運営事業) |
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買収企業 | ソラスト (医療関連受託事業、介護事業、保育事業) |
M&Aの手法 | 株式譲渡 |
M&Aの目的 | ・サービスポートフォリオ向上 ・地域トータルケアの提供 ・経営ビジョンの実現 |
実施時期 | 2020年8月 |
譲渡価格 | 23億7,500万円 |
訪問介護・看護業界のM&Aのメリット・デメリット
訪問介護・看護業界のM&Aにおけるメリットとデメリットを解説します。
M&Aは多くの恩恵が受け得られますが、もちろん注意すべきデメリットも存在します。両方をバランスよく把握した上で手続きを行ってください。
メリット
まずはメリットを確認しましょう。売却側・買収側それぞれの視点に分けて解説します。
売り手側
訪問介護・看護業界のM&Aにおける売却側のメリットは、以下の通りです。
売却側のメリット | ・後継者問題を解決できる ・大手傘下に入れば経営を安定化させられる ・従業員の雇用を維持できる ・売却益を得られる ・経営者が個人債務から解放される |
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買い手側
訪問介護・看護業界のM&Aにおける買収側のメリットは、以下の通りです。
買収側のメリット | ・訪問介護・看護業界に低コスト・低リスクで参入できる ・ノウハウ共有により効率的に事業拡大できる ・事業エリアや拠点を増やせる ・介護に必要な資格者・人材を獲得できる ・売却側とのシナジー効果が期待できる |
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デメリット
次にデメリットを確認しましょう。こちらも売却側・買収側の視点ごとに解説します。
売り手側
訪問介護・看護業界のM&Aにおける売却側のデメリットは、以下の通りです。
売却側のデメリット | ・理想通りの条件にならない場合がある ・従業員が困惑し退職するおそれがある ・会社経営における影響力が小さくなる ・取引先との関係が悪化する可能性がある |
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買い手側
訪問介護・看護業界のM&Aにおける買収側のデメリットは、以下の通りです。
買収側のデメリット | ・売却側従業員が待遇に不満を抱くおそれがある ・買収資金の調達が必要 ・期待したシナジー効果が得られない場合がある ・簿外債務やリスクを引き継ぐおそれがある |
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訪問介護・看護業界のM&Aの買収・売却価格相場
訪問介護・看護業界では、どの程度のM&A相場を想定すれば良いのでしょうか。
ここでは、訪問介護・看護業界におけるM&A価格の相場で知っておきたいポイントと、算出方法を簡単に解説します。
価格相場
訪問介護・看護業界のM&Aには、明確な売却・買収額相場がありません。
会社規模や事業、M&Aで期待できるシナジー効果の大きさ、収益性などあらゆる項目によって取引価格が変動するためです。
価値の算出方法
ただし以下のような計算式を用いて、大まかな相場を算出することはできます。
M&A価格相場の算出方法 |
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M&A相場 = 時価純資産 + 営業利益 × 2~5年分 |
相場を求める際は、のれん代と呼ばれる見えない企業価値の評価が必要です。高度な知識が求められるので、専門家に依頼して算出しましょう。
また、最終的な取引金額は当事者の交渉で決定します。算出した相場と差が生じる可能性もあるので注意してください。
訪問介護・看護業界のM&Aの手順
ここでは、訪問介護・看護業界のM&Aにおける手続きの流れを、戦略策定からクロージングまで8つのステップに分けて解説します。
基本的には他の業種も共通なので、異業種でM&Aを検討中の場合も参考にしてください。
- 戦略策定
- 委託契約
- 本格的な戦略策定
- 会社売却・買収の手続き
- 基本合意書の締結
- デューデリジェンス
- 最終条件交渉・契約締結
- クロージング
①戦略策定
M&Aで最初に行われるのが、戦略策定です。
自社状況を分析し、どのような目的で売却・買収を実施するのか方向性を定めましょう。相手企業に提示する条件もまとめます。
②委託契約
M&Aの方向性が決まったら、M&A仲介会社に依頼しましょう。
個人で進める方法もありますが、専門知識が多く求められるのであまりおすすめできません。この際の委託契約はアドバイザリー契約とも呼ばれます。
③本格的な戦略策定
M&A仲介会社のサポートを受けながら、より本格的な戦略策定を進めます。
企業情報や売却価格などの資料データをもとに、今回のM&Aにふさわしい相手企業とのマッチングを目指しましょう。
④会社売却・買収の手続き
相手企業が決まったら経営者会談を重ね、売却・買収の手続きを行います。
会社の理念や経営の方向性の相互理解だけでなく、自社従業員のM&A後の処遇といった不安要素もしっかり確認しましょう。
⑤基本合意書の締結
次に、当事者間で基本合意書を締結します。
書類にはスケジュール、手法、取引する株式の種類と数量、金額、支払方法といった項目を記載するのが一般的です。基本合意書は法的拘束力を持ちません。
⑥デューデリジェンス
次に、デューデリジェンスが執り行われます。
デューデリジェンスとは、売却側の財務状況や資源、負債やリスクといったあらゆる項目を調査するプロセスです。主に専門家に依頼して実施されます。
⑦最終条件交渉・契約締結
デューデリジェンスが終わったら、いよいよ最終条件交渉と契約締結です。
基本合意書の内容とデューデリジェンス結果を基に詳細条件を調整しましょう。最終契約書は法的拘束力を持つので、条件を今一度入念に確認してください。
⑧クロージング
訪問介護・看護業界のM&Aを成功させるポイント
ここでは、訪問介護・看護業界のM&Aを成功させるためのポイントを紹介します。
少しでも有益な売却・買収に繋げるためにも、以下5つの項目に留意しながら検討・準備を進めましょう。
- 成功へのポイント①:事前の準備をしっかりと行う
- 成功へのポイント②:契約内容をしっかりと確認する
- 成功へのポイント③:自社の強みをアピールする
- 成功へのポイント④:M&Aの目的を明確にする
- 成功へのポイント⑤:M&Aの専門家に相談する
事前の準備をしっかりと行う
成功させるポイント1つ目は、事前の準備をしっかり行うことです。
経営状況の悪化など問題が起きてから焦ってM&Aを進めると、契約面でのトラブルにつながるリスクが高まります。
できるだけ経営が安定しているタイミングから、計画を立てましょう。
契約内容をしっかりと確認する
成功させるポイント2つ目は、契約内容をしっかり確認することです。
M&Aの契約は、双方が合意できる内容でなければなりません。トラブルを最小限に抑えるためにも締結前にチェックを欠かさず行いましょう。
譲歩できる条件、譲れない条件をあらかじめ決めておくのもおすすめです。
自社の強みをアピールする
成功させるポイント3つ目は、自社の強みをアピールすることです。
一度客観的に自社の得意分野を分析し、過去実績と共に資料にまとめておくことをおすすめします。
アピールポイントが明確な会社は、マッチングの確率が高くなるでしょう。
M&Aの目的を明確にする
成功させるポイント4つ目は、M&Aの目的を明確にすることです。
どのように現状打破を図りたいのかを決め、効果が得られる可能性の高い相手企業とマッチングする必要があります。
漠然とした状態で行うM&Aは、かえって損失になるかもしれません。
M&Aの専門家に相談する
成功させるポイント5つ目は、M&Aの専門家に相談することです。
M&Aは、多大な労力がかかるだけでなく税務や法務といった専門知識が多くの場面で求められます。
訪問介護・看護業界の実績がある経験豊富なM&A仲介会社に依頼しましょう。
訪問介護・看護業界のM&Aは専門家に相談しよう!
M&Aは効率的に現状打破が図れるので、多くの企業で検討・実施されています。
訪問介護・看護業界は、高い需要の反面人材不足や競争激化に対処しなければなりません。そんな中M&Aは、有効な対処法の1つです。
M&A仲介会社のサポート・アドバイスを受けながら、少しでも有益性の高い売却・買収を目指しましょう。
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