障害者福祉のM&A事情を徹底解説!事例や相場・メリット・デメリットは?
現在は自社サービスの承継や拡大化のため、M&Aに積極的に取り組む障害者福祉サービス事業者が増加しています。そこで本記事では障害者福祉におけるM&A事情を徹底的に解説し、事例や相場、メリットやデメリットも紹介します。
目次
障害者福祉の現状とM&Aの動向
近年の日本における障害者数は増加し続ける一方で、その動向に伴って障害福祉サービス事業者の利用者も増加しています。
そして利用者の増加の動向に伴って障害福祉サービスの運営に必要な予算も急増し、平成20~30年の10年間の間に2倍にも膨れ上がりました。
また障害者福祉業は現在慢性的な人員不足に悩まされているうえに、障害者1人にかかる月額費用相場の動向も増加しているのが現状です。
このように人材不足や経費的な観点から運営が厳しくなる事業者も多く、M&Aにより生き残りを計るケースも多く見受けられます。
障害者福祉業界とは
障害者福祉業界は取り組む事業内容により、2つの異なった動向のサービスに分類されます。
下記に障害者福祉業界の2種類のサービス・事業を表記しますので参考にして下さい。
・地域生活支援事業:利用者の症状・状況に応じてサービスを柔軟に変更可能で、地域自治体の指導によって行われるサービス
・障害福祉サービス:障害の程度や障害者の状況や動向(住居の様子・保護者)を考慮して補助金支給額が決定されるサービス
上記の内の障害福祉サービスにおいて障害者が訓練などの支援を受給する際には「訓練等給付」、介護支援を受給する場合には「介護給付」として支給されます。
障害者福祉業界の今後の課題
前述のように障害者福祉業界は慢性的な人員不足に悩まされているうえに、利用者のケアにかかる費用相場も増加傾向にあります。
このような動向を踏まえ、長期的な視野での人材教育を行いながらも生産性やサービスの品質を向上させることが今後の課題といえるでしょう。
具体的な活動として職員の職場環境の改善や、モチベーションを向上させるための施策を実行していくことが重要と考えられます。
また障害者福祉業界の職員の賃金の動向は他業種の賃金よりも低めに推移しており、賃金改定も関する施策も重要な課題といえます。
障害者福祉業界のM&Aは増加傾向
現在は中小規模の障害者福祉サービスで倒産や廃業が急増していますが、一方で大手や中堅障害者福祉サービスのM&Aが増加しています。
その主な理由は、事業規模を拡大させて更なる利益を獲得する点で、今後も引き続きこのようなM&Aが増加する動向が見込めるでしょう。
さらに近年は異業種から障害者福祉業界のM&Aに参入する動向も多く、今後業界内の競争が激化する動向が強くあります。
また障害者福祉業界は事業内容的に倒産や廃業が難しく、そのような手段ではなくM&Aにより他社に事業譲渡を行う動向のケースも多く見受けられます。
障害者福祉業界でのM&Aの事例
近年多くの障害者福祉事業者が事業拡大や譲渡のために積極的にM&Aを行っています。
では今までに障害者福祉業界で実際に行われたM&Aの事例を紹介します。
こころネットによるNPO法人エルタとのM&A
2021年1月には介護事業や障害福祉事業を手掛けるNPO法人エルタが、こころネットの介護事業子会社である「こころガーデン」の事業をM&Aにより買収しました。
こころガーデンは福島市内で高齢者向け住宅の運営の他に訪問介護や通所介護、居宅介護支援サービスなどを手掛けるサービスです。
このM&Aは、NPO法人エルタが障害者福祉サービスの効果を計ることに成功した事例です。
朝日インテックによるフィカスとのM&A
2018年には、名古屋で障害福祉サービス事業を手掛けるフィカスが株式譲渡により朝日インテックに完全子会社化されました。
このM&Aは朝日インテックがフィカスを子会社化することにより、社会福祉事業分野をさらに強化した事例です。
ソラストによるファイブシーズヘルスケアとのM&A
2020年9月には関西エリアに19もの事業所を展開し、2003年から介護サービスを手掛けていたファイブシーズヘルスケアがソラストによって子会社化されました。
ソラストは全国規模で障害福祉サービスを展開する企業です。このM&Aはソラストが、関西エリアでの経営基盤を固めるために行った事例です。
メディカル一光グループによるライフケアとのM&A
2020年10月には三重県に本社を構え、主に調剤薬局事業を手掛けているメディカル一光が愛知県で14もの住宅型老人ホームを運営していたライフケアを子会社化しました。
このM&Aは、メディカル一光グループがヘルスケア分野への事業拡大を計った事例です。
ひらいルミナルによるヒーライトねっとのM&A
2021年4月には主に障害福祉サービスを手掛けるヒーライトねっとが、同業他社であるひらいルミナルによって事業譲渡されました。
このM&Aは、ひらいルミナルが多様な障害福祉サービスを導入することを目的とした事例です。
閑谷福祉会による浜っ子とのM&A
2021年12月には主に障害福祉サービスを提供している浜っ子が、同業他社である閑谷福祉会により事業譲渡されました。
このM&Aは浜っ子が手掛けていた生活支援・介護、就労継続支援B型、居宅介護などの事業を引き継ぎ、事業拡大を目的とした事例です。
障害者福祉業界でのM&Aの費用の相場
近年は自社の事業拡大や事業承継のためにM&Aに取り組む障害者福祉事業者の事例も多くありますが、どのような手法でM&Aにかかる費用を算出するのでしょう。
そこでここからは、障害者福祉業界でのM&Aの費用相場の算出方法を紹介します。
将来の収益獲得能力を予測し算定
障害者福祉業界のM&Aで確かな費用相場を算出するためにも、買い手企業側は売り手企業側の収益獲得能力を予測して相場を算出しなければいけません。
特に現状での資産や収益力だけに注力して費用相場を算出しても、M&A後のシナジー効果を計測したうえでの相場の算出は不可能です。
さらにM&Aでは事業譲渡・買収後多大なシナジー効果を得られる事例もあり、結果的に莫大な利益が生まれる場合もあります。
一方でM&Aの取引開始時にこれらの効果を考慮せずに低価格で交渉に臨めば、損をする可能性も高くなるので注意して相場を算出しましょう。
M&A専門の仲介会社に依頼するのがおすすめ
障害者福祉業界でのM&Aでの費用を算出する際には、M&A専門の仲介会社に費用算出を依頼するのもおすすめの方法です。
自社の資産や収益性を検討し、譲渡・売却の金額を算出しようと考えても将来的なシナジー効果を検討しての算出は困難でしょう。
また費用相場の算出には法務や税務に関する専門的な知識も必要になり、自社のみの対応が困難な場合もあります。
一方でM&A専門の仲介会社は今までに無数のM&Aの実績があるので、依頼すれば過去の実績と照らし合わせながら適切な金額を提示してくれます。
またM&A専門の仲介会社には法務や税務に関する専門的な知識を持ったスタッフが在籍しており、それらの知識を活用して確かな価格の算出が可能です。
障害者福祉業界でのM&Aのメリット・デメリット
障害者福祉業界でM&Aを行えば、効率的な事業拡大や事業譲渡が促進されますが他にどんなメリットやデメリットがあるのでしょうか。
そこでここからは、障害者福祉業界における売却側企業と買収側企業のそれぞれのメリット・デメリットを紹介します。
売却側企業のメリット
障害者福祉業界における売却側企業のメリットを下記に表記します。
・後継者問題の解消
・業績改善
・売却益の取得
・周辺地区の障害福祉事業の促進
・将来的な不安要素の解消
事業全体の先行きの見通しが立てにくい中小障害福祉事業者においては、事業主も自社の将来性に関して不安を感じることもあります。
そこでM&Aを活用した事業譲渡を行えば、売却益の取得や業績改善に繋がると同時に将来的な不安から解放されるのもメリットです。
また後継者不足に悩んでいた障害者福祉事業社においても、M&Aを行えば買い手企業が後継者になり、後継者不足が解消されるのもメリットといえます。
売却側企業のデメリット
障害者福祉業界における売却側企業のデメリットには下記の2点が挙げられます。
・従業員や経営陣が流出してしまう
・事業全体の運営方針が変わってしまう
障害者福祉業界でM&Aを行えば複数のメリットを得ることができます。
しかしその一方で経営陣が交替し、運営方針が変わることで従業員が変化に耐えられず、人材が流出する可能性が高くなるのがデメリットです。
また運営方針の変化により、従来顧客との関係性も崩れてしまう可能性もあります。
買収側企業のメリット
障害者福祉業界における買収側のメリットを下記に表記しますので参考にして下さい。
・開始当初から利益を得ることができる
・現状の従業員をそのまま雇用できる
・施設や設備を引き継いで初期費用を抑えることができる
・顧客をそのまま引き継ぐことができる
一般的に障害者福祉事業を始める際には設備にかかる初期投資が必要ですが、M&Aを行えば施設や設備ごと取得できて費用を抑えることができる点もメリットです。
また事業を開始すればスタッフの教育や新規顧客獲得に時間や費用がかかってしまいます。
一方M&Aを活用して現状で営業している事業を引き継げば、最初から経験値の高いスタッフを獲得できるのもメリットといえます。
買収側企業のデメリット
買収側企業のデメリットには下記の4点が挙げられます。
・退職者が増えてしまう。
・顧客が離れてしまう
・買収後に必ず利益を得られるとは限らない
・事業の運営方針を決定しなくてはならない
障害者福祉事業のM&Aは、当然ながら売り手企業と買い手企業との事業が統合されるので1つの事業としての運営方針を固めなければいけません。
一方で迅速に運営方針を固めようと思っても、意見の食い違いにより運営方針が決まらずに事業全体に支障が出る点もデメリットです。
また買収企業側の決めた方針に納得できず、売却企業側の従業員が退職する可能性も高くなります。
さらに実際にM&Aを行っても、買収完了後に経営が軌道に乗らずに軌道修正に時間がかかる可能性がある点もデメリットです。
障害者福祉業界でのM&Aを成功させるポイント
近年は収益性の向上や後継者問題の解消などの観点から、M&Aを行う障害者福祉事業が増えています。
では実際の取引時にどのようなポイントに注意すれば、M&Aを成功させることができるのでしょう。
法人譲渡か事業譲渡か
障害者福祉事業のM&Aを成功させるためには、法人譲渡か事業譲渡かを明確にしなければいけません。
法人譲渡とは障害者福祉サービスを手掛けている企業全体を、買収企業側が取得することを意味しています。
例えば株式会社の法人譲渡を行う際には、売却企業側の株式を売買譲渡で取得すれば法人譲渡は完了です。
一方の事業譲渡は企業全体でなく、1つか複数の事業を買収する手続きを指します。
そして事業譲渡を進める場合には旧事業所の廃止や新事業所の指定申請手続きが必要になる点も把握しておきましょう。
法人外への対価性のない支出は認められていない点に注意する
障害者福祉事業でのM&Aを成功させるために、法人外への対価性のない支出は認められていない点にも注意しなければいけません。
そしてM&Aを成功させるためにも、支払い対価の関係性において売却側・買収側はそれぞれが以下の点に注意する必要があります。
・売却企業側:自社の売却金額や価値を見積もり、最低でもその価格以上の受取対価でなければ法人外への対価性のない支出と認識される
・買収企業側:買収する事業の金額や価値を見積もり、最低でもその価格以上の支払対価でなければ法人外への対価性のない支出と認識される
行政機関と連絡を取りながらすすめる
障害者福祉事業でのM&Aの取引では、独立行政法人福祉医療機構や民間の借り入れ業務にかかる手続きや、所轄庁の公認などさまざまな手続きが必要です。
したがってスピーディーに取引を進行・完了させるためにも、行政機関と綿密な連絡を取り合いながらM&Aを進めましょう。
従業員や施設利用者への説明
事業所内の従業員や施設利用者に無断でM&Aを行えば、必然的に混乱を招いてスムーズな手続きが妨げられる可能性が高くなります。
このような事態を予防して障害者福祉事業でのM&Aを成功させるためにも、従業員や施設利用者に事前に取引の有無を説明しておきましょう。
M&A専門の仲介会社に依頼する
障害者福祉事業でのM&Aを成功させるためにも、M&A専門の仲介会社に依頼するのも重要なポイントの1つです。
M&Aには法務や税務、財務に関する専門的な知識が必要で、自社のみで対応するには困難な場合があります。
一方でM&A専門の仲介会社はM&Aの手法に詳しいうえに、法務や税務、財務に関する詳しい知識を持ったスタッフが在籍しているので、依頼すればスムーズに取引を進めてくれます。
障害者福祉業界でのM&Aは専門家の助けを得ながら行う
近年は多くの障害者福祉事業が、自社利益の拡大化や事業承継のために積極的にM&Aに取り組んでいます。
一方で他業種のM&A同様に障害者福祉事業のM&Aでは法務や財務、税務に関する専門的な知識が必要なうえに確かなスキームを選択しなければいけません。
したがってM&Aを確実に成功させるためにも、専門家の助けを得ながら確実に取引を進めましょう。
またM&Aでも効率的に障害福祉業界における事業引継ぎを行うことができますが、さらにスムーズな引継ぎを行うのであれば事業承継がおすすめです。
事業承継を活用すれば、自社親族内の後継者を擁立できれば簡単に手続きが完了します。
さらに親族や従業員内に後継者がいなくても、第三者企業から最適な後継者の擁立ができるのも事業承継のメリットです。
特に近年は事業承継に特化している仲介会社も多いので、一度利用を検討してみてはいかがでしょうか。
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