食品製造業界のM&Aをチェック!売却価格の事例やメリットまで解説!
私たちの生活に欠かせない「食」を提供してくれる食品製造業界では、M&Aを実施する動きが見られています。この記事では食品製造業界のM&Aを詳しく解説します。過去に行われたM&Aの事例を中心に、メリットやポイント、手続きの流れをチェックしましょう。
目次
食品製造業界の現状とM&Aの動向
まず、食品製造業界の現状とM&Aの関係性を理解しましょう。
食品製造業界の企業は、M&Aを実施する傾向にあると言われていますが、どのような背景があるのでしょうか。
食品製造業界とは
食品製造業界は、原材料を用いて加工食品や飲料、調味料、お菓子などを製造する業種のことです。
高品質な商品開発や研究、流通から提供まで行い、私たちの生活に欠かせない「食」を提供します。
スーパーマーケットで私たちが見かける商品の多くが、食品製造業界で作られているものです。
食品製造業界の現状
食品製造業界では、円安に起因する輸入材料費の高騰が見られます。
健康にも注目が集まり、健康食品のニーズや安全性の高い商品が求められるようになりました。
また、TPPによる関税率低下も影響を与える業界です。
競争が激化する中では、価格・質の両方で顧客から満足される商品を作らなければなりません。
高齢者が増え宅配サービスの需要も増える傾向にあります。
デジタルサービスへの対応も含め、食品に新たな価値が求められるのが現状です。
M&Aにより事業再生および海外進出の傾向
食品製造業界では大手企業がM&Aで海外進出をはかる傾向があります。
一方で中小企業は、M&Aで事業再生を行う傾向にあるのが特徴です。原材料費の高騰が大きな理由です。
メーカーは、価格高騰に加え競争が激化した中で生き残らなければなりません。
それをM&Aによる企業間の協力で対処しようとする中小企業が、多く見られるようになりました。
食品製造業界でのM&Aの事例
では実際に食品製造業界で行われたM&A事例を確認しましょう。
会社が持つ食品製造技術やブランド、顧客といったリソースを活用すれば、さらなる事業拡大を狙えます。
事例ごとのM&A方式・目的に注目しながら読み進めてください。
味の素とおいしい健康の資本業務提携
味の素とおいしい健康の事例です。
味の素は、AIで健康的な食事レシピを提案するサービスを提供する企業おいしい健康と資本業務提携しました。
味の素が持つ「食とヘルスケア事業の経験」とおいしい健康が持つ「デジタル技術」を連携させた事業発展が主な目的です。
実施時期 | 2022年1月 |
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M&Aの方式 | 資本業務提携 |
M&Aの目的 | 両者の技術・経験を相互活用するため |
不二製油と通販サイト運営cottaの資本業務提携
植物性油脂やチョコレートなどの食品素材を製造する不二製油は、パンやお菓子の通信販売事業を行うcottaと資本業務提携を実施しました。
レシピ発信やインフルエンサー・コミュニティの開拓を行い、消費者との接点を強めるのが目的です。
また、今注目されている植物性食品の需要・認知拡大も目指します。
実施時期 | 2022年5月 |
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M&Aの方式 | 資本業務提携 |
M&Aの目的 | レシピ情報の発信 インフルエンサーの開拓とコミュニティの創造 植物性食品への認知と需要拡大 商品の共同開発 |
味の素によるモア・ザン・グルメ・ホールディングス社の買収
大手粉末調味料メーカーの味の素が、アメリカのオハイオ州にあるモア・ザン・グルメ・ホールディングス社(MTG社)を子会社化した事例です。
MTG社は、液体の調味料メーカーとして知られ、味の素は北米での販路拡大を目指します。
この事例における譲渡価格は、約38億円です。
実施時期 | 2019年8月 |
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M&Aの方式 | 株式譲渡 |
M&Aの目的 | 北米での販路拡大 |
塩野義製薬による宝ヘルスケアの吸収合併・タカラバイオ健康食品事業の承継
塩野義製薬の子会社シオノギヘルスケアが宝ホールディングス傘下の宝ヘルスケアを吸収合併、同じく傘下のタカラバイオを事業承継した事例です。
塩野義製薬は、宝ヘルスケアが持つシニア層向け商品の開発技術に注目しました。
今後見込まれる超高齢化社会に対応すべくシニア層向けの事業を強化するのが狙いです。
実施時期 | 2019年1月 |
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M&Aの方式 | 吸収合併 事業承継 |
M&Aの目的 | シニア向け健康増進事業の強化 |
小林製薬による梅丹本舗の買収
こちらは小林製薬が老舗健康食品メーカーの梅丹本舗を、株式譲渡で子会社化した事例です。
小林製薬が持つ商品開発力・独自のマーケティング力と梅丹本舗の懸鼓食品事業を連携させ、事業拡大・売上拡大を目的としています。
実施時期 | 2019年5月 |
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M&Aの方式 | 株式譲渡 |
M&Aの目的 | 健康食品事業の強化 マーケティング戦略を活用した売上拡大 |
山崎製パンによるBAKEWISE BRANDS社の買収
大手食品メーカーの山崎製パンが、アメリカのBakewise Brands(ベイクワイズ・ブランズ)を子会社化した事例です。
山崎製パンは既にアメリカで事業を展開していましたが、さらなる事業拡大と、双方の製パン技術を活かした商品開発を主な目的としています。
実施時期 | 2016年7月 |
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M&Aの方式 | 株式譲渡 |
M&Aの目的 | アメリカでの事業拡大 両社の技術を活用した商品開発 |
ブロンコビリーの松屋栄食品本舗完全子会社化
ステーキ・ハンバーグレストランで知られるブロンコビリーが、調味料・惣菜メーカーの松屋栄食品本舗を子会社化した事例です。
松屋栄食品本舗の技術を活用してブロンコビリーの自社製造品目(オリジナルソースなど)を増やし、差別化を図ることを主な目的としています。
実施時期 | 2022年7月 |
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M&Aの方式 | 株式譲渡 |
M&Aの目的 | 自社ブランドの認知強化 自社開発商品による差別化 |
不二製油によるBLOMMER CHOCOLATE COMPANY社の買収
こちらも不二製油の事例です。
アメリカの大手チョコレートメーカーBlommer Chocolate Companyを子会社化しました。
不二製油の油脂・原材料調達力をチョコレート製造に活かした事業拡大とシナジー効果の強化が主な目的です。
取引価格は、約848億円とされています。
実施時期 | 2019年1月 |
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M&Aの方式 | 現金を対価とする逆三角合併方式 |
M&Aの目的 | シナジー効果の強化 |
食品製造業界でのM&Aのメリット
食品製造業界でM&Aを行う場合に得られるメリットを確認しましょう。
売却側企業のメリットと、買収側企業のメリットそれぞれ紹介します。
売却側企業のメリット
食品製造業界でM&Aを行う際、売り手企業が得られるメリットは以下の通りです。
売却側のメリット | 販路を拡大できる 売却益が得られる 収益性を強化できる 海外進出できる可能性がある 後継者問題を解決できる |
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特に、後継者問題は中小企業で多く見られます。
M&Aで事業を引き継げば、築き上げた技術やノウハウが今後も活かされる点は大きなメリットです。
買い手が海外進出を狙っている場合は、その技術や資源が海外で活躍するかもしれません。
買収側企業のメリット
食品製造業界のM&Aで、買い手側企業が得られるメリットは次の通りです。
買収側のメリット | 新しい拠点を獲得できる 新しい商品を提供できる 事業拡大を狙える 事業エリアを増やせる |
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売り手側企業の保有するノウハウと技術を活用すれば、事業拡大を狙えます。
新しいカテゴリの商品生産ノウハウや設備も獲得できれば、閑散期の収益リスクを軽減させられる点もメリットです。
食品製造業界がM&Aを成功させるためのポイント
M&Aは、売却側企業も買収側企業も一大イベントです。
今後の経営にかかわる大きなイベントですから、成功に結び付けなければなりません。
ここでは、食品製造業界がM&Aを成功させるために考慮したいポイントを3つ紹介します。
- ポイント① 販売チャネル
- ポイント② 製造工場の立地と魅力
- ポイント③ 高値で取引できる時を狙う
販売チャネル
1つ目のポイントは、販売チャネルです。
売却側企業が持つ販売チャネルをうまく活かせば、事業拡大の効率が上がるでしょう。
例えば海外で進出を狙う場合、0から構築するよりも、会社が持つ独自の販売経路を利用できます。
相手企業の販売チャネルを買収側企業がどのように活かせるのか、慎重に分析すると良いでしょう。
製造工場の立地と魅力
2つ目のポイントは、製造工場の立地と魅力です。
買収側企業にとって、売却側企業の製造工場がある場所の調査は欠かせません。
事業拡大を考える場合、理想エリアをカバーできるのか考慮した上でM&Aを行いましょう。
特に食品なので、製造した商品をスピーディに配送できる場所でなければなりません。
また、その土地の地域性を分析し商品開発に活かせる点があるか慎重に検討することもおすすめします。
高値で取引できる時を狙う
3つ目のポイントは、M&Aを実施するタイミングです。
売却側企業は、自社の事業内容に客観的価値があるときに取引しましょう。
製造する商品が注目されていたり、需要が多かったりする際は買収側も魅力に感じます。
買収側のニーズが高まるタイミングなら、高値でM&A取引ができるでしょう。
食品製造業界でのM&Aを行う手順
ここでは、M&Aを行う手順を紹介します。
相談からクロージングまで一般的な流れを確認しましょう。
M&Aは専門知識が問われる項目が多いので、M&A仲介業者への依頼も視野に検討を進めてください。
①M&A仲介業者への相談と戦略策定
最初のステップは、M&A仲介業者への相談です。この中でM&Aの実施目的や方向性を決めてください。
M&Aの手続きは専門的な知識が非常に多いので、個人で行うよりもM&A仲介業者の力を借りる方が良いでしょう。
M&Aの情報が流出しないようにするため、秘密保持契約を締結するのが一般的です。
M&A仲介業者に依頼する場合はアドバイザリー契約も取り交わします。
②交渉相手の選定
次は、M&Aの交渉相手選定です。
M&A仲介業者は、売却側企業から受け取った資料をもとに候補企業を探します。
このとき資料に書かれた内容が重要な要素になるので、正しい情報を記載するのがポイントです。
③条件交渉
候補企業が見つかったら、具体的なM&Aの条件交渉を行います。
売却側と買収側双方の経営者が交渉するのが一般的です。
スケジュールや取引価格、方法、デューデリジェンスなどを含め、基本合意書を作成します。
デューデリジェンスとは、売却側企業の財務状況や資源、取引先や顧客、従業員、負債、リスクなどあらゆる項目を調査することです。
④最終契約締結とクロージング
デューデリジェンスが問題なく完了したら最終契約を取り交わし、クロージングを行います。
基本合意書とデューデリジェンスの結果をもとに、最終条件を調整してまとめましょう。
当事者双方がしっかり合意できる内容であることが、トラブルを防ぐためのポイントです。
株式の提供と対価の支払いが行われることでクロージングとなり、一連の手続きは完了です。
食品製造業界でのM&A売却価格
食品製造業界のM&Aでは、一体どのようにして取引価格が決められているのでしょうか。
ここでは、食品製造業界のM&Aにおける売却価格について解説します。
企業価値評価を軸に計算される
食品製造業界の価格は、企業価値評価を軸に計算されるのが一般的です。
これに加えて最終的な交渉内容も加味されるので、一概に決まった相場はありません。
企業価値評価は、3種類の方法があります。
直接的に収益性を見積もるインカムアプローチ、市場評価をもとに算出するマーケットアプローチ、そして純資産額を基に算出するコストアプローチです。
売却価格に影響する要因
M&Aの売却価格は、さまざまな要素が影響を与えます。
一般的に影響を与える要素とされているのは以下の通りです。
- 売却側企業の財務状況
- 見込まれるシナジー効果の大きさ
- 市場の動向
- 競合優位性
食品製造業界の事業再生のためM&Aを成功させよう
食品製造業界では、物価高騰や競争力の激化といった理由から事業再生を狙うM&Aが行われています。
過去に行われた事例やポイントを参考にしながらM&Aのビジョンを立て、目的を達成できるM&Aを実現させてください。
その際はぜひM&A仲介業者のサポートを得ながら、効率の良いM&Aを目指しましょう。
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