IT業界におけるM&Aの動向を徹底解説!事例や取引相場・メリットは?
IT業界では、新技術や後継者不在などの課題にM&Aで対処をする動向が各企業で活発です。当記事では、過去に行われた売却・買収事例を踏まえながらIT業界のM&A事情を解説します。メリットやデメリット、取引相場や成功のためのポイントも併せてチェックしましょう。
目次
IT業界の現状とM&Aの動向
IT業界では、M&Aで自社が抱える課題や環境に対応する動向が多く見られます。
ここではIT業界の特性と現状を押さえた上で、多くの企業で見られるM&A動向・パターンを解説します。
IT業界の特性
IT業界は、主にコンピュータをはじめとする情報技術を駆使した事業やサービス提供を行う業界です。「IT」はInformation Technologyを意味します。
ITは非常に広範囲な定義なので、もう少し細かく業種を解説します。
IT業界には、主に以下のような事業が存在します。
- ソフトウェア開発
- Webサービス開発
- セールスマーケティング
- システム設計・開発
- プログラミング
- インターネット広告
- AIエンジニアリング
- 通信インフラ整備・保守・運用
IT業界の現状
IT業界は、経営者高齢化や人口減少、新技術への対応を迫られる状況にあります。
しかし中小企業の多くは、自社で課題解決できる資金力が十分ではないのが現状です。
IT業界で生き残るためには、これらの課題を解決できるかが各企業に求められます。
IT業界のM&Aの動向
そこで上記の課題を解決すべく、多くのIT企業でM&Aを実施しています。
IT業界で見られる主なM&Aパターンは、以下の通りです。
- 動向①:新技術・事業環境に対応するためのM&A
- 動向②:多重下請け構造から脱却するためのM&A
- 動向③:経営者の高齢化によるM&A
- 動向④:人材獲得のためのM&A
- 動向⑤:海外進出のためのM&A
- 動向⑥:AIやロボット技術を獲得するためのM&A
IT業界のM&Aの活用事例
では、IT業界で過去に行われたM&A事例を7つ紹介します。
M&A動向が活発化するIT業界では、各企業はどのような目的で売却・買収を実施したのでしょうか。この点に注目しながら事例をチェックしましょう。
詳しいIR情報は、各事例の下に掲載のリンクから参照できます。
- 事例①:フィードフォースとアナグラム
- 事例②:ケイ・テクノスと西日本電話工事
- 事例③:PKSHA Technologyとアシリレラ
- 事例④:SONYとバンジー
- 事例⑤:サンロフトとS’PLANT
- 事例⑥:オリックスと弥生
- 事例⑦:LINEとYahoo!Japan
①フィードフォースとアナグラム
売却企業 | アナグラム (コンサルティング事業、広告運用代理事業、 マーケティング支援事業) |
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買収企業 | フィードフォース (デジタルマーケティングの関連ツール提供事業) |
M&Aの手法 | 株式譲渡 |
M&Aの目的 | 高度なマーケティング支援体制の共同開発・構築 サービス領域の持続的な成長及 総合的なソリューションのワンストップ提供化 両社の顧客基盤の拡大 |
実施時期 | 2020年1月 |
譲渡価格 | 12億5,900万円 |
②ケイ・テクノスと西日本電話工事
売却企業 | 西日本電話工事 (福岡県北九州エリアを中心とした電気通信工事業) |
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買収企業 | ケイ・テクノス(エクシオグループ) (通信インフラ事業、土木・舗装事業、 電気・空調事業、環境施設工事業) |
M&Aの手法 | 株式譲渡 |
M&Aの目的 | 通信インフラ事業拡大・体制強化 高い施工技術力の融合 人材・ノウハウの共有 リソース最適化 |
実施時期 | 2021年4月 |
譲渡価格 | 非開示 |
③PKSHA Technologyとアシリレラ
売却企業 | アシリレラ (ソフトウエア企画・開発・販売事業、 経営・ITコンサ ルティング事業) |
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買収企業 | PKSHA Technology (自然言語処理・画像認識・機械学習関連の アルゴリズムソリューション事業) |
M&Aの手法 | 株式譲渡 |
M&Aの目的 | シナジー効果の創出 レガシー環境における高度な自動化 パートナー企業を通じたシェア拡大 業界・業務別の対話特性に合わせた事業展開 |
実施時期 | 2021年5月 |
譲渡価格 | 50億600万円 |
④SONYとバンジー
売却企業 | バンジー (アメリカのゲームソフトウェア開発会社) |
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買収企業 | SONY(対象子会社:ソニー・インタラクティブエンタテインメント) (エンタテインメント・テクノロジー&サービス事業) |
M&Aの手法 | 株式譲渡 |
M&Aの目的 | ゲーム開発・人材採用の強化 ノウハウ共有によるゲーム分野の収益向上 |
実施時期 | 2022年2月 |
譲渡価格 | 約4,100億円 |
⑤サンロフトとS’PLANT
売却企業 | S’PLANT (水産業・製造業向け基幹業務システム開発事業) |
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買収企業 | サンロフト (中小企業のデジタル化支援事業) |
M&Aの手法 | 株式譲渡 |
M&Aの目的 | 急速なオンライン化の顧客ニーズへの対応迅速化 システム開発事業における専門性と対応品質の向上 |
実施時期 | 2021年3月 |
譲渡価格 | 非開示 |
⑥オリックスと弥生
売却企業 | 弥生 (会計ソフト大手) |
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買収企業 | オリックス (リース・貸付金などの保険金融事業) |
M&Aの手法 | 株式譲渡 |
M&Aの目的 | 顧客基盤の拡大 非金融分野における事業拡大 |
実施時期 | 2014年11月 |
譲渡価格 | 約800億円 |
⑦LINEとYahoo!Japan
売却企業 | Yahoo!Japan(Zホールディングスの傘下) (国内最大規模のインターネットサービス企業) |
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買収企業 | LINE (コミュニケーションツール大手) |
M&Aの手法 | 経営統合 株式公開買い付け |
M&Aの目的 | シナジー効果の創出 新たな価値の創出 ノウハウ・ネットワークを活かした海外展開 |
実施時期 | 2019年11月 |
譲渡価格 | 約3,720億円 |
IT業界のM&Aのメリット・デメリット
ここでは、IT企業のM&Aにおけるメリットとデメリットをそれぞれ紹介します。
確かにM&Aは魅力的な点が多く各企業にとって有益な手段と言えますが、当然デメリットも存在するので、検討の際は注意が必要です。
メリット
まずメリットをチェックしましょう。売却側のメリット・買収側のメリットに分けて解説します。
売り手側
IT業界のM&Aにおける売却側のメリットは、次の通りです。
売却側企業のメリット | ・売却益を得られる ・後継者問題を解決できる ・従業員の雇用を維持できる ・大手傘下に入れば経営が安定化する ・経営者が個人債務から解放される |
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買い手側
IT業界のM&Aにおける買収側のメリットは、次の通りです。
買収側企業のメリット | ・低コスト・低リスクで業界参入できる ・効率よく事業拡大できる ・ITのノウハウ共有によるシナジー効果が期待できる ・事業エリアを拡大できる ・新しい顧客や人材を獲得できる |
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デメリット
では次にデメリットを確認しましょう。こちらも同様に売却側のデメリット・買収側のデメリットに分けて紹介します。
売り手側
IT業界のM&Aにおける売却側のデメリットは、次の通りです。
売却側企業のデメリット | ・従業員が困惑し退職するおそれがある ・理想通りの条件にならない場合がある ・会社経営における影響力が小さくなる ・取引先との関係が悪化する場合がある |
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買い手側
IT業界のM&Aにおける買収側のデメリットは、次の通りです。
買収側企業のデメリット | ・期待通りのシナジー効果が得られない場合がある ・買収資金の調達が必要 ・売却側従業員が待遇に不満を抱くおそれがある ・簿外債務を引き継ぐおそれがある |
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IT業界のM&Aの売却・買収相場
IT業界でM&Aでは、各企業はどのくらいの相場を想定すれば良いのでしょうか。
ここではIT業界におけるM&Aの売却・買収額相場で知っておきたいポイント・算出方法を解説します。
売却・買収額相場
IT業界のM&A相場には、一概に言える明確な相場はありません。
相場は会社規模や事業内容、期待されるシナジー効果の大きさ、収益性などさまざまな項目が影響を与えるためです。
ただ、以下の式を用いて大まかな相場を求めることはできます。
大まかな相場の算出式 |
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M&A取引額相場 = 時価純資産 + 営業利益 × 2~5年分 |
相場算出は専門知識が多く問われるので、M&A仲介会社に相談・依頼した上でサポートを得ながら行いましょう。
最終的な金額は交渉で決まる
また、最終的な取引価格は当事者間の交渉で決まります。
実際の金額が、算出した相場から大きくかけ離れた結果になる場合があるので注意してください。
IT業界のM&Aを行う手順
ここでは、IT業界でM&Aを行う手順を6つのステップに分けて解説します。
殆どの手続きはIT業界以外の業種でも共通です。相手企業の選定から、クロージングまで基本的な流れをチェックしましょう。
- M&Aの選定・交渉
- 基本合意の締結
- デューデリジェンス
- 最終条件交渉
- 最終契約締結
- クロージング
①M&Aの選定・交渉
最初に行われるのが、M&A先企業の選定と交渉です。
自社の理念や目的、方針やニーズに合致した候補企業を見つけ、経営者会談を行います。会談は当事者の相互理解を深めることが主な目的です。
円滑な企業選定を目指すには、M&A仲介会社に依頼すると良いでしょう。
②基本合意の締結
当事者間でM&Aにおける合意ができたら、基本合意書を取り交わします。
基本合意書には、M&Aの手法やスケジュール、取引株式の種類と数量、支払方法といった項目を記載するのが一般的です。
基本合意書は当事者間のM&Aへの合意を示すもので、法的拘束力を持ちません。
③デューデリジェンス
次に、デューデリジェンスが執り行われます。
デューデリジェンスは、売却側企業の経営状況や資源、人材、負債やリスクといったあらゆる項目を調査するプロセスのことです。
デューデリジェンスは、一般的に専門家に依頼して実施されます。
④最終条件交渉
デューデリジェンスが終わったら、当事者間で最終条件交渉を行います。
基本合意書の内容とデューデリジェンスの結果をもとに、より細かい条件を調整しましょう。双方が合意できる条件内容であることが重要です。
売却側は、従業員の処遇など不安要素を明確化することをおすすめします。
⑤最終契約締結
最終条件がまとまったら、いよいよ最終契約締結のプロセスです。
最終契約書を作成して当事者間で取り交わしましょう。最終契約書は法的拘束力を持つので、違反が見られた場合損害賠償を請求できる権利を有します。
契約後の当事者間トラブルを抑えるためにも、入念に内容を確認してください。
⑥クロージング
M&Aの最終段階に位置するプロセスが、クロージングです。
契約書に記載された内容に従い、当事者間で株式・事業の譲渡と対価の支払いが実施されます。これが終わればM&Aの一連の手続きが完了です。
ここまで円滑に進めるためには、入念な準備と計画が求められます。
IT業界のM&Aを成功させるポイント
IT業界でM&Aを成功させるために、知っておきたいポイントを解説します。
以下5つのポイントを押さえ、少しでも成功確率を上げた状態で売却・買収手続きに入りましょう。
- 事前の準備をしっかりと行う
- 契約内容をしっかりと確認する
- 自社の強みをアピールする
- M&Aの目的を明確にする
- M&Aの専門家に相談する
事前の準備をしっかりと行う
1つ目のポイントは、事前の準備をしっかり行うことです。
M&Aは勢いで実施するものではありません。成功した企業は多くのリスクや時間をかけて売却・買収を行っているのが実際のところです。
経営が安定しているタイミングから、将来を見据えた計画を立てましょう。
契約内容をしっかりと確認する
2つ目のポイントは、入念な契約内容の確認です。
最終条件交渉の段階で双方が合意できる内容でなければ、多くの場合トラブルにつながります。契約前にしっかり条件を確認してください。
最後に双方が有益だったと言える取引を目指しましょう。
自社の強みをアピールする
3つ目のポイントは、自社の強みをアピールすることです。
売却側でアピールポイントがわかりやすい企業は、買収側が将来性を把握しやすくなるので、候補に挙げられる可能性が高まります。
過去実績や得意分野を客観的に分析し、資料にまとめておくと良いでしょう。
M&Aの目的を明確にする
4つ目のポイントは、M&Aの目的を明確にすることです。
目的を正しく設定しないと、間違ったマッチングによりシナジー効果が得られないリスクが高まります。かえって損失になるかもしれません。
目的が合致した企業とのM&Aを目指しましょう。
M&Aの専門家に相談する
5つ目のポイントは、M&Aの専門家に相談することです。
IT業界に限らず、一般的にM&Aは多くの専門知識を必要とします。M&A仲介会社に相談・依頼しながら検討しましょう。
この場合手数料など費用を考慮する必要があるので、一度確認をおすすめします。
IT業界のM&Aは早めに準備しよう!
IT業界が抱えるさまざまな課題を効率よく解決できるのが、M&Aです。
M&Aは各企業が多くの労力やリスクをかけて行うものなので、早めの準備と計画をおすすめします。
M&A仲介会社のサポートを得ながら、成果の多い売却・買収を目指しましょう。
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