M&Aが増加する理由は?リスクへの対処法や今後の予測まで徹底調査!

近年はM&Aに取り組む企業が増えていますが、一方でM&Aは企業間で大きな資金が流動するので、さまざまなリスクも懸念しなければいけません。そこで本記事ではM&Aが増加する理由について詳しく解説を行い、リスクへの対処法や今後の予測などもリサーチしていきます。

目次

  1. M&Aが増加する理由
  2. M&Aの増加に伴う買い手のメリット
  3. 事業成長の時間短縮ができる
  4. M&Aの増加に伴う買い手のデメリット(リスク)
  5. M&Aを行う上での注意点
  6. M&Aの相談先
  7. M&Aの増加に伴う今後の予測
  8. 必要な知識を収集しM&Aを成功させよう

M&Aが増加する理由

会社
cytonn_photography Unsplash

英語の「Mergers and Acquisitions」の略称で、事業の一部や全ての経営権を他社に譲渡することをM&Aといいます。

M&Aに取り組むことで自社の経営効果を高め、利益の確保に繋がるケースも多く見受けられますが、実際には一体どのような理由でM&Aは行われるのでしょうか。

この記事では、M&Aが増加する理由について詳しく解説をします。

理由①経営戦略としてM&Aを利用する会社が増えた

M&Aに取り組めば売り手企業は採算性の悪い事業のみを売却し、利益性の高い事業の運営を継続することもできます。そして売却で得た資金を企業の負債への支払いに活用したり、売上が見込める新規事業への投資資金にすることもできます。

買い手企業側としては売り手企業の事業継承に取り組むことで、自社が持っていないノウハウや技術、人材を確保することを目的としてM&Aを行う場合があります。

このように現在では、売り手企業側・買い手企業側共に経営戦略を目的としてM&Aを利用する会社が増えています。

理由②法律の改正でM&Aを行いやすくなった

近年ではM&Aに関する法律が改正され、その動きに伴ってM&Aは増加傾向にあります。例えば近年は以前に比べ、中小企業向けにM&Aのアドバイザリーなどを行う公的機関が増加しました。また2011年には、中小企業のM&A支援を目的とした中小企業庁が全国に事業継承相談窓口を設けるなど、M&Aの促進化に拍車をかけました。

理由③金融緩和

M&Aが増加している理由の1つとして、日本銀行が2016年初頭から手掛けているマイナス金利をはじめとした金融緩和なども挙げられます。金融緩和とは金利を低くして企業の借り入れを促し、企業の事業資金を増やすのが目的です。このような施策に取り組み、企業の事業資金が以前よりも増加したこともM&Aが増加している理由の1つといえます。

理由④株式交付制度の導入・施策

2021年3月から施工され、事業譲渡の対価を買い手企業側の株式で支払う制度である株式交付制度などの導入・施策もM&Aが増加した理由の1つです。この制度を活用すればM&Aにおいて事前に買収資金を準備する必要がないので、多くの企業がM&Aに取り組みやすくなりました。

また同様の方法に事業継承の売価として買い手企業の株式を充当する株式交換という方法がありますが、この方法は売り手企業を子会社化する場合にしか適用されません。

理由⑤事業継承問題

近年の少子高齢化に伴い、現在多くの企業が後継者不足に頭を抱えています。企業において後継者を擁立できないため、廃業を余儀なくされる企業も少なくありません。そこでM&Aを行えば後継者がいなくても、他社に事業継承することで廃業を避けることができます。

このような現在の社会背景に起因した、事業継承問題もM&Aが増加した理由の1つとして考えられます。

M&Aの増加に伴う買い手のメリット

書類にペンで記載する男性と横でそれを見る男性
Kampus Production Pexels

事業の多角化ができる

M&Aにおける買い手側のメリットの一つ目としては、事業の多角化ができるという点が挙げられます。

M&Aにより新たな企業を自社に取り込むことによって、既存の主軸事業とは別に会社の収益源を作ることができます。

このように新しい領域への新規事業に挑戦することにより、会社全体の収益を安定させることができます。

事業成長の時間短縮ができる

M&Aにおける買い手側のメリットの二つ目としては、事業を成長させるための時間を大幅に短縮できるという点です。

自社で新しい事業を作るとなると、運営組織開発や技術開発などを全て0から行う必要があるため、かなりの工数と時間が必要になります。

しかし、M&Aにより事業買収をすることによりそれらの工数を一気に削減できるため、新規領域に参入する際は大きなアドバンテージとなります。

M&Aの増加に伴う買い手のデメリット(リスク)

M&Aにおける買い手企業に関して様々なメリットがあることを解説してきました。

ここからは、デメリットに関して解説します。

M&A
geralt

M&Aを行えば、売り手企業側は不要な事業を譲渡して利益性を高めたり、後継者不在による廃業も免れることができます。しかしM&Aは多額の資金が流動する企業間取引なので、買い手企業側は様々なリスクを背負う場合がほとんどです。

M&Aによる買い手側のリスクには、具体的にどのような点が挙げられるのでしょうか。

相互の企業が上手く融合できない

M&Aを行えば2つの企業の文化が融合することになるので、統合後に意思統一を計る作業であるPMIを欠かすことができません。しかし、事業統合後にPMIを行っても売り手企業・買い手企業が上手く融合できない可能性がある点もリスクの1つです。特に歴史が長く、独特の文化を持つ事業では事業統合後のPMIに大変な手間がかかってしまうのも注意点です。

このような観点からも、統合後のPMIをスムーズに進めたいのであれば似たような社風を持つ企業同士でのM&Aがおすすめです。

想定外の債務が生じる可能性

売り手企業側の偶発債務や簿外債務など、想定外の債務がM&A完了後に生じてしまう可能性があるのも買い手企業側のリスクの1つです。事業統合後のこのようなトラブルを回避するためにも、売り手企業を監査するデューデリジェンスを徹底しましょう。財務関連の専門家にデュ―デリジェンスを依頼すれば、専門的な観点から売り手企業側の財務状況を細かくチェックしてくれます。

のれん代の減損処理が発生する可能性

M&Aでは、買い手企業側にのれん代の減損処理が発生するリスクを懸念しなければいけないのも注意点の1つです。企業買収を高すぎる金額で行ったり、買収による費用対効果を得ることができなかった場合などにのれん代の減損処理が発生します。また事業買収後のPMIが上手くいかなかった場合なども同様で、のれん代の減損処理が発生した時点でその年度の決算は赤字のリスクが高くなってしまうのも注意点です。

優秀な人材の流出

M&Aでは2つの企業が統合されることになるので、従業員の中には全く知らない人と仕事をしなければならない場面なども出てきます。そして従業員の中には、そのような環境の変化にストレスを感じてしまう人もいるかもしれません。結果としてそのストレスにより、優秀な人材が退職するなどのリスクが買い手企業側に生まれてしまいます。

M&Aを行う上での注意点

ポイント
Tumisu

M&Aを行えば売り手企業側は不要な事業を売却して事業資金を確保することができ、買い手企業は新規事業の足掛かりとすることができます。しかしいくつかの注意点に留意してM&Aを行わなければ、健全的な取引を成立させることはできません。

ここからは、M&Aを行う上での注意点について紹介します。

売り手側の注意点

M&Aは売り手企業・買い手企業の双方の合意のもとに事業譲渡契約が行われます。まずは、M&A時に売り手企業側が留意しなければいけない注意点から紹介します。

目的と優先順位を明確にする

M&Aを成功させるためにも、目的と優先順位を明確にしましょう。

M&Aの検討段階で社内の意見をまとめ、譲渡後の経営方針や目的なども検討しておくことでM&Aの目的が明確化されます。

一般的に売り手企業側のM&Aの目的には、事業継承や不採算部門の整理、経営基盤強化などが挙げられるので、その中から自社に当てはまる目的を明確にしましょう。

希望額で売却できない場合どうするか考えておく

近年のM&Aの増加に伴い、最近は買い手企業側主導で譲渡契約が行われるケースも多く見受けられます。そして買い手企業側主導でM&Aが行われることにより、買い手企業側の希望額で事業売却できなくなる可能性も高くなります。

売り手企業側の中にはM&Aによって事業再建の資金を得ようとする企業もあり、希望額で事業売却できなければ大きな痛手を被ってしまいます。

従って、希望額で売却できない場合を事前に想定し、希望額でなくてもM&Aを行うのか、それとも他の売却先を探すなどの選択肢を検討しておくことが大切です。

スケジュールを組む

M&Aにはさまざまな手続きが必要なうえに、中小企業の中には手続きに慣れていない会社も多く見受けられます。また事前に手続きのスケジューリングを組み立てずに、契約までに時間がかかってしまえば契約を破棄されてしまうかもしれません。このような事態を防ぐためにも、売り手企業はM&Aのスケジュールを事前に組んでおくのも重要なポイントです。

専門家に相談する

M&Aを成功させるためには、税務や財務をはじめとしたさまざまな知識が必要なので専門家に相談するのも有効な手段です。

自社スタッフのみでM&Aに取り組めば大変な時間と労力がかかってしまいますが、M&Aの専門家に依頼することで迅速なM&Aが可能になります。

デュ―デリジェンスを行う

M&Aが完了したものの、その後しばらくして売り手企業の簿外債務や偶発債務などが発生し、買い手企業側が予定外の負債を抱えてしまう場合があります。このような事態を防ぐためにもM&A時に買い手企業は、売り手企業の財務状況などを監査するデューデリジェンスを徹底しましょう。

デューデリジェンスを行うことで、買収後に発生するかもしれない財務的なリスクなどを明確にできます。

専門家に相談する

M&Aを行う際には、買い手企業側も売り手企業同様に専門家に相談するのがおすすめです。

前述したように、M&Aの手続きには税務や財務に関する専門的な知識が欠かせません。勿論自社のみでの対応が可能なものもありますが、迅速且つ効率的に契約を成立させるためにもM&Aの専門家に相談しましょう。

M&Aの相談先

M&Aの売り手側のメリット

売り手企業側も買い手企業側も、専門家に相談すれば効率的に交渉・手続きが進んでいきます。

では実際にどのような専門家に相談するのが良いのでしょうか。

税理士

M&Aを行う際には、自社の財務状況に詳しい税理士に相談するのもおすすめです。しかし財務や経営に詳しい税理士やM&Aに詳しい税理士など、それぞれで得意分野も異なっているので状況に応じた税理士に相談しましょう。

金融機関

金融機関の中には事業継承やM&Aに注力している機関も多く、中には専門部署を設けたり専門的な士業などと連携している場合があります。このような機関に相談すれば、M&A時の株式買取資金や融資などの分野において的確なアドバイスを受けることができます。

商工会・商工会議所

M&Aを行う際には、日常的にさまざまな経営者と接触している商工会や商工会議所に相談するのもおすすめです。これらの機関は公的な支援制度について詳しい知識を持っていますが、具体的な施策に取り組んでくれる可能性は低くなっています。したがって具体的な相談や施策への取り組みを依頼するのであれば、事業継承に関する専門的な支援を行う機関に繋げてもらいましょう。

M&A仲介会社

企業間のM&Aに専門的に取り組んでいるのが、M&A仲介会社です。M&A仲介会社は専門性とネットワークを持っているので、M&Aを依頼すれば迅速に取引相手を見つけてくれると同時に、効率的に手続きを進めてくれます。

利用にあたるメリットもある一方で、取引に関する手数料が発生し、業者や依頼範囲によって料金が異なる点も把握しておきましょう。

補足になりますが、近年ではM&A仲介の手数料金を支援する、補助金制度なども制定されています。

事業継承・引継ぎ支援センター

M&Aを行う際には、各県に設置されている事業継承・引継ぎ支援センターに相談するのも有効的な手段の1つです。これらの機関は国が運営している公的な機関なので、手数料が無料で気軽に利用することができます。またM&Aに特化した専門的な士業との交流も盛んなので、相談すれば自社に最適な専門家を相談してくれるでしょう。

M&Aの増加に伴う今後の予測

事業譲渡 増加
Tumisu

現在も確実にM&Aの件数は増加していますが、今後の社会状況の変動に伴ってM&Aの件数はどのように変動していくのでしょうか。ではM&Aの増加に伴う、今後の予測を検証していきます。

コロナウイルス流行影響でM&A利用が増加

2020年に世界中で蔓延した新型コロナウイルスの影響により、さまざまな業種が大打撃を受けました。その余波は現在も強く残っており、事業を売却して廃業を回避する企業なども多く見受けられます。そして今後はコロナからの復興のためにM&Aに取り組み、事業再編などを目的に取り組む企業も増加していくことが予想できます。

海外進出を目指す企業のM&A利用が増加

現在は国内市場が成熟期を迎えており、多くの企業が海外でビジネスチャンスを掴むために積極的にM&Aに取り組んでいます。海外企業とのM&Aは国内企業同士のM&Aと比較して高額になっている傾向はありますが、今後もこの動きはさらに高まっていくでしょう。

後継者不足M&A利用が増加

現在も加速している少子高齢化により、今後も多くの企業で後継者不足による問題が深刻化するといわれています。そのような状況の中、多くの企業が後継者不足による廃業を回避するためにM&Aに取り組んでいるのが現状です。そして今後のさらなる後継者不足に伴い、M&Aの利用も増加することが予測されます。

必要な知識を収集しM&Aを成功させよう

事業譲渡
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新型コロナウイルスの余波や少子高齢化は多くの企業に影響を与え、その結果として積極的にM&Aに取り組む企業は増加傾向にあります。今後自社の経営再生や、事業拡大のためにM&Aを検討しているのであれば、本記事を参考にして必要な知識を備え、理想的なM&Aに取り組んでください。

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