M&Aにおける税金の基礎知識を徹底解説!節税のポイントや注意点は?
M&Aを行った時にかかる税金を意識してしっかりと節税対策を行わなければ、手元に残る利益が少なくなってしまうので、注意が必要です。
税金に関する知識や節税のために必要なことなどを、事前に理解してM&Aを行えば効果的に利益を得られます。
目次
M&Aでの税金の種類と所得の仕組み
M&Aでは、個人で行う場合と法人で行う場合で、多く種類の税金がかかります。
また、得られる所得の仕組みや種類も変わってきます。
ここでは、M&Aでの税金の種類と所得の仕組みについて解説します。
個人の所得と税金の種類
個人の所得には、主に以下の10種類があります。
- 利子所得
- 配当所得
- 給与所得
- 退職所得
- 不動産所得
- 事業所得
- 山林所得
- 譲渡所得
- 一時所得
- 雑所得
以上の所得の種類のうち、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、譲渡所得、一時所得、雑所得は、それぞれの所得を合算して所得控除を引いた金額に税金がかかる総合課税になります。
退職所得、山林所得、利子所得、譲渡所得は、他の所得と別の税金がかかる分離課税です。
法人の所得と税金の種類
法人の所得は、個人のように所得が分類されることなく種類は1つで、主に以下の税金が発生します。
- 法人税
- 法人住民税の法人税割
- 法人事業税の所得割
法人税は法人の所得金額によって法人税がかかります。
また、法人税は会計上の税引後当期純利益や加算調整、減算調整を行い計算します。
M&Aでの株式譲渡で発生する税金
M&Aでの株式譲渡を行う場合は、売り手にかかる税金があります。
また、個人株主と法人株主では、M&Aでかかる税金が変わるので、しっかりと理解しておくことが大切です。
ここでは、株式譲渡の時にかかる税金について解説します。
個人株主にかかる税金の計算方法
- 個人株主にかかる税金は、以下の計算方法です。
- 譲渡価格−必要経費(取得費+委託手数料等)=譲渡所得の金額
- 譲渡所得の金額×20.315%(所得税15%+住民税5%+復興特別所得税0.315%)
法人株主にかかる税金の計算方法
法人株主にかかる税金は、以下の計算方法です。
譲渡価格−必要経費(取得費+受託手数料等)=譲渡益の金額
(譲渡益+本業の利益)×法人税実効税率29.74%=税金
法人株主の税金は、株式譲渡の利益と本業での利益を合わせた額に法人税実効税率29.74%をかけて計算されます。
買い手に対して贈与税や法人税が発生する場合に注意
M&Aによる株式譲渡が安い価格で行われた場合、買い手に法人税や贈与税がかかるので、注意しましょう。
贈与税が発生する場合
売り手の個人株主から買い手の個人株主株式譲渡がされた時に、株式譲渡で贈与税が発生します。
また、贈与税は贈与額に応じて変動し、200万円以下なら最低10%3,000万円以上なら最大55%も発生してしまうので、注意点として把握しましょう。
法人税が発生する場合
株式譲渡で法人税が発生する場合は、売り手の個人株主・法人株主から買い手の法人株主に安い価格で株式譲渡が行われた時です。
そのため、法人株主間もしくは買い手が法人株主の場合は、注意しましょう。
M&Aでの事業譲渡で発生する税金
M&Aでの事業譲渡では、いくつかの税金が発生します。
ここでは、M&Aでの事業譲渡で発生する税金とその計算方法について解説します。
法人税等の計算方法
M&Aでの株式譲渡で発生する法人税等の計算方法は、以下の通りです。
譲渡合計−(譲渡資産−譲渡負債)=譲渡益の金額
(譲渡益+本業の利益)×29.74%=法人税等
法人税を計算する場合は、最初に譲渡益の金額を計算して、法人税を割り出します。
消費税の計算方法
M&Aでの株式譲渡で発生する消費税の計算方法は、以下の通りです。
課税資産×10%=消費税
また、消費税が課税対象になる資産は、主に有形固形資産や営業権などです。
そして土地などは消費税の非課税対象の資産になります。
譲渡対象に不動産がある場合
不動産が譲渡対象にある時は、買い手は消費税や法人税だけでなく、登録免許税や不動産取得税などが課税されます。
登録免許税
登録免許税とは、不動産や会社などについての登記や登録の際に発生する税金のことです。
譲渡対象に土地が含まれている場合は、土地の登記を行う必要があり、そこで登録免許税が発生してしまいます。
不動産取得税
不動産取得税とは、土地や建物などの不動産を取得した際にかかる税金のことです。
相続などでは発生しない場合もありますが、譲渡対象に不動産がある場合は、発生してしまいます。
M&Aでの組織再編(合併や会社分割など)で発生する税金
M&Aでは、合併や会社分割などの組織再編にもかかる税金があります。
ここでは、発生する税金と要件についてそれぞれ解説します。
税制適格要件を満たすM&Aならば課税が発生しない
M&Aでの組織編成では、税制適格要件を満たすM&Aなら課税が発生しません。
また、税制適格要件を満たすM&Aの種類は、主に以下の6つがあります。
- 適格新設合併
- 適格吸収合併
- 適格九州分割
- 適格新設分割
- 適格株式交換
- 適格株式移転
以上の税制適格要件を満たしたM&Aは、税務処理によって資産・負債を帳簿価格で引き継げるので、売却損益も税金もかかりません。
税制適格の要件
税制適格の要件は、以下の6つがあります。
- 対価要件
- 事業関連要件
- 事業規模または経営参画要件
- 従業者引継要件
- 移転事業継続要件
- 株式継続保有要件
また、税制適格の要件は、完全支配関係(持株比率100%)の場合、支配関係(持株比率50%超)の場合、共同事業を営む場合で、要件が変わってきます。
完全支配関係(持株比率100%)の当事者が合併する場合
完全支配関係の当事者が合併する場合、合併による経済的実体がほとんど変化しないので、合併による組織再編がしやすいです。
支配関係(持株比率50%超)の当事者が合併する場合
支配関係の当事者が合併する場合、対価要件、従業者引継要件、移転事業引継要件の3つを満たしていれば、税制適格要件を満たします。
企業グループ内でなく合併により共同事業を営む場合
企業グループ内でなく合併により共同事業を営む場合は、税制価格の要件を全てクリアしていないといけません。
また、要件を1つでもクリアしていないと税制非適格となり税金がかかるので、注意が必要です。
M&Aでの節税対策
M&Aでは、さまざまな税金が発生します。
また、M&Aによる利益は大きくなることが多いので、発生する税金も高額になり多額の税金を払うことになる可能性があります。
そのため、M&Aを行う場合はしっかりと節税対策を行うことが効果的です。
株式譲渡(会社売却)での節税対策
株式譲渡(会社売却)は、株式の売却益に応じて税金がかかるので、売却益が少ないほど、発生する税金も少なくなります。
そのため、取得費やM&Aなどにかかる仲介手数料である譲渡費用を大きくすることで、売却益が少なくなり節税対策に繋がります。
しかし、譲渡費用を大きくすると得られる金額が少ないので、取得費を大きくすることが効果的です。
株式の取得費は売却価格の5%
取得費とは、売却する株式にかかった費用のことです。
そして、取得費がわからない場合、売却価格の5%を取得費として計算することができるので、取得費が売却価格の5%以下でも5%まで引き上げて計算できます。
そのため、節税対策をする場合は理解しておきましょう。
第三者割当増資により支配権のみ移転する
第三者割当増資により支配権のみを移転することも、節税対策をしながらM&Aをする場合に有効的です。
株式売却を行うのではなく、会社の経営権のみを第三者に移転させる第三者割当増資は、会社の株式を過半数持つことで経営権を得られます。
また、第三者に経営権を譲るためには、新しく株式を発行して出資額以上に株式を引き受けてもらう場合、個人でも法人では税金は発生しません。
そのため、第三者割当増資で経営権を移転されるこも節税対策をしながらM&Aをする上で大切なことです。
買収側から需要のある資産だけ売却する
M&Aでは、買収側にとって不要な資産も引き継いでしまうので、需要のある資産だけを売却する方法も効果的です。
買収側にとって不要な資産でも引き継いでしまうと、利益として加算され税金がかかります。
そのため、少しでも税金の負担を減らすために買収側に需要のある資産だけを売却して節税対策を行います。
買収金額が高くなると売り手にかかる税金も増えるので、対策が必要です。
事業譲渡における節税対策
M&Aによる事業譲渡では、営業権がそのまま売却益になるので、事業譲渡を行うこと自体が節税対策になることがあります。
実際に、株式譲渡よりも事業譲渡の方が売却益が少なくなる可能性があるので、税務上厳しいように感じる事業譲渡も効果的な節税対策です。
第三者割当増資における節税対策
第三者割当増資は課税されないので、節税対策もありませんが、事業承継で第三者割当増資を行うと節税効果が期待できます。
新規株式を発行する時に、増資前の1株当たりの相続税の評価額よりも少額で発行すれば、増資後の1株当たりの相続税の評価額は小さくなります。
退職金(役員退職慰労金)を用いた株式譲渡
M&Aをした後に引退する経営者は、M&Aで受け取る利益の1部を退職金として受け取ることが可能です。
1部を退職金として受け取ることで節税効果が期待できます。
しかし、あまり大きな金額を受け取ってしまうと税金も高くなってしまうので、注意しましょう。
分割型分割で株式譲渡益を圧縮
分割型分割とは、兄弟会社を設立することです。
そして、兄弟会社にM&Aで不要な資産を移動させることができるので、株式譲渡益を圧縮することができます。
また、設立した兄弟会社に不要な資産を移動させれば、M&Aのために移した資産が課税されずに済むので、効果的に節税が行えます。
売却益を経費で相殺
M&Aによって得た売却益を経費として使用することで、節税対策が行えます。
例えば、M&Aによる売却益が1,000万円だった場合、広告費や新規事業立ち上げなどで1,000万円を経費として使えば、利益が0になり法人税がかかりません。
手元に利益が残らない方法ですが、節税対策とては効果的です。
M&Aでの節税対策を行う場合の注意点
M&Aによって発生する税金をできるだけ抑えるために節税対策をすることで、より多くの利益を得られます。
しかし、M&Aでの節税対策を行う場合、注意点がいくつか存在しています。
ここでは2つの注意点について解説します。
財産の移動でも税金は発生
M&Aでの事業譲渡では、財産を移動するだけでも税金が発生してしまう可能性が高いことが1つ目の注意点です。
主に契約書の印紙代や不動産取得税、登録免許税などが発生することが多く、移動する財産の額によって税金も多くなります。
事前に税金が発生することを理解した上で行わなければ、後から税金が払えなくなったり想定よりも利益が低くなってしまいます。
追徴課税されるリスクに注意
M&Aでの事業譲渡で行った節税対策が将来的に追徴課税される場合があることが2つ目の注意点です。
できるだけ発生する税金を抑えるために節税対策を行い利益を確保した場合でも、税務調査によって節税対策が否認されてしまうと本来の税金以上の税金がかかります。
節税対策を行う場合は追徴課税のリスクにも十分注意が必要です。
M&Aにかかる税金を理解してしっかり対策しよう!
M&Aが成功すれば、大きな利益を得ることができ事業展開や新規事業立ち上げなどさまざまなプランを実行することが可能です。
しかし、M&Aによる事業譲渡では、さまざまな税金が発生する仕組みになっており、M&Aによって得られる利益に応じて税金も高くなります。
また、M&Aでは個人株主でも法人株主でも税金はかかります。
M&Aを行う場合は税金に関する知識や節税対策の注意点などを理解しておきましょう。
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