M&Aにかかる費用はどのくらい?種類や目安となる相場と仲介手数料の計算方法を紹介!
M&Aではさまざまな種類の費用が発生します。それは専門家への報酬に限定されるものではありません。本コラムではM&Aで発生するさまざまな種類の費用を網羅して説明するとともに、仲介手数料の計算方法や目安となる相場なども紹介します。
目次
M&Aの買収費用
M&Aで発生するさまざまな種類の費用のうち、最も重要で高額となる費用が買収費用となります。買収費用は買収側が支払い、売却側が受領するものです。この買収費用が支払われることで初めて、M&Aの効力が発揮される=事業の運営権や企業の経営権が買収側に移転します。
M&Aスキーム(手法)のうち、株式譲渡、事業譲渡、第三者割当増資の場合、買収費用は現金でしか支払えません。一方、合併、会社分割、株式交換などのM&Aスキームでは、買収費用を現金、自社株式、新株予約権、社債などのいずれでも支払えます。
売買価額の決まり方
M&Aの買収費用の価額の決まり方には、競争入札と個別交渉の2種類があります。1種類目の競争入札とは、複数の買収希望企業がいる場合に行われるやり方です。
最も高額の買収費用を入札した相手が、買収側として選ばれます。M&Aを競争入札で行う場合、売却側は必ず1社を選ばなければなりません。
2種類目の個別交渉は、1社の買収希望企業のみと交渉を行ってM&Aの成約を目指すやり方です。個別交渉の場合、買収費用の価額はあくまでも交渉によって決まります。また、交渉が合意に至らない場合、破談になることもあり得るのがM&Aの個別交渉です。
企業価値評価の計算方法
M&Aの競争入札で買収費用の価額を決める際や、個別交渉で提示する買収費用の価額を決める際には、そのベースとするために売却側企業に対して企業価値評価(バリュエーション)が実施されます。
企業価値評価は、さまざまな種類の専門的な計算方法を用いて行われるものです。それらの計算方法は、以下のような3つの体系に分類されています。
- コストアプローチ:資産と負債の差額である純資産額を株式価値として計算する方法
- インカムアプローチ:中期計画を基に将来の収益力を計算して企業価値を評価する方法
- マーケットアプローチ:売却側企業と類似する上場企業の株価や、類似するM&A取引の買収費用などを参照して企業価値を計算する方法
M&Aの企業価値評価では、複数の計算方法を併用して費用の価額を決めるのが一般的です。
以下の動画では、3種類の企業価値評価について解説をしています。ご参考までご覧ください。
M&A仲介会社へ支払う費用と相場の目安
M&A仲介会社へ支払う仲介手数料も、M&Aの費用として欠かせないものといえるでしょう。M&A仲介会社の仲介手数料には、以下のような種類があります。
- 相談料
- 着手金
- 中間報酬
- 成功報酬
- リテイナーフィー
- デューデリジェンス費用
- その他の実費でかかる費用
それぞれの種類の仲介手数料について、その内容および目安となる相場を説明します。
相談料
M&A仲介手数料の相談料とは、M&A仲介会社と正式な業務委託契約をする以前の相談で発生する費用のことです。現在、ほとんどのM&A仲介会社では、事前相談を無料で受け付けています。
ただし、M&A仲介業を行うFA(ファイナンシャルアドバイザー)や経営コンサルタントなどにM&Aの相談をした場合は、相談料が発生することもあるでしょう。その場合の相場目安は、5,000円から1万円程度です。
着手金
M&A仲介手数料の着手金とは、M&A仲介会社と業務委託契約を締結した際に請求される費用です。昨今は、着手金も多くのM&A仲介会社で無料となっています。着手金が発生する場合の相場目安は、100万円から200万円程度です。
着手金の注意点として、M&Aが不成立に終わり、M&A仲介会社との契約を打ち切る際、着手金は返金されません。
中間報酬
M&A仲介手数料の中間報酬とは、M&Aの売却側と買収側が交渉で大筋合意し、基本合意書を取り交わしたタイミングで請求される費用です。中間報酬は、請求するM&A仲介会社と無料のM&A仲介会社に分かれます。
中間報酬が請求される場合の相場目安は、50万円から200万円程度、または成功報酬の前払い分として成功報酬の10%から20%相当分です。
中間報酬も、M&Aが不成立に終わり、M&A仲介会社と契約を打ち切る際、返金されません。基本合意書に法的な拘束力はなく、この時点でM&Aの成立が確定しているわけではないため、注意が必要です。
成功報酬
M&A仲介手数料の成功報酬とは、M&Aが成約した際に請求される費用です。ほとんどのM&A仲介会社では、レーマン方式という計算方法で成功報酬の費用額を決めています。成功報酬の相場目安は、概算で買収費用の5%程度です。
レーマン方式の内容や計算方法、相場目安の考え方などは次項以降で説明します。
レーマン方式とは?
レーマン方式とは、成功報酬を計算するための基準額を複数の金額帯に分け、各金額帯に異なる手数料率を設定して費用額を決める計算方法のことです。多くのM&A仲介会社が設定しているレーマン方式の金額帯と手数料率は、以下のようになっています。
成功報酬計算基準額 | 手数料率 |
---|---|
5億円までの金額帯 | 5% |
5億円超から10億円までの金額帯 | 4% |
10億円超から50億円までの金額帯 | 3% |
50億円超から100億円までの金額帯 | 2% |
100億円超の金額帯 | 1% |
レーマン方式の計算例
ここで、成功報酬計算基準額が120億円と仮定して、その計算方法を例示します。
- 5億円までの金額帯の計算:5億円×5%=2,500万円
- 5億円超から10億円までの金額帯の計算:5億円×4%=2,000万円
- 10億円超から50億円までの金額帯の計算:40億円×3%=1億2,000万円
- 50億円超から100億円までの金額帯の計算:50億円×2%=1億円
- 100億円超から120億円までの金額帯の計算:20億円×1%=2,000万円
- 以上を合計し、この場合の成功報酬額は2憶8,500万円となります。
レーマン方式の注意点
レーマン方式の注意点は、成功報酬を計算する基準額の設定がM&A仲介会社によって違うことです。このため、手数料率が同じ設定でも基準額が高ければ、成功報酬の相場目安も高くなります。M&A仲介会社が採用している成功報酬の計算基準額は、以下の4種類のいずれかです。
- 買収費用額(株式価値):この設定が最も低い成功報酬額となる
- オーナー受取額:買収費用(株式価値)+役員借入金返済分
- 企業価値:株式価値+有利子負債総額
- 移動総資産:株式価値+負債総額
上記の並びだと、下に行くほど金額が高くなります。成功報酬額の相場目安もそれに比例して高くなるのは必至です。M&A仲介会社と契約する際には、成功報酬の計算方法(計算基準額の設定がどうなっているか)を必ず確認しましょう。
最低手数料
M&A仲介会社によっては、最低手数料が設定されているケースもあります。最低手数料制があるM&A仲介会社の場合、レーマン方式で計算した結果と最低手数料を比べて計算結果の方が低額だと、成功報酬額は最低手数料に設定されている金額になるという制度です。
M&Aの規模が小さい場合、レーマン方式の計算だとM&A仲介会社側が赤字となる可能性があるため、それを防ぐための制度だと考えられています。
最低手数料の相場目安は、小規模のM&A仲介会社の相場目安が300万円から600万円程度、中堅のM&A仲介会社の相場目安が1,000万円程度、大手のM&A仲介会社の相場目安が2,000万円程度です。最低手数料制の設定の有無と、その金額も事前に確認しておきましょう。
リテイナーフィー
M&A仲介手数料のリテイナーフィーとは、顧問料やアドバイス料などに該当する費用です。M&A仲介会社との業務委託契約締結後、M&Aが成約するまで毎月、請求されます。そのため別称として、単に月額報酬ともいわれる費用です。
ただし現状では、リテイナーフィーを設定しているM&A仲介会社はあまりいません。リテイナーフィーが請求される場合の相場目安は、毎月50万円から100万円程度です。リテイナーフィー分は、成功報酬から減額するM&A仲介会社もあります。
デューデリジェンス費用
デューデリジェンスとは、一般に買収側が売却側企業に対して行う詳細な調査のことです。その際に請求されるのがデューデリジェンス費用ですが、デューデリジェンスは買収側が行うものであるため、買収側のみが費用負担します。
デューデリジェンス費用の相場目安は、50万円から300万円程度です。通常、デューデリジェンスは、士業などの専門家を起用(外注)して行われます。デューデリジェンス費用は、その報酬として支払われるものであるため、他のM&A仲介手数料とは一線を画すものです。
デューデリジェンス費用の場合も、M&Aが不成立に終わっても返金されません。
以下の動画では、デューデリジェンスの解説をしています。ご参考までご覧ください。
その他の実費でかかる費用
M&A仲介会社が業務を行ううえで、たとえば担当案件に関することで遠方への出張などが行われたとき、交通費や宿泊費などの実費の費用精算が求められることがあります。実費は全て成功報酬に含まれているという考え方のM&A仲介会社もあり、その場合、実費の費用精算はありません。
以下の動画ではM&A仲介手数料全般の解説をしています。ご参考までご覧ください。
M&Aのその他費用
M&Aを実施する場合、以下のような費用も発生します。
- 印紙代
- 登記費用
- 株券発行費用
それぞれの費用の内容を説明します。
印紙代
印紙代とは、収入印紙の購入費用のことです。収入印紙は、国が印紙税や手数料などを徴収するために発行されています。印紙税法という法律があり、そこに挙げられている契約書などの文書を作成した場合、規定の金額の収入印紙を購入し、該当文書に貼り付けなければいけません。
M&Aでは、最終契約書や株券の発行時に収入印紙が必要であり、その購入費用が生じます。
登記費用
M&Aスキーム(手法)の事業譲渡により不動産の所有権が移転した場合、登記変更手続きが必要です。登記変更手続きでは登録免許税が発生します。登録免許税は、前項で説明した収入印紙を用いることが定められているものです。
したがって、収入印紙を購入する費用が発生します。また、M&Aにより商業登記などを行う際も同様に登録免許税が発生するため、やはり収入印紙を購入する費用が必要です。
株券発行費用
定款で株券の発行を定めている企業がM&Aの株式譲渡をする場合、必ず株券を買収側に引き渡さなければなりません。中小企業では、株券発行会社であるにもかかわらず同族経営であったため、株券発行を省略しているケースもあるでしょう。
そのような場合、新たに株券を発行する必要があり、その印刷費用が発生します。
M&Aにかかる税金
M&Aの売却側が、対価(買収費用)を現金で受け取るM&Aスキーム(手法)を行った場合、課税を受けるため、その納付費用が必要になります。買収費用が必ず現金で支払われるM&Aスキームは株式譲渡と事業譲渡です。それぞれの税務内容について説明します。
株式譲渡
株式譲渡とは、売却側が買収費用を受け取り、所有する株式を買収側に譲渡するM&Aスキームです。株式譲渡における売却側は個人の場合と法人の場合があり、それぞれの課税内容は異なります。
まず、個人の場合は、株式譲渡所得(譲渡益)に対する分離課税です。以下の税率に応じた納税費用が必要になります。
- 所得税15%
- 住民税5%
- 復興特別所得税0.375%(2037年までの時限税)
法人の場合は、株式譲渡益は法人税の対象です。法人税は単独の利益に課税するものではなく、他の全ての損益を通算した益金額に対して課税されます。法人税の実効税率は約31%です(2023年10月現在)。
仮に株式譲渡で利益を得ても、他に損失があって決算が赤字の場合は、課税を受けません。当然、課税費用も必要ないものです。
事業譲渡
事業譲渡とは、売却側の行う事業を、現金による買収費用を受け取って買収側に譲渡するM&Aスキームです。事業に関連する権利義務や資産などの譲渡内容は、両者が協議して個別に決めます。
事業譲渡の売却当事者は法人です。株式譲渡の法人の課税と同じように事業譲渡益は法人税の対象ですが、全ての損益と通算して課税の有無や課税額が決まります。納税費用もその結果に左右されるものです。
また、事業譲渡では、譲渡内容に消費税課税資産が含まれていると、買収側は消費税を納めなければなりません。買収費用を売却側に支払う際に消費税分を加算して渡します。つまり、消費税を税務署に納付するのは売却側です。
さらに、譲渡内容に不動産が含まれている場合、買収側に不動産取得税や登録免許税も発生します。その費用を用意しておくことも必要です。
以下の動画では株式譲渡と事業譲渡の解説をしています。ご参考までご覧ください。
税務の注意点
M&Aスキームのうち、株式交換、株式移転、株式交付、合併、会社分割は、会社法により組織再編行為と定められています。組織再編行為は、定められた要件を満たした適格組織再編と、そうではない非適格組織再編に二分されるものです。
M&Aの買収側の場合、適格組織再編の要件を満たすと、買収した資産を簿価で引き継げるため、事実上、課税を受けません。しかし、非適格組織再編では、引き継いだ資産を時価で計上することになり、簿価との差額が利益とみなされ課税を受けるため、その納税費用が必要になります。
以下の動画では、M&Aでの税金について解説しています。ご参考までご覧ください。
M&A費用の会計処理
M&A費用の仕訳は、用いたM&Aスキーム(手法)によって異なる場合があります。ここでは、以下の種類のM&Aスキームを行った場合に、M&A費用の会計処理での注意点などを確認しましょう。
- 事業譲渡
- 株式譲渡
- 株式交換
- 合併
それぞれのM&AスキームにおけるM&A費用仕訳の注意点を説明します。
事業譲渡
事業譲渡でM&Aを行った場合、売却側の仕訳・会計処理のポイントは以下のとおりです。
- 譲渡する資産と負債は簿価で計上
- 対価として得た買収費用と譲渡資産(簿価)の差額が売買損益
- 譲渡資産中に消費税課税資産がある場合、仮受消費税を計上
一方、買収側の仕訳・会計処理のポイントは以下のとおりです。
- 承継した資産と負債は時価で計上
- 買収費用と承継した純資産額(時価)との差額をのれんとして計上
- のれんは消費税課税対象
- 承継した消費税課税資産分の仮払消費税を計上
株式譲渡
株式譲渡でのM&Aで、売却側が法人の場合に仕訳・会計処理のポイントは以下のとおりです。
- 受け取った買収費用と、譲渡した株式の簿価との差額を売却損益とする
- M&A仲介会社などへの仲介手数料、受け取った現金(買収費用)の計上
一方、買収側が法人の場合に仕訳・会計処理のポイントは以下のとおりです。
- 買収した株式は時価で計上
- M&A仲介会社などへの仲介手数料も取得原価に加える
- 子会社株式を現金で買収した仕訳を行う
株式交換
株式交換とは、完全親子会社関係になる前提で行われるM&Aスキームです。以前は、買収側が支払う対価(買収費用)は自社株式に限定されていました。現在は自社株式以外に現金、社債、新株予約権なども買収費用にできます。
売却側(完全子会社になる企業の株主)は、買収費用が親会社株式のみの場合、簿価での譲渡として処理し損益計上は繰り延べます。買収費用が親会社株式以外の場合は損益計上しなければなりません。完全子会社となる企業においては、特別な会計処理は無用です。
一方、買収側での税務処理はありません。買収した子会社株式の計上は、適格組織再編であれば簿価、非適格組織再編であれば時価となります。
合併
合併とは、複数の企業を1社に統合するM&Aスキームです。既存企業間で行う吸収合併と、新設企業が存続会社となる新設合併があります。合併は1社に統合されるため、仕訳・会計処理は存続会社のみで発生するものです。
合併の場合、適格組織再編か非適格組織再編かで仕訳・会計処理が異なります。適格組織再編であれば資産・負債を簿価で引き継ぐため、課税は生じません。非適格組織再編の場合には資産・負債を時価で引き継ぐため、譲渡損益が発生し税務処理が必要です。
M&A費用を低減させるポイント
ここでは、M&A費用を低減させる方法として以下の4種類を提示します。
- M&A仲介会社の報酬体系を比較
- 企業価値評価の徹底
- デューデリジェンスの実施範囲
- M&Aスキーム(手法)の工夫
それぞれの方法の内容を説明します。
M&A仲介会社の報酬体系を比較
M&A費用のうち、買収費用を除けばM&A仲介手数料が最大のウエイトを占めるものです。したがって、M&A仲介手数料をできるだけ低く抑えられれば、M&A全体の費用も低減できることになります。
そのためには、M&A仲介会社に正式な業務委託をする前に、各社の費用体系を比較して選ぶことです。特に成功報酬の計算方法は、よく確認しましょう。
企業価値評価の徹底
M&Aの買収側で最も高額な費用は買収費用です。買収費用を少しでも低減できれば、M&A費用全体を抑えられることになります。まずは、企業価値評価を適正に行うことです。
中期事業計画を用いる方法で企業価値評価を行うインカムアプローチの場合、事業計画が盛られていないか見極めなければ適正な計算結果が得られません。適正な企業価値評価が得られたと確信したうえで買収費用の予算を決めましょう。
デューデリジェンスの実施範囲
デューデリジェンスは、企業経営のさまざまな分野の調査をするものです。調査の実施範囲を広げれば、それだけ費用も多くかかります。M&Aの売却側の経営規模に応じてデューデリジェンスの調査範囲を運用することで、費用を抑えても十分なデューデリジェンス結果を得られるでしょう。
M&Aスキーム(手法)の工夫
M&Aの買収側では、M&Aスキームの選び方次第で買収費用を低減化できる場合もあります。たとえば会社を丸ごと買収する株式譲渡よりも、一部の事業を買収する事業譲渡の方が買収費用は少なくなるでしょう。
また、現金の出費を抑えたいのであれば、合併や会社分割、株式交換や株式交付などのM&Aスキームを用いて、買収費用を現金以外にできます。
M&A仲介会社の業務の種類
M&Aを進めるうえで欠かせない存在ともいえるM&A仲介会社について、主な業務内容を確認しましょう。M&A仲介会社の主な業務内容は以下の4種類です。
- M&A戦略とスケジュール策定
- 相手先探し
- 条件交渉の取りまとめ
- 専門家の紹介
上記のM&A仲介会社の業務内容について説明します。
M&A戦略とスケジュール策定
M&A仲介会社と業務委託契約を締結すると、まず、取りかかるのは、M&A戦略と今後の全体スケジュールの策定です。クライアントからM&Aの目的をヒアリングし、そのうえで専門的な知識や経験に照らし合わせながらM&A戦略とスケジュールを策定します。
これは専門家だからこそ、スムーズにできる業務です。M&A戦略には買収費用や売却側のことも含まれます。
相手先探し
M&A仲介会社に求められる業務として、M&Aの相手先探しがあります。一般の企業が、自社だけでM&Aの相手先を探すのは極めて困難です。
その点、M&A仲介会社は、これまでの業務で培った取引先リストや独自の企業リサーチネットワークなどがあるため、スムーズにM&Aの相手先を見つけられます。
条件交渉の取りまとめ
M&A仲介会社は、条件交渉の取りまとめも行います。M&Aの売却側と買収側の利害は一致しません。直接交渉はスムーズに進まないでしょう。
M&A仲介会社との契約タイプ(詳細は後述)次第ですが、M&A仲介会社が両者の間に入って交渉を取りまとめるか、あるいは交渉を代行するため、M&A交渉がスムーズに進みます。
専門家の紹介
M&Aのプロセスにおいては、弁護士や公認会計士、税理士などの士業の専門家が必要な場面もあります。M&A仲介会社では、それらの士業が在籍していることも多く、即、対応が可能です。
また、士業が在籍していないM&A仲介会社の場合は、各士業事務所と提携しているため、すぐに紹介を受けられます。
M&A仲介会社の必要性
M&Aでは、ここまで挙げたM&A仲介会社の業務以外にも、さまざまな手続きやプロセスがあります。それらはいずれも専門的な知識や経験が求められるものばかりで、特にM&Aの経験がない企業が対応するのは難しいでしょう。
M&Aの手続きやプロセスをミスなく円滑に進めるために、M&A仲介会社の存在は欠かせません。
その他の選択肢
現在、M&A仲介会社以外にM&A仲介業を行っている会社や機関は以下のとおりです。
- 士業事務所
- 金融機関
- FA(ファイナンシャルアドバイザー)
- 経営コンサルタント
M&A仲介業は行いませんが、無料でM&Aの相談ができる公的機関として以下のようなものがあります。
- 事業承継・引継ぎ支援センター
- よろず支援拠点
- 商工会・商工会議所
また、インターネット上でM&AのマッチングができるM&Aプラットフォームも数多く運営されています。
M&A仲介会社のメリット・デメリット
ここでは、M&A仲介会社に業務委託するメリット・デメリットを考えてみましょう。まずは、M&A仲介会社のメリットです。
M&A仲介会社のメリット
M&A仲介会社のメリットは数多くの種類がありますが、ここでは以下の3種類を取りあげます。
- 取引の妥当性の担保
- 負担の軽減
- リスクヘッジ
それぞれのメリットの内容を説明します。
取引の妥当性の担保
M&A仲介会社がいることで、取引の妥当性が担保されるというメリットがあります。
M&Aの買収費用は、交渉によって決まるものです。最終的には、クライアントである売却側・買収側それぞれの判断ですが、M&A仲介会社はこれまでの業務経験により、交渉内容が妥当かどうかのアドバイスができます。
負担の軽減
M&A仲介会社に業務委託することで、経営者や担当従業員の負担を減らすメリットがあります。
経営者や担当従業員が、M&Aに100%対応しなければいけなくなると、通常業務に支障が生じるのは必至です。M&A仲介会社に業務委託していれば、多くの手続きやプロセスを安心して任せられるため、負担は大きく減るでしょう。
リスクヘッジ
M&A仲介会社の存在は、リスクヘッジというメリットもあります。M&Aは多額の買収費用を伴う取引です。特殊で専門的な側面もあり、M&Aに不慣れだとミスや勘違いが生じる恐れがあります。致命的なミスの場合、大きなトラブルに発展するかもしれません。
その点、専門家であるM&A仲介会社がいることで、ミスやトラブルは避けやすくなるでしょう。
M&A仲介会社のデメリット
M&A仲介会社のデメリットや懸念点としては、以下の3つがあります。
- 利益相反性
- 返金されない報酬体系
- 高額手数料の可能性
それぞれの懸念点の内容を説明します。
利益相反性
M&Aの当事者双方と契約しているM&A仲介会社の場合、売却側と買収側の間に入っているため、アドバイスの内容は利益相反性を秘めています。
たとえば、買収側に有利なアドバイスは、売却側にとって不利益を生じます。M&A取引をまとめるために、どちらかに条件の妥協を求める可能性もあり、この利益相反性は懸念点です。
返金されない報酬体系
M&A費用の仲介手数料のうち、着手金、中間報酬、月額報酬、デューデリジェンス費用は、M&Aが成立せずM&A仲介会社との契約を打ち切る際に返金されません。無駄な費用の発生は、誰でも避けたいところでしょう。
これを防ぐには、完全成功報酬制のM&A仲介会社を選ぶという手段があります。
高額手数料の可能性
M&A手数料が決して安くはないことはデメリットといえるでしょう。売却側で支払いを受けた買収費用の使い道を決めている場合、M&A手数料という出費があることは考慮しておく必要があります。
しかしながら、M&A仲介会社抜きでのM&A取引は無謀です。できるだけ納得できる費用体系のM&A仲介会社を選びましょう。
M&A仲介会社の選び方
ここでは、M&A仲介会社選びのポイントを提示します。具体的には、以下の4点です。
- 契約タイプの選択
- 実績チェック
- 得意業種の確認
- 完全成功報酬制
それぞれのポイントの内容を説明します。
契約タイプの選択
M&A仲介会社との業務委託契約には、「仲介タイプ」と「アドバイザリータイプ」の2種類があります。
仲介タイプ
仲介タイプは、M&A仲介会社が売却側・買収側の両方と契約します。両者の間を取り持つスタイルです。比較的、短期間でM&Aが成約しやすいとされています。ただし、その分、買収費用などの条件について妥協を求められる可能性があるでしょう。
アドバイザリータイプ
アドバイザリータイプは、M&A仲介会社がどちらかの当事者とのみ契約します。それぞれのM&A仲介会社がクライアントを代行して交渉を行うスタイルです。クライアントの利益第一で交渉を行います。
希望条件に近い内容でM&Aが成立する期待が持てる反面、交渉は長引きやすい傾向です。妥協せずに決裂する可能性もあります。どちらのタイプがいいとは一概には断定できません。自社の状況に照らし合わせ判断しましょう。
以下の動画ではアドバイザリータイプの契約を解説しています。ご参考までご覧ください。
実績チェック
M&A仲介会社を選ぶ際、実績チェックは欠かせません。チェックする実績は以下の3種類です。
- 担当してきたM&Aの規模
- 担当してきたM&Aの業種
- 担当してきたM&Aの地域
自社と同規模程度のM&A、同業種のM&A、近隣地域のM&Aの実績の有無を確認し、M&A仲介会社を選びましょう。
得意業種の確認
M&A仲介会社の中には、特定業種に特化して業務を行っているところもあります。また、1業種に特化していなくても、いくつかの業種を得意としている会社もあるでしょう。
自社と同業種のM&Aに特化していたり、得意業種としていたりなどは、ホームページを見れば分かります。事前に情報を調べ、自社に適したM&A仲介会社を選びましょう。
完全成功報酬制
返金されない仲介手数料に懸念がある場合は、完全成功報酬制のM&A仲介会社を選びましょう。ただし、完全成功報酬制であればどこでもよいというわけではありません。成功報酬の計算方法のうち、基準額と手数料率の設定の違いを見極め、なるべく安くすむM&A仲介会社を選びましょう。
M&Aの費用まとめ
M&Aでは、さまざまな費用が発生します。それぞれの費用が発生するタイミングは同一ではありません。M&Aで発生する費用のタイミングと金額の目安を把握し、資金繰りをしておく必要があります。
また、M&Aでは、買収費用が高くなるほど仲介手数料も高くなる報酬計算方法となっていることがほとんどです。特に成功報酬の計算方法については、詳細を確認してからM&A仲介会社を選ぶようにしましょう。
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